TSした綾小路ちゃんを転生オリ主が愛でまくる話   作:妄想癖のメアリー

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綻び

 

 

 

 龍園が去った後、ベースキャンプに戻ってきたDクラス一行は、明日の物資提供に向けての準備をしていた。

 川辺から少し離れたところに、テントが設置されようとしている。話し合いは篠原を筆頭とした女子たちに軍配が上がり、それらは全て女子の物となってしまった。

 勿論不満が出なかったわけではないが、水無瀬が明日になれば使えるから抑えるようにとなだめた為、特に大事になることはなかった。

 

「やはり彼は凄いわね。男子の反対意見も抑えてなおかつ設立まで自分でやるなんて」

 

 テントの設営を筆頭に行っている水無瀬を見ていた堀北が語る。

 

「堀北、焦りは禁物。水無瀬には水無瀬の良い所、堀北には堀北の良い所がある」

 

「……わかっているわ。ただリーダーになった私が何もしなくても良いのかと思っただけよ」

 

 彼女がそう思うのも無理はないだろう。実際に入学当時からすれば他人との関わる力が目に見えて成長した彼女だが、いまだに交友関係は狭いままなのである。

 学校で話すのも水無瀬と綾小路、そして勉強を教えた須藤達としか友人と呼べる人はいないのだ。

 

「結局、龍園君との契約も水無瀬君がこちらが有利になるように持って来たわ。Cクラスの裏切りをなくすことができる条件は完璧、リスクもなく多量のポイントが得られる。文句のつけようがないわ……彼の代わりにリーダーになったのが私で本当に良かったのかしら……」

 

「堀北……」

 

 らしくもなくネガティブになる堀北に、綾小路は心配そうに呟いた。

 

「ごめんなさい……慣れない環境にいるとつい余計なことまで考えてしまうみたいね。少し頭を冷やしてこようかしら」

 

 そう言っておぼつかない足取りで川へと向かう彼女を心配そうに見つめる綾小路。そんな彼女に、一つ目のテントを設置し終えた水無瀬が話しかけてきた。

 

「調子はどうだい? 清楓ちゃん」

 

「ん……私は大丈夫。ただ堀北が辛そう」

 

「……ちょっと無理をさせてしまったみたいだね。少しゆっくりさせてあげてくれ」

 

 頷いた綾小路。それを見て戻ろうとした彼だったが、少し遠くから名前を呼ぶ声が聞こえた。

 

「水無瀬くん! 少しいいかい!」

 

 声の方向を見ると、そこにいたのは平田だった。走りながらこちらに寄って来ている。

 

「洋介か。どうしたんだい?」

 

「何回も頼み事をして申し訳ないんだけど、この辺りで焚火をするのに使えそうな枝を拾って来てもらいたいんだ。アウトドア経験のある池君は他の人たちと一緒に立ててるから……ごめんね」

 

「ああ、そんなことか……全然いいよ。何人か連れて行きたいんだけど、自由に決めてもいいかい?」

 

「もちろんだよ! ありがとう!」

 

 そう言って忙しそうに男子の方へと戻っていく平田。この特別試験に貢献しているのは、何も水無瀬だけではないのだ。

 

「……さて、誰を連れて行こうかね?」

 

「水無瀬だったら呼べば誰でも来ると思う……私ともう一人は適当に須藤とかでいいんじゃない?」

 

 ちゃっかり参加しようとする綾小路。水無瀬もなにも違和感を抱いていない。

 

「……彼を連れて行ったら張り切りすぎて枝どころじゃなくなりそうだよ?」

 

「ふふふ、確かに」

 

 須藤の扱いが雑な2人である。

 そんなこんなで適当に声を掛けようかと思い、動き出した2人だがどうやらその必要はなくなったようだ。

 

「あの……私……一緒についていって、いい、かな?」

 

「私はありがたいけど。いいの? 疲れてるでしょ、休んでも誰も文句は言わないと思う」

 

 先ほど一緒にスポット探しをしていた佐倉に、心配の声をかける綾小路。

 

「私なら大丈夫。ここに残っても、その、ちょっと……居心地が悪くって」

 

「なるほどね。じゃあ行こっか」

 

 そう言ってベースキャンプから離れ、森に入ろうとした3人だったが、後ろから呼び止める子が聞こえる。

 

「おい!」

 

 振り返るとそこには山内。どうせ何かしらの言い訳をつけて協力はしないだろうと誘われてすらいなかった彼だが、予想に反してやる気があるようだ。

 

「水臭いぜお前ら! 俺も手伝ってやるよ!」

 

「……良いのかい?」

 

「当たり前だぜ! 困っているときは友達を助けるもんだし、それに女の子2人だとキツイ

 

「……なるほど。水無瀬、私は戻るから、山内に手伝ってもらってて──」

 

 何かを察したような綾小路。水無瀬の耳元で何かを伝える。

 

「……あー。分かった。じゃあ行こうか。佐倉さん、山内」

 

「は、はい」

 

「おう! よろしくな、佐倉!」

 

 遠慮がちに返事をする佐倉、綾小路に言われたことを考え、頭が痛くなる水無瀬であった。

 

 

 

 

 

 ベースキャンプから遠く離れないよう、あくまでも周辺で枝を集めることにした3人。 それほど遠くない場所で広がるようにして枝を拾っていく。

 

「な、なあ水無瀬。ここだけの秘密にしておいてほしいんだけどさ」

 

 そう言って枝を抱えた山内がこちらに近づき、首に手を回して耳打ちをしてくる。

 

「俺……佐倉狙おうと思うんだ」

 

(やっぱ清楓ちゃんの言ってた通りだ……)

 

 彼の記憶が正しければ、山内は櫛田のことが気になってい居たはずだ。山内は、聞いてもいない佐倉を狙おうとした理由について語ってくる。

 

「いや、櫛田ちゃんってレベル高すぎんじゃん? だから──」

 

 どうやら彼によると、櫛田は目標が高すぎるから佐倉で妥協するというモノであった。あまりに不純な動機のため、佐倉に対して同情の念を抱いた水無瀬であったが、それを気にせずに山内は続ける。

 

「──だからこの際佐倉でオッケー。いや、佐倉がいい!」

 

「この際って、今まで何一つ佐倉に絡んでなかったじゃないか。随分急だね?」

 

「いやさ、見る目がなかったって反省してんだよ、それはさ。地味だから目に留まってなかったけど、すげぇ可愛いし。アイドルだし? 胸はもう、最高だし。ジャージ着こんでても丸分かり、目立って仕方ないよな」

 

 手で胸を揉むような動作をしながら、興奮したように話す山内に心底引いた水無瀬に対して山内は1つのお願いをした。

 

「だから応援してくれよ。例えば今から俺と佐倉を二人きりにするとかさ」

 

「それは……」

 

「何だよ。おまえ、もしかして佐倉狙ってんのか? あのおっぱいか!」

 

 そう言って渋る水無瀬に対して、山内はご立腹のようだ。

 

「かー! お前モテまくってるくせに強欲だぞ!? もういい、おれは佐倉と話してくるから邪魔すんなよ!」

 

 佐倉の元へと速足で向かっていく山内、先ほどまで持っていた枝は全て放り出すというおまけもついている。

 

「はあ……困ったもんだ。彼には」

 

 ことがない限り止めないようにしようと思った水無瀬であった。

 

 

 

 そうして2人の近くで枝を集めること5分経過した後、彼らの様子を見ようと腰を上げた水無瀬。

 

「水無瀬ー! こっち来てくれー」

 

 その時山内の声が聞こえてきた。そちらへ向かった水無瀬が見たのは、不安げこちらを見つめて来る佐倉と山内、さらにその傍には知らない顔の女子生徒が立っていた。

 

「この子さっきからずっとあそこで座っててさ、心配だからDクラスのとこまで連れてってあげようと思って」

 

「別にいいって言ってんのに……お人好しのバカなんだから」

 

 彼が知らないとなると、自ずと他クラスの生徒となるため心配する義理は無い。しかし彼が気がかりに思ったのは彼女の頬にある赤く腫れた跡。誰かに殴られたと容易に想像できる。

 

「ふむ。分かった。僕はDクラスの水無瀬柊。よろしくね。君の名前は?」

 

「私は……伊吹」

 

 痛むのか赤く腫れた頬を撫でながらそう呟く伊吹。

 その名前に聞き覚えがあった水無瀬は手を叩きながら納得したように語る。

 

「君が伊吹さんか、龍園君から聞いてるよ。彼に叩かれたそうじゃないか、大丈夫かい?」

 

「……あいつは女子相手でも容赦はしないからな、最低な奴だよホント」

 

「ひええ、あいつやっぱ噂通りのヤバいやつじゃん……」

 

 恨めしそうな表情で呟く彼女に、山内は身を震わせながら語る。

 

「とりあえずDクラスのキャンプ地まで行こうか。ほら、山内も持って持って。男手が必要だから来たんだろう?」

 

「お、おう。分かったよ」

 

 何故か不満げに承諾した山内。やりたかったことは大体想像がついているため、呆れ半分のため息を吐く水無瀬であった。

 

 

 

 そんなやり取りを交えつつ戻ってきた4人。水無瀬は伊吹をDクラスで保護することについて話し合おうと思っていたが、平田と櫛田を含むクラスの半数近くが出かけていたため断念した。

 

「……じゃあ私は端の方で待ってるから」

 

 どこか安堵した様子で歩いて行ってしまった伊吹。

 

「よし! 焚火については俺に任せてくれ!」

 

 佐倉に良い所を見せようとしたのか、山内がマッチを火をつける。それを尻目に水無瀬が向かった先は、ベースキャンプの端の方で体育座りをしていた伊吹の元だった。

 

「……またアンタか。今度は何の用?」

 

 座り込みながら上目でジッと見つめて来る伊吹。やはりまだ警戒心は解けていない様子だ。

 

「君がどうしてあんな所にいたのかをもっと詳しく知っておきたくてね。Dクラスで受け入れるためには皆を説得する必要があるんだ」

 

「……別にさっき言った通りだよ。それに、私はこの試験では敵同士だ。おまえ達に助ける義理は無いだろ」

 

「いいからいいから。そんな様子なのに無理したら駄目だよ? これから1週間持たないんだから」

 

 もう彼の中では受け入れることは確実なのだろう。子供をあやすような態度で言われた伊吹は呆れたように息を吐いて答えた。しかしその顔にはどこか安心した様子が見受けられる。

 

「はあ……おまえ、筋金入りのお人好しだな。別に大したことじゃない。最初の話し合いの時に龍園の方針に反対したら殴られた。それだけだよ」

 

「その方針というのは、200ポイント分の物資をDクラスに譲渡するっていう話かな?」

 

「ああ。そうだよ」

 

「……龍園君と話した時、彼は『見つけたらCクラスに戻るように言っておいてくれ』と言っていたが……「嫌だ。今更戻ってもバカにされるだけだ」……だろうね」

 

 基本こちらの話は全て適当に返していた伊吹だったが、Cクラスに戻ることに関しては絶対に嫌らしい。

 

「じゃあこれから1週間。よろしくね? 伊吹さん」

 

 右手を差し出してにこやかに語る水無瀬。

 

「は? ……何?」

 

「握手だよ握手。一度やってみたかったんだよね。こういうの」

 

 そう言ってもう一度右手を前に出す水無瀬。意志は固いようだ。

 

「……バカみたい。まあいいや。よろしく」

 

 そんな彼の好意を面倒に感じたのか、ぶっきらぼうにその手を受け取る伊吹。その時ふと表情が緩みそうになるが、龍園に言われたことを思い出し意識的に締める。

 

(やっぱ龍園の奴が言ってた通りだ。こいつ……)

 

「ちょっと手に力が入りすぎじゃないかい? もっとリラックスするもんだと思うよ?」

 

 そう苦笑いで語る水無瀬。しかし伊吹は、その内心で彼が一体何を考えているかを読み取ることは、一切出来なかった。

 その後行われた話し合いでは、水無瀬と平田の同意もあって無事に伊吹がDクラスで過ごせるようになった。さらに食料やトイレなどの話も完璧とは言わないが纏まり、Dクラスは、教師達から受けたであろうその評価に反して素晴らしいスタートを歩んだと言えるだろう。

 

 

 

 

 

「もしもし。聞こえてる?」

 

 皆が寝静まった後、伊吹はDクラスのベースキャンプから離れた場所にて、何やら誰かと話していた。彼女が手に持った通信機らしきものから声が聞こえてくる。

 

『わざわざ連絡を入れてきたってことは、無事潜入はできたみたいだな?』

 

「……あんたが潜入出来たら連絡入れろって言ったんだろ? 龍園」

 

 電話の相手は龍園。今日の昼にDクラスと取引を行った彼本人である。龍園は笑いながら答える

 

『それで、どうだった? Dクラス、特に水無瀬の様子は』

 

「誰も私を疑う様子すらなかった。あんたが警戒しろって言ってた水無瀬ってやつも、ただ相手との距離の詰め方が上手いやつにしか見えなかった」

 

『なんだ、惚れたか?』

 

「バカ言うな。そんなんじゃない。というか、教えてくれるんだろうな。わざわざDクラスに取引を持ち掛けた理由を」

 

 不思議そうに伊吹は質問した。先ほどまで面白そうにからかっていた龍園は、それとは打って変わって真面目なトーンで語る。

 

『取引相手がAじゃない理由は、あちらからリーダー情報を伝えに来た薄情な奴がいたからだ。派閥争いは坂柳が妥協した形で解決したと聞いたが、どうやら違うらしい。さらに派閥争いが終わったと()()()()()()葛城の奴に話を持ち掛けたところで、それを飲むとは思えねえ。あいつは堅実な奴らしいからな』

 

「……それじゃ、Bクラスにすればいいじゃないか。Dクラスじゃ支払い能力が足りなさすぎるし、もし300ポイント払えなかった時のペナルティも決めてないんだろ?」

 

『まあそうなるとDかBになるだろうな。だがBクラスにしなかった理由なんて、少し考えれば分かる話だ』

 

「それが分かんないから聞いてるんだけど」

 

『クックック、まあいいだろう、教えてやる。まず第一として、()()()()()()()()()()()()()。そして、他クラスのリーダー当てをすると言う、大きな賭けになるこの取引を飲むほどのクレバーさがねえんだよ。んで断られたら一巻の終わりだ』

 

「まあ……確かに」

 

 そう。あくまでBクラスはリスクを冒さずに、着実にポイントを稼ぎに来るだろう。そして、その取引相手が龍園ともなれば猶更だ。

 

『そしてDにすることには、支払いが不履行になる可能性をかき消すほどのメリットがある。一つは各クラス間のポイント差を埋められること。俺の想定だと、Dクラスが得られるポイントは250だ。対してBクラスは多くても50ほどだろう。これでピリついた空気でも流れてくれれば、俺がさらに動きやすくなる。

 

 もう一つは支払いができないことを逆手にとって、支払いの義務をなくしてやる代わりに、法外な条件を吹っ掛ければいい。さぞかし金無し生活はきついだろうからな。俺らの奴隷になるとしても喜んで飲むはずだ』

 

 300ポイントが一気にもらえる試験が頻繁にあるはずがないと想像した龍園は、逆に無一文になったDクラスを手中に収められるというメリットも生じさせたのだ。

 

「じゃあ支払いが出来なくなった時のペナルティを明記しなかったのも、わざとだってこと?」

 

『まぁな。さらに言えば、あいつらは400ポイントを獲得できると信じて疑ってないバカ共だ。だがもしペナルティを設定しちまえば、バカでも警戒くらいするだろう。飲ませた時点でこちらの有利な状況は確定してるんだ。わざわざリスクを冒す必要もない』

 

 心底愉快そうに語る龍園。伊吹は彼の表情を想像し、苦い顔をする。

 

「あんたがすごいのは十分わかった……これじゃお人好しのDクラスが可哀そうなほどだ」

 

『なんだ? お前にしては随分と素直じゃねえか?』

 

「からかうな。私はただ、Cが上まで行くためにやれる限りのことをやるだけ。他人を騙す事になっても、それは変わらない」

 

『フン。いい心持ちじゃねえか。お前は余計なことしないでそのままDのリーダー情報を暴いてろ』

 

「……わかった」

 

 

 

 

 

 ────だが、そこには確かに小さな綻びが生じていた。

 

 

 

 

 




原作との違いで、Aクラスの派閥争いが終わっている(ホントは終わってないけど)
所がミソです。

リメイク前の方を読んだことありますか?

  • リメイク前読んだことあるよー
  • リメイク後初めて読んだよー
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