TSした綾小路ちゃんを転生オリ主が愛でまくる話   作:妄想癖のメアリー

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団らん

 

 

 

 

 私が坂柳の幼馴染である水無瀬という男に実際に会ったのは、確か5月に入ってからだったと思う。

 坂柳有栖。人の弱みに付け込んでこき使うような、お世辞にも性格がいいとは言えないやつだけど、彼との思い出を語っている時だけは純粋な少女そのもの。それで一体どんな奴なのか気になって、食堂で昼食を3人で食べたのが最初だったと思う。

 まぁ確かに顔は良いし話も面白いとは思ったけど、それだけで彼女が惚れるだなんて考えられないとは思った……まあ、私は恐らく近いうちにその理由を知ることになるんだろうけど。

 

 

 ……私がどうしてこんな話をしているかって? それは

 

 

 

「────よし。ちゃんと話は伝わっているみたいだね? 流石有栖ちゃんのお友達だ」

 

 

 

 その件の男が、私達の前に立って居るからだ。

 

 

 

 

 

「はあ? 夏休み中は水無瀬の指示に全面的に従えって?」

 

 時は夏休み前日の話。坂柳から珍しく()()()があると聞いて集合した坂柳派の生徒達。

 

「はい……残念ですが、恐らく次に行われる特別試験。私は参加することはできません」

 

 突然そんな話を聞いて困惑する彼らを置いて、坂柳は話を続ける。

 

「なので今回の試験は特別に水無瀬君に協力してもらう事にしました」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれよ坂柳! どうしてそんないきなりなんだ? ちゃんと説明してくれよ!」

 

 急展開を迎える彼女の話に、たまらんと言ったように金髪の生徒。橋本が抗議する。クラスの約半数を占める坂柳派の生徒達だが、その真意を理解できたものはいなかった。

 

「私がその試験に参加することは、先ほども言ったように不可能です。なのでそれを逆手にとって葛城君の影響力を落とします」

 

「その作戦の司令塔として、あんたの幼馴染を使うって事?」

 

 神室がそう確認すると、彼女は満足げに頷いて続ける。やはり一番彼女の傍で過ごしてきたからこその信頼が見て取れる

 

「……いくらあなたの馴染みと言えど、今はDクラスの生徒。信を置くことは難しいのでは?」

 

 Dクラスの生徒と協力するという、リスクが高いプランに反発の声を上げる坂柳派の生徒達。大事な試験の命運を敵であるDクラスの生徒に任せるというのだ。無理はないだろう。

 

「ええ。そう思うのも無理はないでしょう。ですが今回に関しては何も問題はありません。その理由は先ほど述べた私の目的にあります」

 

 そのそうな質問を予め想定していたのか、彼女の返答はスムーズだった。

 

「そう。今回の目的は()()()()()()()()()()()()()()()()()()。つまり私が居ない状況下の試験において大敗を期し、私が指揮をした方が安泰だと皆に思わせます」

 

「……なるほどねー。じゃあ敢えてDクラスにボコボコにされるって事、か。それでどんな作戦を立ててるんですか?」

 

 その話を聞いて気が楽になったのか、橋本がふざけたように質問をする。それを始めに緩み始める空気。だが、その答えは彼らが想定していたものとは違ったらしい。

 

「いいえ。特に何も」

 

「……え?」

 

 その答えに呆気にとられる一同。彼女。坂柳有栖という人間は、どんなことをするにしても緻密な計画を立てるということが、短い期間の間だが知られている。そんな彼女が一切の計画を立てないのは今までに一度もなかったのだ。

 

「言ったじゃないですか? ()()()()()()()()()()と。そもそも試験があるという事は知っていましたが、どのような内容かは流石に私でも分かりません。なので後は水無瀬君に全て任せて、私は自宅で本を読みながら良い結果を待ちます……それと橋本君」

 

「?」

 

「貴方の目標として掲げているのは、最終的にAクラスに上がることですよね? でしたら彼とコネクションを作った方が得ですよ?」

 

「それって……」

 

「まあ、これ以上語る必要はないでしょう。すでに彼には話を通しているので後に話が来ると思います。それまではあなた達が良いと思った行動を自由にとっていただいて構いません」

 

 その言葉には彼女からの信頼が読み取れる。そんな言葉に一抹の不安を残しつつも少年少女は暗躍を始めた。

 

 

 

 

 

 ──ーーそして時は2日目の昼。Cクラスからの物資を無事に受け取り、水無瀬と堀北がBクラスのベースキャンプを訪れた少し後の話に戻る。

 

「……それにしても彼女たちの工夫には目を張るものがあるわね」

 

 心底感心したかのように語る堀北。彼らは無料で配られるビニール袋をテントの下に敷いたり、井戸の水で打ち水をして涼むなどの工夫をして過ごしていた。

 

「確かに彼らの知恵や、それを行おうとする行動力は見習うべきだね」

 

「それだけじゃないわ。彼らはDクラスの人達とは違って全員が同じ目標のために動いている。あれを崩すのはかなり手がかかりそうね」

 

 そんなことを語りながら、はっきりとした足取りで歩みを進める2人。どこかへ向かっているようだ。

 そうして数分歩いた後に見えてきたものは、大きな洞窟。その傍には仮設トイレが2つとシャワーが1つ置いてある。

 

「これが一之瀬さんが言ってたAクラスのキャンプ地ね。中を確認したいところだけど……」

 

「随分と厳重に管理されているね。葛城君らしいと言えばらしいけど」

 

 物陰に隠れて確認するのは至難の業である。Aクラスにそこそこの知り合いがいる水無瀬は、素直に中を見せてもらおうと、洞窟へ繋がる道を歩く。

 

「ちょ、ちょっと」

 

「ほら。行こう鈴音ちゃん。こんなところでこそこそしてても時間の無駄だよ? 行けばある程度なら教えてくれるって」

 

「あなたは知り合いが居るからいいでしょうけどね……」

 

 そんな不満を漏らしながらも、素直に彼についていく堀北。洞窟の入り口までたどり着くと、当然その近辺にいたAクラスの生徒に見つかる。

 

「何だお前ら。どこのクラスだ……って! お前!? ……ここに何をしに来た」

 

 そこに立って居たのは、船の甲板でひと悶着あった生徒、戸塚だった。

 

「偵察に来たのよ。何か問題ある?」

 

 先ほどまでの様子とは打って変わって、強気な態度で接する堀北。

 

「Aクラスを名乗るからにはさぞ賢い生活をしていると思ったけれど……賢いというよりは、姑息。臆病なやり口ね」

 

「はっ! Dクラスなんていう頭の悪い連中に言われたくはないね!」

 

 後ろで見ている水無瀬にチラチラと視線を配りながらも、そう啖呵を切る戸塚。

 

「頭の悪い、ね。それなら私たちにこの中を見せても特に影響はないでしょう? それとも中を見られるだけで窮地に立つのかしら?」

 

「そんなわけあるか!」

 

「だったら中を見せても問題ないでしょう? お邪魔するわね」

 

「お、おい!」

 

 そう言って押し入ろうとする堀北。だがそれを止めたのは、そのやり取りを見ていた水無瀬であった。

 

「無理やり入ったらダメじゃないか。……っと。おーい! 葛城くん!」

 

 彼女の肩を掴んだ彼は、唐突に後方に振り返って声を上げた。

 そして堀北と戸塚がその方向を見ると、そこに立って居たのは高身長の男だった。

 

「……水無瀬。何をしている。客人を呼んでいいと許可した覚えはないぞ?」

 

「いやいや。Bクラスに立ち寄ったときに面白いことをしていると聞いたからね。興味が沸いて見に来ちゃったよ」

 

 知り合いなのだろうか、葛城と呼ばれた生徒は水無瀬がここにいることに疑問こそ抱いているが、彼からの言葉を無視することはなかった。

 

「ええ!? 葛城さん。こいつのこと知ってるんですか!?」

 

「ああ。彼は交友関係が広い。何より坂柳が優秀だと認める人物だ。警戒しておく必要がある」

 

「優秀って……こいつDクラスの癖に生意気なんですよ! 今だって俺たちの寝床を偵察しに来た汚い連中です!」

 

 葛城の言葉を受け入れたくないのか、恨めしそうに水無瀬を見て喚く戸塚。

 

「……水無瀬。こいつとの間に一体何があった?」

 

「はは。相変わらず察しがいいね。実は──ーー」

 

 先日船の中で起きた出来事を説明する水無瀬。その隣で立っていた堀北も、その出来事を知らないため驚いたように聞いていた。

 

「ーー──そんなことがあったのか……済まない。代わって俺が謝罪する」

 

「そんな! どうして謝るんですか葛城さん! 俺達は悪くないですって!」

 

 その話を聞いて頭を下げる葛城だが、戸塚はそれが気に食わないらしい。しかしその不満はすぐに消えることとなった。

 

「いってぇ! 何するんですか!?」

 

 頭に重い拳を食らい、痛そうにうずくまる戸塚。そんな彼に葛城はきっぱりとした口調で窘める。

 

「それはこちらのセリフだ弥彦。お前がしたことは許されざる行為だ。いかなる理由があろうとも、同じ学校の生徒を差別してはいけない。済まなかったな。こいつには俺からしっかり言い聞かせておく」

 

「そう言ってもらえると助かるよ。次から直してくれれば構わないさ」

 

 元々許す気でいたのであろう水無瀬の様子に、ほっと息をつく葛城。しかしその後表情を固くしてこう告げる。

 

「……だがそれとこれとは別の話だ。今のAクラスはくだらない派閥同士の争いを乗り越え、皆が団結してこの試験を行っている。そして坂柳が参加できない以上、その責任は全て俺にある。余計な火種を持ち込むことはできない」

 

「でも……!」

 

 葛城の言葉に食いつこうとする堀北。しかしまた水無瀬がそれを止める形となる。

 

「こんなに言われたら引き下がるしかないよ。無理やり入るのは僕としても好ましくないからね。僕たちは帰ることにするよ、葛城君」

 

「ああ。是非ともそうしてくれ」

 

 そう言って洞窟の中へと入っていく戸塚と葛城。堀北はその背を悔しそうに見つめている。

 

「さて。帰ろうか?」

 

「……ええ。Aクラスに関しては放置しておくしかないみたい。Cクラスとの契約も無くなるでしょう」

 

 そう残念がる堀北とは対照的に水無瀬は楽しそうな顔を浮かべている。

 

「本当にそうと言えるかな? ……っと少し寄りたい所があるんだった。悪いけど先に帰っていてくれないかい。道も分かりやすいから迷うことは無いだろう」

 

「……分かったわ。ただし分かっているとは思うけど、点呼までには帰ってきて頂戴」

 

「うん。大丈夫。そこまで時間のかかる用じゃないからね」

 

 その後堀北と別れた水無瀬は、先ほどからのやり取りを遠くから見ていた()()()()()と顔を合わせ、森の中へと入っていく。

 

 

 

「さて。ここまで来れば見つかることはないかな? もう出てきても良いよ」

 

 生い茂る草や木を抜けて森の深い所へとたどり着いた水無瀬は、その場でポツリと呟く。

 数秒ほどの時間が過ぎた後、数人の生徒が彼の後ろから現れた。

 

「久しぶりだね。神室さん」

 

 水無瀬はその中で知り合いの生徒、神室に話しかける。気さくに話しかけたつもりだったが、どうにも彼らには警戒されているようだ。

 唯一顔見知りである神室が話を切り出す。

 

「……その様子だとちゃんと話は通っているみたいね」

 

「まあね。じゃあ今どんな状況か教えてもらおっかな。龍園君はどこまで知っているのかな?」

 

 そんな彼の言葉に動揺する彼らだったが、現在までの状況を水無瀬へと伝える。

 

「──ふむ。なるほど、龍園君はもうすでにリーダー情報とその証拠を持っていると」

 

「ええ。初日の時点で接触を図って夜中にリーダーカードを見せたわ。葛城がリーダーだったらこう上手くは行かなかったでしょうね」

 

「……だからAクラスではなくこちらに取引を持ち掛けてきたのか」

 

 納得が言ったように呟く水無瀬。不思議そうにそれを見つめる神室達に、Cクラスとの契約内容を説明する水無瀬。

 

「そしてその情報を使って僕達と取引を行うつもりみたいだね。後は適当にBクラスへとスパイを送って、そこで情報を取って来ればいいわけだ」

 

「じゃあなんでお前らのクラスにもCクラスの生徒がいるんだよ? 本当にただ追い出されただけなのか?」

 

「まあ十中八九スパイだろうね。契約書には『それぞれのクラスを攻撃してはいけない』だなんて一言も書いていなかったし」

 

 一通り説明を終えた水無瀬は、彼らに指示を出す。

 

「さて。ある程度状況の把握は済んだみたいだし、この試験では少し僕に協力してもらうよ?」

 

「ええ。それは分かってる。私たちは何をすればいいの?」

 

「具体的に動いてもらうのは試験終了前日の夜かな。その時にAクラスのベースキャンプから少し離れた場所で合流しよう。そして注意点だけど、集まるときは必ず少人数で来てほしい。仮にCクラスの誰かにその場を見られたら、全て無駄になってしまうからね」

 

 具体的な命令を待っていた彼らだが、彼の言葉から出てきたのは試験最終日、つまり4日後の話だった。

 

「……それだけ? それまで私達は何をしていればいいの?」

 

「特に何も。強いて言うならAクラスの勝利に最大限協力してくれると助かるかな。有栖ちゃんが戻ってきた時に疑われる材料が減るからね」

 

「分かった……坂柳が必要なことを何も言わないのは、あんたに似たのかもね?」

 

 そんな神室の嫌味に、苦笑いする水無瀬。

 

「ははは……こればっかりは信用してもらうしかないね。ただ働いてもらった分だけの成果は保証するから、安心して待っていてほしい」

 

 そう締めくくった水無瀬。それぞれの思惑が重なる中、試験は佳境を迎える。

 

 

 

 

 

 

 ──時は少し過ぎて3日目の夜。

 

「うめえー! やっぱこういうとこで皆で飯食うのって最高だな! 高円寺の奴もサボらなけりゃよかったのによー」

 

 焼けた魚にかじりついてその味の感想を叫んだのは池。今Dクラスは、焚火を囲んで夜食を取っていた。1、2、3日目と順調に試験を乗り越えてきた彼らは、とても楽しそうに談笑をしている。

 

「試験とか言ってビビらせて来たけどさー、マジで余裕じゃない? 池! あんた見直したわよ」

 

 火を挟んで向かい側で座っている篠原が、池に大きく話しかける。あれだけ言い争っていた2人だったが、そんな記憶は消えてなくなったと言えるだろう。

 

「おう、ありがとな! にしてもすげえよ水無瀬! お前が持ってきたトウモロコシ、めちゃくちゃうめぇ!」

 

「僕だけじゃないだろ? 清楓ちゃんや佐倉さんにもちゃんとありがとうって言わないと」

 

「分かってるって! ありがとな、2人とも」

 

「ふふ、これくらい当然」

 

「う、うん。どういたしまして。池君」

 

 この試験にストレスを抱えていた佐倉も、ある程度は馴染めてきている様子に見える。

 そんな皆の様子を見ながら、嬉しそうに微笑みを浮かべている水無瀬。

 

「ここまで来れたのも、皆が一丸となって協力してくれたおかげだよ。このまま上手くいけば、僕らは最低でも300近くのポイントがもらえるはずだ。Cクラスに払う金額を差し引いても、大体来月からは20000ポイントほど貰える計算となる。ちゃんと計画的に使うんだよ?」

 

「分かってるって! お前はこんなとこ来てもお父さんかよ? 少しは気を抜いても誰も怒んねえぞー」

 

 そんな池の言葉に笑いが溢れる。そこに付け足したのは平田。優しくも通る声で水無瀬へと感謝を伝える。

 

「ああ。池君の言う通りだよ。今回の試験は水無瀬君が頑張ってくれたおかげだね。ありがとう」

 

「そう言ってもらえると嬉しいよ。ちょっと席を外すね」

 

 池たちが騒ぐ中、立ち上がりどこかへと向かう水無瀬。その先にいたのは、離れて1人で夜食を食べている伊吹だった。

 

「……何しに来たんだよ。お前が居ないと始まらないだろ?」

 

「そんなことないって。ほら、行くよ」

 

 そう言って彼女の手を掴んで促す水無瀬。それに驚いたように尋ねる。

 

「行くってどこにだよ? まさかあいつらの所でどんちゃん騒ぎするっての?」

 

「当たり前じゃないか。クラスは違えど君はDクラスの仲間としてこの3日間頑張ってきたんだ、ほら」

 

「……呆れた。私は行かないよ。どうせ歓迎されないだろうし」

 

「いいからいいから、ほら!」

 

「え……ちょっと!」

 

 そう言って手を引っ張り強引に連れ出す水無瀬。彼女が抵抗しようとする間にも、彼らの輪に近づいていく。

 

「お? 伊吹じゃん。どしたの?」

 

「皆が楽しそうにしてるから、参加したいんだってさ」

 

「水無瀬! 何言って……!」

 

「へぇー。ちょー意外なんだけど。良いじゃん良いじゃん! 楽しもー!」

 

「……あんた達分かってんの? 私はCクラスの生徒なんだけど」

 

「それがどうかしたのかよ? って言うか俺らがこんなに楽しく過ごせてんのもCクラスと協力したおかげだからな! 気にすんなって」

 

 抵抗を感じている伊吹に対して、篠原や池が歓迎するように呼び掛ける。明らかにアウェーな状況だが、精神的な余裕を持っている彼らには関係ないようだ。そして少し考えた後、伊吹は諦めたようにため息を吐いてこう語る。

 

「……はぁ。分かった。じゃあ私も楽しませてもらうよ」

 

「いよっし! まだまだ飯はあるからな。お前ら残すんじゃねえぞー!」

 

 昨日一昨日と、端の方で寂しく食べていた伊吹のことを少し心配していただろう池は、嬉しそうに呼びかける。

 こうしてDクラスとCクラス1人の食事会は、大きな盛り上がりを見せ終了した。

 

 

 

 

 

「っと。ありがとね。片づけ手伝ってもらって」

 

「別に……私も結構楽しかったし」

 

 そう言って皆の使っていた櫛などをゴミ袋に入れていく2人。反対では平田や櫛田を含めた数人が片づけをしている。

 

「そっか。どうだいDクラスは。皆いい子たちだろう?」

 

「いい子たちって。あんたホントに親みたいなこと言うんだね……まあ。能天気な奴ばっかだけど、悪くはないかな」

 

「ならよかった。特別試験とはいえこんな機会はないからね。楽しく過ごさないと」

 

 そうふざけた様子で語る水無瀬だったが、どうやらその言葉は彼女に刺さったようだ。

 

「……あんた、もしかして私に気を使ってたの?」

 

「別に使ってたって程でもないよ。ただ一人でいるよりかは楽しいかなって」

 

「……ありがと」

 

 恥ずかしそうにそっぽを向いて答える伊吹。

 

「ああ。こっちもこれからよろしくね」

 

「またこれ? まあ、よろしく」

 

 そう言って差し出された手を握る伊吹。そして平田達の片づけを手伝いに向かう水無瀬の背を見ながら、伊吹は自分に言い聞かせるように小さく語る。

 

「──でも、私は自分の仕事をしっかり果たさなきゃいけない。絶対に」

 

「ん? 何か言った?」

 

「何でもない。どうせだし最後まで付き合うよ」

 

「ああ。ありがとう」

 

 そんな健気な彼女を、微笑ましいように見つめる水無瀬。

 

「気持ち悪い目で見てくるな。むず痒くなる」

 

 

 

 ────ただ、いつかは自分の手で終わらせる関係を、この瞬間だけは楽しんでいたいと思う伊吹であった。

 

 

 

 

 

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