TSした綾小路ちゃんを転生オリ主が愛でまくる話   作:妄想癖のメアリー

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愛の定義は人それぞれ?

 

 

 

 それから朝食を取ったDクラス一行。その雰囲気は、前日の楽し気なものとは一変し、誰一人として喋ることなく進行した。

 

「あ、行っちゃったね……軽井沢さん」

 

「放っておきましょ。彼女は少し頭を冷やした方がいいわ」

 

 心配そうに語る櫛田に対して、堀北は冷たく言い放つ。そして話題は、これから出ていくこととなる水無瀬へと向かう。

 

「……水無瀬君。大丈夫かしら?」

 

「ああ、問題ないよ。……正直皆がこんなに信じてくれていたなんて思いもしなかったけど」

 

「当たり前でしょう。あなたがしてきた事は、こんなちっぽけなことで崩れるものじゃないわ」

 

 くたびれたように笑う水無瀬に、堀北は励ますように話した。

 

「洋介、これから3日間。クラスを頼んだよ?」

 

「……ああ。頑張るよ」

 

 そんなやり取りをした後、ベースキャンプから離れる水無瀬。10人近くの生徒が見送りに来たが、苦笑いをしながら戻るように言う水無瀬。

 

「ほら、君たちも早く戻りな?」

 

 残った2人。櫛田と堀北に語る水無瀬。しかし言葉とは裏腹に、どこか寂しそうにも見えた。

 何か言いたいことがある、と言ったようにその場を動かない2人に対して、1人ずつ手招きして話を聞こうとする水無瀬。

 

「……水無瀬君」

 

 先にこちらに来たのは堀北。櫛田は少し離れたところでその様子を見ている。

 

「ほら、そんなに悲しそうにしないでよ鈴音ちゃん」

 

「……私は、正直不安よ。あなた無しでこのクラスがやっていけるかどうか」

 

 彼の胸に額を当て、小さく呟く堀北。そんな彼女の頭を撫でながら、水無瀬はやんわりと忠告する。

 

「鈴音ちゃん、無理だけはしちゃだめだからね? やっぱり前から体調悪いでしょ?」

 

「……別に普通よ。心配しなくても、あなたが居ない分も頑張るから、帰ったら何か用意しておくことね」

 

 暗にご褒美が欲しいと言って、逃げるようにテントへと戻って行く堀北。続いて歩いてきたのは櫛田。周りに誰もいないことを確認し、何時かの口調で罵り始める。・

 

「ホントに何なの? あのあばずれ。マジでバカなんじゃない? ……水無瀬君がこんなことするわけないのに」

 

「口調が戻ってるよ。僕は大丈夫だから、軽井沢さんのケアをよろしくね」

 

「……水無瀬君が言うなら、別にいいけど。夏休み中デートするから。忘れないで?」

 

 表と裏が混じったように話す櫛田に、少々の戦慄を感じながらも、同意する水無瀬。そうそう夏休みの予定は埋まりそうだ。

 

「じゃあ。また夜会お?」

 

 櫛田の方を見るが、もうすでにクラスメイトと笑顔で話し込んでいた。

 

 

 

 

 

「水無瀬」

 

「……急に出て来るのやめてくれないかい? 清楓ちゃん。ってどうしたのその荷物」

 

 川を下り、Dクラスのキャンプ地から離れた水無瀬。そしてその後ろには付いてきて話しかけてきた綾小路が居た。その手にある荷物に疑問を抱いた水無瀬は視線を向ける。

 

「どうって。私もついていく。水無瀬は私に着替えないで過ごしてほしいの? 別にそれでもかまわないけど」

 

「……さっき居なかったのは、荷物をまとめてからかい?」

 

 当たり前だというように頷いた彼女に、ため息を吐く水無瀬。何となく予想はついていたものの、実際にやるとは思っていなかったのか、額に手を置いている。

 

「君にはやってほしいことがあるんだよ。だから連れていくことはできない。今度埋め合わせはするからさ」

 

「……分かった。で、何すればいいの?」

 

 数秒ほど悩んだ末、残念そうに聞く綾小路。どうせ伊吹の見張りでも任されるんだろうと内心思っていた綾小路であったが、水無瀬の口から出た言葉は、彼女の予想に大きく反する事だった。

 

「この試験中、鈴音ちゃんの()調()()()()()()()()()仕向けてほしい」

 

「──え?」

 

「具体的には明日辺りかな。彼女が隙を見せれば必ず伊吹ちゃんは仕掛けて来るはずだ。そしてそのタイミングですぐに連絡を入れてくれ。僕はこれからBクラスのキャンプ地に向かうから、そこに来れば大丈夫だ」

 

 呆気にとられる綾小路を置いて、淡々と説明を続ける水無瀬。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ水無瀬。言いたいことは分かるけど……もっと穏便にできないの?」

 

 そんな彼のお願いに、たまらんと言ったように抗議する綾小路。明らかにいつもと違う様子の彼に、少し動揺しているようだ。

 

「穏便? ……残念だけどそれはできないんだ清楓ちゃん。僕はこの試験に確実に、一切の不安要素なく挑まなくてはならない。そのための仕方ない犠牲だよ」

 

「……ちゃんと説明してよ。どうしたの? いつもの水無瀬じゃない」

 

「そうかい? ……まあ僕も少し気が立っているのかもしれないのかもね。だがこれはやらなければならないことなんだ。頼んだよ? 清楓ちゃん」

 

「でも……」

 

 それでも渋る綾小路。ホワイトルームから出てきて、情が生まれてしまった彼女には少し酷な話なのかもしれない。それが分からないほど彼女との付き合いは短くないが、彼にはそれを行わないといけない()()があった。

 

「……本当は僕もこんなことはやりたくない。だが仕方がないんだ。これは君の為でもあるんだよ清楓ちゃん? そこは昔からずっと同じなんだ」

 

「私の……ため」

 

「ああそうさ。だから頼んだよ?」

 

 そう強く言う水無瀬。小さい頃から彼のあと追ってきた彼女に、それを拒否するほどの精神力は無かったようだ。

 

「ん……わかった」

 

 己の中に渦巻く葛藤を抑えながらも、健気に了承する綾小路。そんな彼女に、水無瀬は語り掛ける。

 

「ありがとう清楓ちゃん。試験が終わったら鈴音ちゃんと3人でどこか遊びに行こうか? きっと楽しいよ」

 

 その声は、彼女にとって昔の彼を思い出させる程優しく、そして甘美なものであった。とろんとした瞳をこちらへ向ける彼女を抱き寄せながら、水無瀬はふと忌々しい記憶を思い出す。

 

(ああ、全く……本当に────気持ち悪いよ)

 

 

 

 ────そうして生まれたその感情は、一体誰に向けられたものだったのだろうか? それは彼のみぞ知ることとなるだろう。

 

 

 

 

 

 

「ええ!? そんなことがあったんだ……災難だったね」

 

「……全くだ。だがそういう事なら俺達も協力しよう。受け入れる人数が1人から2人に変わった位、どうってことはない」

 

 それからBクラスのキャンプ地に到着した水無瀬。そこで一之瀬と神崎に事情を説明すると、同情を示しながら、彼らは快く受け入れてくれた。

 水無瀬はそんな2人に感謝の言葉を言いつつ、神崎の言葉に疑問を投げかける。

 

「ありがとう。助かるよ……って2人?」

 

「ああ。実は少し前からCクラスの生徒を匿っているんだ。『龍園の方針に逆らったら追い出された』と言っていてな」

 

「……なるほど。やっぱり1人だけじゃなかったみたいだね」

 

「というとそっちにも?」

 

 納得がいったという様子の水無瀬に、神崎が問いかける。

 

「そうだよ。こちらにも1人、追い出された女子生徒が居てね。おまけに頬に殴られた痕も付いていた」

 

「酷い……! 龍園君らしいと言えばそうだけどさ……」

 

 同じ女子として許せる行為ではなかったのだろう。怒りを隠さずに呟く一之瀬。彼女の性格の良さが出ている。

 

「……度し難いな。それでもCクラスの生徒は離れていかない辺り、やはり龍園は警戒すべきだな」

 

「そうだね……っと、長く話しすぎちゃったね。こっちに空いているスペースがあるから、皆に説明してからゆっくり休んでて。そんなことがあって、疲れてるでしょ?」

 

 そんな気遣いを見せる一之瀬。Bクラスの頼れる委員長という立場は、偶然ではなくなるべくしてなったのだろう。

 

「助かるよ。ありがとう」

 

 そう短く言って一之瀬達の後を付いていく水無瀬。2人はどこかおかしそうに小さく笑う。

 

「ふふ、なんか不思議な気分。水無瀬君もBクラスだったらとっても楽しかっただろうなー」

 

「そうだな。いつもと違ってやけにしおらしいお前を見るのは新鮮だ」

 

「からかわないでくれよ。僕だってそんな日もあるさ」

 

 そう語りながら楽しそうに歩く3人。その後、Bクラスの生徒達も一切疑うことなく受け入れ、楽しいひと時を過ごした水無瀬だった。この信頼こそ、彼が入学してから数か月の間に培ったものなのだろう。

 

 

 

 それから数時間の時が経ち、Dクラスの点呼に戻ってきた水無瀬。しかし明らかにそれまでと違う皆の様子に、困ったように立ち尽くしていた。

 

「こっち見ないでよ!」

「見てねえよバーカ! 誰がお前みてえなブスの事見んだよ!」

「はぁ!? そんなこと言ってると、トイレ使わせてあげないからね!」

「ふざけんな! 外でしろってのか!?」

「あんた達みたいな下着泥棒にはお似合いなんじゃない?」

「んだとてめえ!?」

 

 何か線のようなものを挟んで、怒鳴りあっている篠原と山内が居る。周りの生徒たちも、男女に別れてみるに堪えない言い争いをしているようだ。平田や櫛田の仲裁によって何とか収まったが、どう見てもうまくやっているようには思えなかった。

 

「……おかえり。水無瀬君」

 

「洋介、この状況は……」

 

 そんな様子を見つめていた水無瀬に話しかけていたのは、先ほどまで彼らの仲裁をしていた平田。酷くやつれた様子だが、それを誤魔化すように笑っている。2人は川辺のおおきないしに腰掛け、クラスについて話し合う。

 

「……見ての通りだよ。軽井沢さんはずっとテントから出てきてくれない。更に結局君が出て行っても、残った彼女たちは僕ら男子を疑っているんだ。盗んだ挙句に濡れ衣着せた最低な奴らだってね」

 

「それで男女それぞれテントを放してるのか……」

 

「ああ。池君や須藤君もそんな疑うなら追い出す必要なんてなかったって」

 

 水無瀬を追い出した張本人である彼女に聞こえないところで、他の女子は男子を疑っているようだ。結局軽井沢以外に水無瀬を疑っていた人はいなかったのだろう。池や須藤は水無瀬が罪を被った意味がないだろうと憤慨しているようだ。概ねほかの男子も同じ意見

 

「ただ下着が盗まれただけだったら、こう酷くはなかっただろうね。最初に男子が一方的に女子から疑われているだけだったら、まだ良かった。これじゃあ完全に対立しちゃってる」

 

 完全に分裂してしまったDクラスを見て、参ったように呟く水無瀬。平田もその隣で、何かをこらえるように謝罪を口にした。

 

「ごめん。君に任されたのに……こんな体たらくだ。正直合わせる顔がないよ」

 

「いいや。こればっかりは周りがとやかく言える問題じゃないさ。……大丈夫、僕はうまく解決する方法を探すつもりでいる」

 

「……ほんとかなわないなぁ。自分が恥ずかしくなるよ」

 

 こんな絶望的な状況の中でも、一切目を曇らせることなく語る水無瀬に、平田は苦笑いで呟いた。

 

「さて、点呼を終わらせてさっさと帰らないとね。また面倒ごとが起きる前に」

 

「……今は櫛田さんがやってくれているみたいだけど、僕も落ち着いたら軽井沢さんの説得をしてみるよ。彼女さえ受け入れてくれれば、君を拒む人はいないからね」

 

 そう強く語る平田だったが、水無瀬は首を横に振って断った。

 

「そんなことしなくたっていい。それに、君らしくないんじゃないか? 洋介。彼女1人を無理やり納得させるだなんて」

 

「そんな無理やりって……いや、確かにそうかもね。ちょっと疲れているもかね」

 

 伏し目がちにそう語る平田。

 

「大丈夫。僕に任せてくれれば全て問題ないさ」

 

 そう言って腰を上げる水無瀬。数分後に点呼の時間となる。

 

 最終的に水無瀬は、点呼を終えた後、そのまま出て行ってしまった。彼に話しかけようとしたクラスメイトたちは、何も語らず歩く彼の背中からどこか失望したような念を感じ。罪悪感に打ちひしがれるのであった。

 

 

 

 

 

 side:綾小路

 

 水無瀬が出て行ってから一日経った日の朝。私は、昨日水無瀬からお願いされたことを思い出していた。

 

『鈴音ちゃんを体調不良になるように追い込んでほしい』

 

 彼のやりたいことは分かる。多分同じ状況なら……私もそうすると思うし。ただ、実際にそれを水無瀬の口から言われた時、その状況を思い浮かべてしまった私は、そのお願いをすぐに受け入れることはできなかった。

 

「堀北ー。いっしょにご飯取りに行こ?」

 

「……ええ、分かったわ。綾小路さん」

 

 堀北は今日事件が起こらなかったことに、酷く安心していた。それもそうだろう。堀北は水無瀬からリーダーの仕事を無理言って取ったという感覚でいる。実際にはそんなことは彼を含めて、誰1人として思っていなかったのだが、ちょっと頭が固くて、責任感の強い彼女だから。

 私がそんな彼女を()()()()と思うようになったのは、それが理由なのかも? ……だから、水無瀬の言う通りにしたら、きっとうまくいくんだろう。だが彼女は責任を果たせなかったという深い絶望に苛まれる。

 

「その……大丈夫かしら? 綾小路さん。水無瀬君があんなことになって……」

 

 心配そうにのぞき込んでくる堀北。背は私の方がちょっとだけ高い。大方、昨日水無瀬が追放されるのを止められなかったことを悔やんでいるんだろう。口は悪いけど、優しい子。私の最初にできた友達。

 そんな彼女に大丈夫と言いながら、私たちは食料探しの仲間を作る。私も話すのは得意じゃないけど、流石に堀北ほどじゃない。最初に参加したいと言ってくれた佐倉と、付いてきた櫛田、そして明らかに鼻の下が伸びている山内で5人。そして……

 

「伊吹。あなたも一緒に行かない?」

 

「私が……?」

 

「今日で試験も終わる。そしたら私たちはまた戦うことになる、だからだめかな?」

 

「……そうだな。私もさんざん世話になった。最後くらい手伝ってやる」

 

 ツンデレ伊吹が仲間になった。合計6人で食べ物を探す。

 

 

 

 

「んー……」

 

 森へ入って少しした後、櫛田が私と堀北の顔を交互に見ながら考える動作をしていた。一体どうしたというのだろう?

 

「どうしたんだよ櫛田ちゃん」 

 

 そんな櫛田の行動に遅れて気づいた山内が問いかける。

 

「綾小路さんと堀北さんって最初から仲がいいじゃない? で、その理由って何だろうなーって考えてたの」

 

「ふふふ。やっぱりそう見えるかな?」

 

「……まあ。悪くはないんじゃないかしら」

 

 そう言われて嬉しそうに話す私。堀北もまんざらでもないみたい。

 

「あっ。私、何気に綾小路くんと堀北さんの共通点見つけちゃったかも」

 

「共通点って何々?」

 

「ほら、ちゃんと二人を見てよ山内くん。何か気づかない?」

 

「んー?」

 

 そう言って山内は私の顔約数センチまで迫る勢いで観察してくる。……鼻息が荒いし、なんかキモイ。あ、叩かれた。

 

「な、なにしゅんだよ!」

 

「山内が近づきすぎ。堀北のテリトリーくらい覚えといたほうがいい」

 

 以前池が堀北にちょっかい出したときも似たようなことになったし。 そもそも好きでもない男に至近距離まで顔を寄せられたら誰だって不快に思う。私の顔を覗ける異性は水無瀬だけだもん。

 

「く、櫛田が気づいた共通点って何だよ」

 

「それはね? 二人とも笑ったところをあんまり見せない! だよ。というか、綾小路さんも堀北さんも笑顔でいるところほとんど見たことないなって思って」

 

「堀北は水無瀬の前ではたまに笑うよ」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 ほら、あの仏頂面の堀北も、水無瀬のことになるとこんなに動揺してる。そんな彼女を櫛田と一緒にいじる。たまにしか見せないこういう初心な所が、とっても可愛い。

 

 

 

 ────そんなやり取りがあって、私は堀北の隣で作業を行っていた。基本的に彼女から話すことはなく、私もそんなに喋んないからずっと無言だ。だけどその沈黙に、気まずさを感じることはない。

 

「堀北」

 

「何かしら?」

 

「ありがとう。私と友達になってくれて」

 

 私がそう言うと、動揺したように瞳を左右に揺らしながら、そっぽを向いて答える堀北。

 

「……何を今更。私は自分の意志でしたことに感謝される義理は無いわ」

 

「あー、照れてる。かわいいー」

 

「……それ以上言うならぶつわよ」

 

 手に持った果物を掲げて脅してくる堀北から、悲鳴を上げ逃げる私。こんなやり取り、ホワイトルームにいたころからすると考えられない。ホントに、ありがとう。

 でもごめんね──── 

 

「山内。少し相談があるんだけど……」

 

「おう! どうした綾小路」

 

「この辺りの地面は、雨で泥だらけでしょ? だからこの泥を、()()()()()()()()()()()()()()()()んだ」

 

 

 

 ────これはあなたの為でもあるの、あなたの夢の為。だから我慢してほしいな。

 

 

 

 

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