夢の旅人は仮想に生きる   作:窓風

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アリリコとラスリコを飛ばしてFDをやっちゃった。いいストーリーだった。
(多分)原作以上に喋ってた死銃クンがおもろかった。


EPISODE44 虹の音

 

 

 

2025年8月16日 19:15

イグドラシル・シティ 自室

 

 

 

昼の飛行機で羽田空港に着き、京急線、山手線、西武池袋線と電車を乗り継いで最寄りの大泉学園駅まで1時間弱かけ、途中のカレー屋で晩飯を食べてから帰宅すると時刻は18時を過ぎていた。帰宅して早々にリュックの中身を全部出して、洗濯物は着ていた服も合わせて洗濯機にぶち込んで明朝に洗濯開始するよう予約し、すぐにシャワーを浴びて汗で濡れた身体を洗い心身共にスッキリさせる。やっぱこっち暑すぎるだろ。

土産のお菓子は冷蔵庫に入れた後、エアコンの効いた部屋でベッドに横になり枕元にあるアミュスフィアを被ってALOにログインする。

 

沙綾が来週末にALOを始めてみるというので、部屋のストレージから強すぎず弱すぎない塩梅の曲刀と刀を見繕う。ちなみにどういう偶然か、帰りの飛行機の便が同じかつ座席が隣同士だった。ちょっと気まずかった。

良さげな二振りを間違えて売らないようロックし、一息ついて備え付けの1人掛けのソファに腰を下ろす。こうしてALO内で1人の時間ができるのは本当に久しぶりのため、しばらく棚に上げていたことに目を向けるとしよう。

 

メニューを操作して愛剣を取り出し、リズベット謹製の特注の鞘から出る竜巻状の鍔を眺めながら思考を巡らせる。

 

この剣は、大本はSAOのクエストで手に入れた素材『グリーンエメライト・インゴット』をレインの手で鍛えてもらったものだ。その性能はキリトの黒剣『エリュシデータ』に引けを取らない。SAOがクリアされるその時までお世話になった相棒が、なぜかこのALOでも健在だった。このことにリーファ以外のメンバーは驚いていた。

 

新生ALOにはSAOのプレイヤーデータが残っていたが、武器防具までは引き継がれなかった。当然と言えば当然だが、そもそもこいつが現れたのは旧ALOだ。

俺が須郷とかいうGMによってALOに囚われた時、文字化けしていたアイテムは全て破棄した。その拍子にアルンにまで飛んだのかと思ったが、こいつが目撃された時刻と合致しない。考えられるのは、俺とほぼ同時にALOに落とされた……ということになるのか?ステータスが一部文字化けしているわけでもなし、リズやエギルに鑑定してもらっても『古代級(エンシェント)レベルの普通に強い剣』という評価だった。ALOはSAOと同じカーディナルシステムのコピーを使っているから、互換性がないとは言えないが……。愛着が湧いているからガンガン使ってはいるが、ある意味では一番のブラックボックスかもしれない。

 

鞘から抜いて掲げる。片手剣と言うにはやや細身な、細剣と言うには太すぎる刀身。その刀身に巻き付くように装飾が鍔から伸びているが、完全に巻き付いているわけではなく間隔があり、鞘に納めれば竜巻部分が鞘の上にきて納まりが良くなる。そして鍔の真ん中には、元となった鉱石が磨かれて球状にはめ込まれている。

 

「ま、そうすぐわかるもんでもないか。」

 

そう言ってまた鞘に戻す。謎は謎のまま、頭の片隅にでも置いておくことにしよう。

 

謎といえばもう一つ。茅場はなぜ、SAOにユニークスキルというものを実装したのだろう。

ただ自分が最強の座にいたいのであれば、『神聖剣』だけで良かったはず。しかしそうしなかったのは『フェアじゃない』からだろうか。それならばまだ説明がつくが、そうなると別の問題が浮かび上がる。

 

茅場曰く、ユニークスキルは全10種類用意されていた。ラスボスとして立ちはだかる『魔王(神聖剣)』に対抗する『勇者(二刀流)』とその仲間達。某王道RPGのような勇者パーティが、魔王である自身を倒しに来ることを茅場は想定していたのだろう。

 

しかし、勇者である『二刀流』はともかく、速い時期に『神速』と『抜刀術』が現れた。それも2つのスキルが合わさり1つの新しいスキルとなって。茅場もこれは想定外だったようで、興味深そうにしていた。今思えば、KoB本部で何度かタイマンで話した辺りから興味を持たれていたのだろう。

 

あの時の様子から、元々用意されていた『神速』と『抜刀術』のソードスキルは、カーディナルによってアレンジされたのだろう。特に一番よく使っていた『刹那』は『ヴォーパル・ストライク』や『リニア―』のように抜き身で使えたり、大体の刀スキルのように納刀してからの居合切りという、『神速』でありながら『抜刀術』でもあるという上手い塩梅に納まっていた。

 

というかそもそもの話、適性のある武器と俺の得意武器が違うと思うのだ。『神速』ならまだわかる。スピードタイプの剣士であれば片手剣以外にも細剣や短剣がある。しかし『抜刀術』は刀の専売特許だろう。リアルで考えても、直線的な西洋剣よりも刀の流線型なフォルムが抜刀しやすい。さらに言えば、斬るという部分に関しては刀に軍配が上がる。ファンタジー物の作品は大体ヨーロッパ近郊のものがベースになっていることが多いため剣も自然に直剣になるが、これは斬るというより叩き潰すという方が合っている。

 

少し脱線したが、つまるところ『神速・抜刀術』という制作者も知らない新たなユニークスキルを、なぜ俺が入手できたのだろうということだ。『神速』であれば『閃光』と言われていたアスナが、『抜刀術』であればクラインなどの刀使いが適任だろうに。あり得るとするなら両方の取得条件を同時に満たしたことで、カーディナルがなんらかのエラーを起こした結果だろう。しかしあのカーディナルシステムがその程度のエラーに対処できないわけがないはず。今もどこかの電子の海にいる茅場にも見解を聞いてみたいところだ。

 

そしてキリトはキリトで、似たような感覚があるそうだ。

というのも、ALOでキリトが二刀流で戦うことがそうそうない。新生ALOになってから二刀流を見たのが、この前のレイドイベントが初めてなのだ。お盆の帰省前に色々聞いたところ、『ダブル・サーキュラー』や『スターバースト・ストリーム』等の二刀流ソードスキルは99%剣筋を再現できるところまでできたらしい。俺も『神速・抜刀術』のソードスキルは幾度となく使ったので動きが身体に染みついている。一部どうしても再現できない型はあるが、ほとんどが再現可能だ。

 

ではなぜ二刀流を使わないのか。それは新生ALOにSAOのデータをコンバートしなかった=『黒の剣士』の役目は終わったからではないだろうか。所謂燃え尽き症候群のようなものだろう。実際、帰還者学校に通うSAO帰還者の中にはもうVRMMOをプレイしていないという層も一定数いる。

まぁプレイスタイルは人それぞれだから、俺はそれでいいと思うけど。

 

じゃあ俺は?

俺はなんでまだVRMMO(このゲーム)を続けている?

 

出会えた仲間達と離れたくないから?

SAOで培った経験を無駄にしたくないから?

フルダイブ型VRMMOという新ジャンルのゲームをもっと遊びたいから?

 

おそらく、どれも間違いではないだろう。しかし自分の心の、魂の奥底に残るものがある。

 

「…………行くか。」

 

ソファから立ち上がり、いつもの深緑のコートを羽織って街に出る。ALO時間では昼間だからなのか、世界樹の巨大な枝葉の隙間から陽の光がイグドラシル・シティに降り注いでいる。

商店街まで飛んでいき、アクセサリーが売られている店に入る。商品を一通り見て、目当ての物がないのを確認すると次の店へ。これを繰り返すこと5回。やっと見つけた。それを購入して店を出ると、少し離れたところにある浮島に移動。

浮島からの景色はアルヴヘイムの大地を見下ろせる他、ちょうど左方向-場所的にインプ領あたりだろうか-にアインクラッドが浮かんでいる。

 

この広大な大地を前に、先ほど購入したアクセサリーを装備する。メニューをポチポチ操作すると、目の前の景色が一瞬だけポリゴンで埋め尽くされる。それと同時に、鼻と耳にかかる特有の重みを感じる。

 

買ったのはどこにでも売っている、安物の眼鏡だ。度は当然入っていない伊達メガネで、縁の色は装備に合わせて深緑にした。ルカのお墓参りを経て、ALOで眼鏡をかけたことがなかったのを思い出したのを機に購入したのだ。指でくいっと眼鏡を少し上げて、もう一度景色を眺める。

 

「……北海道に勝るとも劣らない、いい景色だろ?」

 

呟くと、返事をするかのように風が吹いた。それにフッと笑うと、誰かからメッセージが届いた。差出人はキリト。『よかったら一緒にクエストでもやろうぜ』という、いつものシンプルな誘い文句だった。『どこに行けばいい?』と返信すると、集合場所が記された返事がすぐに返ってきた。

 

「んじゃ、行ってくるよ。」

 

翅を広げて浮島から飛び立つ。集合場所はイグドラシル・シティの端にある発着場だ。

ものの数分で到着すると、発着場の端で雑談している見慣れた集団を発見。

 

「全員集合とは珍しいな。」

「お、来たな。」

 

翅を仕舞って降り立つと、それに気づいたキリトが声を上げる。

 

「ソーマーっ!」

「うおっと。」

「おかえり!会いたかったよ~。」

「ただいま。」

 

突撃してきたストレアを受け止める。2日も離れてた分ストレアの甘えたゲージが溜まっていたのか、胸に頭を擦りつけてくる。動物に例えるならゴールデンレトリバーかな?あ、フィリアに剥がされた。

 

「長旅お疲れ様。久しぶりの北海道はどうだった?」

「超涼しかったぞ。夏の避暑地にピッタリだったな。」

「いいなぁ北海道。あたしも行ってみたいのよねー。」

「あ、でも冬はおすすめしない。ヨツンヘイムに変わるから。」

「というかお前、眼鏡なんて珍しいな。イメチェンか?」

「まぁ、原点回帰的なもんかな。んで、件のクエストは?」

「あ、あたしから説明しますね。場所は『蝶の谷』で……」

 

雑談からシームレスにクエスト内容の確認。2日しか空いていないのにとても久しぶりに感じるいつもの景色。今となってはかけがえのない日常がそこにあった。

 

クエストの内容を把握し、じゃんけんで5:5の2パーティに別れる。今回は俺、フィリア、ストレア、クラインとリーダーのリズになった。各々アイテムの確認をしている光景を見て、ふと笑みが零れる。

 

「何かいいことでもあった?」

 

横からフィリアに声をかけられた。クエストに眠るお宝が楽しみなのか、ブルーの瞳をキラキラ輝かせている。

 

「いや、やっぱり皆といる方が楽しいなと思ってさ。」

「ふーん、ソーマも寂しかったんだ?えいっ」

「あっズルい!わたしも!」

 

MHCPであるストレアに心情を見透かされたのか、左手がストレアの両手に包み込まれる。それに対抗心を持ったのか、右手はフィリアの手に包まれた。というかフィリアさん、貴女結構グイグイ来るようになったわね。

 

「あの、メニューいじれないんですが。」

「ん-、もうちょっとだけ。」

「……いいでしょ?」

 

身長差のせいもあるが、こういう時は大体上目遣いになる。だが俺もそこまでバカじゃない。

 

「……あと30秒だけな。」

「おバカ。」

「ふごっ」

 

両手をふにふに握られたところでリズの手刀が飛んでくる。助かった。

 

「イチャイチャしてんじゃないわよ。準備できたの?」

「お、おう。」

「ならみんな待たせてるから行くわよ。」

「畜生……キリの字だけじゃなくソーマまで。こりゃおかしいよなエギル!?」

「俺に振るな。」

 

どこかから取り出したハンカチを噛むクラインは置いといて、もう一つのパーティ-リーダーはアスナだ-も準備完了のようだ。握られたままの両手を引かれ、嬉しそうな2人が微笑む。

 

「「行こ!」」

「あぁ!」

 

俺はこれからもこの景色を、仲間達とつくる夢のような景色を見続けていこう。

 

そう誓い、2人に手を引かれるまま、翅を広げて西の空へ飛び立った。




そんなこんなでEE編はこの辺りにしようかなと思います。
次からはいよいよPB編に突入しますが、まだ練れてないところが多いので更新は少し先になるかなと思います。
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