*今回はシリアス成分多め。
=責任のお話=
Side 谷村 亮太郎
「アナタを何を考えているのですか?」
アイリ・アーカディア嬢。
美少女揃いの王立士官学校の中でも容姿だけでなくオーラを兼ね備えた銀髪の綺麗な女の子。
なんでも旧帝国時代の皇女様だとかなんだとか。
そんな美女とトライアドの最近ライダーに嵌まってるノクト・リーフレット嬢に学園内の応接室でお茶に誘われちゃいました。
まあ理由は十中八九これまでの行動を問い詰める事でしょうが。
念のため「何とは何でしょうか?」と尋ねよう。
「これまでの行動についての全てです」
リーフレットさんも「YES、私も気になっております」と真剣な眼差しで尋ねてきました。
ここで僕は「そうですね――」と前置きして真剣に心中を語る事にしました。
「確かに新たな異世界を見つけ、色々と舞い上がって調子に乗ったのは事実です。これでも自分男の子ですし、王立士官学校の美少女達と接してつい舞い上がったり――特にリーズシャルテ王女とは話も合いましたからね……」
「本当にそれだけですか?」
この子は何処まで僕の心中を掴んでいるのだろうか。
「まあ反省してちょいと抑える方針にしました。ですが、異世界の人達に自国の文化を――まあ偏りすぎましたが――を伝えて一緒に盛り上がりたかった。それだけは事実ですが謝らなければなりません。すみませんでした」
そして僕は立ち上がり、深々と頭を下げた。
「本題はそれではありませんが――」
「では本題とは?」
「タニムラさん。アナタの本心はもっと別のところにあると思います」
「はて? 私はただ楽しくやれればいいと思った次第ですが――」
「その割には生徒達よく指導をしているそうですが」
「まあ迷惑料代わりに出来る範囲でお手伝いをと思いまして。それにここは士官学校。自分の悪ノリで勉学やドラグライドの訓練に支障が出てしまうと言うのは僕としても不本意です。まあ口だけではなんとでも言えますしこれ以上のやり取りは悪魔の証明にしかなりませんよ?」
「ですね。言い方を変えましょう。」
そう前置きしてアーカディアさんは
「どうして私達をそこまで気に掛けるのですか?」
と切り込んできた。
「……正直言うと自分でもよく分からないんだよね。だけど放っておけないしね」
「放っておけないとは?」
「そのまんまの意味です。酷い言い方をすればアナタと私達は違う世界の人間です。だけど、この世界の人間に――いえ、この学園で出会った人々に何かあるのが我慢ならない性分なんです」
「それだけですか?」
「はい。皆が皆、そうだとは言い切れませんが、何だかんだ言ってこの世界に来た人たちは貴方達の身に何かあれば放っておけないと、自分に何が出来る事があるのか? 自分も戦える力があれば危険を冒してでも助けにいきたいと思う人種たちなんです」
僕の周りの人間は大体そんな感じの感性の持ち主だ。
それをどう捉えたかどうかは分からないが、彼女―アーカディア嬢は両眼を瞑って「ハァ」とため息をついた。
「呆れるぐらいにお人好しなんですね」
「シノブ君とかもそんな感じですよ。なにしろ突然こことは違う異世界に召喚されてなんだかんだで世界を救っちゃったしね」
「シノブ君と言うとセリス先輩でも歯が立たない剣術使いですね」
「あの子、単純な戦闘能力で言えば僕より上だからね。僕なんて殺し屋だとか暗殺者の戦い方なんて言われてるけど、言ってしまえば勝てばいいんだよ勝てば理論だからね?」
「個人的にはそちらの方が恐いのですが」
「あらら――」
まあこの議論は置いといてこの機会に洗いざらい本音をぶちまけておこう。
「確かに火垂るの墓は(あの殺し屋メイドが独断で見せて)事故ったけど、続けてプライベートライアンも観せたのは――正直どうかとも思ったけどここは命のやり取りを教える学園だ。だから心を鬼にしようかと考えたワケだ」
「NO、それにしては荒療治かと思います」
「リーフレットさんの言う通りだ。荒療治だったのでは反省しているよ――同時に今も悩んでいる。日本の価値観を安易にこの世界に持ち込んでいいのか、それともこの学園に入った少女たちの覚悟を尊重するべきかと……」
「だからプライベートライアンを見せたワケですね?」
「そうですアーカディアさん。これでもシノブ君と一緒に世界を救った身だからね。本物の戦争や本物の命のやり取りは経験している。勿論、シヴァレスの人達などもアビスと戦ったりして経験しているのは知っている。だけど戦争の悲惨さ、戦争の惨さを伝えたかった――」
そして僕はこう話を続けた。
「だが同時に計算外の事も起きたし、僕自身も教えられた事もある。君達は想像以上にタフな生徒達だと。現実と空想をごっちゃにする事なく、漫画やアニメの娯楽の付き合い方もキッチリと学びつつある」
そう言うとアーカディアさんに「まるで教師みたいですね」と言われ、リーフレットさんにも「YES、見かけによらず色々と考えている方なのですね」と言われた。
「はははは、それはそうと何時まで立ち聞きしているつもりだい?」
そう言ってドアの向こう側が慌しくなった。
ここは女子高。
十代の男子と女子が密会していれば興味も引くか――などと思った。
=藤崎 シノブは勇者だった=
Side 藤崎 シノブ
格納庫でリーシャさんの手伝いをしている時こう言われた。
「なあ、王女とはなんなんだ」
何時もの明るさとは違い、真剣味を帯びた表情、声色で尋ねられた。
冗談で効いているようにも思えない。
ふざけて返す場面ではないだろう。
「その前にどうしてその質問を?」
「この国の歴史は異世界人の君でもある程度学んでいるだろう?」
「はい」
「私は正直に言うと――よく分からないんだ」
「……自分も悩んだ事があります――こことは違う、元の世界とも違うもう一つの異世界で、自分は勇者に相応しいのかとかどうとか」
「そうか――答えは出たのか?」
「単刀直入に言いますと答えなんてないです」
「な――」
「幾ら参考になる話を聞いても、幾ら歴史の教科書を開いても最後に決断するのは自分自身です。それでもあえて言うのであれば優れた、優れてないのを決めるのは後の時代――歴史家と呼ばれる人達が決める事です。今を生きている自分達がそれを決めても自己満足にしかならないです」
「その物言い、リョウタロウ辺りの入れ知恵だろう?」
「あ、バレました?」
「なんだかんだで話が合うからな」
「そうですか――」
あの人の交友関係と言うか行動力には今でも驚かされるな。
今はそれよりも――まだ言いたい事はある。
「だけどこの話で納得は出来ないと思います。自分もなんだかはぐらかされてる感じがしてそんな気分でした。でも、今は――世界を救った後も本当に自分は勇者と呼ばれる存在として正しかったのか迷う事があります」
「世界を救ったか……最初の頃なら与太話と切って捨てたが――その言葉を信じよう」
僕は「ありがとうございます」と言って話をつづけた。
「自分は――勇者としての使命を成し遂げた後、その道のりを見つめ直して、――そして谷村さんの数々の実績や功績を見て思ったんです。自分は勇者であることに拘り続けてしまったのではないかと。そして未来を考えた時思ったんです。勇者は何処まで行っても勇者でしかない。大した存在じゃないんだと」
「大した存在じゃない?」
「自分の道のりは血に染まっています。多くの人間の人々の――仕方のない犠牲だと言ってしまえばそれまでですか。それでも、もっとやれたんじゃないかって思わずにはいられないんです。そして勇者と言う個人は強力な強さを持った危険人物、力のない人間からすれば脅威にしかなりえない――特に政治家たちにとってはそうなんです。それを分かった時、異世界から立ち去る事を決意しました」
「旧帝国を滅ぼした黒き英雄も、そう思っているのかな――」
「……」
どう答えればいいのか分からなかった。
そんなの直接会ってみなければ分からないと言えばそれまでだが。
ただ、安易にそんな現実を突きつけても良い物かと思った。
「すまんな、こんな話を振って――」
「いいえ。僕も今回の話で色々と再確認しました」
「再確認?」
「僕の戦いはまだ続いていると言う事です。勇者として相応しいのか、どうとか、そもそも勇者と言う枠組みに拘り過ぎたのか――自分が納得する答えはいまだ出てません。もしかすると一生出せないのかもしれません。でもその問いかけは――まだ続けます」
「そうか。君は強いのだな――それと、リョウタロウの事を慕っているんだな」
「ええ。あの人は色々と規格外ですから」
あの人がいたから僕は世界を救う事を成し遂げられた。
それだけじゃない。
多くの人々との出会いや別れがあったからここにいるんだ。
そして僕の戦いはまだ続いている。
永遠に終わる事がない戦いなのかもしれない。
けど戦い続けよう。
問いかけ続けよう。
例え答えがない戦いだとしても。