Side アルマ
学園にて思う。
俺にとって新王国は滅ぼすべき対象だった。
だが雇い主であるマギアルカ様を通して知り合った闇乃 影司を通して「思い直せ」と言われた挙句、妙な不思議な力で自分が付け狙う、仇の一人であるリーシャの真実を知った。
正確には今に至る過去を知った。
嘘だと思いたかった。
そんな俺に影司は言った。
「なら近くで見定めればいい」と。
趣味に生きて人生を謳歌している一方で自分が王女に相応しいのかどうか悩んでいる。
それがリーシャの素顔だった。
趣味に生きている一方で時たま異世界人の色んな人間に王女について聞いているらしい。
その問いは影司にも尋ねられたそうで、アルマは「どう答えたんだ?」と聞いた。
すると彼は「日本の政治家みたいにはならないで欲しい」とだけ言った。
異世界人の大半がやってくる生まれ故郷である日本の政治はとても腐敗しているらしい。
また政治構造も複雑怪奇であり、政治家も政治をやるために政治をやっている政治屋が殆どだと言う。
だが同時にこうも付け加えていった。
「自分を犠牲にして成り立つような国は滅んでしまえぐらいには思って欲しい」
と。
そこから俺は影司からとある世界の話を聞いた。
セフィーロと言う異世界のお話。
エメロード姫と言う人柱で成り立つ世界の話。
ただ恋をしたかった。
愛し合いたかった。
結ばれたかった。
普通に愛する人と生きたかった。
ただエメロード姫の願いはそれだけだった。
だがそうすると世界は滅んでしまう。
その役割を異世界の3人の少女に救世主の役割を振って託した。
「何だそれは!? ふざけているのか!?」
影司は続けて言う。
その世界が存在する可能性があると。
もう既にシンフォギアの少女達と言う前例があるからだ。
自嘲気味に影司は「ここでの出来事もどっかで物語として語られてるのかもな」と言って話を続けた。
「自分一人幸せにできない、なれない奴が国を幸せに出来るかっての」
「……俺は、まだこの新王国を滅ぼす事を諦めたワケじゃないぞ」
「いいんじゃねえのか? どんな国もやがては腐敗して朽ちて戦乱が起き、また新しい国が誕生する――歴史なんてのは結局のところそれの繰り返しだ。ローマみたいに1000年も続く国が珍しいのさ」
「せ、千年――よく続いたな」
「とある物語の、ローマで暴君と呼ばれた王、ネロは言った。例えローマが滅びてもローマは生き続けると」
「?」
「例えローマは滅び去ってもローマに託された願いや想いは形を変え、国を変えて、ローマが忘れ去られたとしても生き続けると――」
「突然変な事を言い出してなにが言いたいんだ?」
「一生懸命生きればちゃんと相応に生きられて、飯が美味しくて、相応の代金を払えば平民でも旅行にも行けて――つまるところ良い国ってのは――笑顔や活気で満ち足りてなければならないんだ。どれだけ時代が変わろうとね」
「……お前の国はそうじゃないと言うのか?」
「少なくとも今の自分の国はともかく、政治家、官僚連中は間違っていると思う。民衆も民衆だ。政治意識が低すぎる。まあ民衆に政治意識を求めるのは酷だと言われたらそれまでだけどな――」
「滅ぼそうとは思わないのか?」
「滅ぼすだけなら可能だが、滅ぼしたら滅ぼしたらでもっと酷い事になるからな。今の日本だと他の国に奴隷支配されたりするのが関の山だろう。日本人は平和ボケしてるからな」
「自分の国に辛辣なんだな」
「まあな。まあこれだけ自分の国に文句を言えるだけ日本はまだマシな方だろう。隣の国なんかこの世の地獄みたいな国か――あるいは死後の地獄の方が天国かも知れないような国だしな」
「そんな国があるのか――」
「まあな。結局力で解決しようとしても選択を間違えれば一切れのパンを得るために殺し合う世の中が誕生するだけだ」
「この話は――リーシャにはしたのか?」
「した」
「異世界の人間は皆そうなのか?」
「いいや、人格者もいれば屑もいる。ただゆったりと崩壊へと歩んでいる国。それが日本だ」
「……話せて良かったよ」
「こんな自分の話でも得る者があるのなら良かったよ」
王女の在り方、
国の在り方、
政治とは、
民衆とは、
人とは何なのか。
俺にとってそれらを考えさせられる会話だった。