日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
1963年6月3日午後4時
クワ・トイネ公国の首都上空に、大日本帝国のヘリが轟音を立てながら飛んでくる。
三機の編隊を組んでいるヘリコプターの列は、一列に並ぶように飛んでおり、その周囲をクワ・トイネ公国の飛竜隊が監視の為に旋回飛行を行っている。
クワ・トイネ公国が大日本帝国側へ行った通知としては、飛行してくる乗り物の護衛を飛竜が行う……という形を取っているが、実際には日本側が何かしらの軍事行動を行うのではないかという不安ゆえに、行動を制限しようとゆっくりと先導の飛竜に従わせているのだ。
「どうなっているんだ……大きな風車みたいな羽を上に向けて飛んでいるぞ……」
「絶対に攻撃は厳禁であると厳命されているが……奴らがマイ・ハークで惨事を起こしたのだとしたら許せんな……」
「早まるな!絶対に攻撃してはならん!巨大船の砲がマイ・ハークに向けられているのだぞ!ここで騒ぎを起こしたら俺たちの首が飛ぶだけじゃなくて、大勢の人が犠牲になり得るのだ!」
「分かっていますよ隊長……それでも、それでも彼らが不気味でしょうがないんですよ……」
大勢の市民が上空を見て、その光景を目の当たりにしている。
無機質で鉄で出来た乗り物が、轟音を響かせながら空を飛ぶ光景。
そして、大きな赤い円を掲げた転移国家である「大日本帝国」という未知の勢力が駆使している乗り物。
市民の多くが、この未知との遭遇に恐怖心を抱いたのであった。
マイ・ハークの沖合に待機していた戦艦大和から発艦したYH-6輸送ヘリコプターと、その護衛として飛行している八菱重工製のKi-269「火星」の2機は、公都の首相官邸からほど近い場所にある芝生広場に次々と着陸した。
広場には取り囲むように、クワ・トイネ公国の儀仗兵が、
だが、儀仗兵たちはこの見たこともない鉄の生き物に対し、底知れぬ恐怖を抱きながら今にも食ってきそうな怪物を出迎えたような気分を味わっていたのであった。
◇ ◇ ◇
「では、あなた方は転移国家であると……?」
「はい、我々としても突然の出来事に戸惑っている所存であります。我が国としても貴国との国交を樹立し、交流を加速したいものであると考えております」
「転移国家……聞いたことがないですが、あの海域にはそれまで島といえるのはフェン王国やガハラ神国ぐらいしかないですからな……あなた方の技術力からして、転移国家と見て間違いなさそうだ」
公都で急遽開かれた、大日本帝国代表団とクワ・トイネ公国との対談は、思っていたよりも進んでいた。
対談内容としては、国交の樹立を含めた実務的なものも多くあり、その中でも日本が転移前の傀儡政権であった中華民国や満州帝国からの食料支援によって台所が支えられていたこともあり、食料の輸入に関する議題は重要なものであった。
(ここまではいい……ここまでは……問題は例の話題だ…)
外交官代表者である田中は、首相のカナタを含めた政府代表者との話し合いの場で、どうしても切り出さなけばならない話がある。
日本を出る際に、外務省だけではなく陸軍省からも強く押された話題である。
本来であれば、蛮族のようにいきなり襲ってくるのではなく、友好的で温和な者達との対話を望んでいたが、そのような甘い話は外交の場では通用しない。
むしろ、今後の日本の運命を左右し兼ねない重大な案件であった事、場合によっては日本軍がクワ・トイネ公国に対する軍事的行動も辞さない構えであった。
「カナタ首相閣下……先日、我が国の偵察機が貴国の領土と思われる地域を飛行中に、所属不明の勢力による攻撃により撃墜される痛ましい事件が起こりました……が、貴国にお心あたりはありますか?」
先のマイ・ハークでクワ・トイネ公国の攻撃によって墜落したYS-11Rの確認であった。
偶発的な事故であれば、まだ救いようがあったのだが、良くも悪くもクワ・トイネ公国の首相であるカナタは正直者であった。
自分達がYS-11Rを撃墜したと宣言したのである。
「貴国の
その事実を知った田中は、頭を抱えながらも本国政府及び陸軍の意見を述べるしかなかった。
「カナタ首相閣下、我が国は決して意図的な貴国に対する領空侵犯をしたわけではございません。転移国家故に、状況把握をする上で不可抗力の末に発生した事故でございます」
事実、日本側は日本列島が丸ごと転移してしまったのだから周囲の状況など知る由もない。
それ故に、
「しかしながら、我が国の航空機……それも非武装の航空機を撃墜したとなれば、我が大日本帝国政府はクワ・トイネ公国に対して正式な抗議だけではなく、責任ある対応を要求せざるを得ないでしょう……」
田中の発言に対し、カナタ首相は自国民が犠牲になったことを踏まえると、内心では怒りがこみ上げたが、非武装の航空機ですら落下すればあれだけの大惨事を引き起こす事があるのであれば、大日本帝国が有する完全武装の航空機がマイ・ハークだけではなく、公都に襲来したらどうなるか……。
(これは脅しも含んだ発言だ……しかも、日本は非武装の航空機と言っている、武装した航空機が我が国を埋め尽くす事態になったら……)
カナタは自国民が犠牲になった事に対する怒りを抑え、田中にゆっくりと申し上げた。
「田中さん、我が国といたしましては犠牲になった
「いえ、こちらとしても結果として多くの民間人を死傷させる結果となってしまい申し訳ございません……カナタ首相閣下の事は本国にもお伝えし、私からも寛大な処置を進言し、今回の件を踏まえて後日改めて実務者会議を行いたいと思います」
この場を穏便に済ます為、まずは謝罪を入れるしかなかった。
田中もカナタの誠意を見た上で、出来る限り本国の日本政府と陸軍にも彼らからの謝罪があった事も伝えたが、双方には埋めがたい溝が出来てしまったのであった。