日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第十話

1963年6月4日午前9時

帝都東京

 

首相となった高木は、外交官代表としてクワ・トイネ公国に赴いている田中からの報告を受けとり、正式にクワ・トイネ公国との外交チャンネルの確立化に向けた手続きの承認準備を行うように指示を出した。

 

首相官邸から海軍長距離通信回線を使い、横須賀、名古屋、呉、佐世保、沖縄を経由し、クワ・トイネ公国の公都にて着陸したままのYH-6輸送ヘリコプターに取り付けられている軍用無線で田中との直接通話を行っている。

 

これは極めて異例なやり方ではあったが、日本が保有していた数少ない人工衛星網が転移現象と共に壊滅し、通信を傍受してくるであろうアメリカやドイツといった超大国が消失したことにより、傍受されることを恐れる必要も無くなった為である。

 

『では、例の陸軍機の撃墜の件は手打ちとして提案するという事ですね?』

「ああ。陸軍はカンカンに怒っているが、彼らとしても膨大な食料を有する国家との交渉を行う上では、多少の譲歩は必要不可欠だ。撃墜された事に関しては食料の輸入の際に、経済的な責務を負わせることで手打ちを提案するべきとの声に落ち着いたよ」

 

クワ・トイネ公国が警告射撃ではなくいきなり実弾攻撃をしてきたのではないかという意見が陸軍内部からあったが、警告射撃中に謝って機体に当ててしまう事故だとしても、陸軍内部ではクワ・トイネ公国への不信感があるのだ。

 

特に、陸軍内部でも一定の勢力を有している武藤*1将軍などが、クワ・トイネ公国に対して『攻撃をやったと自供しておきながら彼らに責任を取らせないのはおかしい』という意見が陸軍省を通じて高木に届いているのである。

 

海軍出身である高木に対する対応のヌルさを指摘しているのかもしれないが、高木は下手に軍事衝突を起こせば日本側の損害も大きくなることを考慮し、陸軍を説得したのである。

 

『そうですか……では、食糧の見返りに軍事支援などをクワ・トイネ公国が申した際には、武器・兵器を有償支援という形で取り付けるという事になりそうですか?』

「その通り、軍事支援に関しては先の大戦でも標的機や砲弾の射撃訓練の的にしていた旧式兵器がまだまだあるからな。何かしらの物資を見返りとして取り決めるべきなら、国内の在庫処分を含めて売りつける。手打ちにもなるし、お互いに損はないというわけだ」

 

太平洋戦争が終結して17年になるが、未だに軍の倉庫には戦争で使われていた武器や兵器がいくつか残されている。

 

九九式・五式小銃のようなボルトアクション式の銃に関しては国内では第二戦級の武器として現役であり、予備役の訓練などに使用されている。

 

チハ戦車やレシプロ機の零式艦上戦闘機、隼などは戦後も中国軍や満州軍の治安維持部隊に配備されたりと、旧式兵器も太平洋戦争時代の武器・兵器は国内外問わず長らく使用されているのだ。

 

軍の余剰武器・兵器の処分とされているものでも、この世界では軍事バランスをひっくり返すほどの実力を有しているとなれば、使わない手はない。

 

軍事支援であれば、そうした使い潰しても問題ない武器・兵器であれば軍部も許容してくれるだろう。ただし、日本の影響圏にいるという条件付きではあるが……。

 

『分かりました……あっと、それから高木閣下、一つご確認をしたいのですが、石油資源が湧き出ているとされるクイラ王国を担当している別班の状況はどうなっておりますか?』

「そちらに関しては問題ない。クイラ王国には既に東機関*2が介入しているよ。クイラ王国とは衝突等は無かったから、早ければ10日までに石油掘削権などの権利を得られそうだ」

『なるほど……分かりました。では、クワ・トイネ公国との交渉の責務、必ず果たします』

「うむ、田中君も無理はせずに頑張って欲しい」

『ありがとうございます。では、交渉が終わり次第また連絡いたします』

 

高木が入手した情報は比較的希望の持てるものであった。

クワ・トイネ公国との交戦もあり得たのだが、幸いにも向こうの政府首班は賢明な判断をしてくれたことにより、軍事的衝突の危機はひとまずは去ったといえる。

だが、まだ交渉はこれから始まるので予断を許さない。

 

高木のやるべき仕事は沢山ある。

国内の経済状況は日に日に悪化の一途をたどっており、既に転移した影響で燃料に関する問題も取り沙汰されている。

高木は、眼鏡を掛け直し、問題に対して取り組みを図るのであった。

 

改革は動きだす

*1
統制派の将軍であり、史実では中国大陸やフィリピンでの戦闘を指揮して極東裁判において死刑となった。……が、TNO世界では日中戦争終結に貢献した将軍の一人として存命しており、日本プレイにおけるゲームオーバー時には、武藤が軍の急進派を率いてクーデターを起こす『血の昭和維新』というイベントが用意されている。昭和の妖怪とは仲良し

*2
第二次世界大戦中に日本の外務省が設立した対アメリカ向けの情報収集機関であり、史実では原爆開発計画などを聞きだす戦果を挙げていたが、彼らの情報を軽視した日本は情報を生かすことはできなかった。TNO世界ではその後もアメリカ世論を中心に情報収集を行っている

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