日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第十一話

1963年6月4日午後2時

クワ・トイネ公国政治部会

 

「これだけは日本側の要求を断るべきです首相!彼らは軍事同盟と引き換えに、このような要求をしてくるとは……」

「我が国としても、これは流石に許容できる範囲を超えておりますぞ……」

「向こう側の経済情勢を鑑みたとしても、これは流石に受け入れがたいものです……」

「首相!これは絶対に締結してはなりません!」

 

蓮の庭園で開かれている政治部会では、部会の議論が紛糾していた。

強大な力を有する大日本帝国との軍事同盟……それは確かに魅力的であり、ロウリア王国からの軍事的圧力に晒されているクワ・トイネ公国にとっては、必然的に同盟締結に向けたプロセスが進められる手筈となっていた。

 

しかし、部会で紛糾していたのは日本との軍事同盟ではなく、彼らが要求してきた経済的見返りに関するものであった。

 

クワ・トイネ公国の穀倉地帯は、女神の祝福とまで言われるほどに特殊な土壌によって病害や害虫による被害が無く、手入れをしなくても農作物が育つ夢のような土壌を有していた。

 

この土壌に関して、日本側が軍事同盟及び軍事支援を行う見返りとして、クワ・トイネ公国が保有している穀倉地帯の25パーセントを日本側の領土にすることが条件であると申し出てきたのだ。

 

日本側が有する軍事力及び武器・兵器の類を最優先でクワ・トイネ公国に輸出し、配備に関しても全面的にバックアップするというものであったが、それでもその対価の見返りとして自国領の領土……それも穀倉地帯を引き渡すという条件は、戦勝国が行う割譲行為にも等しい。

 

先日の偵察機を撃墜された事に対する恨みと、恫喝とも受け取れる内容であったが、それでも日本側としてもやむを得ない事情があるのだ。

 

まず、この世界の日本は太平洋戦争に勝利し、大東亜共栄圏内からの輸入された食料で賄われていた事情がある。

 

国産よりも同じ大東亜共栄圏の陣営で作られた格安の農産物を輸入し、尚且つ国内を重工業化して生産効率を高めるという方式を採用したことにより、国内の農業生産に関しては史実以下なのだ。

 

それに、東京大空襲といった大都市圏の空襲や、広島・長崎への原子爆弾投下という惨事を経験していないこともあり、太平洋戦争時における国内の民間人の犠牲者は、民間の輸送船の搭乗員であったりと数える程度であった。

 

国民の多くが戦争に勝利した事により、日本軍は神話に登場する軍隊の如く古今無双であり、国土は安泰であるという認識の元で過ごしていたこともあり、農業よりも工業を重視した政策を政府は実施したのだ。

 

各財閥企業による工場が立ち並び、都市部は光化学スモッグによって汚染された空気となるなど健康被害も確かにあった。

 

しかし、そんな被害を受けてでも日本経済を促進させ、経済的な効果を具体的にもたらしている事も相まって、その流れを止める者はいなかった。

 

結果として、経済的安定とアジアの中でもダントツで繁栄を遂げていた日本列島は既に総人口1億人を突破しており、その分の人口を賄う食糧は満州や中華民国に頼り切っていた……のが実情であった。

 

1億人の胃袋を満たす土地は日本国内にはなく、どんなに土地を開拓したとしても残された場所は少ない。

そこでクワ・トイネ公国に目を付けたというわけだ。

 

クワ・トイネ公国側の膨大な食糧事情を鑑みて、直ぐにでも食料が得られないと国民が飢えてしまう現状を鑑みて、多少の威圧を含めた行為をしてでも食料を確保するべく行動すべきだという意見が大多数なのだ。

 

政府だけではなく、国民や軍人も同様の意見であり、飢えて死ぬぐらいなら奪ってでも生き長らえることが大日本帝国の存続の美徳とすら唱える記者もいた程だ。

 

これでもかなり陸軍省だけではなく混乱によって殺気立っている国内世論にも譲渡をした結果であり、日本側でも譲れない一線でもあった。

 

この条件は上空偵察から作付け面積を把握した陸運通信省と商工省が、相手側が許容されるであろう土地の面積を計算し、ある程度日本国民が飢えずに済む土地の面積比率として25パーセントであると提示したものを採用し、外交官である田中に委ねたのだ。

 

「首相、今すぐに外交官である田中氏を拘束してでも日本側を追い出すべきです!」

「我が国に飛竜を堕として大惨事を招いただけではなく、このような文言を条件に提示する国家など言語道断です!」

 

政治部会のメンバーの半数近くが日本との軍事同盟締結に反対したが、それでも首相からしてみれば、これは断腸の想いで決断をしなければならない。

カナタはキリキリと痛めつけられる胃からこみ上げてくる不快感を抑えながら、政治部会のメンバーを説得したのである。

 

「私も確かに、この条約は不平等であり大変遺憾です……しかし、ロウリア王国が軍事的行動を行う予兆がある今、少しでも味方は多く確保しなければなりません」

「ですが……そうだとしても、これはパーパルディアのような列強諸国が行う威圧外交そのものです!ましてや領土の割譲要求に等しい行為を平気で要求してくるのは……」

「だとしても……この条約を呑まなければ、我が国はどの道滅亡してしまいます……!一時の汚辱に耐えて圧倒的な軍事力を得られるのであれば、その汚辱と責務を耐えなければなりません……!」

「カナタ首相閣下……」

「外務卿と共に、25パーセントからせめて22パーセントに減らせることが可能か調整してみましょう……」

 

カナタ首相は会議の場に田中を呼び出して、同盟締結に向けたプロセスを進めることにしたのであった。

 

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