日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第十四話

1963年6月8日午後7時

帝都 NHK放送局

 

午後7時を告げるチャイムと共に、テレビ放送が開始される。

いつもであれば、帝都を中心に大東亜共栄圏内のニュース報道を行うNHKだが、転移現象後は主に国内……本土のニュースを取り扱うことが多くなっている。

 

「本日、高木首相は逼迫する食糧事情を鑑み、クワ・トイネ公国側から食料が届くまでは、貧困世帯を中心に食料の配給を実施する方針を打ち出しました。また、国内で備蓄されている古米に関しても、順次市場に放出する意向があるとのことです」

 

NHKのアナウンサーは淡々とした表情で原稿を読み上げる。

当初、転移現象が公式に発表された後のスタジオは、かなり騒然としていた。

 

転移現象を説明した軍人を取り囲んで、今後どのように行動していくのか尋ねたり、陸海軍が共同で声明を発表した意図についても憶測が飛び交うほどであった。

 

それから一週間が経過すれば、多少なりとも人間は学習して落ち着いていく。

しかし、局員の多くは転移現象が一時的なものでありたいと願ったが、今現在も続いている状況を見れば、この事態が永遠に続くことを覚悟せねばならないと感じている。

 

「今後の情勢を鑑みて、我が国は大東亜共栄圏という枠組みをこの世でも模範とすべきでしょう。大東亜……といいますか、この転移した世界では大東亜という名称では無くなったとしても、アジアを統治した誇り高き日本民族の血を持って、秩序を建設すべきです」

「その考えは現在の政府……高木首相も思っておられる事でしょう。軍部が公開している情報では、我が国と国交樹立したクワ・トイネ公国とクイラ王国に軍事的な威圧行為を行うならず者国家がいるとか……」

「ロウリア王国ですな、我が国の外航船に対して帆船を使って包囲してこようとしたそうです。幸い海軍の駆逐艦が駆けつけてくれたお陰で事なきを得たようですが、かの国が我が国の安全保障上重要な国家を攻撃したとなれば……」

「その時は、粛々と戦うべきでしょう。我が国は二度の世界大戦でも勝利した実力があります。陸海軍の合同作戦によってロウリア王国に対し、行動あるのみです」

 

事実、放送している内容についても転移後の世界を見つめるという特集を組んで、各帝大の教授や文学者、作家などをゲストに招いて、日本帝国が行うべきことについて熱く語っているのである。

いずれも好戦的な内容が多く、元陸軍将校が出演した時には、日本帝国の旗の下に集う国家は加護を行い、八紘一宇*1として新しい同盟国家群の創設を訴えていたほどだ。

 

そのゲストには、かの大物作家である三島*2も含まれていたのだ。

ただ、三島は少し違ったアプローチをしていたのである。

 

「この空前絶後の国難の時代であるからこそ、僕はこの世界において未来を信じて生きていかねばならないと思っております。クワ・トイネ公国やクイラ王国も亜人と呼ばれる人間とは異なる人達がいると聞いております。彼らとの友好関係を築き上げて、交流を加速すべきだと思っております」

 

文学作家である三島は、自身の執筆していたSF小説「美しい星」にて異星人が登場する作品を執筆していたのだ。

今回の転移現象に鑑みて、彼はこの惑星に住んでいる住民こそが本土ごと転移してきた我々とは違い”宇宙人”であると説いた上で、彼らとの積極的な交流を望んでいる旨を明かした。

 

「我が国が模範となる行動をしなければなりません。今はまだ軍による管轄ですが、いずれ民間での交流が行われる際には、平和的に文化交流を実施し、双方の隔たりがないようにしなければなりません。でなければ、威圧で相手を屈服させたとなれば、相手はイヤイヤ一緒にいることになってしまいます。そうなったらこの世界で八紘一宇なんて夢のまた夢になってしまいますよ」

 

日本が、この転移した異世界においてやっていくためにも、文化的な交流を行い、政府だけではなく民間もそれに合わせて行うべきという考え方であった。

生放送ゆえに、この発言は飛び出した時は議論を巻き起こしたが、三島の考えは軍に対する批判ではなく、今後の日本が軍事的威圧で事を起こせば将来に渡って響くと警告したのである。

 

三島の警告は政府の上層部にも届き、彼らもまたどのようにして今後の民間人に関する交流を実施すべきか考えていたのであった。

*1
戦前のスローガンであり、大和民族……日本人によるアジア統一を掲げた大東亜共栄圏の理想と天皇中心のアジア秩序統治を謳う意味合いで呼ばれていた

*2
戦後において日本を代表する文学作家であり、現代でも強い影響力を持っている。TNO世界においても作家として活躍しており、第三次世界大戦が勃発し日本とドイツが戦闘状態に入るイベント「薄明作戦」では、彼の評論である「葉隠入門」の名言が引用されて綴られている

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