日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
1963年6月13日午後4時
クワ・トイネ公国 国境の町「ギム」
ギムの町は地獄を見た。
陸上戦力を数で圧倒するロウリア王国軍を止める術など、クワ・トイネ公国側には無かったのだ。
西部方面騎士団率いる4000名の兵士は、ロデニウス大陸の統一を掲げるハーク・ロウリア34世の侵攻命令により、ロウリア王国東方征伐軍として編成された30万人以上の陸上戦力がギムの町に津波のように押し寄せた。
圧倒的な物量であったにも関わらず、ギムの町を防衛していた西部方面騎士団は勇猛果敢に立ち向かった。
「畜生!あんな数の飛竜を見たことはないぞ!我が国の飛竜の総数を上回っているんじゃないか?!」
「怯むな!敵を一秒でも長く食い止めて、避難民が脱出するまでの時間を稼ぐんだ!ここが正念場だぞ!」
「こちら第二飛竜隊……これより全員で突撃を敢行します!飛竜を出来る限り倒しておきますので、モイジ団長は地上部隊の指揮を頼みます……クワ・トイネ公国に栄光あれ!」
第二飛竜隊は24騎の飛竜を全て出撃させ、部隊全員がロウリア軍の飛竜と刺し違える形で戦死。
騎士団長のモイジも、押し寄せてくる征伐軍を相手に最後まで指揮を全うし、妻子を避難民と共に逃がすことが出来た。
(妻と娘だけでも助かればそれでいいッ……後は派手に死ぬまでだ……!)
後に引けない軍隊は、時に底力を発揮して相手に一泡吹かせることができる。
西部方面騎士団は、次々と斃れていく仲間の屍を乗り越え、徹底的に抗戦を続けた。
征伐軍の先遣隊の実に1万人程を戦死ないし負傷させるほどの活躍を見せたのだ。
このように、西部方面騎士団の活躍もあり、3時間近く押しとどめることは出来たが、西部方面騎士団の組織的な抵抗が終了した午後3時頃に、彼らの迎えた末路は凄惨なものであった。
逃げ遅れた一般市民はロウリア王国軍による略奪・拷問・暴行の被害者となり、女性に至っては高値で奴隷として本国に売却されるか、全員が兵士に暴行を受けた後に、殺される末路を遂げたのだ。
それに加えて、ロウリア王国軍の兵士達の士気は非常に高かった。
自分達の憂さ晴らしともいえる相手を、嬲り殺し、犯し、強奪が副将のアデムで認可されたこともあり、兵士達は戦場の鬱憤をそうした捌け口に使うことにより、ストレス発散としての意味合いを込めて心置きなく暴力を振るい続けた。
街のあちこちで、悲鳴と殺戮が反響し、街道は血によって赤く塗りつぶされている。
商店を経営していたエルフの家族から巻き上げた貴金属を着飾り喜ぶ征伐軍の兵士達の足元には、身体の至る所に剣や槍で切りつけられて動かなくなった夫と、耳を切り落とされている妻は泣き叫びながら助命を兵士に懇願している。
その隣の家では、娘だけでも助けてくれと懇願する獣人の女性を集団で襲い掛かり、娘の目の前で男達が集団で暴力を振るい、そして最後に槍を下腹部に突き刺し、切り裂いて絶命させる。
まるでカエルを踏みつけるように、無邪気で残酷なことを平気で行い、彼らは殺す様子を楽しんでいた。
亜人は人で非ず、人でなき者は野獣と同じ扱いを受けるべし
それは、ギムでのありとあらゆる狼藉行為を黙認するどころか、主導するような文言として発せられた言葉であった。
「ふふふっ……実に壮観な光景であり、これほどまでに心が安らかになるのは良いことですねぇ……私は今、とっても幸せですよ」
その地獄の光景を見ているアデムの顔に浮かんでいるのは、口元をにやりと笑い、まるで子供達が無邪気に遊んでいるのを眺めている父親のような微笑みであった。
アデムが嫌っている亜人達が、犯され、殺されていく様を見るのは僥倖とも言うべき状態である。
これほどまでにアデムの心が安らかになる事はない。
至福のひと時……。
西部方面騎士団の殆どは絶命し、辛うじて息のあった者だけは捕虜として拷問を受けているが、それももうすぐ死ぬだろう。
残るは、左足を負傷しながらも数十人の兵士を殺害した騎士団長のモイジだけである。
「猛将と謳われただけに、やはり捕縛に手こずりましたか……」
「はっ、申し訳ございません。こいつに部下を16人も殺されました……」
「いえ、それは仕方ありません。ですが、彼に相応しい最後を飾りましょう……!」
アデムは部下を使い、おどろおどろしい見た目をした魔獣を連れだしてきた。
鎖で繋がれてはいるが、檻から飛び出してきそうなほどに獰猛だ。
檻の中には血と肉片が混じり合っており、既にこの魔獣によって
「獣人が魔獣によって食い殺される……!おお、実に、実に素晴らしい末路ではありませんか!あなたは人間ではないのでこうした処理を行っても問題はありませんし、大勢の我が軍の兵を殺した者に相応しい最期!貴方の人生でとっても素敵な時間になるでしょう!」
「下種が……ロウリア王国の貴様らが行った行為は断じて許されるべきものではない!絶対に償わせる……私が死んだとしても、クワ・トイネ公国は決して貴様らに屈することはない!」
「おやおや、ここまで絶望的な状況でもそこまで申し出るのは大変勇ましいですね……では、そろそろ頃合いでしょう。モイジ、貴方は我が軍の猛獣の血肉になって下さい」
モイジは強引に檻の中へと放り込まれ、そこで腹の空腹が満たされなかった猛獣の餌食となる。
足から順々に咀嚼音と共に激痛が走る。
その様子をアデムは愉悦を感じる様子で見守り、周りの征伐軍の兵士達は笑いながら酒を飲みながら楽しんでいる。
今、猛将として謳われた武将が、軍人としての誇りを奪われた末路を遂げようとしている。
モイジは、せめて妻子が無事に逃げ出せた事を喜ぶべきか。
それとも、このような最期を迎えることに嘆くべきか。
身体から力が抜けていき、床の上で抵抗する間もなく絶命する直前、彼の瞳に映った空には遠くから雲を引いている飛行体を目撃した。
モイジはその飛行体に見覚えがあった。
(あれは……大日本帝国の鉄竜か……?!)
マイハークに鉄竜が墜落し、その後に公都に別の鉄竜で乗り込んで、穀倉地帯の一部領有化などを行った転移国家。
公都の騎士団本部から魔導通信によってその存在を把握していたモイジは、一昨日クワ・トイネ公国の外交官らが日本との同盟締結に向けてマイハークから出港したニュースを思い出したのだ。
鉄竜が飛行し、ギムの上空を飛行しているという事は、同盟が締結されて状況把握のために鉄竜を飛ばしているのだろうと推測したのだ。
(では……日本が来てくれたのか……?ああ、なら……こいつらを倒せるかもしれない)
モイジは薄れていく意識の中で、自分達の受けた苦痛と悲劇を、クワ・トイネ公国と大日本帝国によって復讐をしてくれる事に、希望を抱いてモイジは死んだのだ。
そして、薄気味悪い笑みを浮かべているアデムに対して、モイジは最後に一言言い放った。
「次に地獄を見るのは貴様たちだ。私は先に地獄で待っているぞ……」