日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第二十一話

1963年6月15日午後2時

ロデニウス沖

 

ロデニウス北沿岸を埋め尽くしていたのは、ロウリア王国海軍所属の東方征伐艦隊だ。

帆船4400隻という数は、実に壮観な光景であり、武装はともかくも大艦隊と称するに不足ない数であった。

 

しかし、この東方征伐艦隊は先程までは威勢よくクワ・トイネ公国海軍を蹴散らしてやろうと意気込んでいたものの、今ではその様な様子は見受けられない。

むしろ逆だ。

艦隊の端っこにいる船から逃げ出そうと必死になっているのだ。

 

「クソッ、あんなデカい鉄船となんざ勝ち目はないだろ!こっちは帆船なんだぞ!」

「あんなデカい船はパーパルディア皇国ですら見たことがない……それにあの轟音で飛竜が次々と……」

「畜生、これは悪い夢でも見ているのか!」

『総員、うろたえるな!全軍で突撃すれば勝機はある!魔導弾による再装填には時間が掛かる!その隙に突撃するのだ!』

 

東方討伐艦隊司令官を担っているシャークンは、逃げ出そうとしている船に向かって喝を入れて戻るように魔導通信を使って呼びかけている。

それぐらいに軍の統制が乱れてしまっているのだ。

 

(何という事だ……こんなハズでは……!)

 

シャークンは既に後悔していた。

せめて混戦に持ち込んでから飛竜を飛ばせば勝機はあったかもしれない。

しかし、海を揺るがすほどの轟音と共に放たれた日本側の攻撃により、そのすべてが吹き飛んだのである。

 

全ては30分前の行動に原因があった。

 

見慣れない鉄竜が耳を切り裂くような轟音をたてながら大艦隊の上空を飛来して、紙をばら撒いたのだ。

上質な紙であり、魔導書に使われるような質感であった。

 

鉄竜がばら撒いた紙には大陸共通語で文字が書かれており、そこには『クワ・トイネ公国の同盟国として、警告する。今から10分後までに、貴国の艦隊が進路を変えずに航行した場合、クワ・トイネ公国への侵略の意志があると見做し艦隊を殲滅する 大日本帝国海軍第一艦隊より』と書かれていた。

 

シャークンは、艦隊上空を飛来した鉄竜と、鉄竜からばら撒かれた紙の質感に驚きつつも、数では圧倒的に勝っており、下手な列強諸国が相手でも押し通せると考えたのだ。

 

前方の水平線には黒く、要塞のような船が薄っすらと浮かんでいるのをマストの見張り員が報告しているが、それでも距離から考えれば目視できる距離とはいえ、()()()()にいるのだ。

そこからは例えパーパルディア皇国の魔導砲を使っても届くことは無い。

 

(クワ・トイネ公国は最近東方の未知の国家と同盟を組んだそうだが……これがその大日本帝国というのか、それでも我々は4400隻もの大艦隊だ……負けるはずがない!それは明白な理だ!だが、万が一という事もある、先に飛竜で攻撃を加えておこう)

 

ジンハークの飛竜飛行場より飛竜を250騎出撃させ、前方の敵艦隊に向けて攻撃を開始したのだ。

250騎もの飛竜が征伐軍の上空を飛来した際には、各船から歓声が挙がり、士気高揚は最高潮に達した。

 

だが、攻撃のために接近した飛竜隊は、突如として前方の戦艦から放たれた砲撃によって空中で無数の肉片となって海に落下していったのである。

 

「おい、飛竜が一斉に落ちていくぞ!」

「何が起こった?!敵船からの魔力反応はあったか?!」

「いえ、何も反応はありません!ですが、代わりに飛竜たちからの反応が一斉に消失しました!」

「バカな……あれでも小国であれば屈服することが出来る程の数の飛竜なのだぞ!それが一発の砲撃で斃れる事があってたまるか……!」

 

遥か彼方にいるにも関わらず、ドーンという轟音が鳴ったと同時に、敵艦隊に向けて飛行していた飛竜が一斉に落下していく光景は、シャークンだけではなく征伐艦隊に衝撃を齎した。

 

たった一発の砲撃で、ロウリア王国軍が誇る飛竜隊が全滅したのだ。

それも1騎や2騎ではなく、250騎もの飛竜が一斉に音信不通になったのである。

まるで、支えていた糸が切れたように墜落し、海面に叩きつけられているのだ。

 

征伐軍から見れば、地獄としか言いようがない光景だ。

練度もあり、誇りある飛竜隊250騎が全滅などあってはならない事だ。

だが、目の前で起こった砲撃によって嫌でも現実に引き戻される。

 

そして、シャークンは混乱している艦隊に檄を飛ばして突撃命令を下す。

 

『総員傾聴!敵の砲撃は止んでいる。つまり再装填に長い時間が必要と言えるだろう。突撃するなら今が勝機だ!4400隻もの大艦隊であれば数で押し通せる!全軍突撃!』

 

飛竜が全滅しても、なおも進路を変えずに速度を速めて航行をしていた彼らを待っていたのは、無慈悲な攻撃であった。

相手が一発砲撃をするたびに、船団のどこかで大きな水柱と共に周りの船を巻き込んで爆沈する例が多発したのだ。

 

「うわーっ!……い、一撃で20隻もの船が沈みました!全員戦死!」

「畜生!こんなのって、こんなのってあんまりだ!」

「散開しろ!散開しないと攻撃でやられ……」

「駄目だ!逃げろ!こんな相手に敵うわけない!装備を放棄して撤退しろ!」

 

砲撃によって艦隊の一割が喪失した頃、先程の征伐艦隊の上空を飛来した同型の鉄竜による攻撃も開始された。

 

高速で接近し、数十機もの編隊を組みながら艦隊に対して攻撃が開始された。

 

ババババババ……という爆音と共に、船の船体やマストに大穴が開き、そこにいた不運な人間が肉片となって周囲に散乱する。

水兵たちが嘆く間もなく、船は10秒足らずで沈んでいく。

 

シャークンはその光景を見て愕然とし、次第に周りの船が沈んで木片と死体だらけになってようやく悟ったのだ。

 

(もう……これでは勝てない……撤退だ……)

 

しかし、シャークンが撤退命令を出そうとした瞬間、彼の乗っていた船に鉄竜からの攻撃が命中する。

轟音と共に鉄竜が通り過ぎた際に、船の船体が大きく傾いて、シャークンはそのまま海に放り出されてしまったのであった。

 

「シャークン海将の船が撃沈されたぞ!」

「くそっ、副司令官は何処にいる!?」

「分からん!もう誰が次の命令権を持っているのか分からない!」

「畜生!撤退!撤退しろ!」

 

司令官不在のまま、東方征伐艦隊は指揮系統命令が機能不全に陥り、1時間後の午後3時までに命からがら海域から撤退した150隻の船を除き、ロウリア王国軍の艦隊は海の藻屑となったのだ。

 

ロデニウス沖大海戦は、こうして幕を閉じた。

ロウリア王国海軍が再建出来ない程に甚大な損害を出したのに対し、大日本帝国側が被った被害はゼロであった。

 

海は木片と血で赤く塗られている




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