日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第二十七話

中央暦1639年/西暦1963年6月18日午前6時

ロウリア王国軍占領地域 ギム

 

ロウリア王国軍東方征伐軍によって狩りつくされたギムの町は、静かであった。

お遊びも兼ねて、亜人の女性たちに乱暴をした後に奴隷とするためにロウリア王国に連れていかれたり、スパイ疑惑のある住民を槍で突き刺す遊びもしていたが、住民はすでにこの街から去っていった。

 

今、この街にはロウリア王国の中でも反亜人派の思想が強い者達が集まっており、亜人に対する暴力を推奨しているような連中だ。

 

彼らはエジェイ攻略のために、民兵や恩赦によって囚人が兵役に就いている者を含めた5万人規模の兵士が集結している。

 

質はともかく、規模としては陸上戦力の中でも最大規模だ。

 

そんな中、パンドール将軍率いる軍勢が攻略開始の命令を今か今かと待ち構えている状況であった。

 

「騎兵隊の奴ら、エジェイへの偵察任務ついでに獲物を横取りしているんじゃねーのか?」

「ハハハ、そうだとしても俺たちが遊ぶ用の女ぐらいは残しているだろう。あいつらは東部諸侯団の中でも気性が激しいけど、その分勇敢に突撃していくじゃないか!」

「ただ単に下半身が性欲の塊なだけだろ?それにしてもこんな朝早くから臨時の会議とは……上で何かあったのかな?」

「……あのアデムが険しい表情で司令部に入っていったから、きっと何かヤバイ事があったのは間違いないと思うぞ……」

「うへぇ……あの人、機嫌が悪いと俺たちにも八つ当たりしてくるからな……」

 

司令部での会議は珍しいものではない。

軍隊において作戦遂行を成し遂げるためには、日曜日も関係ないのだから。

 

だが、パンドール将軍や副将でサディストな指揮官のアデムが血相を変えた様相で司令部に赴いている様子を見た兵士は、何か悪い事が起こったのだと直感で悟ったのである。

 

司令部には作戦遂行に欠かせない参謀長や東部諸侯団の面々を加えた上で、現在ロウリア王国で起こった状況を整理をしている最中であった。

 

「参謀長、皆に状況を報告したまえ……」

「はい、ロウリア王国本土が日本からの攻撃を受けており、北の港が制圧され敵が攻めてきたという第一報が入ってきました……」

「なんと?!北の港が奪われたのですか?!」

「まさか……海軍の本部がある重要拠点ですよ?!防衛だってしっかりやっていたはずでは……」

「海軍本部は砲撃を受けて壊滅、ロデニウス沖海戦で生き残った残存船団も全て沈められたそうだ……」

 

指揮官たちは北の港がクワ・トイネ公国の同盟国である日本に武力制圧されたと知ると、一斉に驚いた表情を浮かべている。

 

アデムに至っては信じられない程に目と口を大きく開けて呆然としている様子であった。

 

これから東部諸侯団が先遣隊としてエジェイ攻略に向かおうとしていた矢先の出来事だけに、本国の重要拠点があっという間に制圧されたことを認識するのに時間を要したのだ。

 

「……失礼ですが……北の港は王都と同様に竜騎士団の防空識別圏だったはずですが……竜騎士団はどうなったのですか?」

 

しばしの沈黙の後に魔導士のワッシューナは手を挙げて、本国が防衛用として首都を拠点に北の港を防衛するために待機させている竜騎士団の安否を参謀長に尋ねた。

 

参謀長は首を横に振って力なく答える。

 

「……残念ながら竜騎士団の大半は戦死した。北の港が攻撃を受けた時刻とほぼ同時に突如空から火炎魔法のような攻撃が降り注ぎ、王都の竜騎士団の本部は破壊された……王都防衛用の飛竜は5体を除いて全滅だそうだ……」

 

北の港の制圧、王都の竜騎士団の全滅……。

これだけでも悪い話ではあったが、事態は更にロウリア王国にとって悪い方向に転がっていたのである。

パンドール将軍が次に口にしたのは、東方征伐軍に関する事であった。

 

「国王陛下は、王都での決戦に備えて各地から兵を集めている。40万人の諸侯軍に動員令を出した。我々は本国の軍隊が北の港に敵を釘付けにしている間に、可及的速やかにエジェイ、可能であれば公都への攻略を行う必要があるのだ」

 

エジェイだけではなく、公都を占領しなければ北の港を軍事的に制圧されている現状では和平交渉を行っても蹴散らされるだけだ。

現に、海軍は行動可能な船舶が民間用の漁船しか残されていない上に、王都の防空機能も喪失している状態に等しい。

 

「海軍は陸上戦力を除いて全滅、王都防空すらままならない状態では、ジン・ハークの防衛すらままならない。政治的にも決着を付けるには、エジェイを陥落させておくしかない。これはロウリア陛下の勅命でもあるのだ」

 

このような状況では、どうあがいても戦略的敗北は決定的であり、せめて講和条約を結ぶためにもエジェイを堕としておく必要があるのだ。

それも国王の勅命となれば、失敗など到底許される状況ではない。

 

政治的な理由である以上、現在自由に行動が許されているのは東方征伐軍だけであり、この戦力で行動するしかないのだ。

 

アデムは理解した、この戦いはロウリア王国の敗北が濃厚なのだと。

 

後続の補給に関しても本国から連絡がない以上は、現状戦力だけで戦うしかない。

 

「では、東部諸侯団だけではなく本隊である我々も一斉に攻撃を開始しなければならないというわけですか……」

「その通りだアデム君、今から1時間後までに最低限の守備隊を残して全軍でエジェイ攻略に向けて進軍するぞ」

「はっ、では全軍に進軍準備を命じま……ん?なんですかこの音は?」

 

アデムが全軍に進軍命令を出そうとした直前、突如としてギムの上空から聞きなれない轟音が響き渡り、東方征伐軍が有している飛竜隊の航空基地で爆発が発生したのである。

 

爆発の振動で司令部の窓ガラスが揺れ、テーブル席に置かれていたコップが床に落下したほどだ。

 

「て、敵襲です!飛竜隊の基地が攻撃を受けています!」

「何処から攻撃を受けたのです?!見張りの兵士は寝ていたのですか!!処刑ものですよ!!!」

「アデム指揮官!北東より正体不明の飛行物体が接近しております!魔力反応はありませんでした!」

「ま、魔力反応がないですって……一体どういうことなのです?!」

 

アデムは怒りを抑えながらも、兵士達が叫んでいる方向を見てみる。

塔の鐘が激しく鳴りだした時、窓の外には北東より複数の機影が見えた。

この時、彼らは見たこともない異形の軍勢が襲ってきたのだと認識したのである。

 

狩場


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