日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第二十九話

西暦1963年/中央暦1639年6月18日午前7時

ロウリア王国軍占領地域 ギム

 

爆発の轟音と共に、街の至る所で一方的な殺戮が行われていた。

多くのロウリア王国軍の兵士達は、自分達が圧倒的な火力を有している軍隊に成す術なく蹂躙されていることは分かっていた。

先ほどから、魔導通信では悲鳴と泣き叫ぶ担当官の声しか聞こえてこないからだ。

 

聞きなれない音を発する、羽虫のような見た目をした存在が、街を旋回しながら攻撃を一方的に加えている光景は、異質ともいえる存在が蠢くのと変わりない。

まるで、化け物のような存在が現れてしまった事で、東方征伐軍の一般兵士は恐怖で錯乱を起こしていた。

 

『こちら第13騎兵中隊!正体不明の飛行物体による攻撃を受けている!畜生!こっちを狙っているぞ!早く馬を飛ばして逃げるんだ!』

『アアアアッ!見張り台が一撃で破壊された!見張り員は戦死!こんなの有り得ない!なんでこんな……』

『本部!本部!すでに部隊は戦わずして壊走しております!命令違反による脱走兵が相次いでおり、対応困難です!』

『ギムの南側より、敵の攻城兵器と思われる物体が侵攻中!すごい速さです!まるで馬以上に……おい!砲がこっちに向いているぞ!逃げろ!』

 

魔導通信を担当していた兵士は、次から次へと報告されてくる悲鳴と、軍としての機能が麻痺していく現状を目の当たりにし、震えながらも上官であるアデムに報告を行った。

 

「アデム指揮官……げ、現状の報告ですが……空だけではなく、南側から敵の攻城兵器が侵攻しているとのことです」

「攻城兵器……?いえ、もうこのような現実には受け入れがたい戦況を見れば、相手も陸上戦力を投入してきているというわけでしょう……防衛用に配置している第13騎兵中隊はどうしたのです?」

「それが……上空の敵性飛行物体から攻撃を受けているとの報告を最後に、連絡が経ちました……他の部隊も、恐慌状態に陥っており、既に軍隊としての機能を喪失しつつある状態です」

 

アデムは報告してきた兵士を殴り殺してやりたい衝動を必死に抑える。

自分だけではなく、パンドール将軍ですらこのような一方的に嬲り殺しにされる戦いを経験したことがない。

何故なら、自分達が殺戮を行う側だったからだ。

 

ロウリア王国は周辺諸国を併合したりして強大になった国家だ。

地方の王国や小国が入り乱れた大陸の各勢力を武力を使って併合し、人間種を至上とする事を国是とした国家体制へと変化させたのも、先代の大王からの方針によるものだ。

 

その過程において、自分達より弱い存在を屈服させて、平伏させるに至ったのだ。

それ故に、ここまで徹底的に殴られた場合、彼らはどう対応をしていいのか分からない。

既に対空兵器ともいえる巨大なバリスタは破壊されており、対抗できる手段が見いだせなかったのだ。

 

「アデム君!今動かせる部隊を動員できないかね?」

 

パンドール将軍は、アデムに向かって叫ぶ。

 

その瞬間に、アデムの至近距離で鼓膜が裂けるような大きな音が響き渡った。

まるで、空気が捻じ曲がるような振動に、アデムは自分の身に何が起こったのか理解出来なかった。

 

「えっ?」

 

次に理解出来た事は、アデムの目の前に立っていたパンドール将軍の胴体が真っ二つに分断されて、天井を見つめながら自分の身に何が起こったのかすら理解できないまま、口をパクパクと動かしながら絶命していく事だった。

周囲にいた参謀や将校らも、将軍がなぜいきなり胴体が分裂してしまったのか理解出来なかった。

やがて、壁に大きな穴が空いている事に気が付くと、司令部にいた兵士の一人が大声で叫んだ。

 

「こ、殺される!!!」

 

その言葉を聞いた誰もがパニックに陥った。

いきなり将軍が無惨な死に方をしたのだ。

パニックになって窓から身を乗り出して逃げようとした兵士の上半身が吹き飛び、壁と共に真っ赤な血しぶきが飛び散った。

 

(魔力反応がないのに攻撃ですって?!一体何処から……)

 

アデムは咄嗟に伏せのポーズをとった。

頭を抱えるようにして伏せた瞬間に、壁だけではなく窓から無数の聞きなれない何かが連続で叩くような音がした。

その音が鳴った途端に、部屋にいた他の参謀や兵士達も、皆血しぶきを噴き上げながら地面に倒れ込んだのだ。

司令部の中で無事だったのはアデムだけであった。

 

(これは……これは、敵の……日本の兵器か……!)

 

アデムは即座に、この理不尽とも言うべき攻撃が日本の攻撃であると見抜いた。

これほどまでに強力な兵器はクワ・トイネ公国は保有すらしていない。

であれば、同盟を組んでいる日本の軍隊が有しているものであるのは明白だ。

 

(とにかく、ここから逃げましょう……生きてあの方にお会いしなくては……)

 

この場所から離脱して、それからどうするか……。

自分自身の身の安全と政治的な信条に則り、パーパルディア皇国への亡命も視野に入れていた矢先であった。

複数の足音が近づいてきて、奇妙な格好をした男達が乱入してきたのである。

 

見たことのない、全身を覆う服装。

まるでサイクロプスみたいな一つ目のモンスターのような格好をしており、背中に大きな鞄を背負い、その鞄と繋がっている長い筒から火が噴いている。

そして、司令部から逃げようとしていたアデムと目が合った。

 

この状況からアデムが助かる道は、すぐに両手を挙げて戦闘の意志がないことを示す事であった。

しかし、アデムは不幸にも咄嗟の防衛反応により、腰に担いでいた剣を引き抜いてしまったのだ。

剣を引き抜いて、襲い掛かれば勝機があると踏んだのだろう。

 

「これでもくらえっ!」

 

しかし、そうはならなかった。

 

先に相手の長い筒から大量の可燃性の液体が降りかかると同時に、火柱がアデムの身体に巻き付いたのだ。

大量の炎により、アデムの身体からは水分が奪われていき、アデムはもがき苦しんだ。

みるみるうちに、アデムの体内の水分が蒸発し、皮膚がどんどん焼けていくのだ。

 

「あああああ!熱い!熱い!うがああああああ!」

 

苦しむ。

今までに味わったことのない苦痛がアデムを襲う。

痛みでどうすることもできないまま、のたうち回り、他の司令部にいたメンバーとは違って、アデムは最大の苦しみを味わいながら死んでいったのだ。

 

アデムが死んでもなお、ロウリア王国東方征伐軍の殲滅戦が継続していた。

 

街道

 

用水路

 

広場

 

郊外の森の中

 

ありとあらゆる場所で、ロウリア王国東方征伐軍は一方的に日本軍による狩りの対象となったのだ。

一時間の間に、白旗や両手を挙げて素直に投降した34名を除き、東方征伐軍の兵士達は全員一方的に蹂躙され、死んだのである。

夥しい数の屍が鎮座する、地獄のような光景がギムの町を覆いつくしていた。

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