日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第三十話

中央暦1639年/西暦1963年6月27日午後5時

クワ・トイネ公国 マイハーク

 

ロウリア王国が日本帝国によって軍事的に解体されている最中、侵略を受けたクワ・トイネ公国は、日本帝国の後押しによって経済的な恩恵を享受していた。

 

日本とクワ・トイネ公国との間で締結された条約により、日本製……正確にはその傀儡国家で生産された機械や重機が開拓のために運ばれており、既にマイハークの一部には先遣移民として渡ってきた日本人たちによって区画が買い占められて、日本人街が築き上げられていた。

 

入植した街には、必ずと言っていいほどの文字がでかでかと掲げられている。

 

「靖田開発事業部」

 

「八菱開発局」

 

「四井コンサルティング設計部」

 

「国友グループ異世界開拓班」

 

これらはすべて日本の経済を牛耳っているといっても過言ではない四大財閥の名前である。

 

金融・商業・不動産・工業・農林業・食品業・軍事産業……等々、数えたらきりがないほどに、彼らは日本経済に根深く入り込み、それでいて甘い汁と蜜を吸いながら肥大化していった者達である。

 

大東亜共栄圏という日本主導の陣営になってからは、その利権争いと貪欲ともいえるような経済的搾取は、より一層大きなものになっていた。

 

しかし、靖田ホールディングスが発端の汚職事件により、その信頼と信用が揺らいで一時は国営企業に合併する流れも起きたほどであった。

 

また、その汚職事件が起こった直後に異世界に国家ごと転移したことにより、彼らの運命は大きく変わった。

 

革新系政治家である岸が財閥企業への介入を行い、これらの財閥企業の救済と復興を統括する案として入植事業を提案。

 

各財閥は岸の提案に合意し、満州開拓団を上回る速度と人員を使って、クワ・トイネ公国の貿易港であったマイハークの大改造、及び食料輸送網を確保するに至った。

 

初歩的でまだ開発があまり進んでいない東南アジアの港湾都市程度には、突貫工事とはいえ貨物船が行き来できるだけの港を確保したのである。

 

この港からクワ・トイネ公国の食料を詰め込む代わりに、輸送船からは大量の労働者と機材が降ろされている。

 

その様子を眺めているクワ・トイネ公国の人々は、まるで蟻塚のように街が変わっていくことに驚きながら、彼らの技術力を目の当たりにしていく。

 

「あれが日本の会社ってやつか……?あんなデカい乗り物を持っているなんて信じられないよ……」

「この世界にやってくる前は、あれ以上のデカい乗り物がわんさかと傀儡国家にあったそうだ。マイハークに落とした飛行機にしても、日本は規格外すぎるんだよ……」

「これだと、そのうち俺達も『日本人』として働かないといけないかもしれないな」

「いずれそうなるかもしれんな……技術力では絶対に太刀打ちできない。それに、魔法がなくてもここまで機械の力を有しているんだ……遠くないうちに、俺たちがマイハークでは少数派になるだろうよ……」

 

マイハークにやってくる日本人の多くは「本土」出身の日本人ではない。

 

その大半が、朝鮮半島、台湾、マレーシア、インドネシアなどの日本領ないし日本の傀儡政権下にある国家出身の人間が多かったのだ。

 

彼らの多くが本土の重工業地帯である横浜や名古屋、呉、神戸等で働いていた出稼ぎ労働者であり、靖田危機……それに伴う転移現象に見舞われた結果、本土で雇い止めを受けたことに伴い失業してしまった。

 

そんな迷える帝国国民、並びに同盟国のアジア人を中心に『異世界における日本領への入植希望者』としてクワ・トイネ公国に派遣し、日本人として入植が着々と進められている。

 

『日章旗の旗の下に集う民族であるからこそ、アジア人によるアジア秩序を国是としなければならない、決して彼らを見捨てるのではなく、先遣隊として支援するのだ』

 

スローガンや建前としては立派ではあるが、実際には口減らしと先遣隊による港湾施設の建設が主だった任務であり、早い話が悪名として名高い「ロームシャ(強制労働)制度」に近いものであった。

 

入植している者達は皆、口うるさい本土の日本人の監督に渋々ながらも従っており、そんな建設速度や労働問題を抱えたままマイハークは急速な開発が進められている。

 

それに本土では配給制による食料制限がされているが、ここクワ・トイネ公国では自給率を大幅に超える食料生産能力によって、彼らは腹いっぱいに食べる事が出来るのだ。

 

激務かつ理不尽な要求があれど、本土とは違い食料に困らない上に財閥企業と日本政府から支給される給料は高く、彼らは入植してから間もなく自分達の家を手に入れるだけの財産を築くことができた。

 

日本を代表する「靖田」「八菱」「四井」「国友」の四大財閥は勿論のこと、新興財閥として日本領広東省で名声を挙げていた「古河」「大東京通信」「井植」のメーカーが生産したものが大量に陸揚げされていたのである。

 

これらの財閥企業が製造した機材の大部分は、日本から運びこまれた作業用機械であり、これらの機械を使った開拓事業が急ピッチで進められていたのである。

 

大半はクワ・トイネ公国が提供した木材や石材を使った建物であり、日本とは違って比較的地震の少ない地域であるクワ・トイネ公国の建造物は、外装は凝っていても中身の耐震補強工事などは行われていないものが大半を占めていた。

 

日本側も入植スピードを速めるために、耐久性よりも建築速度を重視し、建設基準をギリギリクリアしたようなマンションが乱立し始めていたのだ。

 

マイハークに元から住んでいるクワ・トイネ公国の人々は、急速に変わっていく街の変化を実感しつつあった。

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