日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
中央暦1639年/西暦1963年7月1日午前11時
ロウリア王国 ジンハーク城
ジンハーク城の防衛網は既に半分以上が突破されてしまっている。
防衛機能としての兵士達の役割は既に破綻しており、紙で出来た障子を破くように次から次へと装甲を撃ち抜かれてしまっている。
可燃性魔石を使用した焦土作戦も、大半の部隊が燃やす事を実戦する前に、催涙弾を浴びてしまい悶絶している間に、日本軍の兵士に火炎放射器で焼き殺されるか、銃殺されてしまっていた。
響き渡る発砲音や爆発音、それに兵士達の悲鳴や絶叫がロウリア34世がいる部屋の近くでも聞こえるようになった。
間違いなく、日本軍はすぐそこまでやってきているのだ。
すでに鎧を装着してこの王座で戦う準備を整えている大王であったが、あまりにも敵が侵攻してくる速度が速いことに内心は恐怖で押しつぶされそうになっていた。
「いよいよ、ここにも奴らが来るか……」
「大王様、我々近衛と魔導師が援護いたします。少なくとも最初にやってくる者達に一泡吹かせることはできるでしょう」
「そうですとも、ここで逃げては近衛としても一生恥ずべき行為。そして、強敵と戦える機会を作って下さり感謝しておりますよ」
近衛の隊長であるランドは大王を労っていた。
少なくとも、逃げ出さずに最後まで王座を守ろうとする姿勢を見せた大王を守ることを近衛として誇りに思っている。
そしてパタジンやヤミレイ、カルシオなどの戦闘員は王座付近で待機して、何時日本軍がこの場所を攻めてきても対処できるように防衛体制の布陣を取っていた。
催涙弾による攻撃も、魔導師によって直ぐに風を使った魔法で外気に送ったことで事なきを得た。
それによって守備兵として集まっている精鋭800人は、城の中でも体制を立て直す時間が与えられたのであった。
「下層の防衛陣地、全て沈黙……制圧された模様です!」
「第14騎兵連隊との通信途絶……!」
「第7重装歩兵中隊全滅!生存者無し!」
「2階は完全に制圧されました!敵は魔杖のような武装で不可視魔法攻撃をしてきます!もはやここまで……ぐわああああ!!!」
「第3近衛隊、これより敵に吶喊攻撃を敢行します!パタジン閣下、大王様を頼みます!総員、突撃!!!」
魔導通信を行っている通信兵は、泣きそうな表情で刻一刻と迫りくる日本軍の進軍状況を確認している。
通信からはどれも悲惨な状況しか流されていない。
反撃が出来たとか、防衛に成功しているという報告がない以上、日本軍の兵士は極めて強力な魔法攻撃を敢行しているようだ。
ズゥゥン……ズゥゥン……と、天井が揺れている。
また爆発物がハーク城の中で使われたのだ。
ロウリア王国の諸邦を統治した先代が遺した文化的な遺産の数々が、この戦闘で破壊されていくのだ。
パタジンは、この戦で死のうと決めていた。
近衛隊長であるランドに、大王の命を託すように命じた。
「ランド、何としてでも大王様を守り通せ、敵がこの場に突入しようものなら、俺が先陣を切って迎え撃つ」
「分かった……」
「重装歩兵部隊は謁見の間において防御態勢を維持!敵が突入次第魔石攻撃を敢行するッ!!!」
「王宮魔導師は兵士に治療魔法を付与し、常時傷ついても癒せるように詠唱を続けよ……」
「如何なる攻撃であっても、団結した我々を突破することは出来ぬ!」
謁見の間や、王座の周辺で防衛を掌る800人の精鋭たちは、追い込まれていたにも関わらず勇敢であった。
その勇敢によって彼らは次々と斃れていく。
謁見の間に突入した日本軍の兵士達は、硬くとじられていた謁見の間の重たい鉄製の扉をダイナマイトで爆破したのだ。
扉を突破されることを想定していたロウリア王国軍は、爆発と同時に敵が侵入してくると思い、すぐに可燃性魔石を着火させて投げ込んでいく。
瞬く間に、扉の入り口で大量の炎と煙が立ち込めていくが、日本軍兵士の断末魔は聞こえてこない。
そればかりか、静かになったのだ。
敵の足音が聞こえてこない。
「なぁ……敵が突入してこないぞ……?」
「まさか……撤退したのか?」
「いや、分からん……ちょっと俺が見てくる」
「気を付けろ、何かあったらすぐに引き返せよ……」
3分以上経過しても入ってこないと、流石に不審に思った重装歩兵の一人の兵士が近づいて様子を確認しようとしたところ、彼は突然パンという音と共に糸が切れたように後ろに倒れ込んだ。
「えっ」
彼の頭部に身に着けていたはずの装甲にぽっかりと穴が開いており、そこから血が噴き出して斃れたのだ。
謁見の間にいた兵士達は、何が起こったのか理解出来なかった。
魔力反応すらないにもかかわらず、目の前の兵士は頭を何かに射貫かれて死んだのだ。
そして、けたたましい音と共に謁見の間にいた重装歩兵と騎兵隊の兵士達は、無数の閃光が迸る飛礫に殺されるのだ。
爆破と同時に土嚢と重機関銃を設置していた日本軍によって、何も知らずに薙ぎ倒される。
日本軍からしてみれば、たとえ彼らがロウリア王国の精鋭であっても演習で出てくるような的でしかなかった。
「制圧射撃開始、動く者は全て撃て、撃ち殺せ」
「演習で使われる的だと思え、抵抗して可燃性魔石を使ってくるであろうことは想定済みだよ」
「ロウリア国王は逃亡……ないし、この辺りに隠れているかもしれん。制圧射撃完了後も気を抜くなよ」
「了解……それにしても相手は油断していましたね」
「全くだ。気の毒だがこれも戦争だ……ギムでの虐殺をここで返してやれ」
「ここにいる者は皆戦闘員だ……無制限射撃開始!」
重機関銃の射撃は、絶え間なく謁見の間を滝のような轟音と共に、血を潤した。
謁見の間は、2分もしないうちに待機をしていた600人以上の兵士達の屍で舗装された。
戦える者の大半が謁見の間で待機していたからだ。
重機関銃によって薙ぎ倒された兵士達は、大半が何が起こったのかすら理解できぬまま死んでいった。
そして、王座にも銃弾が飛んできたため、大勢の人間が倒れていく。
パタジンも、ランドも、ヤミレイも、カルシオも……無事な人間は一人もいない。
そして王座の扉がゆっくりと開いていく……。
11時だ