日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
中央暦1639年/西暦1963年8月15日午後1時
パーパルディア皇国 外務局迎賓館
(彼らが日本国の外交官……我が国の情報を既に持っているというわけか……)
迎賓館で日本国の使者を出迎えたカイオス局長は、目の前にいる人畜無害そうな人間がパーパルディア皇国の軍事機密情報の入った書類を受付係の人間に放り投げてきたと聞いて、どんな蛮族かと思っていた。
だが、目の前にいる外交官の朝田と彼の部下である篠原は、眼鏡を掛けた大人しそうな人物に見えた。
服装も、パーパルディア皇国のような豪華さはないものの、一通りの礼装を施しているのを見るに、礼儀知らずではないように直感で感じ取っていた。
そんな人物がパーパルディア皇国の中でも政府高官しか知らされていない重大案件を把握しているという事は、朝田の上司……ひいては日本政府は更に具体的な機密情報を知っていてもおかしくない。
第3外務局を中心に、アルタラス王国の魔石採掘の利権獲得のために、外務局同士で縄張り争いをしている事も、この二人にはお見通しなのだ。
(パーパルディア皇国は列強国だ……列強国として諜報機関も、監査軍も皇国軍も揃っているはずだ……ただ、目の前にいる日本帝国の外交官からしてみれば、我々を列強と認識していないのでは……?)
そう、パーパルディア皇国の軍事力はフィルアデス大陸をはじめ、第三文明圏の内外には広く知れ渡っている。
軍事力・経済力を含めても、第三文明圏内で敵う国家は存在しなかった。
目の前にいる日本を除けば……。
「どうぞ椅子におかけください。第3外務局局長のカイオスです。先程は受付係の者が非礼な振る舞いをしたみたいで申し訳ございません……」
「いえ、こちらも少し頭に血が上って失礼な対応をしてしまい申し訳ございませんでした」
カイオスは先に受付係の行った非礼な行動を謝罪すると、朝田が頭を下げて謝罪を行った。
最低でも外交的な礼儀を執り行うことは出来ているようだ。
内心ホッとしたカイオスだったが、次に朝田が口にしたことはそんなカイオスの平穏を打ち破った。
「日本帝国政府は、ロウリア王国に軍事供与を行った貴国に対して、クワ・トイネ公国と我が国への戦争賠償を求めます」
「なっ……なんですと?!」
「自分が何を言っているのか分かっているのか?!」
「我が国に対して無礼であろう!」
カイオスは思わず叫び、カイオスの部下であるタールやバルコに至っては顔を真っ赤にして激怒している。
無理もない。
あくまでも国家戦略局がロウリア王国への軍事支援に深く関わっていたとしても、それはあくまでも
それを日本側は阻止できる状態であったにも関わらず、無視した結果戦争が引き起こされたと主張したのである。
「では、これをご覧になられてもそれを言えますか?」
「……これは?」
「写真です。すべてクワ・トイネ公国で撮影されたものです」
憤慨するパーパルディア側を静止するように、朝田は複数の写真を見せつけた。
写真と言われたので列強国の一国で知られているムーの同様の技術を有しているのかとカイオスが状況把握も兼ねて手に取ると、思わず声を漏らす。
「うっ……これは……」
そこに映し出されているのは、ロウリア王国の東方征伐軍によって惨殺された人の死体の写真であった。
白黒であれば、ある程度は目を逸らしても記憶に残りずらかったかもしれない。
しかし、広東製の高性能カメラによって撮影された写真の多くが、明らかに残忍な手段によって殺された非戦闘員である民間人の惨殺死体が数々と納められていたのである。
先程まで日本への批判をしていたタールやバルコも、その凄惨極まりない光景を映し出した写真を見て、言葉を失った。
「貴国の国家戦略局によるロウリア王国への軍事支援によって、この街にいた殆どの人間は一部を除いて惨殺されました」
「惨殺……では、貴国が我が国の機密情報を持っているというのは……」
「察しがいいですね。現地で戦争犯罪を執り行った国家戦略局の職員が自白してくれたのですよ。我が国への亡命を希望しましたので、彼は身の安全の為に我が国が責任を持って保護しております」
「……この事は貴国の上層部は把握しているのですね?」
「ええ、その認識でお間違いはありません」
既に、日本側は多くの外交的に有利なカードを持っていた。
それも一枚や二枚だけではない。
こちらが対抗しようとすれば、倍々で返してくるのは目に見えているからだ。
朝田は続けるように言った。
「少なくとも、ギムでは判明しているだけで9万人以上の市民が犠牲になった。ロウリア王国への軍事支援によって引き起こされた悲劇です。軍事支援に関する責任の所在をハッキリしない限り、我が日本帝国政府はこの件では一歩も引きません」
カイオスにとって、朝田の発言は事実上の降伏勧告にも等しいものでもあった。