日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
中央暦1639年/西暦1963年8月15日午後3時
パーパルディア皇国 外務局迎賓館
迎賓館は、日本の独壇場となっていた。
もはや、第3外務局が日本に対してとやかく言う権利など残されていないのだ。
異世界の軍事大国であり、世界でも名だたる超大国となっていた日本。
その日本の外交官である朝田が出したのは、パーパルディア皇国への服従ともいえる内容であった。
「我が国としては……幾つか貴国に要求しておきたいことがございます。まず、今回のロデニウス大陸で起こった戦争において、国家戦略局が関わっていた事案に関し……局長を含めて今回の一件に関与していた職員を我が国に引き渡してもらいたい。彼は戦争犯罪を支援した紛れもない証拠もある」
「きょ、局長を含めて……ですか?!」
「そ、それではまるで内政干渉ではないか!」
「おや?我が国だけではなく周辺国に対して武力行使によって貴国は要求を突き付けてきたではありませんか。今回、その傲慢さによって多くの血が流れたのです。写真に写っているようななんの瑕疵もない人がね……それだけで戦争犯罪人を貴国は庇うのか?」
まず、日本側が要求したのが国家戦略局局長や、ロウリア王国への軍事支援を行っていたイノスの身柄引き渡しであった。
現に国家戦略局は諸外国への外圧と威圧、それから文明圏外への投資と搾取によってパーパルディア皇国に貢献していた重要な省庁だ。
今回イノスは自身の権限を使ってロウリア王国への軍事支援を大々的に行っていたのは捜査をしていた第3外務局を含めて周知の事実である。
しかし、イノスは曲がりなりにも国の重要な地位に就いている国家公務員であり、言うなれば省庁の担当官を引き渡せと言っているに等しい。
そしてこれだけにとどまらない。
「それから、我が国の製品に関しては無関税で輸入してもらいたい……」
「む、無関税ですと……」
「で、ですがそれでは税金が……」
「勿論、あなた方が生産している魔導式通信機よりも我々は高性能な製品を生産している。ロデニウス大陸には我が国の企業が進出し、既に生産体制を確立させようとしているのです。貴国にとっても悪い話ではないとは思いますがね……」
次に要求したのは、日本がパーパルディア皇国に商品を輸出する際に、関税の撤廃を行わせることであった。
関税をかければ、その分販売価格が高くなるデメリットがある。
無関税であれば安い日本製(※クワ・トイネ公国やロウリア王国占領地域で生産された農作物なども含めて)が手に入り、パーパルディア皇国を一時的に豊かにしてくれるだろう。
しかし、これを行うということはメイド・イン・ジャパンの製品が大量にパーパルディア皇国内に輸入されていき、パーパルディア皇国内で生産されている魔導式工業製品を駆逐することができる。
れっきとした経済侵略であり、企業基盤である彼らの皇都エストシラントはおろか、彼らが圧政を敷いている属領に生産を任せている基盤産業を瞬く間に破壊できるだけのポテンシャルがある。
これは良くも悪くも、日本の四大財閥である「靖田」「八菱」「四井」「国友」が未だ健在であり、さらに旧広東国の新興財閥が政府の援助で統合化を行い帝都通信工業を中心に【ロデニウス国際連合商社】が発足し、新大陸を中心に開発・工業化を飛躍的に推し進めているのだ。
靖田危機と、それに伴う日本の転移現象によって混乱も見受けられたが、今ではクワ・トイネ公国のマイハークを拠点に、急速な文明化が行われているのだ。
ピストン輸送によって工業機材や届き、現地民や転移現象に巻き込まれた共栄圏の出稼ぎ労働者を総動員して、一大拠点を作り上げている。
火力発電所を建設し、発電施設も整えてから港湾を中心に新造されていく工場群が次々と建設されていく工業都市へとマイハークは進化した。
ネオンの灯りと、耐久性よりも建設速度を重視して建てられたマンションを含めた高層建築物が立ち並び、もはやマイハークは公都よりも発展している街となっている。
彼らは僅か2ヶ月の間に、日本は持ち前のマンパワーと工業力を動員して、このマイハークを拠点にロデニウス大陸の工業化を目指している。
ロデニウス大陸を実質的な支配下に置き、宗主国に見合うだけの力を発揮している。
そして、次なる目標としてパーパルディア皇国に狙いを定めているのだ。
国家戦略局の身柄引き渡し、無関税要求……。
これだけでも、カイオスの胃は張り裂けそうであった。
まるで自分達の行っていた行為が、そっくりそのまま跳ね返えされているからだ。
(今までに行っていたことがこうして自分がやられる側になるとは……)
タールやバルコに至っては、憔悴した様子である。
今まで自分たちよりも弱い相手に威張ったり、皇国の権威を振りかざしていた。
それだけに、今回自分たちよりも強大な国家の外交官になされるがままに圧力を加えられてしまっている。
朝田はこれだけパーパルディア皇国に立場を分からせておけば、少なくとも第3外務局に関しては反抗的な態度は取らないと確信した。
「カイオス局長、我々の要求を今すぐに……とは言いませんが、なるべく年内までには誠意ある回答をお待ちしております。それまでに今回の一件について各省庁に通達した上で、貴国の最高責任者……皇帝陛下に進言して頂きたい」
「はっ……はい……確かに、今回の一件に関しましてはパーパルディア皇国政府が一丸となって取り組みます……」
「その回答を聞けてよかった。では、私たちはこれにて失礼いたします」
朝田と篠原は席を立ちあがり、出口に向かおうとしている。
やっとこの重苦しい空気が終わる。
ホッと一息、ため息をつこうとした際に、朝田は立ち止まった。
そして、思い出したかのようにカイオスを見て、表情を変えずに言った。
「おっと……言い忘れておりましたが、アルタラス王国のシルウトラス鉱山に関してですが、先日我が国の複数の企業が鉱山の採掘権を正式に買い取りました。あの鉱山目的で侵略行為をするのはおやめになる事ですな」
カイオスは、辛うじて意識を保つことができた。
朝田と篠原が迎賓館を去った後、彼は自分自身を含めてパーパルディア皇国が厄介な超大国に目を付けられてしまっていることを認識し、そしてその現実を直視したことで一気に過労が押し寄せてしまい、意識を失ってしまった。
今はまだ……秘密