日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
だが、その過程でもし……撃墜命令に従って攻撃が行われて日本側に被害が出てしまったらどうなるか?
1963年6月2日午前7時
「こちら3番機、間もなく該当地域に突入する。当初の予定通り、高度250メートルほどの距離から撮影を開始する」
「こちら1番機、了解した。こちらは高度1万より高高度撮影による沿岸部の撮影を実施する」
「2番機から1番機へ、そのまま方位を維持した状態で撮影を続けてください。こちらは周辺の警戒をしておりますが……レーダーの反応がありません」
「……本当にここは別惑星なのかもしれないな……フィリピンのルソン島辺りのはずなのに、こんなデカい陸地があるなんて信じられない」
夜明けと共に、沖縄の陸軍第8飛行師団所属の偵察任務を主軸とする飛行第10戦隊所属の大型偵察機が沖縄北飛行場を飛び立った。
前日に確認された正体不明の陸地に関する情報を持ち帰るために、明るい時間帯での偵察任務を命じられたのである。
中島飛行機が製作した長距離爆撃機「富嶽」と大日本航空が開発した最新鋭輸送機「YS-11」を偵察機に転用したものだ。
太平洋戦争後に余過剰となった爆撃機の多くがスクラップになったり、民間機に転用されることが多かった。
富嶽もその例外ではない。
戦時中は、ハワイへの原子爆弾投下に貢献した機体でもあり、戦争を勝利に導いた輝かしい戦績を持つ。
太平洋戦争後には、泥沼化していた日中戦争において、内陸部に引きこもった国民党や共産党への爆撃任務をこなし、遂に屈服させるまでに至ったのだ。
陸軍の中でも一番活躍した爆撃機として、国民の戦意高揚のプロパガンダとして大々的に利用されたのである。
とはいえ、技術の進歩は目覚ましく、そんな夢の四発エンジン搭載の爆撃機も陳腐化してしまう時代に突入した。
特に、戦後になってジェット機が主流の時代になると、流石に第一線で戦うには速度不足であるという指摘を受けたためである。
富嶽の後発機として開発された川西飛行機の「館山」は、富嶽に比べて性能の面では劣るものの、建造コストが安い上に最新鋭の設備やレーダー搭載機能を有していた。
そしてミサイル技術の発達により、高高度爆撃機でも撃墜される恐れがある等の理由で、設備費や維持費に莫大な予算が必要となる富嶽は、近代化改修ないし偵察型への改修を施された機体を除いて、退役しつつあった。
大蔵省の圧力には流石に勝てなかったのである。
飛行第10戦隊は沖縄を中心に航空偵察任務を主とする部隊である。
最近では人工衛星の打ち上げ等により、高高度偵察任務は殆ど行われていなかった。
強いて言えば、フィリピン北部や南部地域にいる反日本帝国勢力である社会主義者の武装勢力と、在フィリピン米軍への航空識別圏ギリギリを飛行して状況偵察を行うぐらいであった。
そんな彼らだからこそ、本来であればあるはずのフィリピンの地形が丸ごと変化してしまっている事を目の当たりにしていることから、別惑星への転移現象を真っ先に実感したのである。
3番機のYS-11Rに搭乗し操縦桿を握っている相羽中尉は、眠気覚ましとして部下が淹れてくれた熱々のコーヒーを飲みながら、これが現実であることを再認識している。
彼が飲んでいるコーヒー豆を生産しているブラジルもないとなれば、いずれはこの親しみ深い味も味わえなくなる。
そんな事を想いながら、部下と共に飛行を続けていた。
「しかしながら、日本以外の地形がこんなに変わってしまっては地図もかなり書き換えをしなければならないな」
「沿岸部より東の地域に大規模な穀倉地帯を確認……先遣偵察機が撮影した写真の通りですね」
「プランテーション農業を主とするフィリピンとは違う、これだけ大規模な作付けをしているのは、アメリカ中西部や中国南部のような穀倉地帯だな。これだけ整備された穀物があるという事は、それだけこの作物を売り買いする勢力があるはずだ」
「つまり、国家ないしそれに準ずる勢力がいるというわけですね」
「そういうことだ……ん?ちょっと待て、あれは何だ?」
相羽の目に飛び込んできたのは、羽ばたいて飛行をしている大型の飛行生物の群れであった。
最初は大鷲かと思ったが、機体が近づくにつれて今まで見たことがない大型の生き物であったのだ。
赤い身体に、博物館で見た翼竜の一種のような生物が隊列を組むように飛行していたのである。
そして、その生き物の背中には人らしき者が、緑色の旗を掲げて騎乗しているのを確認したのだ。
相羽は確信した。
少なくとも、ここには未知の生物を操る勢力が存在しているという事を。
無線で相羽は1番機に叫ぶように報告した。
「1番機!こちら3番機!見たことがない大型の飛行生物を確認!翼竜のような大型の飛行生物が人を乗せて隊列を組んで飛行している!この地域の国家、ないし勢力のものと思われる!」
「こちら1番機、3番機、そこから10キロ先に港湾都市と思われる都市を発見。恐らくその都市の勢力が有する武装兵器かもしれん。すぐに退避せよ」
「了解……うわあああッ!クソッ!」
1番機が3番機に警告を発しようとした途端、3番機から悲鳴のような声が無線を通じて聞こえてくる。
「ガガガ……こちら3番機!被弾した!攻撃を受けている!……クソッ、振り切れ!機首を上げろ!」
「……駄目です!右エンジン被弾!燃えています!左エンジンからも煙が上がっています!」
「推力低下!尾翼の一部も破損しており、水平飛行が保てません!」
「畜生!このままだとおちッ……」
「3番機!応答しろ!3番機!相羽中尉!」
炸裂音と振動する音が3番機からの無線を通じて伝わっていき、間もなく応答が途絶えた。
そして途絶えた瞬間に、港湾都市から火の手が上がったのであった。
最悪の接触