日本国召喚 × The new order: last days of europe 作:アレクセイ生存BOTおじさん
中央暦1639年/西暦1963年9月20日午後1時
アルタラス王国 王都ル・ブリアス
本国から派遣され、治安警察隊としての指揮官を任された武藤将軍にとって、このアルタラス王国の地は新しい満州のような場所であるように感じていた。
満州事変から始まった陸軍や関東軍の独断専行において、彼が起こした……もしくは与えた影響というのは決して少なくはない。
西将軍のように、軍内部で武藤の行動を咎めたりする者もいたが、実力によって中国大陸を平定し、満州の利権を確立した武藤という存在は、陸軍の武闘派や強硬的な武力路線を唱える強硬派には憧れの的であった。
そんな武藤は転移現象によって、実質的に自分の配下である実戦部隊の大半を満州や蒙古国に置いてきてしまったために、自分自身の権力基盤を置くことに精一杯であった。
今回治安警察隊に志願したのも、本国はすでに海軍の高木提督率いる改革派が政治の実権を握っており、自分のような陸軍の派閥は消失こそしなかったが、発言権を失っているに等しい存在であった。
であれば、本国のコントロールから離れているアルタラス王国に拠点を築いてしまえば、厄介者である自分を本国は他国に押し付けてることが出来るうえに、武藤自身は権力を確立してアルタラス王国に駐留する治安警察隊の権限を保持できる。
お互いに損のない取引でもあったのだ。
武藤は、転移現象と共に本国で働き口を失ってしまった外地人の新兵の訓練を視察し、治安警察隊の各隊長たちとのブリーフィングをしている最中に、パーパルディア皇国軍の奇襲攻撃を知らされたのだ。
「武藤閣下!速報です!先ほどパーパルディア皇国大使館から一般市民に対する複数の銃撃と砲撃が確認されました。さらに沖合にいると思われるパーパルディア皇国軍の竜母から発進した飛竜による火炎弾攻撃によって、大勢の死傷者が出ている模様です」
「パーパルディア皇国が?!それは確かな情報か?」
「はい、軍だけではなく四井と八菱のラジオから緊急放送を受信しております。内容からして間違いないそうです」
「ついに始まったか……いよいよ、始まるぞ……」
王都郊外の駐留基地でパーパルディア皇国の暴挙を聞きつけ、ついにその時が訪れたのだと確信した。
中国大陸での盧溝橋事件や南京事件に関する黒幕として、軍部の中で暗躍をしてきた彼にとって、今回の暴挙はまさに天命ともいえる状況である。
彼は大陸の国が情勢不安になった際に、その情勢不安を利用して関東軍や満州軍における実権や、経済的・軍事的な利権の獲得のために動いていたのだ。
「王都はどうだ……まだ繋がっているか?」
「はっ、すでにパーパルディア皇国軍の飛竜も王都上空を飛行しており、限定的ながら制空権はパーパルディア皇国側が掌握しているとのことです」
「アテノール城の状況は?」
「先ほど、無線からアテノール城が数十名のパーパルディア皇国軍によって襲撃されたとの緊急伝が入ってきております。現在交戦中とのことです」
「……我々も動くぞ、王都ル・ブリアスの治安出動だ。本国にも連絡を入れろ。”パーパルディア皇国軍が王都を奇襲、治安警察隊はこれよりアルタラス王国との密約に則り、王都を襲撃している他国軍の鎮圧を行う”とな……それから全部隊に通達、これより、王都ル・ブリアスへ進軍せよ」
武藤はシルウトラス鉱山や王都郊外に駐留していた全部隊を呼び戻すことにしたのだ。
シルウトラス鉱山の護衛を任されていた彼らは、武藤の命令を聞きつけて、急いで王都に向けて移動を開始していた。
5式戦車と17式新砲塔ホキ装甲車で構成された装甲部隊を随行し、王都郊外に駐留していた輸送ヘリコプター部隊は、飛竜対策のための対空機銃を搭載し、王都上空を旋回しているパーパルディア皇国軍の飛竜の迎撃を任されている。
パーパルディア皇国軍といっても、大使館に駐留している武官や軍人は数十人程度だ。
それでも、炸裂魔法を使ってきたり飛竜による自爆攻撃には日本側も少なからず損害を出した。
これによって日本軍は魔法を警戒し、魔導砲を使用するパーパルディア皇国軍に対しても、戦車や装甲車に打撃を加える程の能力を有している武装集団を率いていると武藤は判断した。
「やはりパーパルディア皇国は
「第三文明圏で列強国と名乗るだけのことはありますね」
「だが……それだけでは制圧するとなれば如何せん足りんな……野砲を使え」
「……では、大使館は野砲で制圧するのですか?」
「そうだ。パーパルディア皇国はアルタラス王国の主権を侵害して攻撃を加えた。尚更、市民への無差別攻撃は戦争ではない、虐殺だからな。大使館側が止めないのであれば、こちらも砲撃するのも虐殺を食い止めるためだ。道理に合っている」
武藤は九十六式十五センチ榴弾砲を使って、パーパルディア皇国大使館への砲撃命令も出した。
混沌とする王都ル・ブリアスの惨状を聞きつけてはいるが、問題なのは国王であるターラ14世の安否であった。
副官が武藤に彼の安否をどうするか尋ねた。
「しかし、このままではターラ14世の身も危ないのでは……?」
「そうだな……このままでは国王陛下の身も危ないだろう……だが……」
「……?」
「城でターラ14世が亡くなっていた場合、我々が最も動きやすい。パーパルディア皇国に大いなる陰謀を引き起こした責任を取ってもらおうか」
武藤は薄っすらと微笑んで、付け加えるように副官に命じた。
「パーパルディア皇国人への配慮は不要だ、ル・ブリアスを防衛せよ。如何なる手段を使っても王都を守り通せ」
武藤なら、秩序を取り戻せるだろう……