日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第五十六話

中央暦1639年/西暦1963年9月20日午後3時

アルタラス王国 王都ル・ブリアス

 

王都の彼方此方でパーパルディア皇国による攻撃によって、もはや収拾がつかない事態と化し、現場では混迷を極めていた。

 

それはアルタラス王国だけではなく、監察軍東洋艦隊でも同様の状況となっていた。

 

……一時間程前からポクトアール司令は本国への通信を執り行っているが、大陸側の陸軍通信士は残念なことに自国の軍事力を過信している節があった。

 

『こちらパーパルディア皇国陸軍第一通信室です』

『監査軍東洋艦隊のポクトアールだ。至急軍司令部へ通信を取ってもらいたい』

『……司令部ですか?一体何があったのです?』

『アルタラス王国で反パーパルディア感情に伴う暴動が発生し、大使館が攻撃を受けている。大使館防衛のため飛竜隊を先遣させて対応に当たっている』

『……それで、大使館は無事なのですか?』

『現在は無事だ。ただ、カスト全権大使が懲罰要求を行い、アテノール城を含めた王都への攻撃を要求している。軍司令部にその要求をどうするか、許可を求めたい』

『でしたら……現在上の者が別件で対応している為、緊急時以外では現場の判断に任せます』

 

……とのらりくらりな対応をされ、再度事情を説明するも、通信士は声のトーンを変えずに、真顔のような表情でこう語った。

 

『……皇国に盾突く者であれば、教育するのが皇帝陛下の方針ではないですか?』

『それはそうだが、すでにカスト全権大使は過剰な防衛行動を行っている。我々だけは規定内に盛り込まれている防衛行動しか認可できない』

『過剰もなにも、大使館を襲撃するような連中は我が国を舐め腐っている証拠です。そういった連中は教育すべきです。司令はすぐにカスト全権大使の要請を承認してください』

 

……ポクトアール司令の進言を軽くあしらわれたのだ。

 

(だめだ、軍司令部はアテにならん……やむを得ない、外務局に代わりに掛けておこう……)

 

これでは埒が明かないとして、外務局に代わりに通信を掛けたのだが……。

 

よりにもよって、事務局員を通じて通信対応に応じたのが急進派のレミールであった。

 

『レミールだ。ポクトアール司令、なんの報告だ?』

『はっ、現在アルタラス王国にてパーパルディア大使館が襲撃を受けており、防衛の為飛竜隊を向かわせております』

『アルタラス王国だと……それで、カスト全権大使は無事なのだな?』

『はい、現在無事です。大使館に攻撃を行おうとしている暴徒は飛竜隊に対応しております』

『……それで、アルタラス王国への懲罰は実施したのか?』

『いえ、あくまでも大使館周辺の安全を優先して……』

 

ポクトアールが説明をしている最中に、ドガンと通信機の傍で何かが叩きつけられる音が響き渡る。

 

すぐに、レミールが激高した口調でポクトアール司令に詰め寄ったのだ。

 

『なぜ懲罰を実施せんのだ!!!我が国への攻撃だろう!!!アルタラス王国は我が国に矛を向けたのだ!それだけでも重罪であり、国を取り潰されても文句は言えんはずだ!!!』

『ですが、戦火が拡大した場合、アルタラス王国に駐留している日本の武装勢力が我が軍を攻撃する危険性が……』

『言い訳を聞くつもりはない!外務局監査官の権限を持って、監査軍東洋艦隊は王都への攻撃を命じる!拒否すれば命令不服従によって死罪に処す!』

 

皇国の中でも急進派として知られている外務局監査官のレミールが通信に入るや否や、罵倒された上にアルタラス王国への本格的な攻撃命令まで出ている始末であった。

 

それでも、ポクトアール司令は全面的な戦争を回避するために、王都の制空権を確保しつつ大使館に移動用の飛竜を着陸させて職員の退避を行おうと作戦を練っていた最中に最悪の報告が入ってきた。

 

王都ル・ブリアスのアテノール城がパーパルディア側の攻撃により崩壊したというのだ。

 

「ポクトアール司令!緊急事態です!王都のアテノール城が先ほど崩壊したとの情報が入ってきました!」

「なんだと?!飛竜隊が勝手に攻撃したのか!」

「いえ、魔導通信によれば大使館側から陸戦部隊を編成して城を急襲したとのことですッ!」

「……城は半壊したのか?それとも全壊かね?」

「通信からは中央部の塔が崩壊し、建物の大部分が損傷している模様です」

「王都から流れている広域魔導通信では、国王を含めて複数の王族が死亡したと速報が繰り返し流されておりますッ!また、駐留している日本の治安警察隊に対して、正式に出動要請を出したとの事です!」

 

通信士からの情報を受け取ったポクトアール司令は、その瞬間に眩暈を起こした。

 

カスト全権大使が身勝手な行動をしたのは確実であった。

 

ポクトアール司令の懸念が現実のものになってしまったのだ。

 

まだ暴動であれば、双方の治安部隊によって鎮圧する事も可能であった。

 

しかし、陸戦部隊を導入した上に、アテノール城を砲撃して破壊したとなれば話は別だ。

 

複数の王族が住んでいる王城だけに、多数の死傷者が出てしまった。

 

おまけに、日本の治安警察隊も出動するようだ。

 

間違いなく、これはアルタラス王国だけではなく日本を含めた戦争に発展してしまったことをポクトアール司令は悟った。

 

そして、通信士たちが見ているまえで、彼は壁を思いっきり叩きつけた。

 

「なんて馬鹿なことをしてくれたのだ!!!戦争になったぞ!!!」

 

怒りを露にしているポクトアール司令には、戦う以外の選択肢は残されていなかった。

 

既に戦争は始まっているのだから……

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