日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第五十九話

中央暦1639年/西暦1963年9月20日午後7時

パーパルディア皇国 海軍司令部

 

カイオスの表情はとても暗い。

 

アルタラス王国で、恐れていた軍事衝突が発生したのだ。

 

それも、日本の武装組織である「治安警察隊」とパーパルディア皇国の駐留武官や、監査軍東洋艦隊と衝突し、パーパルディア側に甚大な被害が生じたという報告も受け取った。

 

カイオスがこの事態を知ったのは、クーデター計画を念入りに実行するために海軍総司令官であるバルス海将との会談を行っていた午後5時に第一報が入ったのである。

 

しかも、パーパルディア皇国側が「懲罰」と称してアルタラス王国の王都ル・ブリアスにて王城を攻撃して国王を殺害したことも判明し、現地ではパーパルディア皇国人が治安警察隊によって次々と射殺されているという情報まで入ってくる程だ。

 

クーデターを起こそうとした矢先だけに、カイオスはこの最悪ともいえる事態が誰によって引き起こされたのか、すぐに調べる必要があった。

 

「アルタラス王国に関する情報を直ぐに集めろ!それから第3外務局は全ての職員を動員しろ!非番の者も連れてこい!」

「非番の者もですか?!」

「そうだ!それから、第1外務局局長のエルト、財務局長のムーリもだ……」

 

クーデターに参加を表明しているメンバーに招集をかけ、また海軍総司令官であるバルス海将ですら、この事案を非常に重く受け止めている。

 

彼も日本軍に関する情報をカイオスによって把握した一人であり、同時に現在のパーパルディア皇国軍の総力をもってしても勝てる相手ではない事を理解した人物である。

 

日本の外交官である朝田から提供された太平洋戦争末期にハワイに投下された原子爆弾の投下映像や、岩礁が吹き飛ぶ核実験映像を見て、すぐにコア魔法相当の兵器を実用化している事を把握した。

 

それだけに、アルタラス王国での衝突は彼らにとって極めてマズい事態に陥ったことを理解するのに時間はかからなかった。

 

クーデター計画の首謀者たちが海軍司令部に到着した際に、第3外務局の情報部は国内の急進派によってアルタラス王国での惨劇がもたらされた事が判明した。

 

「カイオス閣下、問題は極めて深刻です……カスト全権大使がアルタラス王国において威圧的に王女を奴隷化するように要求し、それが拒否されたことが原因で皇国側が王都で王城を含む各所を攻撃したと……魔導通信で全世界に配信されております」

「なんだと?!全世界にか?!」

「恐らく日本側の高出力通信を使っていると思われますが……かなり鮮明な音声ですし、声からしてほぼほぼ間違いなく……カスト全権大使の声です」

「くそっ……あのバカ貴族が……何という事をしてくれたんだ……」

「さらに、監査軍東洋艦隊も旗艦を除いて全て撃沈された模様です……」

「なんだと?!旗艦を除いて全滅したのか?!」

「……通信では全滅だと聞いております。今、海軍の通信指令室でも確認しておりますが、監査軍東洋艦隊からの応答がないので……ほぼ間違いないかと……」

 

バルス海将は顔面蒼白で呆然としながらもカストの部下からの報告を聞き入れていた。

 

監査軍東洋艦隊とはいえ、海軍の一個艦隊に匹敵する能力を有している艦隊だ。

 

直接的な管理をしている組織が違うとはいえ、それでもガレー船などが主流である文明圏外相手では戦列艦は負けなしの艦隊であった。

 

その艦隊は、旗艦を除いて全滅したという報告は由々しき事態であると同時に、日本側と刺し違えるばかりか傷一つ負えずに敗北したことを知らしめたのだ。

 

日本側から提供された旧式の海防艦によって一方的に沈められた。

 

太平洋戦争時に船団護衛として大量に作られた丁型海防艦6隻がアルタラス王国の軍港に停泊しており、これらの海防艦は冷戦期に改装を受けて海上から地上の制圧を目的としたロケット砲ないし対艦ミサイルを搭載していた。

 

治安警察隊の保有しているジェット攻撃機部隊と共に攻撃を行い、監査軍東洋艦隊は一方的に空と海から攻撃を受けたのだ。

 

僅か3分足らずで監査軍東洋艦隊は旗艦を除いて海の藻屑となり、海面は赤い色で染まったのだ。

 

エルトやムーリも、その報告を聞いて愕然としながらも、現在の状況を確認するために職員に尋ねた。

 

「……アルタラス王国への懲罰行為を監査室は咎めなかったのですか?」

「ポクトアール司令が外務局に通信を行った際に、対応したのがレミール様だったそうです。複数の通信担当の職員が証言をしております」

「……ということは、彼女がカスト全権大使やポクトアール司令に対して懲罰行為を薦めさせたという事か……」

「ポクトアール司令は軍規に則り、飛竜隊を使って大使館を攻撃する者のみを排除したそうですが、カスト全権大使は……」

「……レミール様の指示とお墨付きを貰って懲罰と称して王城を攻撃した……そうだな?」

「はい……王女ルミエスを除いてアルタラス王国の王族は死亡ないし行方不明となったそうです。そして防衛協定を結んでいた日本が介入し大使館と東洋艦隊との連絡が途絶したままになっております。」

 

日本による軍事介入は明らかである。

 

それに、国際上では日本側は防衛のために介入したのだと堂々と立証できてしまうだけの材料が揃っている。

 

一方的に攻撃をして、アルタラス王国で惨事を引き起こしたのがレミール率いる国内の急進派であることを確認したカイオスは、この事態を利用することを決めた。

 

それからは海軍司令部の作戦司令室に移動してクーデターの準備を進めた。

 

第3外務局はアルタラス王国の調査を、エルトは第1外務局の人員を使って国内の急進派の現在位置を特定し、ムーリは軍の動員準備を行っている。

 

海軍司令部は快く場所を提供することに同意し、バルス海将は海軍が保有している飛竜隊と海兵部隊に非常招集令を掛ける用意を済ませている。

 

日本側にもコンタクトを取っており、日本大使側からポクトアール司令が現地に派遣されている治安警察隊に捕縛されたという情報がもたらされた。

 

「……それでポクトアール司令官は無事か?」

「幸い司令官が無事ですが……日本側の捕虜になった模様です。魔導通信では拿捕されたと言っておりました」

「そうか……」

「日本側に捕らえられたポクトアールの肉声もあります……こちらの蓄音機で聴いてください」

 

蓄音機に録音されていたのは、治安警察隊に捕縛されたポクトアール司令の声であった。

 

やつれて疲れ果てたような声をしており、覇気は感じられない。

 

だが、彼の証言によってカスト全権大使、外務局監査官のレミールが主導的に懲罰行為を命じていた証拠を掴んだ。

 

もはや動くしかない。

 

カイオスは、作戦司令室にいる全員にクーデターを実施する旨を伝える。

 

「諸君、いよいよ時間がない……明日(みょうにち)0時までに主力部隊を皇都に動員できそうか?」

「第1外務局は問題なく行動できるわ。すでに急進派の主要な人物の行動先は掴んだ。命令があれば何時でも行動できる」

「陸軍の動員は憲兵隊・皇都防衛隊を含めて6万5千人を動員可能だ。」

「海軍はたった今、竜母にいる飛竜隊にも皇都近郊の滑走路に移動するように命じた……海兵隊を含めて1万人程だが皇都に展開可能だ」

「分かった。では……始めよう……指令第44号を発動する……各員は持ち場に就いてくれ……皇国が生き残るように行動しよう」

 

カイオスの言葉を合図に、一気に皇国軍は慌ただしく動き始める

 

指令第44号始動

 

パーパルディア皇国はこのままでは破滅してしまうだろう。急進派はアルタラス王国への武力攻撃を開始し、日本側との間接的な戦闘まで引き起こした。

このままでは破滅は避けられない。破滅を回避するために必要な処置を講じる。ありとあらゆる兵力を動員し、皇国を防衛するのだ。

 

中央暦1639年9月21日午前0時 指令第44号始動に伴う皇都防衛行動発令

 

国家緊急権の行使を開始

 

第1外務局 全職員に対し、緊急動員を発動

第3外務局 緊急権に基づき非常態勢を発動

陸軍参謀本部 皇都周辺での軍事作戦を実施

憲兵隊 急進派の逮捕及び排除を実施

皇都防衛隊 緊急権行使に基づき皇都での治安維持活動の開始

海軍司令部 飛竜隊及び海兵隊の展開を指示

 

流血の維新を遂行せよ

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