日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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第六十四話

中央暦1639年/西暦1963年9月24日午前10時

パーパルディア皇国 皇都エストシラント

 

パーパルディア皇国に大使館を構えているムー国の代表大使であるムーゲ大使は、一連のカイオスによる軍事クーデターによって大使館に閉じ込められたままになっていた。

 

今の皇都は血で染まっている。

 

狂気と殺戮が日常生活に溶け込んでしまっているからだ。

 

街中ではカイオスに従うクーデター派の軍人達が急進派に属していた貴族や皇族、それに軍人や政府高官などを次々に殺害している。

 

中には相当の恨みを持たれていたのか、襤褸切れの雑巾のように皮膚がはがれ落ち、肉が擦り切れるまで石を投げれている亡骸も見受けられるほどであった。

 

権力闘争に敗れ、国内外から恨みを買われた者の末路だ。

 

皇都での粛清が完了し、次は地方都市であったり属領地域で狼藉を振る舞っていた役人にも粛清の波が押し寄せている。

 

これは、カイオスが国内で革命や反乱の要因となる急進派の塵を一つも残さないためにも必要な措置であったとされている。

 

ムーゲ大使からしてみれば、自国製の中でも旧式の武器や兵器を緊急輸入を打診してきた彼らの行いを批判することはできない。

 

少なくとも、ムー国からしてもカイオスは「話の分かる外交関係者」であり、今回のクーデターの際には少なからぬ大金で契約を行い、これらの大金によってムーゲ大使は本国で評価されているからだ。

 

それに、カイオスらクーデター派は次に行ったのは急進派の一掃だけではなく『体制転換を成し遂げた皇国』を国内外にPRすることであった。

 

先のアルタラス王国での惨劇を招いた急進派を排除するだけで権力の座に治まっただけでは、アルタラス王国やかの国を保護している大日本帝国から圧力が加えられる。

 

レミールなどのアルタラス王国に攻撃を命じた皇族や、それに賛同していた政治家の身柄を引き渡すことに合意したのである。

 

また、これらの急進派との付き合いが深かった商人や一般人ですら、魔石ラジオを通じて自己批判を行い急進派との決別を宣言する有様であった。

 

急進派の決別と、自己批判が繰り返されたあと、ラジオでは声高らかに生まれ変わる皇国の道筋がアナウンサーによって発せられている。

 

『急進派によってこの国の経済情勢は悪化しておりました。それを直視しなければなりません。皇国が復興を果たす為にも、我々はカイオス閣下の指導の下で再び国際秩序に則り、誉ある皇国として行動しなければなりません』

 

『アルタラス王国での惨劇を招いたのはアルタラス王国に駐在していたカスト全権大使、並びにカスト全権大使の暴挙を赦しただけでなく、虐殺指令まで出したレミールにあります』

 

『現在、我が皇国はアルタラス王国と大日本帝国との間で和睦条約締結に向けて準備を進めております。ここ数十年の中でもあってはならない悲劇を産み出した事に対し、責任をもって事態解決のために全力を尽くします』

 

既にカイオスとホットラインを繋いだ大日本帝国から戦闘艦が派遣されており、急進派のトップでありアルタラス王国での虐殺を指令したとされる元皇族のレミールの引き渡しも執り行われようとしている。

 

ムーゲ大使にとって、この一連のクーデターは単なる権力闘争を発端にしたものではなく、大日本帝国が異様ともいえる軍事力と経済力を有している証拠でもあると推測した。

 

既にムー本国から大日本帝国側の船舶と接触し情報収集に当たっており、ムーゲ大使にも現地に駐在している大日本帝国側とのコンタクトを行うようにとの指示が入ったのだ。

 

「これはパーパルディア皇国だけではなく、我が国にとっても他人事ではないということか……それにしてもクーデターは苛烈だな、ここまで処刑の歓声が聞こえてくるよ……」

 

ムーゲ大使は本国からの指示に従い、パーパルディア皇国の一等地に置かれた大日本帝国の大使館に足を赴くことになる。

 

その間にもカイオスは皇帝の権限の『無効化』を行い、あくまでも皇帝を『国家の象徴』として留める。

 

皇帝からの権限を簒奪したカイオスは、真っ先に政府代表者として新政府の樹立を宣言する。

 

その宣言の下で、ラジオでは声高らかにカイオスを賛美する声で溢れている。

 

『我が国において、国内の経済不況や諸外国への恫喝などを行っていた急進派を排除しております。汚職や腐敗の温床であった急進派を排除することにより、我が国は正式に勇敢にも立ち上がったカイオス閣下によって政府の刷新と、新しい皇国となって生まれ変わるでしょう。きっと、その先は明るい未来が待っているはずです』

 

指令第44号作戦の最後の要であった政府の重要な役職者の一新と配置を執り行い、カイオスが評価したり彼に賛同する者達によって強固な政治体制を確立させた。

 

これにより、カイオスは名実ともにパーパルディア皇国の政府代表者となり、役職も【皇国総統】の地位を確立させたのである。

 

カイオスによるパーパルディア皇国の簒奪が完了した瞬間でもあったのだ。

 

旭日の奴隷

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