日本国召喚 × The new order: last days of europe   作:アレクセイ生存BOTおじさん

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久しぶりに時間が取れたので更新します。



第六十七話

中央暦1639年/西暦1963年10月7日午後1時

ムー大陸沖合

 

一機の輸送機を複数の戦闘機が護衛している。

 

川崎で作られた1960年式ジェット戦闘機「キ-217」であり、ムー国には事前通知を行った上での飛行であった。

 

護衛を担うのは帝国陸軍本土防空部隊であり、陸軍の系譜を持っている部隊である。

 

先の大東亜戦争において日本本土を空爆したドーリットル空襲事案以外において、日本本土はほぼ無傷であった。

 

転移現象に見舞われた日本において、防空部隊を増強して未知の脅威に備えるという意味で陸海軍は一致しており、普段から対立こそすれど国難に至っては天皇の勅命により防空体制が強化されることになった。

 

先の大戦で使用されて練習機として運用されていたレシプロ機である「疾風」や「隼」などは友好国であるクワ・トイネ公国への輸出と、新規製造も兼ねて航空部隊への創設を開始している。

 

これは本土防衛のために赴任していた部隊を除いて、満州や中国大陸、東南アジアや太平洋諸島、ハワイなどに主力の航空部隊を配置していたのだ。

 

そのため、ジェット戦闘機は旧式の「キ-201」「墳式震電」を含めて400機程度しか残されていない状況だったのである。

 

この問題を解決するために、帝国政府は財閥企業に軍需産業の生産を優先して行っている。

 

食料や石油資源などの問題こそ解決の目途が立ったが、国防という観点では陸軍も海軍も大陸や太平洋諸島にその大部分を置いてきてしまったままである。

 

護衛する戦闘機を輸送機の窓から眺めるのはフィクサーとして政治界に君臨している岸であった。

 

岸は外務省職員であり満州時代に構築した革新官僚で適任とした御園、佐伯を引き連れていた。

 

岸は二人にムーについて尋ねた。

 

「御園君、佐伯君、君らからみてムー国はどう思うかね?」

「海軍の偵察写真から都市部や軍事施設などを見ましたが……20世紀初頭の技術力ですね」

「同じく、日露戦争前後に竣工した前弩級戦艦らしき艦もありますが、軍事力は中小国家程度ですね。軍事・科学技術も我が国のほうが優勢かと……」

「そうだろう。パーパルディア皇国のムー国大使からの情報と照らし合わせても、技術力は我が国のほうが上だ。軍事力・経済力……我が国の経済圏に塗り替えることが出来るだろう。君たちにはその大役を担ってもらいたい」

「……ロデニウス大陸に、フィルアデス大陸、そして次はムーですか」

「そうだ。我が国は単身では生きていけない国だ。欧州を奴隷化したドイツ、敗戦国でありながら経済力で復活したアメリカとは違い、我が国はどちらでもない。ドイツのような苛烈な人種政策をしていない反面、アメリカのような所謂【民主主義経済圏】というものを持ち合わせていない。我々が満州時代に作った計画・統制経済で生きてきたのだ。計画や統制が破綻すれば日本は破滅する。だからこそ、この国にも浸透することが必要なのだよ」

 

御園、佐伯を引き連れたのは他でもない。

 

岸の属する技術官僚派であり、今現在の外務省や技術院、文部省などの各省庁においてその影響力は絶大である。

 

保守派や改革派などの勢力と対峙ないし関係の架け橋を担う役割を担ってきたのも、表舞台ではなく政治界における黒幕である為でもあった。

 

軍人にも満州や中国大陸で恩恵を受けた軍人たちの間でも、岸を慕う者が多い。

 

その最たる例が武藤将軍である。

 

アルタラス王国でのパーパルディア皇国軍襲撃事件において、彼が真っ先に治安警察隊を率いてパーパルディア皇国軍を撃破した事で、アルタラス王国の英雄となったのである。

 

英雄となった武藤将軍はアルタラス王国で名誉勲章を授与し、日本陸軍からも勲章を授かり、引き続き治安警察隊のトップとして君臨することになる。

 

岸の采配によって功績を上げたこともあり、改革派の高木首相としても岸の意見を無碍にする事はできない。

 

そして、岸自身がムー国との交渉に買って出たのも、フィクサーとして自身の影響力を浸透させる目的で赴いたのである。

 

満州で繰り広げられた革新官僚による統制経済は一定の成功を納め、表社会のみならず裏社会にも通じるコネクションを確立した。

 

ロウリア王国滅亡後、すでに岸の息のかかった官僚が分離独立した南部諸邦や、パーパルディア皇国で工作活動を実施している。

 

表では外交官や官僚を通じた経済支援などを行う反面、裏では現地の有力者である政治家や軍人を金や女で釣りあげて、操り人形のように動くようにしている最中だ。

 

元の世界で培ってきたフィクサーとしての役割は忘れていない。

 

本土に残している家族が安泰に過ごすためにも、岸は表社会ではクリーンな政治家として貫き、裏では影の実力者として政治力を行使する。

 

昭和の妖怪として、その触手をムー国にゆっくりと忍ばせていく……。

 

その一方で、ジェット戦闘機による護衛任務は当たり前の光景だが、ムーでは見たことのないジェット機構を採用したエンジンで動く高速の飛行機を見た者達が驚愕している。

 

「おい、今の速度測ったか?!」

「ああ……時速600kmは出ていたぞ……計測器が振り切っているぞ……」

「600kmだと?我が国の最新鋭戦闘機のマリンですら380kmだ……それも非武装の状態でだ!」

 

沖合に設置されている軍の観測所では、日本の戦闘機と輸送機が叩きだした数値を見て、観測員が絶叫している。

 

噂に聞いていた日本の使節団がやってきたのだ。

 

電波通信を使って脅威的な速度を伝えた上で、観測員らはとんでもない国がやってきたと頭を抱えることになったのである……。

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