デジタルアート・オンライン   作:さるモンキー

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少しずつながらも書けたので投稿……小説って難しい







chapter2 進化の輝き ~第一層フロアボス攻略戦
重なり合う運命、その始まり


《トールバーナ》の中心にある広場、そこが会議の場所となっていた。

 

噴水を中心として観客席のように段々になって囲まれている段差には、50人弱の人間がまばらに座っている。

 

「案外、参加する人数は多そうだな」

 

「だな!」

 

正体を隠すためにローブを身に纏いながら隣に座っているズバモンが相槌を打つ最中、ルドモンが中央の方へ指をさしている。

 

「タクミ……あれ」

 

ルドモンがそういいながら指し示した方向を見ると青色の長い髪の男が噴水の目の前へ歩き出してきた。

 

そして中央へ立った男は少し緊張した面持ちで周りを見渡し、パンパンと手を叩き、ゆっくりと口を開いた。

 

「はーい!それじゃ、5分遅れだけどそろそろ始めさせてもらいまーす!」

 

スッと、一瞬で周りの喧騒が収まった。そのまま周囲の視線が中心の男に集まる。

 

男はそれを確認して、一拍置くとそのまま喋り始めた。

 

「今日は、オレの呼びかけに応じてくれてありがとう!知ってる人もいると思うが、オレはディアベル、職業は気持ち的に騎士(ナイト)やってます!」

 

そんな気持ちだけ騎士(ナイト)男――ディアベルを中心として第一層フロアボス攻略会議が始まった。

 

 

 

会議は順調に進んでいった。

 

ディアベル達のパーティーが迷宮区の最上階に続く階段を発見したという報告に始まり、ディアベル本人の意気込みや演説により、喝采の声に包まれた。

 

そして、チームを組んでの話し合いになろうかという時、「ちょお待ってんか!」と茶髪でトゲ頭の男が中心へ飛び込んできた。

 

「ワイはキバオウってもんや!こん中に、何人か詫びぃ入れんといけん奴がおるはずや!」

 

キバオウと名乗る男の参戦に周囲がざわざわとどよめく中、ディアベルは静かに質問をした。

 

「詫び?誰にだい?」

 

「決まっとるやろ。今まで死んでいった二千人に、や!」

 

そこからキバオウの話が始まった。

 

曰く、ベータテスター共は約九千人のビギナーを見捨てた。

 

曰く、良いアイテムやクエスト、狩場の独り占め。

 

曰く、その結果、二千人の死亡。

 

よってベータテスター共は責任をとって謝罪、賠償すべし……と。

 

それは違う。

 

見捨てた?最初にガイドブックを作って配り始めたのは誰だか知っているのか?

 

狩場やクエストの独り占め?全部が全部ではないだろう、それでも狩場やクエストの情報は載っていた。

 

だから二千人が死んだ?それこそお門違いだろう。ここまで情報は出ていた、それでもなお二千人という全プレイヤーの内二割が消えたのだ。

 

もちろんそこにルーキーが多かったのも事実だろう。だが全員が死んでいったルーキーだとも限らない。

 

この世界は一瞬の油断が死を招く場所だ。なまじベータテスターは知識がある分油断にもつながりやすい。

 

それらを考えた場合ベータテスターの中から少なくない数の死人は出ているだろう。

 

自然と手に力が込もっていく……ベータテスター本人や直接助けられた訳ではないがそれでも自分たちを助けてくれたのは間違いないのだ。

 

それをここまで言う理不尽で身勝手な物言いに腹が立つ。その場で異論を告げようと、ゆっくり口を開く。

 

「違う」

 

一気に中心に集まっていた意識がこちらに向く。そのままズバモンとルドモンに「ちょっと待ってて」と言い、下へ降りていく。

 

「なんやアンタ……」

 

「僕の名前はタクミ、あなたの言うビギナーだよ」

 

「だったらワイの言いたいことが分かるやろ!」

 

「ああ、あんたの主張はベータテスター達がビギナーを見捨てて、大量の死人を出した。それにも関わらずのうのうと情報を独り占め、それによるアイテムの独占。その詫びとして手に入れた物全部寄越せって事だろう?」

 

「あ……ああ、まあそんなモンや。それが何やねん!」

 

「まず一つ、情報はあった」

 

目の前で指を軽くスライドし、メニューを開き、そこからガイドブックを取り出す。

 

「このガイドブック、あんたも含めたこの場の全員が持っているだろう。無料で配布されているんだから」

 

「そ……それがなんや」

 

「このガイドブックははじまりの街を筆頭に様々なエリアで配られている。遅くともこのゲームの開始から3日目にははじまりの街で配布されていた」

 

周囲からそんな早くから……?といった驚きの声が上がる。

 

その喧騒を頭から外し、続けて語る。

 

「僕はその情報をもとに今まで生きてきた。この剣だってその本に載っていたクエストから手に入れたものだ」

 

確実に相手の反論を潰すように、チープな推理小説のクライマックスのように。

 

「そして……ここまでの情報を3日というあまりにも短い時間で用意出来て、尚且つ配っていたのは誰なのか分からないか?」

 

間延びさせる物言いにキバオウが苛立ったのか声を荒げて急かす。

 

「いいからはよ言えや!」

 

そう言われて更に間延びさせる訳にもいかない。そのため、手早く、あっさりと結論を告げる。

 

「ベータテスター達だよ。」

 

その発言にさっきまでざわついていた観衆が時計の壊れた寝室のように静かになる。

 

「もちろん、全員が全員っていうわけじゃないのも分かる。だけど少なくともこうやって僕ら(ビギナー)を助けてくれようとした人はいる」

 

苦虫を噛み潰したような顔のキバオウに更に怒りを叩きつけようと発言が加速する。

 

「それに――」

 

だが、そこで目の前の男とは別の人間の声が響いた。

 

「そこまでにしときな、二人共」

 

後ろの方から黒人の大男がするりと前に出てくる。エギルと名乗る大男は、そのまま話を続ける。

 

「まずタクミ君、キミの言う事もわかるし、憤りを覚えるのも理解できるがこの場は一旦治めてほしい」

 

「そしてキバオウさん、タクミ君の言う通り情報はあったんだ。それでもなお二千人が死んだ。それを踏まえて、俺たちがどうするべきかを話し合う場だと思っていたんだがな」

 

極めて冷静で落ち着いた振る舞いにより、言葉を重ねる度に高まっていた怒りが冷めていく。

 

そして、少しの静寂の後。

 

「その内、しっかり白黒付けさせてもらうで」

 

分が悪いと判断したのか、そういいながら元の場所へ戻っていくキバオウ、それに合わせて僕とエギルと名乗った男も先ほどの場所へ戻る。

 

「よし、じゃあ再開していいかな。まず――――」

 

 

 

 

 

 

その後の会議は問題なく進行し、ガイドブックの最新版からフロアボスの概要も判明した。

 

フロアボスの名前は《イルファング・ザ・コボルドロード》といい使用武器は曲刀、取り巻きに《ルインコボルド・センチネル》というモンスターが出現するらしい。

 

そのため、ボスを攻撃するチームと取り巻きの相手をするチームに分け、それぞれ壁役(タンク)攻撃(アタッカー)支援(サポート)の三つに分かれる作戦だ。

 

壁役をやれるほど防御の数値は高くなく、メインウェポンが片手直剣である都合上、長物での支援も難しい。そのため必然的に攻撃に回ることになりそうだ。

 

だが、気が付いた時には周りの人間はみなチームを組み終わってしまいポツンと一人ぼっちのまま会議が終わってしまった。

 

「タクミ~!大丈夫か?」

 

「うん、平気だよ……ただ、どうするかな」

 

別に一人でもレイドパーティーに加わる分には問題がないが……自分だけだと万が一の対応や後退が難しい。

 

ズバモン達と一緒に戦うと彼らの正体がバレる可能性がある。仮にバレた場合、レアモンスター扱いしたとして、それでも2匹連れていて何もないと言い逃れることが出来るとは思えない……

 

やはりどこかのパーティーに入れさせてもらうしかなさそうだ。

 

しかしどこも構成人数の限界(6人パーティー)になっている。腹を括って一人で戦おうかと考え始めた時、集まりの端の方にフードを被って顔の見えない……恐らくは女性のプレイヤーと、黒髪の中性的な顔つきの青年がいた。

 

彼らは見る限り二人組のようだ。ならパーティーに入れてもらえるだろうか……よし。

 

話しかける前に二人の存在を隠すため、ズバモン達に軽くお願いをする。

 

「ズバモン、ルドモン、ちょっと武器になっててくれる?」

 

そういうと二人は「「わかった」ぞ!」と言って武器形態になってくれた。よし、この形態ならパーティーになった際にHPバーに映ることはない。

 

「すいません」

 

「――わあっ!?」

 

意を決して二人組に話しかけると、黒髪の青年の方を驚かせてしまったらしく、後ろにのけぞってしまった。

 

「ああ、ごめんなさい!驚かせるつもりはなかったんです」

 

「いや、こっちこそ……ん?あんたさっきの」

 

黒髪の青年がこちらの顔を見て怪訝な顔をする。

 

忘れてた。あんなに周りにあんな人がいる広場のど真ん中でまくし立てたら顔を覚えられているのは当然のことだ。

 

「あ……えっと、さっきはお見苦しい所をお見せしてしまいまして……」

 

さっきは思いっきり人前で怒っちゃってたし、怖がられてたらどうしよう……とりあえず謝ろう。

 

「いや、いいよ。俺も結構スカッとしたし。あんたの名前は確か……タクミさんだったっけ?」

 

よかった、あんまり悪い印象は抱かれてなさそうだ。しかし、さん付けは少々ぞわぞわしてくる。

 

「タクミでいいよ。」

 

「そうか?ならいいや、俺の名前はキリト、俺も呼び捨てで構わないぜ。……んでタクミは俺たちに何の用だ?」

 

「実は……参加出来るパーティーが無くて……良かったらキリト達のパーティーに入れてくれないか?」

 

本題のパーティー加入のお願いをするとキリトは少し考えた後、もう一人のフードを被った方を気にするように話しかけた。

 

「俺は構わないけど……アンタは?」

 

「私は別に大丈夫。ただ、戦いの邪魔になるようだったら置いていくから」

 

フード越しにドギツイ視線が見えそうな口調だが、一応OKしてくれたみたいだ。

 

「あらら、手厳しい事で……ま、それじゃ決まりだな。よろしくな、タクミ」

 

その言葉に合わせてパーティーの申請メッセージが送られてくる。

 

目の前に浮かび上がったウィンドウにそっとタッチしてパーティーの加入を完了する。

 

しっかりと視界の端に二人の名前が表示された。

 

「それと、私の名前はアスナ。私も別に呼び捨てで構わないわ」

 

無事にパーティーを組めたので、改めて自分の名前を名乗る。

 

「ありがとう二人共。改めて、僕の名前はタクミ、短い間かもしれないけどよろしくね!」

 

口ではそんな事を言ったが、心の中ではこの二人とは長い付き合いになる……そんな根拠のない予感が、僕にはあった。

 

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