グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦!   作:三流FLASH職人

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第11話 ぼーいみぃつがーる

「あーっ!来た来た、あれだよね大野さん!!」

 山道を登り切り、駐車場に入って来た一台のトラックを指差して叫ぶなでしこに、大野が

うんうんと頷く。待ちに待った帆高夏海と小谷さやか、そして振る舞い鍋用の目玉、

南国九州の海産物到着である。

 

「おーい、みんなひっさしぶりー!」

「夏海ちゃん!変わらへんなぁー!」

 助手席からぶんぶん手を振ってはしゃぐ夏海に、かつてペアを組んだあおいが笑顔で返す。

奇しくも二人とも教師という進路を選択した、正反対に見えてどこか共通点の多い両者。

 なでしこの誘導でトラックをバックさせて管理棟際の屋根付き調理スペースに付ける、

停車した瞬間、真っ先に空いた後部座席のドアから一人の少年が勢いよく飛び出した!

 

「うおおおおおっ!雪ばい、雪ばい、すごか積もっとっとよーーー!やっほぉーっ!!」

 

 まるで初めて雪原に投げ出された子犬のように大はしゃぎで駆け出し、そのへんをぐるぐる

駆け回ったかと思うと、雪の深そうな斜面に体ごとダイブして小さな人型を残す。

「・・・犬やなぁ。」

「犬だねぇ。」

「犬・・・可愛い。」

あおいになでしこ、そして大野が微笑ましくそうこぼす。

 

「いよぉーっし!あたしもーーっ!!」

 子犬、いや健吾を追いかけて夏海も雪の積もった駐車場を駆け回る。

「えー・・・」

「野生児どもめ。」

 呆れるあおいと陽渚、いい年して何やってんのよとジト目で眺める・・・が。

 

「わーたーしーもーーーーっ!」

 なでしこまで参戦。このグループわんこ多すぎだろ・・・

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「こちら、ていぼう部の先輩で湯浦しずくさん、今回のお魚の保存と搬入でお世話に

なりました。」

「よろしくー。あたしも10年前に一緒にキャンプしたかったなー。あ、ゆらって呼んでね。」

 夏美の紹介にひらひら手を振って笑顔で答えるしずく。ある意味今回の食材提供の

立役者に、千明、なでしこ、あおい、そして恵那が同時に頭を下げる。

「「ありがとうございましたー」」

「だから小学生みたいなお礼やめろぉ25歳ども!」

山梨勢のノリツッコミに思わず笑いがこぼれる熊元(熊本)一同。

 

「で、こっちがあたしの息子の健吾です。」

「小谷健吾たい、よろしくばい!」

 腕をぴん!と垂直に掲げて、その色黒の顔でにかっ!と笑顔を見せる。応えてよろしく!

よろしくな!となでしこと千明がそう返す、アクションが激しい者同士気が合うようだ。

 そうでない3人は健吾を眺めながら同じ感想を心で呟く。

臼州(九州)男児だ(だねー)(やなぁ)・・・」

 

「ふっふふ、そしてぇ~、サプラーイズっ!」

 さやかが自慢げにそう言って、目の前のトラックの荷台をごりっ!と開ける。次の瞬間

ドアに倒れかかっていたビールサーバーがさやかにのしかかって押しつぶす。ぐぇっ!と悲鳴を

挙げた倒れ込むさやかを見て、なるほどさすがビールバカ、と納得する一同。

 

「あ、本命はこっちねー。」

 夏美としずくが担いで降ろした茶色の袋を見て、思わず山梨勢が目を見開いて一斉に叫ぶ。

「「お、お米ぇーーーっ!?」」

 

「ウチのたんぼでとれた米ばい、うまかとよー!」

熊元(熊本)名産”3界のきらめき”よ、おいしーんだから。」

 健吾とさやかが鼻息も荒くふん!と胸を張る。リアクションが重なるあたり流石親子だ。

キャンプ場で自由に使っていいから、とのさやかの言葉に思わずおお~となる山梨一同。

「あきちゃん!これ、振る舞い鍋と一緒に出そうよ!」

「いいねぇ、やっぱり日本人はお米ヅラ!」

「おにぎりにするものいいかも。」

「私得意だから、握るの手伝いますよ。」

 思わぬ追加サプライズに感激するなでしこ達に大野が協力を申し出る。これはもう元旦の

朝食は素晴らしく美味なものになるだろう。

 

「んじゃ、受付しますか。」

 食材の搬入を終えた最終到着組一同が管理棟に入る。中は薪ストーブのおかげでぽかぽかと

温かいので、記帳する手がかじかまないのは有り難い事だ。

 と、さやかはストーブの際に立つ人物と目が合うと、ぱぁっ!と明るい顔になって歩み寄る。

視線の先の女性、大町美波もさやかを見て数瞬固まり、その後に満面の笑顔になる。

 

 がばっ!とハグを交わす両者。

「さやか先生ー、お元気そうで!」

「美波ちゃん、ほんっとお久しぶりね!」

 その様を見て千明が、そして夏海が10年前の悪夢を思い出して思わず嘆く。

「・・・グビ姉とビールバカ、ここに再会、か。」

「こりゃ今夜は爆吞みだわ、間違いなく。」

 

「で、悠希はそこで何してんの。」

「アヤちゃんも設営まだでしょ、大丈夫なの?雪ますます降って来てるよ。」

 薪ストーブの前で丸くなっている黒岩と綾乃に、しずくとなでしこのツッコミが入る。

「いや~やっぱ山梨の冬は寒かばい・・・」

「薪ストーブの引力圏から逃げられないんだよ。」

埒も無い言い訳をする二人にやれやれ、と呆れる一同。

 

 と、その二人の向こうにもう一人、ストーブの前で丸くなっている人物を発見する健吾。

とっとっと、とその少女の前まで小走りに移動すると、白い歯を見せてにかっ!と笑う。

「おっす!」

「・・・こ、こんにちわ。」

 挨拶を返しながらも綾乃の後ろに引っ込もうとするのは美波の娘の冬美だ。そんな彼女に

健吾は遠慮も無しに言葉を続ける。

「そとでいっしょに、ゆきだるまつくるっとよ!」

 

(なに・・・この子?)

 冬美は目の前の男の子を見て不思議な感情が沸いていた。地黒な肌に顔、そして不思議な

言葉遣い。自分の知っている男の子とは全然違う、まるで外国の少年に話しかけられている

ような、そんな”特別感”のある存在。

 普段から引っ込み思案な冬美は親しい友達はおらず、ましてや男の子など話する事すら

ありえなかった。あまりに自分とは違う存在だと思っていたから、怖かったから。

 

 だが目の前の少年は、そんな冬美の常識を遥かに飛び越えた”異界の者”にすら見えた。

あまりに特別な、遠くから来たまるで宇宙人のような存在。だったら・・・

 

 だから冬美は、普段の自分とは違う答えを返す。地球人を、ううん、山梨県民を代表して、

ちゃんと相手しないと!

 

「・・・うん、つくる。」

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「わっしょい、わっしょい、わっしょい!」

「うんせ、うんせ、うんせっ!」

 7歳の少年少女が降りしきる雪の中、懸命にそして楽しそうに雪玉を転がしている。

その光景を母親2人が見て真逆の感想を漏らす。

「あの冬美が・・・あんな楽しそうにお友達と遊ぶなんて、連れてきて正解だったわ。」

ほろりと涙を流す美波の横で、さやかはやれやれといった顔をする。

「健吾って誰とでもすぐ仲良くなるのよねぇ・・・将来複数の女の子に恨まれないか心配だわ。」

 

 本日このキャンプ場に訪れる子供はもういない。雪の降り続けるキャンプ場を2人占めして

大はしゃぎで駆け回る男の子と女の子に、他のキャンパーたちも思わず笑顔になる。

こういうのを見ているとどうしてもかまってあげたくなるのが人情と言うものだ。親御さんに

気を使いつつ、ある者は遊びを教え、別の者はあったかい飲み物を飲ませてあげる。

 

「やっぱ子供はああでなくっちゃねぇ。」

 雑誌ビバークのライター木村が2人を見てふふっ、とこぼす。彼は今、雑誌の記事にする為に、

元野クル+2名とていぼう部の面々に、10年越しに再開した感想や当時の思い出をインタビュー

していたのだが、どうしても目の前ではしゃぐ少年少女に気が行ってしまう。それはもちろん

インタビューを受けている者たちも同じだった。

「うむうむ、仲良き事は美しきかな。」

「ほほえましいカップルだねぃ。」

「さすがにまだ男女を意識する年じゃないでしょー。」

「中学生くらいまで付き合いが続けばわかんないけどねー。」

 

 山梨県と熊元(熊本)県。その距離の遠さは彼女たちが誰よりもよく知っている、健吾と冬美の

邂逅が、今日この時だけのただの”思い出”で終わる可能性は非常に高い。

 だからこそ、楽しそうにはしゃいで遊ぶあの少年少女に、まるで漫画のような運命の

カップルを思い描かずにはいられない、願わくば末永く縁が続きますように・・・

 

 そんな話を聞きながら、木村はつい先日自分が仲人を務めた新郎新婦を思い出していた。

中学生の時からの同級生で、よく教室でもイチャついていた(?)2人はついに成人するまで

カップルであり続けていた、子供の頃の男女の縁というものは案外続くものだと知っていたから、

感慨深げにこう漏らした。

 

「案外うまく行くかもよ、あの二人。」

 

 

 そんなほっこりした空気の中、リンだけは未だにうむむと心で唸りつつ、空を眺めては

スマホの天気予報に目を落としていた。明日朝の予報は先程とは違い、初日の出が見える

可能性が少し増して来ていたことが尚更ヤキモキさせる。

 

「あとは・・・晴れてさえくれれば。」

 深刻な表情でそう嘆くリンを全員が見る。そういえば明日のフォトコンテスト、

このままではダイヤモンド富士が見えないので台無しになる、企画倒れのピンチが迫っている

ことをすっかり失念していた。

 

「まぁ、天気とは喧嘩できんよね~」

 やれやれ、というトーンを込めて嘆いたのは黒岩だ。彼女から見てリンはどこか悪い所が

大野に似てる所があり、思い詰めてネガティブになりがちだ。もっと気楽に生きんばよかとに・・・

 

「雪見酒コンテストでも全然オッケー!」

木村が笑顔を見せてリンにぐっ!と親指を立てる。アウトドアライター&カメラマンの

彼にとって、天気に合わせて記事を改変するなどお手の物だ。確かにダイヤモンド富士の

頂上に輝く聖杯に輝く酒を見られないのは残念だが、その代わりに仲睦まじく雪遊びする

子供たちを見れたのでヨシ!と。

 

 そんな二人を見てリンはうぁ、と顔を歪める。ああそうだ、『行き当たりばったりも

旅の楽しみ。』って昔お爺ちゃんに聞いていたのに、天気の急変という事態を楽しめて

いないじゃないか・・・目の前の二人と違って。

 

(・・・アタマ固いな、私は)

 

 ふっ、と落ち込んだ後、頭を上げてうっし!とグーを握って気合いを入れるリンであった。

 




・・・木村氏、もしかして香川県(しょうどしま)出身?
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