グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦!   作:三流FLASH職人

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タイトル回収!なのでわりと渾身の回。


第14話 グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦!

 富士川松ぼっくりキャンプ場に朝日が昇る。背後に朝焼けを、周囲に虹の輪を、そして直下に

霊峰富士をたずさえて、一年の初まりを神々しく彩っていく。その幻想的な景色に職員も、

宿泊客も、そしてダイヤモンド富士初日の出を見に来たドライバーやライダー達も、言葉も無く見入る。

 

「・・・で、フォトコンしなくていいんですか?」

 シャッターを切り続けていた木村がそう言った瞬間、ああっ!忘れてた!と、ばたばたと

動いてスマホを取り出し、持っていたドリンク入りグラスを様々に掲げて、いい構図を

狙って写真に収めていく。

 とはいえ逆光ゆえにさすがに各々悪戦苦闘だ、やはりこうなればプロの木村に撮影依頼が

殺到してくる。

 

 その初っ端を切ったのは小谷さやかだ。あらかじめ持ち込んでおいたテーブルにビールの

サーバーをドン!と置いて、そこからジョッキにビールを注ぐとジョッキを太陽にかざして

ごっごっごっごっごっ!と一気にジョッキを空にする。

「ぶはぁ~~~うめぇ。」

 口元をビール泡だらけにして、げふぅ、と息を吐くビールバカ。その一連の流れは木村の

カメラによってしっかり収められている。いやフィルムの無駄だろこれ・・・というかこの

コンテストの意義分かってます?美しい景観が台無しでしょー。

 

 続いての被撮影者は黒岩悠希。なんと彼女のロングヘアーが頭上にキツネ耳に纏められた

状態での登場。後ろでは恵那が満足顔でパンパンと手を打ち払う、彼女の仕込みか。

 持っているのは瓢箪(ひょうたん)と浅底の御猪口(おちょこ)だ。その見姿でそれを持たれると、どこの

お稲荷さんの変化かと言いたくなるほど似合っている。

 

 大野がチョイスしたのは”エンジェルキッス”という濃い赤色のカクテル、それを気恥ずかし

そうに太陽と富士山に掲げて「お・・・お願いします」と引き腰で言う。

「お!いいチョイスですねぇ大野さん、カクテル言葉を狙ってますね?」

 木村の指摘にこくり、と赤面して頷く大野。このカクテルには『貴方に見惚れて』という

酒言葉がある、先程まで初日の出に見惚れていた一同にとってはナイスチョイスだ。

濃い赤色も朝日の輝きを受けていい色を醸し出している、これはポイント高そうだ。

 

 が、次に登場した湯浦しずく(ゆらさん)がそんなムードを完全に吹き飛ばす。

「「ひ、ひいぃぃぃっ!!」」

 陽渚をはじめ心臓の弱い面々が悲鳴を上げる。ビール大ジョッキの中になみなみと

焼酎が注がれているのはいいんだが・・・中に丸々一匹いるヘビが怖すぎるんですが。

「ま、まぁまむしドリンクとか、ハブ酒とかのチョイスかぁ、さすが臼州(九州)人。」

 さすがの恵那も冷や汗をかきながらそうこぼす。その横で黒岩がうわー、という顔で心で嘆く。

(アレ今朝早うに冬眠しとったヘビを、掘り起こして捕まえたヤツなのは秘密にしとかんば・・・)

 

 何人か挟んで次に夏海が登場・・・手にしているのは何とヤカンとお湯呑みだ。

コポコポと音を立ててお茶を注ぐと、それをずずっ、とすすってご満悦の表情で一言。

「やっぱ富士山が見える所で飲むのは、静岡のお茶でしょー。」

 

 -び り ぃ っ ! ! ! -

 

 その瞬間、空気が硬化した!

 

「・・・え、何?なんか空気が重いんですけど??」

 夏海が冷や汗を流してきょろきょろと周辺を見渡す、何かあったのかな?

反梨者(はんなしもの)や。」

「反梨者やねぇ・・・」

 左右からあおいとあかりに、がしっ!と腕を掴まれる。二人とも目が怖いんですけど・・・

「残念だ、帆高嬢がまさか反梨者だったとは・・・」

「夏海ちゃん、君の事は忘れないよ。」

 千明と恵那に両足を持たれて、まるでハンモックのように持ち上げられる夏海。

「え、なに?なんなの・・・?」

 

「「ハイホーハイホー♪ハイホーハイホー♪ハイホーハイホー♪」」

 問答無用とばかりに4人に管理棟まで連行される夏海、その様を呆然と見送る芦方勢。

他のキャンパーの撮影が進む中、管理棟から出て来た夏海?は直立不動の体制のまま

死んだ目をして、スライドするようにこちらに進んで来る、まるでラジコンのように。

「フジサンハヤマナシガサイコー、フジサンハヤマナシガサイコー、フジサンハ・・・」

 変わり果てた夏海の姿に芦方勢が混乱して大騒ぎする。陽渚は夏海にすがり付いて

正気に戻ってー!とパニックだし、大野はひたすらおろおろおろおろするばかりだ。

 

 ちなみに今管理棟の中では、ジャケットを脱いだ夏海と、それを着せられたジャンケン

マシンのジンジャー君をラジコン操作する恵那+3名が腹を抱えて大笑いしていた。

フォトコン用ドリンクが決まらなくて悩んでいた夏海に、あおいが「ネタ枠やらへん?」と

声をかけて来たので嬉々としてそれに乗ったと言う訳だ。

 無論、夏海は後で真相を知った芦方勢全員にゲンコツを貰ったのだが、それは別の話。

 

 健吾と冬美は千明の勧めで、レモンジンジャーとメロンジンジャーを透明グラスに

掲げ、ふたり並んでの撮影となった。ジンジャーエールの琥珀色とメロンの緑や

レモンの黄色が絶妙に溶け合って、えもいわれぬ輝きを放っているし、それを掲げる

少年と少女の笑顔がまたニヤニヤを誘ってくれる。この二人の時には他の撮影者も

殺到したほどだ。

 

 犬山あかりはかねてから憧れていたマティーニを初体験、上品に香りを楽しんで・・・

「うわこれきっつー!」

 思わずうへぇ、という顔をカメラに向ける。元々が酒精のキツいお酒であり、普段

口にしない強烈なアルコール臭に閉口気味だ、ダイヤモンド富士をバックにして、

大人の女性らしく優雅に酒を飲む計画は頓挫した模様。

 

 土岐綾乃はなんと、人型(マミー)シュラフのままジンジャーハイを持って現れた。

「シュラフむしがシュラフ原人へと進化したな。」

 辛辣に評価するリン、つか撮影するんだからもーちょっとマシな格好でしろよ・・・。

「アヤちゃんそれ買ったんだ、今度月面着陸ごっこしようよ!」

なでしこの相変わらずの発想に、千明とあおいは「変わらねーなぁ」と思わず苦笑い。

 

 

 他のキャンパーの撮影が進む中、陽渚と美波はもうちょっと後で、と注文を付ける。

出来れば富士山の青が見えるようになってから撮影したいとの事。なるほどダイヤモンド富士は

山が完全な逆光になるため、少し待たないと富士山がシルエットで真っ黒な状態なのだ。

 

 参加者全員の撮影が終わり、ここからは運営側の出番と相成った。

彼女らは今日の昼まで仕事なので基本ノンアルカクテルだ。

 

 各務原なでしこはベルモットというカクテルをベースに様々な香辛料を投入したいわゆる

スパイスカクテルだ。料理に凝る傾向のある各務原家には様々なハーブやスパイスがあり、

それを様々に研究、試飲を繰り返して出来た”なでしこスペシャル”だそうだ。

・・・ちなみに色合いはダイヤモンド富士に全く合わなかったが。

 

 斉藤恵那は右手にソルティドッグ(・・・)を、左手にちくわを抱いて登場。見た瞬間に狙いが分かる

チョイスだった。彼女はあんまりお酒は飲まないらしい。

 

 犬山あおいは地元山梨の白ワインで参戦、それなりの値段のワインを火にかけてアルコールを

わざわざ飛ばしてから冷やし直してワイングラスに入れたその色は、彼女の薄いブロンドの

髪色と見事に溶け合って、背景に負けない美しい絵を見せていた。

・・・ただ当たり前だが、飲んでみたらただのすっぱいジュースでしかないのだが。

 

 大垣千明は思い出のキャンプ初カクテル、ホット・バタード・ラム・カウで勝負。

太陽にかざすのではなく、寒さを感じる雪山で優雅にハンモックチェアーでくつろぎ、

あったかいカクテルで湯気と白い吐息を楽しんでいる様子を撮影して貰った、これは

技ありのショットだ。

 

 リンは不参加。このフォトコンはビバークとしゃちほこさんぽがそれぞれ審査して

大賞や優秀賞を雑誌で発表することになっている。さすがに雑誌のライターが参加するのは

ためらわれたのだ。

「しまりんだんご、あるよー。」

「シー・マリンもあったい。」

「いらねぇよ、てかそれでどんなカクテル作るんだよ!」

 創作饅頭と創作水菓子を手にした恵那と黒岩の提案は全力で却下しておくリンであった。

 

「よーし、いよいよ出番だね!」

 太陽がかなり高くまで登り、富士の青と山頂の雪の白がくっきりと見え始めた時、

陽渚が手にした逆三角形のカクテルグラスに青いお酒を注いでいく。

「お!ブルーハワイか・・・でもそれだけじゃイマイチじゃないか?」

「ふっふっふ~、仕上げを御覧じろ、ですよ大垣さん。」

 そう言ってポケットから小さな瓶を取り出すと、なんとスポイトで吸い上げてから

そのカクテルグラスの底に注いでいく。その白い液体を見ておもわずあかりが質問する。

「それ、何なん?」

「実はこれ、カルピスの原液なんだよ。」

 周囲が一斉に、はっ?という顔をするが、あかりだけはあっ!そうか、という顔で

ポンと手を打つ。

 

「そう、”逆さ富士”なの!」

 笑顔で富士山にカクテルグラスをかざす陽渚。なるほど逆三角形のグラスは逆さ富士の

形だし、ブルーハワイの山裾とカルピスで山頂の雪を表現しているということか。

酒は比重が軽いので上に浮き、逆に比重の重いカルピスはしっかり底に溜まって混ざらない

というわけだ。

「おお!いい絵ですなぁこれは。」

 木村が太鼓判を押してシャッターを切り続ける。発想は単純ではあるが、そういう物ほど

ハマると驚くほどいい絵になるものだ。

 

「じゃああとは先生・・・あれ?」

「そういえばさっきから姿が見えないな、鳥羽先生。」

 一同がきょろきょろと周囲を見回すも、グビ姉こと美波の姿がいつの間にか消えていた。

 

 と、駐車場の方から声。

「おーい、大垣ー、犬山ー、久しぶりだなぁ。」

 ワゴン車から降りて来た中年男性を見て、千明とあおいが、あーっ!という顔でその男性を

指差して叫ぶ。

「「大町先生!」」

 

 大町悟。かつて高校時代、野クルの創設当初に面倒を見てもらっていた登山部の顧問の先生。

鳥羽先生と結婚してからは他校に配属となり、なかなか会えなかった恩師ともいえる人物。

「いつ来たんですかー!?」

「ホンマお久しぶりですー。」

 

と、邂逅を満喫する暇もなく、そのワゴン車の後部座席が開いて一人の女性が降りてくる。

その身に色鮮やかな晴れ着をコーディネートして。

「うぉっ!グビ姉・・・美波先生っ!」

「化けたなぁー、どしたんですか、その晴れ着?」

「悟さんに持ってきてもらったんですよ、せっかくプロの方に撮影して頂くんですから

このくらいは、ね。」

 晴れ着と言っても、普段着の上から羽織れるシンプルなものだが、何せここはキャンプ場、

こんなひらひらした汚れ厳禁の服などそうそう着られない、なので夫の悟にわざわざ持ってきて

もらっていたのだ。

 

 朝日が輝き、日本の象徴と言える富士山をバックにして、晴れ着姿の女性が樽からひしゃくで

酒を木の枡に注ぎ、笑顔でそれを飲み干すその姿は、まさに日本の正月に相応しい絵であった。

 

「・・・素敵。」

「こりゃ反則だわ。」

「大賞はコレで決まりかな?」

 さすがに周囲からも絶賛の声が上がる。たださやかだけは「みなみちゃんの裏切り者ー。」と

ぶーたれていた。まぁ最初にあの狂態を演じてしまって、同じように樽酒を煽ってくれると

思っていたらコレなのだから無理もないかな。

 

 

 後日、発売されたビバーク正月号の表紙が、まさか富士山をバックに豪快にビールを煽る

さやかちゃんだとは、この時誰も想像していなかった・・・。

 




コークハイをちびちび吞りながら書きました・・・感想下さい~~。
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