グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦!   作:三流FLASH職人

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飯テロ回・・・季節感ねーからテロにならねーw


第15話 振る舞い鍋であったまろー。

「はーい、いっぱいありますからたくさん食べて下さいねー!」

 午前8:00、新年イベントもうひとつの目玉、宿泊客限定の無料振る舞い朝食のスタートだ。

管理棟の横のスペースに長机が並べられ、5つ置かれたガスコンロの上のズンドウが

あったかそうな湯気を立ち昇らせている。

 この5つの鍋、実は全部違う料理で、参加者は腹の限界まで食べ比べを楽しむことが出来る

ようになっている、さっそく各鍋の前に行列が並び、各々の鍋を調理した担当者がスチロールの

椀によそって箸を付けて手渡していく。

 

 恵那の担当はあっさり塩味のつみれ浜鍋。様々な海産物でダシを取った後、湯がかれた身を

骨からこそげ取り、調味料と片栗粉を加えてフードプロセッサーにかけてつみれ団子にして、

仕上げに一味を軽く振りかけた、一番「海」を感じる一杯だ。

「おおー、磯の香りがいいねぇ、山でこれを味わえるなんて贅沢ヅラ。」

この一杯、海なし県である地元や長野県からの来客には特に受けがいい。

 

 隣では大野がガラガブやアカハタなどの根魚でダシを取った味噌汁を振舞っている。南国の魚に

甲州味噌を合わせた、熊元(熊本)と山梨の合作おみそ汁だ。仕上げにアジのかんぼこを二切れ乗せて

味わっていただいたのがさらに好評だった。

 その横では、なでしこが海鮮トマト鍋を振舞っていた。こちらも芦方の魚に山梨のトマトを

ミックスさせた地域合体(クロスオーバー)鍋だ。事前に魚を送ってもらい、さらに一足先に山梨入りした

大野となでしこ一家によって完成を見た二品、和風と洋風の汁物の対比がまた素晴らしい。

 

 あおいが担当しているのは魚と野菜やキノコたっぷりの水炊き。ポン酢にカボスを絞って頂く

水炊きは寒い山の朝に染みわたる温かさと美味さがあった。鍋としては無難だがそれだけに

ハズレない安心の味だ。

 

「で、なんで私の所には誰も並ばないんだよっ!」

 地元のほうとう鍋を担当している千明が仏頂面でそう嘆く。彼女の前にいるのはしずくと健吾

くらいで、他の鍋の盛況ぶりに比べて寂しい限りだ。今回の雪で遠方からのキャンセルが多数出た

為に、地元のほうとうは今一つ新鮮味に欠けたようだ。

「やっば、これめっちゃ美味いよ、ねぇケン坊!」

「うっっっっっま!!これめっちゃウマかばい。」

 しずくと健吾が立ったままほうとうをすすって驚愕の声を上げる、じっくり煮込んでかぼちゃや

野菜の甘みと旨味がしみ込んだスープに、しっかりもちもちした麺がベストマッチだ。

「あ、私あとで頂きますよ。」

「あたしもー!ほうとう楽しみ。」

「あたしも頂くったい。」

 机の向こう側で芦方勢が手を上げる。遠征して来た彼女らにとって山梨のほうとうは

楽しみの一つだ。今やってる手伝いが終わったら存分に楽しむつもりでいる。

 

 彼女たちが担当しているのは焼きおにぎりと骨せんべいだ。調理で余った骨は油で二度揚げ

すればサクサクと美味しいスナックに化けるし、その上生ゴミも減らせるので一石二鳥だ。

 熊元(熊本)から持ち込んだ米はあらかじめ飯盒で炊いておにぎりにしてある。食事時に握ったのでは

並ぶ客に追いつかないし、前もって握っておくとこの寒さじゃ冷たくなる。なのでかまどの上に

鉄板を引いて醤油を垂らし、焼きおにぎりにして出しているのだ。

「おいしー。おさかなのホネってこんなにおいしいんだねー。」

冬美が右手におにぎりを、左手に骨せんべいを手に、左右交互に頬張ってご満悦のご様子だ。

 

 

「いやぁ美味い!キャンプ飯の範疇超えてますなぁ。」

 木村が机のトレイに全ての鍋と食べ物を並べて撮影した後、それを次々にがっつきながら

そう感想を漏らす。さすが一流のアウトドアライター、肝臓も胃袋も並ではないらしい。

「す・・・すごいですね。」

 撮影の手伝いをしつつ自分の椀とおにぎりを手にしたリンがそう漏らす。彼女は何人かに

料理の感想をインタビューした後、ようやく自分の分を貰って来た所だ。とはいえゆっくり

食べている暇は無い、食べ終わったら少しでもみんなの手伝いをと、自然と箸も早くなる。

 

 そんなこんなで進む振る舞い鍋。が、やはりキャンセルが出た分消費が追い付かない。

スタッフ一同は顔を見合わせて、うむ!と頷き合った後、駐車場にたむろしている人々にも

声をかける。

「振る舞い料理、みなさんもいかがっすかー!」

 千明の声掛けと同時に、駐車場にいた『初日の出を見に来ただけの面々』が待ってましたと

ばかりに殺到してくる。Webでこの振る舞いを知っていた者も居れば、初日の出を見に来た

その際で美味しそうな鍋を見せられて、お腹をぐぅぐぅ鳴らしている者もたのだ。だがキャンプに

来てくれた人をどうしても優先する必要があった為、目途がつくまでは解放できなかったのだが

ここにきてサービスタイムの開始である。

 

 ・・・ちなみにグビ姉(みなみ)ビールバカ(さやか)は初日の出撮影時に持ち出した机の上に置かれた

樽酒とビールサーバーの横で酔い潰れて爆睡中だ。この分ではお鍋も余りそうに

ないので、後でクレームが来そうであるが、まぁ自業自得だろう。

 

 

 なでしこが全ての鍋の最後の一杯をずずずっ、と飲み干し、それをことっと机に置いて

手を合わせ、ごちそうさまのポーズを取った瞬間、周囲の全員が一斉に声を上げる。

「「完食達成ーーーっ!」」

 今回芦方から持ち込んで調理した振る舞い朝食は、彼女の最後の一杯できれいさっぱり

無くなった。が、誰も食べ足りないというわけでは無く、みんな今年最初の食事を心ゆくまで

堪能できた。

 

「いやぁー、うまかったばい!」

「おさかなおいしかったねー!」

 健吾と冬美が笑顔でそう白い息を吐く。すっかりお馴染みの本キャンプのマスコットの二人に、

大町悟がヒザを曲げて目線の高さを合わせ、ふたりの頭に手を置いて話しかける。

「健吾君だったね、冬美と仲良くしてくれてありがとう。」

 いきなり頭を撫でられて、びくっ!と硬直する健吾。だが冬美がえへへー、という顔をすると

健吾もまた鼻をすすりつつ、にかっ、と笑顔を悟に見せる。

 

「ゆきがっせんすったい!」

「うん、やろーやろー!」

 子供は元気だ。さっそくサイトの下に降りて、踏み荒らされていないスペースで雪合戦を

始めるふたり。それを見てしずくや綾乃、あかりなどの女性陣が参戦し、呼応して悟や

リンの父の渉、恵那父の潤+ちくわ、なでしこ父の修一郎などのお父さん連中が童心に

帰って参加する。

 

「あー、私も行きたい・・・」

 その様を見下ろしてなでしこがそうこぼす。だが彼女たちには食事の片づけという任務が

残っており、それをおろそかにするわけにも・・・。

さしより(とりあえず)遊ぶ時は遊ぶったい!片づけは後でもよかろ?」

 そう言ってエプロンを外してすたすたと歩いていく黒岩。それに応えて夏海があおいの手を取り

引っ張って雪合戦に突入、その流れに乗ったなでしこが大野の背中を押してなだれ込んでいく。

恵那は「結局こうなるのねー。」といいつつ、奮戦しているちくわに加勢すべく駆け降りていく。

 

「おいおいお前ら!片づけ・・・」

「まったく、しょうがないなぁ・・・」

 残された千明と陽渚はやれやれ、という顔をして見下ろす。みんな子供か、と思いつつも

2人は顔を見合わせてしばらく固まった後、にやりと笑って同じ意見を述べる。

「行くか!」

「行きましょう!」

 

 かくして松ぼっくりキャンプ場は雪合戦の川中島と化すのであった。

 

 その様を居並んで撮影してるリンと木村。大人も子供も楽しそうにはしゃぐその絵を見て

2人は思わず感想をこぼす。

「いい記事になりそうですね、このキャンプ。」

「ですなぁ、これは気合を入れて記事書かないと、しゃちほこさんに負けますなぁ。」

木村のその感想にうぇっ!?という顔をするリン。天下のビバークに名古屋のローカル誌である

ウチの雑誌(しゃちほこさんぽ)が張り合う気なんてさらさら無かったのだが・・・

 

「い、いや・・・そんな大それたことは。」

「弱気ですなぁ、マスコミなんて図々しくてナンボですよ?」

 そう言いつつ至近距離からリンの顔をパシャッ、とカメラに納める木村。その一枚を

カメラ裏側のモニターに出してリンに見せる。

「ほら、ライターのビジュアルじゃ惨敗ですよ、志摩さんはもっと自信持った方がいいですよー。」

うぐ、という顔で写真の自分と木村を見るリン。確かに見た目は負けてる気はしない、だがその

自信にあふれた泰然自若な表情の木村と、何かにつけて悩み考える自分では、記事の

ライターとして比べたら到底及ばないだろう・・・少なくとも今のままでは。

 

 ふっ、と肩の力が抜けるリン。この木村も、そして黒岩も自分にないポジティブさがある。

それは眼下ではしゃぐ友人のなでしこにも、かつてはとっつきにくかった千明にもあるものだ、

 

・・・私も、ちょっとはっちゃけるか。

 

「私たちも行きましょう、雪合戦!」

「お、ノってきましたねぇ。」

 

 カメラを置いて、下のサイトに駆け下りていくライター2人、仕事はもうここまで。

このキャンプを楽しまなければ、楽しい記事が書けるわけ無いじゃないかと開き直って

雪と仲間と、そしてアウトドアを満喫する人々と戯れるリンであった。

 




 本作、やたらリンにスポットを当てるのは、劇場版ゆるキャン△にて、彼女が社会人として
一番悪戦苦闘しているように見えたからなんです。
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