グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦!   作:三流FLASH職人

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第2話 10年前の忘れ物

 

 幅岡(ふくおか)県某所、とあるインテリアコーディネイトの会社にて。

 

「ふーっ、と。お疲れ様でーす。」

 デスクを立ち、荷物をまとめてタイムカードを押した女性・・・というには顔も体も幼さの残る

人物、鶴木陽渚(つるぎ ひな)が事務所の面々に終業の挨拶をする。

「おー、お疲れさん鶴木ちゃん。週末は芦方へ帰ると?」

「はい。懐かしい先輩が帰ってきますので、久しぶりに会いに行くんです、植木さんは?」

「あー僕は特に予定はなかねぇ、ま、また街をぶらぶらすっさ。」

 

 陽渚は高校卒業後、建設設計士の父親のすすめもあってこの会社に就職していた。

元々手芸が趣味だった彼女にとって、部屋のカーテンやカーペット、テーブルクロスなどの

デザインを手掛ける仕事はぴたりハマっていた。

 ちなみに彼女の上司である植木もまた陽渚と同じ海野高校の出身者である。5歳年上の彼は

かつて高校の手芸部で全国コンクール金賞を取った事もあり、その後の海野高校男子に

手芸部ブームを生み出した張本人だったのだ。お陰で手芸部に入部しようとした陽渚に

二の足を踏ませ、結果として釣りクラブである”ていぼう部”への定着を果たすことになる。

 

 そのていぼう部時代の先輩、大野真(おおのまこと)が久々に芦方に帰って来るとの報告を、

入部時の部長である黒岩悠希(くろいわゆうき)がメールで知らせて来たのだ。

 大野は海洋調査員になる夢を叶え、一年の大半を調査船に乗り込んで過ごしているので、

帰港した時でないと会う事もできない、なのでこの機会にぜひ集まろうとの黒岩の呼びかけに

乗ったわけだ。

 

「夏海の家に集合かー、ますますていぼう部時代を思い出す♪」

10年来の付き合いの仲間たちとの再会に、思わず顔もほころぶ陽渚。だがその会合が

思わぬ方向に動き出すことになるとは予想もしていなかった。

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「おー陽渚、久しぶりー。」

「陽渚ちゃん!元気だった?」

 翌日。熊元県芦方町、喫茶店”ほだか”に入った陽渚を、この店の娘である帆高夏海(ほだかなつみ)と、

海洋調査から帰還した大野が嬉しそうに出迎える。

「大野先輩!ホントお久しぶりです~。」

 大野に駆け寄った陽渚がその手を取ってぶんぶん振り回す。彼女にとって夏海は幼い時からの

親友であり、芦方に帰ってくるたびに顔を合わせていたのだが、大野とはもうかれこれ2年ほど

会えていなかったのだから感激もひとしおだ。

 

「しっかし大野先輩と並ぶと・・・陽渚はホント変わらねーなぁ。」

 確かに大野は長身でグラマー、陽渚は子供体形で童顔なこともあり、とても1歳違いには見えない。

「人の事言えないでしょ。」

 ほっぺを膨らませて抗議する陽渚。夏海もまたあまり身長に恵まれず、大野といるとどうしても

見た目の幼さが目立ってしまう、それでも陽渚に比べるとどこか色気を感じる部分はあるが。

 

 夏海は教育大学に進学して体育教師になっていた。奇しくも彼女らの母校である海野高校に

配属になり、現ていぼう部の顧問も務めている。なんでも前顧問の小谷さやかが結婚を契機に

教師を引退する際、夏海を後釜に推薦していたらしい。

 

「私は結構モテるもんねー、生徒からラブレターとかしょっちゅう貰うし。」

 へへーん、とない胸を張って自慢する夏海に、思わずジト目を返す陽渚。

「保健の先生がそれでいいのかな・・・」

 

 と、カランカランと店のドアが開く音がして、これまた懐かしい人物が入って来た。

「おーよしよし、みんな来とるね。」

「お久しぶりー。」

 ていぼう部元部長の黒岩と元顧問のさやかが並んで入って来る、これで10年前の

ていぼう部メンバー勢揃いだ。

「先生お久しぶりです、結婚生活はどうですか~?」

 興味津々でさやかに問いかける陽渚。あのビールバカとまで言われた酒乱女性がどんな

夫婦生活を送っているのかは聞いておきたい所だ。

「まぁ上手くやってるわよ。子供ももう小学生だし、手が掛からなくなって助かるわぁ。

と、いうわけで、この後飲みに行かない?鶴木ちゃん。」

「まだ昼間なんですけど・・・」

 

 小谷さやかの実家は米農家だが、長男が家を継がずに事業を起こしたのもあって、さやかが

婿養子を貰って家を継いでいたのだ。少し離れた農家の三男坊とお見合い結婚したのだが、

その彼が予想以上のイケメンかつ体力馬鹿だったこともあり、結婚とその後も問題なく

農家を営めていた。

 ただダンナは典型的な下戸であり、さやかにとって晩酌の相手にならないのは悲しかった。

他は完全な九州男児なのになんでよりによって・・・と新婚時に嘆いていたのはみんなの笑い話の

タネだった。

 そんなわけでさやかは事あるごとに呑み友を探しており、意外にもかつての教え子の陽渚が

イケるクチなのを知って以来、会う度に呑みに行っていたりするのだ。

 

「さて、全員そろったね。」

 ソファーにもたれて一同を眺める黒岩。早速靴下を脱いでアグラをかいているのは相変わらずの

行儀の悪さだ。

「これで全員なんですか?今回は。」

 大野がいぶかしげにそう尋ねる。今までも何度かていぼう部OGは集まる事はあったが、

その際は陽渚や夏海の後輩達も顔を見せることもあったのだが・・・純粋に10年前のメンツ限定を

わざわざ集めたのは一体どういう意図なんだろうか。

 ふっふっふ~、と怪しく笑う黒岩。こういう時の彼女は何らかの悪知恵を働かせて

いる事が多い。そんな時、陽渚は決まって彼女にキツネ耳とシッポがあるイメージが浮かぶ・・・

まさに女狐だ。

 

 カバンから一冊の雑誌を取り出した黒岩が、テーブルの上にその本を置く。

黒岩悠希は高校卒業後、フリーの雑誌ライターとして活躍していた。田舎のローカル誌の記事を

書くべく東へ西へと飛び回り、取材と旅行を兼ねた生活を続けているのだ。なので彼女が雑誌を

見せた時も、一同はただ単に彼女が書いた記事が載っているのかな?としか思わなかった。

 

「キャンプ特集・・・しゃちほこ出版?」

「名古屋の本ですか?何か記事を・・・」

 

 夏海と大野がそこまで言った時、全員が一斉にフリーズする!

本の表紙には、作業着を着た5人の女性がまるで戦隊モノのようなポーズをとっていたのだ。

 そのシュールさは置くとして、彼女たちは知っていた!その本の表紙を飾る面々を!

さらにキャンプというワードが、他人の空似という可能性を完全に掻き消して!!

 

「「野クルのみんなだーーーっ!!!」」

 

 

 10年前の夏、はるか遠くの山梨県から合宿に訪れて、共に釣りキャンプを楽しんだ仲間達、

自分たちに負けず劣らずの個性派集団で、わずか3日の邂逅で親友と言える間柄になった。

 釣りと魚と戯れて、寝食を共にして、そして別れを惜しんだ。再会を誓ってバイトを始め、

今度はこちらから会いに行くよ、と約束をして。

 

 だが、それは実現しなかった。その冬に世界的な流行を見せた伝染病、新型コロナウィルス。

正体の見えない未知の病の恐怖から、国はもちろん都道府県をまたいだ移動すら

制限されてしまう。

 当然熊元から山梨までの旅行など出来るはずもなかった。ようやく移動制限が緩和された

3年後にはもう彼女たちもそれぞれの生活があり、今更集まって山梨まで行ける状況では

無くなっていたのだ。

 

 そんな10年前の忘れ物。それが今目の前にあった・・・まさかの雑誌と言う形で!

 

 かぶりつくように本に見入る一同。なんと彼女たちはさびれた施設を自分たちで改造し、

見事にそこをキャンプ場として再生させて見せたのだ・・・それぞれの生活の合間を見て

草を刈り、地ならしをして、環境を整え、企画を考案し、土器の出土による中止と言う

困難まで乗り越えてその事業を成していたのだ。

 

「すっげぇなぁ。」

「本当、バイタリティありますねぇ相変わらず。」

 思わずため息と共にそうこぼす夏海と大野。その横で陽渚はかつて自分がていぼう部に入部する

直前の事を思い出していた。

(ていぼう部ってなに?キモくない・・・堤防作るの?)

 クラスメイトが部活案内のプリントを見ながらそう話していたのを思い出す。まさかそんな

わけ無いじゃないと思っていた、たかが女子高生が自分たちの楽しむ場を”作る”なんて。

 だが野クルのみんなは本当に自分たちでキャンプ場を作ってしまっていたのだ。本当に

すごい人たちだ・・・。

 

 

「と、いうわけで~10年前の約束を果たしに、山梨に行っけんど・・・参加する人~」

「「はいっ!!!」」

 黒岩の言葉に陽渚が、夏海が、大野が、そしてさやかまでもが一斉に手を上げる。

彼女たちは今もキャンプ道を楽しんでいる、極めている。ならば私たちもせめて

果たせなかった約束ぐらいクリアしておこう。何よりまたあの懐かしい彼女たちに会って

同じ時間を共有したい、彼女たちの成した偉業をこの目で見てみたい、心からそう思うから。

 

「じゃあ、いつかの野クルに習って一斉にメール送るばい。」

 そうだ、確か修学旅行でこちらに来るとメッセージを貰った時、彼女らはそれぞれの相手に

同時にメールを送って来た。ならばこちらもその「お返し」とばかりにメッセージを送ろう、

意志を伝えよう!

 

 

『キャンプ場設立おめでとう!正月にそっちに行くばい。』

『噂のダイアモンド富士、見に行くよ~』

『キャンプ場作るなんて凄いです、是非お邪魔させてください。』

『大垣さん、みなさん、遅くなったけど会いに行きます!』

 

 黒岩が恵那とリンに、夏海があおいに、大野がなでしこに、そして陽渚が千明に、メッセージを

スタンバイさせる。その横ではさやかも鳥羽先生にメッセージの準備をする。

 

『10年前の約束、覚えてますか?また楽しく呑みましょう!』

 

 

 

「そんじゃ行くばい・・・3,2、いちっ!」

 

 -そーしんっ!!!-




劇場版までいったゆるキャンに比べて、もうていぼう日誌の印象がちょっと薄いのが悲しい・・・
アニメ2期こないかなぁ(切実
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