グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦! 作:三流FLASH職人
”ダイヤモンド富士、初日の出に乾杯!フォトコンテスト開催”
その告知が雑誌”ビバーク”と”しゃちほこさんぽ”のWeb版で発表されてすぐ、会場である
松ぼっくりキャンプ場の大晦日予約は満杯締め切りとなった。
特に大手雑誌のビバークはそのアイデアを大きく取り上げ、来年の新刊で大増ページを取って
扱うことが決定していた。担当のライターや編集者はそれこそてんてこ舞いで、こんな事なら
いらんプレッシャーかけるんじゃなかった、と冗談交じりに苦笑いしたほどだ。
キャンプ場運営チームも年末年始に向けて万全の準備を進めていく。リン、なでしこ、千明、
あおい、恵那達も少しでも多くの人に快適に過ごしてもらうべく、大晦日のキャンプは諦めて
管理棟での泊まり込みで対処する事になった。
あと、初日の出の時間に飲酒するなら、チェックアウト時の運転に備えてアルコール
チェッカーの準備も必要になる、恵那のこの提案は即採用されて多数のチェッカーと消毒液が
用意された。
そして
出発する事になった。彼女はなでしこと共に元旦の炊き出し鍋を手伝うことになっており、
その仕込みや調理法の打ち合わせに出向くことになる。
かつて高校時代もそうだったが、なでしこと大野はお互いの仲間内でも
存在で、今回のイベントでもより精力的に動いていた。
「じゃあ、お先に出発します。みなさん山梨でお会いしましょう。」
先発が大野なら、最終発は冷凍車で魚ごと向かうしずくと相乗りの夏海だ、もろもろのキャンプ
道具も一緒に運んでもらうので、大野も自分の荷物をしずく達に託していた。
「任せて下さい。」
「真ちゃんも気を付けて~」
空港行きのバスに乗り込む大野に見送りの二人が手を振る。いよいよ10年前の約束、
その第一歩が大野によって踏み出される。
阿蘇
送信する。まず最初の目的地は東京、昭島市のアウトドアモール。そこで勤務する懐かしき友人、
各務原なでしことの再会を果たすことだ。
『今から飛びます、再会楽しみです。』
『お待ちしておりますっ!』
◇ ◇ ◇
午後。アウトドア用品店に一人の長身の女性が紙袋を抱えて入って来る。
「「いらっしゃいませー。」」
勤務中の3人の女性従業員が一斉に挨拶をする、何故か入り口付近に居並んで。
「なでしこちゃん、お久しぶりです。」
長身の女性がはにかみながらも、その列の真ん中にいる懐かしい顔に声をかける。うん、
10年前とちっとも変ってないわね、と心で懐かしんで。
「うん、真ちゃんも!変わらないねぃ。」
当のなでしこはしっかり言葉にしてそう返した。想いがシンクロしたことを感じた大野は
一同に満面の笑顔を返す。
「これ、みなさんにお土産です。召し上がって下さい。」
他にお客もいない時間帯という事もあって、大野は事務所に通されて皆とお茶する事になった。
お土産の
話題に花を咲かせる。
「へぇ~、
「元旦に松ぼっくりでキャンプでしょ?私たちも行ったけどいいわよね、あそこ。」
店長や先輩に褒められて上機嫌のなでしこがうへへ~と頭をかく。何より10年ぶりの友人が
相変わらずな美人さんで、その再会を喜んでくれたことは何よりうれしいものだ。
「海洋調査員?すごっ!」
大野と名刺交換をした店長は、その役職を見て目を丸くする。水産業の活性化に従事する
大野が日本中の海を飛び回っている事に、驚きとそして納得の目を向ける。なるほど、
たくましさを感じるわけだ。
「いいよねー海。私たちなんかもう山ばっかりで・・・」
「でも山ならではの楽しさもありますし・・・そうだ、どこかワカサギ釣り出来る所を
ご存知ないですか?」
南国
憧れの的の一つだ。是非空き時間を使って経験したいと思っていたのだが・・・。
そんな大野の言葉に顔を見合わせる従業員一同。やがてうん!と頷き合った後、なでしこが顔を
キラキラさせて大野の手を取る。
「任せて!富士五湖周辺なら出来る所あるから案内するよ!」
「3つ向こうの用品店なら仕掛けも売ってるわよ、寄って見たら?」
店長がそう勧める。このアウトドアモールは店舗によって様々なジャンルのものが
販売されている、山での釣りならその店舗が扱っているはずだ。
「ありがとうございます、是非寄ってみますね。」
「それではみなさん、よいお年をー。」
仕事納めとなったなでしこが店長たちに頭を下げる。隣では両手に紙袋を下げた大野が
いろいろお世話になりました、と続いてお辞儀をする。
「うん、良いお年を。来年も頼むわね、各務原さん。」
「大野さんも、良い旅を。」
「「はいっ!」」
なでしこの運転する車が大野と荷物を載せて一路、山梨へと向かう。ホテルを取るつもりだった
大野をなでしこは強引に実家まで連行する事にしたのだ。途中のパーキングで遅めの昼食を取り、
夜の帳を迎える頃には、身延町の各務原家に辿り着いた。
「いらっしゃい大野さん、ゆっくりしていってね。」
「今夜はぼたん鍋を用意したよ、お口に合えばいいんですが・・・」
どうやら大野がここに宿泊する事は予定済みだったらしく、なでしこの両親も当然のように
歓迎体勢万全だった。ただ遅れて帰宅したなでしこの姉、さくらは大野を見てその大人な雰囲気に
なでしこに「本当に同い年?」と聞いて少しむくれられていたが。
夕食をご馳走になった後、二人は明日以降の予定の打ち合わせに入った。明日の午前は
なでしこもいろいろ所用があるとの事で、大野はさくらの車で
午後からはなでしこも合流して、正月の振る舞い鍋の最終確認をする事になった。
「大垣さんとの再会も楽しみです・・・」
「あきちゃん変わってないよー、相変わらずテンション高いしねぇ。」
そんな二人を眺めながら、さくらはふっ、と息をついて顔を和ませる。高校時代からの
親友であるリンちゃんとも、幼馴染である綾乃とも違う形で、なでしこと隣り合う形が
ぴったりハマる大野のその存在に。
話し込む二人のちゃぶ台の上に置かれたなでしこのスマホ、それに結ばれたフェルト製の
ストラップ、そこに描かれた二人の顔が今、目の前で親しげに話しをしている。
「いいコンビじゃない。」
さぁ、運命の松ぼっくりキャンプ場、ダイヤモンド富士初日の出まで、あと2日!