グビ姉vsビールバカ、霊峰富士の聖杯大決戦!   作:三流FLASH職人

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第7話 いざ山梨!③鶴木陽渚

「んふふ~、楽しみだなぁ。」

 12月30日、早朝の新幹線の車内にて、思わず顔をユルめる鶴木陽渚。いよいよ山梨への

遠距離キャンプが、そして懐かしい野クルの仲間達へ会いに行く旅が始まったのだ。

 出発時間をSNSで伝えたところ、ちょうど斉藤恵那が時間を合わせて静岡駅で合流しようと

返事をくれたのだ。ほどなく犬山あおいも「じゃあウチも同伴で」との返信を寄こしてきた。

 

 恵那は横浜のペットショップで働いているが、昨日が仕事納めで山梨に帰って来ており

わざわざ車で迎えに来てくれるそうで、その際にあおいも同乗してくるとの事。

静岡から山梨だって近いわけじゃないのにわざわざ迎えに来てくれるなんて、なんか申し訳

ない気がしたのだが、土地勘のない陽渚にとっては渡りに船であり、ここは有り難くご厚意に

甘える事にしていた。

 

 新幹線の旅は、ある意味他では味わえないものがある。高速走行するモーターと風切り音が

気にならなくなったころから、その飛ぶように流れる景色は、その土地を早回しで巡っている

ような錯覚を感じさせる、思わず感慨深く呟く陽渚。

「野クルのみんなも10年前、この光景を見て来たのかなぁ。」

 

 

 昼前の静岡駅の雑踏の中、下車した陽渚はさっそく指定があった駐車場に向かう。

果たしてそこには大きなアクションで手を振る、懐かしい二人の人物が待っていた。

「おーい!鶴木さん、こっちだよー!」

「お疲れさんやなぁー!」

 ああ、覚えてる覚えてる。あの黒岩部長の髪型をイジって、酔ったさやか先生の絡みを

さらっと躱したデキる人斉藤さん。それに抜群のプロポーションに何故か関西弁がヘンな

ワンポイントの印象を与える、夏海と凄く仲が良かった犬山さん!

 嬉しそうに小走りで駆けよって、ぱぁっ、と笑顔になる陽渚。ようやく、ようやく10年前の

約束が果たせた、再会が叶ったのだ。

 

「あはは、変わらないねぇ鶴木さん。」

「斉藤さんもお元気そうですね。犬山さんも変わらなく・・・て?」

 そこまで言って『・・・え?』という表情で固まる陽渚。彼女の目の前にいるのは確かに

犬山さん・・・の、ハズ。だが、彼女は10年前に比べて、明らかに違う、いや違いすぎる

所がある!?

 

「あ・・・あの、犬山さん・・・ですよ、ね?」

「そうやでー、久しぶりやなぁ鶴木さん。」

 しれっと返す犬山さんだが、陽渚はその変わりように(ええー?)という表情を隠せなかった。

胸が!そう、あの豊満だった、大野さんにも負けない立派な、あやかりたいとすら思った見事な

バストが、まるで見る影もなくぺったんこになっているじゃない!なんで・・・?

 

「ああ、これはね~。」

「聞くも涙、語るも涙な話なんや・・・聞いてくれるか鶴木さん!」

 呑気な声の恵那に続いて、無くなった胸を押さえながら呪詛のように呟き、ゆらぁっと

陽渚に顔を向けるあおい。

「は、はいっ!」

体をびーん!と硬直させ、冷や汗を流して固まる陽渚。

 

「山梨がフルーツ王国なのは知っとるやろ?その山梨にはこんな伝説があるんや・・・。」

 

 

 ある日女性が外を歩いていると、突如として目の前に果樹園が現れることがある。

いつもは何もない所なのに、その時に限っていろんな果物の木が入り乱れて群生して

得も言われぬ香りを漂わせながら・・・

 

「その香りにつられて果樹園に足を踏み入れたら最後!いきなり四方八方からツルやら

枝やらが女性の体に巻き付いて・・・」

「・・・そ、それで?」

迫真の表情で語るあおいに、陽渚はごくりと生唾を飲み込んで身震いする。

 

「その果樹園に”たわわエキス”を残らず吸い取られてしまうんやぁーーーっ!!!」

 

 片手を掲げて絶叫するあおい。その迫力と恐ろし気な結末に思わず悲鳴を上げて

ドン引く陽渚。

「ひぃぃっ、た、たわわエキス!?」

「せや。そして、後に残ったんは・・・」

「残った、のは?」

 

「たわわに実った果物の実の数々と、えぐれんばかりに失われたその女性の

おっぱいなんやーーーっ!!」

 無い胸を張って話を〆るあおい。そう、ウチの胸もまたそのたわわエキスを残らず

吸い取られて、この有様なんや、と。

 

「ひぃぃぃぃぃっ!!」

 両手を頬に当てて、まるでムンクのように叫ぶ陽渚。そんな恐ろしい果樹園がこの

山梨県には存在するの?山梨コワイ山梨コワイ山梨コワイ・・・

 

 -ピロリン!-

「ひ、ひぃっ!・・・って、着信?」

 未だにビビりながらもスマホを取り出し、恐る恐るその画面を見る。そこには・・・

 

『うそやでー。』

 

 

      ◇           ◇           ◇    

 

 

「だまされたー、妹さんだったのかー!」

 恵那の車の助手席で、目をバッテンにして、してやられたー、と天井を仰ぐ陽渚。

あのメッセージを見た後目の前の二人に向き直ってみると、目を泳がせまくってピースする

犬山さんと、スマホに”ドッキリ大成功”の大文字を掲げてくすくす笑う斉藤さんの姿があった。

 どうやらこの仕掛け、ていぼう勢が山梨に来ると聞いた時から練っていた計画だそうだ。

なんでも犬山家はこういったジョークを仕掛けるのが大好きらしく、まんまとターゲットに

されてしまったようだ。

 

「ごめんねー、お昼まだでしょ鶴木さん。ドッキリ賞としてウナギ奢るから勘弁してね。」

「ホンマやでー、鶴木さんには親近感わくから心が痛んだわー。」

恵那に続いてあおいの妹、犬山あかりが後部座席から屈託のない笑顔でそう返す。姉妹だけあって

少々のコーディネイトで姉に化けるのは簡単だったが、ゆいいつ一致しない胸のサイズを

逆手にとってのサプライズだったらしい。ちなみに姉のあおいは今日夕方からの現地合流との事だ

 

「たわわエキスはホンマにあるんやで!ウチなんかそのエキスをあおいちゃんに

全部吸われてもうてこの有様なんやから・・・仲良くしよーなぁ鶴木さん。」

 どうもあかりにとって胸の無さはコンプレックスらしく、同じくぺったんこの陽渚に

シンパシーを感じているらしい。

 

「ま、まだ私も可能性、あるもん。」

 25歳になる陽渚の無駄な抵抗に車内に笑いが沸き起こる。ちなみに立ち寄った

ウナギ屋でひと口かば焼きを頬張った瞬間から、そんなことどーでもいいくらい

幸せな気分になったし、富士山が視界に入った時からすっかり心奪われて

忘却の彼方へ飛んで行ってしまったのだが。

 

 

「着いたよー、ここが決戦の地、富士川松ぼっくりキャンプ場だよ。」

「あの看板、ウチがデザインしたんやでー!」

 細い山道を駆け上がった先のキャンプ場に車が到着する。あかりの言葉に反応して

車窓からアクリルガラスで出来た看板を見やって、おおー!と感心する陽渚。

「あかりちゃんは美大生だからねー。」

「へぇ、どうりで。構図といいフォントのチョイスといい、外枠のスペースの開け方といい

完璧じゃない!」

うんうんと感心する陽渚に、あかりはやけに詳しいなぁ、と首をひねる。

「あ、私一応インテリアコーディネイターやってるから。」

「プロやないか!」

 

 

 場内には数組のキャンパーが今夜の泊りの準備をしていた。その上の管理事務所には

見知った顔の女性が3人、ズンドウを囲んで喧々囂々していたが、こちらに気付くと

一斉に手を振り、笑顔で駆けつけてくる。

 

「鶴木嬢!ひっさしぶりだなぁ~。」

「ひなちゃんも変わってないねぃ。」

 大垣千明と各務原なでしこが陽渚の手を取って再会を喜ぶ。特に千明は10年前に

陽渚に釣りのペアを組んで指導をしてもらった事もあり、獲った手をぶんぶん上下させて

嬉々としている。その後ろでは一足先に合流した大野が、ひなちゃんお疲れ様、と長旅を労う。

 恵那も大野との再会に笑顔を見せるが、その横であかりが大野の胸をじっと見ながら

思わず嘆く。あおいちゃんに匹敵するたわわエキスの持ち主やな、と。

 

「じゃ、これ付けてくれたまえ。」

 千明からスタッフの首紐名札を渡される陽渚。今夜はここで泊るわけじゃなく、あくまで

顔見せと簡単な手伝いをするだけの為に来たのだ。キャンプをしない者がキャンプ場を

うろつくのはマナー違反であり、それを避けるためにもゲストスタッフとしての立場で

動いてもらう為の配慮である。

 

 明日に備えての準備、大野となでしこは振る舞い鍋の調理の最終確認を、千明は例の

フォトコンテストに使う様々な貸し出しグラスと、リクエストに応じて出すカクテルの

材料の仕込みに入っている。

「へぇ~、大垣さんカクテル作れるんだ、すごい!」

「学生時代にハマってたんだよ、今は飲む方がメインなんだがなー。」

頭をかいて笑う千明に、陽渚は楽しみにしてますね、と手を合わせる。そっか、大垣さんも

イケるクチなんだ・・・

 

 一通りキャンプ場を見て回った陽渚がみんなの所に戻って感想を告げる。

いいキャンプ場です、ここを自分たちで作るなんて本当にすごい!と絶賛した後、

手空きの自分が出来る事をと考えたアイデアを伝える。

「せっかくのお正月なんですから、もう少し飾りつけを凝りましょう!」

 

 確かに正月用に門松こそ用意されているが、他は特にお正月使用の飾りつけもなく

普通の殺風景なキャンプ場でしかない。それがいいんだよという人もるだろうけど、

陽渚にしてみればやはりどこか物足りなさを感じる。

 

「そや、そのとーり!さすがプロや。ちゅーわけでウチらはこのキャンプ場をもっとデコるで!」

 あかりの言葉に陽渚も、おーっ!とグーを掲げ、裏の倉庫周辺に何か使えそうなものが無いか

物色を始める。

「この倒木かっこいい、入場門の際に飾ったら良さそう!」

「これホコリまみれやけどモールや!洗ったら使えるやないか。」

「日の丸の旗発見!ポールもあるし、管理棟に飾ろう。富士山に映えるよ!!」

 

 美術大学生とインテリアコーディネーターの指示の元、大晦日~元旦用の飾り付けが

急ピッチで進んでいく。恵那も買い出しに車を出し、夜のとばりが落ちる頃には

一段階クオリティの上がった(?)キャンプ場へと姿を変えたのだった。

 

 最後に駆け付けた犬山あおいが思わず「何があったんやコレ・・・」と固まるほどに。




あかりちゃん(劇場版)のお陰で話が膨らみました。
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