特典が発動する度にトラウマと胃痛が増えるのだが・・・ 作:修道女は正義
いつも感想と、読んでくださる皆様、本当にありがとうございます。
拙い分ですが、これからもよろしくお願いいたします。
昨日深夜、港倉庫に我々が現在調査中の銃密売に関わっていると思われる集団がいるとの情報を手に入れた。
調査のため付近のリコリス(ファースト1名、セカンド2名、サード3名)を現場に急行させたところ戦闘に移行。
戦闘中ジャミングが発生し倉庫内のリコリスと連絡が取れなくなるというアクシデントが発生。
一時は窮地に陥るもリコリスたちの活躍により状況は打破された。
テロリストは全員捕獲。
現在は諜報部が情報の抜き取りを行っており、終了したのち処分することが確定している。
また今回得た情報が罠だった、もしくは情報が漏れていた可能性があるため情報部及び監査部が調査に当たっている。
「まったく、笑える話だ」
リコリス司令室にて。
デスク上に置いたモニターに表示された情報を顔色一つ変えずに見終えた後、現リコリス司令官の楠木は深いため息を吐きながら言葉を紡ぐ。
『大人のツケを子供に払わせた、か?』
「まさか、ここまで派手に動いておいて銃器の情報がまだ出ないことにだよ」
リコリスだろうが成人済みの職員だろうが変わらんよ、と言いながらぬるくなったコーヒーを口に含む。
『情報が出てこないのか?』
「まったくな。おそらく特A級のハッカー、情報屋が動いている。中々尻尾をつかめん」
『最近噂のウォールナットとかが怪しいかもな』
「情報部もそう睨んでいる。結果は出ていないが」
コーヒーを飲みほし、追加のコーヒーを入れる。
『それで今回「俺達」を呼んだのはその調査に協力しろということ、でいいんだな』
「それは言わなくてもわかっていただろう。ミカ、千束」
『いらっしゃいませー!! 何名様ですか!! あ、赤ちゃん、こんにちはー!!』
「・・・」
沈黙。
モニターの画面に映る黒人の偉丈夫も苦笑している。
『済まないな。千束は今シフト中でな』
「今すぐモニターの前に連れてこい」
『店長、ミルク温めてもいいですか!? 後、赤ちゃんと一緒に写真撮るからガラガラとか無いですか!!』
『おい千束!! 早くホール戻ってこい!!』
「・・・繁盛しているようだな」
閑話休題。
客足が落ち着いた後を見計らい再び通信を繋ぐ。
『いやあ、すみません司令、今かき入れ時で沢山お客さん来てもらわないといけなくて。あ、そうだ司令も来ます? 新しく「練乳たっぷり羊羹パフェ」ていうのができてこれが密かにバズってて・・・』
「本題に入るぞ」
目の前にいる銀髪の少女。
『歴代最強のリコリス』錦木千束のこの行動、言動にはもう慣れている。
彼女はこのハイテンションな会話のペースでこちらからする話を有耶無耶にするのだ。
「安心しろ今回はいつもの依頼ではない、『別件』だ」
そういうとミカ、そして千束も驚いたようにこちらも見てくる。
「だから少しは真面目に話を聞け」
そう言いながらマウスで1つの動画を再生する。
「昨日、港倉庫での戦闘映像だ。ギリギリ生きてた敵の監視カメラから回収した。お前達にはこの動画を見た感想を聞かせて欲しい」
『あ、フキ』
『なかなかの手練れだな、よく訓練されている。どこかの軍隊崩れ・・・もしくは『同業』というのが妥当だろう』
「見てほしいのはそちらではない。このサードリコリスの動きについてだ」
特に、千束。
下手をすれば『歴代最強のリコリス』の看板は返上してもらうことになるかもしれんぞ。
その言葉を飲み込み、3人は動画に注目する。
(胃が、胃、があああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)
さらに頭がものすごく痛い。
昨夜HSSを発動し、そのショックとストレス、そして今後のことについて考えすぎたため全く眠れていない。
戦闘後ということで今日は昼からの勤務となっていたが、それでも疲労と胃痛の種は消えない。
目下の問題はただ一つ。
(何で司令室に呼ばれた? 要件何? 昨夜のことだよね? どう言い訳しよう!? どう言い逃れる!?)
周囲からの視線を避け、
目立たないように、
静かに、
後方勤務を目指しつつ現在のパトロール任務(時々殺し合いアリ)を生き残り、
転職に向けて勉強するという私の崇高なる目的を叶えるために今まで積み上げてきた努力が崩れ去ってしまった。
(最前線送りヤダ、そしてそれ以上にこの体質について探られるのはもっとヤダ)
あまりにもストレスが溜まっているのか言語が幼稚になっている気がしないでもないがとにかく色々と不味いのである。
さらに追い打ちをかけるかのように
『(ねえ、聞いた昨日の事?)』
『(聞いた聞いた、港倉庫で戦闘の事でしょ?)』
『(サードのリコリスが・・・)』
『(なんかものすごく・・・)』
『(実はその任務に参加したのが同期でさ・・・)』
『(なんかもうすごかったらしくて!!)』
なんかものすごい昨夜のことが噂になっていた。
(え何やっぱりあんなハズイセリフとハズイ言動したからやややややっぱりキモイよねそうだよねそうですよねああああああああああああああああああああああああ)
睡眠不足とストレスで脳がイカレる前にどうにか憩いの場(男性用トイレ)に駆け込み、胃通薬を摂取。
そしてついでに頭痛薬を飲み、抗ストレス薬を摂取。
司令室に行く前に問題を整理しなければいけない。
(噂はこの組織全員に広がっている。そして確実にキモがられている(勘違いです)。これはもう仕方がない。しかし、話を聞いていいるとどうも昨夜の戦闘に参加した『メンバー』については伏せられいる模様。)
しかし、それは何故?
(あそこで取引される予定のものが相当不味いものだった、とか?)
だとすれば。
(最前線送りですよねやだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ)
胃痛は、消えない。
目立たないように通路を選びながら、ようやく司令室についた。
(大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫大丈夫)
何度も脳内シュミレーションを重ねた結果出た結論はただ一つ。
当たって砕ける勢いで行くしかねえ。
(バレない範囲でこちらの事情を暈しながら説明。自分はそんなに強くない!! 体質については絶対にばれないように!! 前線送りは無理ですって!!)
前世で仕事でミスした時以上のストレスを感じながら、私は、司令室の扉を叩く。
(どうとでもなれ!!)
その先には・・・。
数分前。
「動画を見た上で改めて聞く。千束、コイツと同じことができるか?」
『無・理・で・す!! 何この子、ハリウッド俳優!? 映画か何かの間違いでしょ、何でこんな意味不明なことできるの!?』
お前が言うな、とミカと楠木の心がシンクロした。
「解析班もそういっていたよ。お前からは同じリコリス、戦闘者としての意見を聞きたい」
『端的に言うとコイツ本当に人間?て印象ですね』
『・・・勝てるか?』
『無理、というかそもそも立ってる次元が違いすぎますよ店長。』
千束は歴代最強のリコリスである。
それは客観的な評価でもあるし、なにより自負でもある。
しかし、その千束がこう言うのである。
『この子、私と同じように相手の動きを予測して銃弾躱してます』
「それは分かっている。問題は・・・」
『それ以外、でしょ?』
画面先の千束の雰囲気が変わる。
天真爛漫な少女から、熟練の戦士へと、面構えを変えた。
『楠木さん・・・』
私、この子と話してみたいです。
なお、組織内で主人公の『行動』はバレていますが『素性』は『まだ』バレていません。
次位で主人公の組織内での印象を書いてみたいと思います。