「ここがトレセン学園か。興奮してきたな」 作:愉快な笛吹きさん
ワタクシの名前はシラオキ。元ウマ娘で、天寿を全うした後は偉大なる三女神様の命により、トレセン学園にある女神像の管理をしています。
管理人であるワタクシの仕事は、ここを訪れた可愛い後輩たちにレースで勝つ力を授けること。でも残念ながら私一人では時間に限りがあり、誰でもというわけにはいきません。
前置きが長くなりました。そうこうするうちに今日もやって来たようです。才能ある、一人のウマ娘が。
「ここは……ワッツ!? 急に目の前が暗くなって、誰かが私の前を走り去っていきマース!?」
金色に光るとは実に幸運なウマ娘のようですね。さあ後を追いかけなさい。そして新たな力を手にするのです!
「ウーン……やっぱり止めときまショウ!」
「えっ? いやちょっと待って! 待って下さい!」
「オーウ! 突然現れてビックリしました。ユーは誰ですカ?」
「ワタクシはシラオキと申します。それより、何故帰ろうとするのですか?」
「知らない人には付いていくなよって、トレーナーさんに言われましタ!」
「あーなるほど。もう余計なことを……いやでも、こうして金色に光る道が敷かれて、顔見知りじゃないかもしれないけど、学園の仲間が走っていったわけですよ? ちょっと興味なくないですか?」
「UFOにデスか?」
「いやUFOじゃないです。別に連れ去ったりとかしないですから。ちょっと新しい力が湧くだけで」
「やっぱりUFOですネ?」
「だからUFOじゃないんですって。人体改造で超能力とか芽生えたりしませんし。もういいからさっさと走っちゃってもらえますか?」
「ノー、今日はオフだから絶対走んじゃねえぞってトレーナーさんに言われてマース」
「タイミング悪過ぎでしょトレーナーさん! ……すみません、ちょっと取り乱しました。別に走れないんなら小走りでいいんです。何なら歩きでも匍匐前進でも構いませんから」
「まるで訪問セールスみたいな必死さデスね……シラオキはこの学園のトレーナーさんなのですカ?」
「いえ、トレーナーではないです」
「ではティーチャーさんですカ?」
「いや、それも違いますね」
「なら不審者に間違いありまセーン! 知らない人の言うことは聞くんじゃねえぞってトレーナーさんに教わりました」
「つくづく余計ですね貴女のトレーナーさんは! もう時間も無いのに……ではこうしましょう。距離適性を更に伸ばしてあげるのであっち行ってもらえます?」
「微妙に失礼な言い方になった感じがしマース。でも距離適性はありがたいデース。いつも距離が近えよ、ってトレーナーさんに言われますノデ」
「いや人との距離の話じゃないので。そういうのは啓発本やカウンセリングとかで解決して下さい。そうではなく、あなたは短距離とマイルが得意なようですね。もしも短距離適性が上がれば更に強いスプリンターになれますよ」
「ウーン、散水車にはなりたくはありまセーン」
「スプリンクラーじゃなくてスプリンターです! ならマイルの方を伸ばしてあげますから、何とか手を打ってもらえませんか? 貴女なら今後の努力次第では海外G1も取れると思うので」
「そうですネ……今日はひとまず話を持ち帰って前向きに検討してみマース。ではシーユー」
「もうそれ典型的な断り文句じゃないですかあ! 困るんですよいい加減に早く行ってくれないと! 4時になったら次の方来ちゃいますから!」
「ホスピタルみたいなシステムですネ……ウーンわかりました。なんだか可愛そうなので走ってあげマース」
「ありがとうございます。そしたらもう担当者は先に行ってるんで後を追いかけてもらえれば……はい、適性ももちろん。はい、ではよろしくお願いします。足元お気をつけてー」
「…………ふう、やっと行ってくれました。トレーナーさんが用心深いせいで無駄に時間を食っちゃいましたね。全く腹だたしい……ってもう4時なの! まだ一人しか継承用の娘を設置できてないのに。もうこうなったら――」
「――あら? 急に辺りが真っ暗になりましたね。これは一体……きゃっ」
まさかワタクシが代わりに走ることになるなんて……まあいいでしょう。ワタクシにしっかり付いてきなさい。そして新たな力を――ぐえっ!?
「もうっ! 校内を全力で走っちゃいけませんっ」
「いえ、ここは校内ではなく……というか何であの体勢から捕まえられるんですか!?」
「校則違反を見つけたらそうなりますが」
「凄いですね校則違反。ワタクシも現役時代に風紀委員やればよかった」
「それより貴女は? 見たところ学園関係者では無さそうですが」
「ああ申し遅れました。ワタクシはシラオキです」
「カニさんですか?」
「いやシオマネキではなくて。シラオキです」
「シラオキ……ああ確かマチカネフクキタルさんの占いの呪文に出てくる方ですよね? ふんにゃかハッピー、般若がラッキー、ファッキューシラオキって」
「それはもう占いじゃなくて呪いの言葉では!? ワタクシ彼女に何かしましたっけ?」
「私に聞かれても……それよりここは一体どこなんでしょうか?」
「ここは継承の間です。かつてトゥインクルシリーズを走り抜けたウマ娘が女神像に託した想いを力に変え、新たなウマ娘に授ける場所――」
「つまりリサイクルセンターみたいなものですね」
「いやまあそうなんですけど。空き缶やペットボトルみたいな扱いをされるのは何というかちょっと……」
「とにかく、私がその継承先に選ばれたということでしょうか?」
「ええ。ちなみにこの儀式は誰でもという訳ではありません。貴女は運が良かったのですよ」
「運ですか……どうせなら福引の温泉旅行の方に使ってほしかったんですが」
「そう言われましても……貴女だってレースで苦労した経験はあるでしょう?」
「ありませんよ?」
「またまた。もっとスピードがあれば――とか、あのタイミングで加速さえできていれば――とか思ったことがある筈ですよ?」
「ちょっと何言ってるかわかりません」
「何でわからないんですか! もういいです。ワタクシの力で貴女の弱点を覗いてみますから。いきますよ」
【ウマソウルネーム】
トキノミノル
【各種ステータス】
スピード 1307
スタミナ 810
パワー 1196
根性 978
賢さ 1141
【現在取得しているスキル】
コンセントレーション
先手必勝
トップランナー
お先に失礼っ!
脱出術
逃亡者
全身全霊
弧線のプロフェッサー
ハヤテ一文字
一陣の風
曲線のソムリエ
円弧のマエストロ
じゃじゃウマ娘
逃げコーナー ○
マイルコーナー ○
中距離コーナー ○
長距離コーナー ○
逃げ直線 ○
マイル直線 ○
中距離直線 ○
長距離直線 ○
リードキープ
地固め
尻尾上がり
逃げのコツ ◎
右回り ◎
左回り ◎
良バ場 ○
道悪 ○
春ウマ娘 ○
夏ウマ娘 ○
秋ウマ娘 ○
冬ウマ娘 ○
「…………」
「どうでしょうか? 強いて言えば長距離の経験があまり無いのでその辺かなとは思ってますが」
「……ごめんなさい。全然弱点とか無かったです。むしろパーフェクト過ぎて引くレベルでした」
「でも儀式は続けるつもりなんですよね?」
「いえ、流石にこれ以上他のウマ娘との差が開くのはちょっと……申し訳ありませんが今回はキャンセルさせて下さい」
「ええ、構いませんよ。では私はこれで」
「はい、お気をつけて……うう、また無駄な時間を。もっと手際よくやっていきたいのに……」
「…………その、良かったらですけど。何かお手伝いしましょうか?」
「えっ? ほ、本当ですか?」
「はい。切羽詰まった表情を見ていたらどうにも他人事とは思えなくて……普段は学園秘書をしていますから、大抵のことには対応できると思いますよ」
「あ、ありがとうございます! で、では権限を貸すので二人で手分けしてもらえますか?」
「わかりました。頑張ってみますね」
――数ヶ月後、フランスにて
『タイキシャトル、今一着でゴールイン! 日本勢初となる、ジャック・ル・マロワの勝利を手にしました!』
「ビクトリー! やりましたトレーナーさん! 早速ダルマに目を描き入れましょう!」
「描かねえよ。選挙で当選したんじゃ無えんだから。でもほんと、見事な勝利だったな」
「ウフフ、これもトレーナーさんと、力をくれたオシオキのおかげデース!」
「シラオキな。力くれて罰与えるとか意味わかんねえから。けどそれ、マジであった出来事なのか?」
「もう、信じて下サーイ! 本当にあのとき白昼夢を見たのデース!」
「いや思いきり夢って言ってんじゃねえかよ。たづなさんも見たっていうけど、女神像に行っても何も変わらなかったってウマ娘の方が多いみたいだし、あんま信用できねえなあ」
「いえ、全部本当ですよ。単に管理人さんが忙しいだけみたいです。まあ今後はそうではないでしょうけど」
「?」
――その後、トレセン学園の女神像で新たな力を手にする者が増えたとの報告があった。
体験した者の中には通常の金、銀ではなく、何故か緑色に光る道を見たという者もおり、遭遇した者はその後のレースで著しい活躍を見せたものの、その中身については皆口を揃えて「地獄を見た」と語るのみだったとか。
――たづなさんによる因子継承――
「はー今日のレースもまた三位。こうも続いちゃ流石にネイチャさんの心も折れちゃいますよーって……何これ? 突然真っ暗になって、緑色の光? ……よくわかんないけど前を通り過ぎたさっきのウマ娘を追いかけたらいいのかな? よし――」
「――ふふっ、どうしましたか? 早く捕まえて下さい」
「ぜえっ……はあっ……うぷっ……いや、早すぎでしょ! もう無理ぃ〜」
「うーん、とりあえずスピードとパワーと根性が不足しているようですね。ではアップはこれくらいにして、早速基礎トレーニングに移りましょうか」
「えっ……? あ、あれがアップって……じ、冗談DEATHよね?」
「いえ本当ですよ。ちなみに、ここは時間が流れないので私がいいと言うまで無限にトレーニングができるんです。頑張って下さいね」
「ひ、ひいいっ……んにゃあああ〜!!」
終
シラオキ様の口調なんかはフクキタルのイベントを参考にしました。
次回は普通にやると思います。
追記 まさか日間&週間ランキングに顔を出すとは思いもよらなかった。本当にありがとうございます。