ハガレン熱が再発し、その勢いで書きなぐったオリライ小説二作目となります。
一作目のテーマは精霊と鍵でしたが、今回のテーマは錬金術。それを使いこなして戦う仮面ライダーとなります。
私が書き、今現在も連載中のオリライ小説一作目『仮面ライダーロード』共々、よろしくお願いします。それではどうぞ!
錬金術。後に我々現代人にとって切っても切れない密接な関係にある化学の祖とも呼ばれる術。卑金属から金を精錬する、或いは様々な物質や人間の魂をも対象としてより完全な存在に錬成する試みの事を指す。
長い歴史の中で錬金術は『化学』に生まれ変わり、今や錬金術そのものが否定の目で見られる現代に於いて錬金術師の血を引く者達はその人数を大きく減らし、今は数える程しか居ない。それも、自分達が錬金術師だと言う事を隠した上で細々と生きていた。
だが、それでも現代に生きる錬金術師達は歴代の錬金術師達が追い求めた悲願をこの手で果たすべく、活動を開始する。その悲願とは、卑金属から金などの貴金属に変え、人間を不老不死に変えるという究極の物質……『賢者の石』の作成、及び発見する事。
そしてもう一つの悲願は、賢者の石と同様に金属変成や病気治癒を可能とする霊薬『エリクサー』。例え瀕死の状態の病人でさえもコレを飲めばたちまち容態が回復するという薬を作成する事。
この二つの悲願を達成すべく、錬金術師達は各地で行動を開始。今まで何も無かった彼等の動きが見られるようになる。ある者は悪意を持って、またある者は手段を選ばずに我先にと追い求め、何時しかそれが争いに発展する。
───そして、とある町にて学者をしている女性もまた、錬金術師達が動き出した町の裏側で一人、とある目的を持って動き始めていた。
コレは、現代を生きるに当たって錬金術師という身分を隠して平和に暮らしている一人の女性が、錬金術師達の陰謀に立ち向かっていくお話。
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───西暦21XX年。
今も尚急速に発達と成長を続ける化学によって繁栄を続け、更なるネットワークの発達により約100年前の生活とは比べ物にならない程に生活がしやすくなった町、
容姿は腰まで伸ばした黒い長髪に日焼けとは無縁の白い肌が目立つ白衣姿の女性。身長もそれなりにあってスタイルも良く、異性であれば無意識に何処と無く惹かれる雰囲気を醸し出している。
「(豪邸にしては寂れてるし、何処からどう見たってワケありなんだろうけど……)ま、此処はどの道自分の実験やら研究やら、後は仕事や生活くらいにしか使わないからいわく付きだろうとなんだろうと別に構わないけど」
そうボヤきながら、彼女は一人寂れた豪邸の中へ入っていく。首には何処かの研究所の職員と思われる名札が提げられており、名前の欄には彼女の証明写真と共に
彼女はとある研究所に勤める職員の一人であり、常人と比べて頭脳は良い。その上、彼女が所属する研究所は各地に支部があり、彼女はそれのツテで赤機ヶ原に来ていたのだ。勿論、誰にも邪魔されずに自分の研究をする為に。
それはさておき、彼女が買った……否、研究所のツテで譲り受けた豪邸は、外見こそ少し寂れていたが生活は勿論自分の研究をする分には十分な広さ。それを再度実感したのは、中に入ってからだ。
「うわ、広っ……というかあの研究所、こんな大それた物件をさも当然のように所有してて、しかも一学者の私に何の躊躇いなく渡せる辺り……冷静に考えて怖いわ…」
入ってすぐに、その広さに驚きを隠せない様子で呟く朔夜。その広さというのは住居スペースと研究に使うスペースの二つに分けても尚、物を置けるスペースがある程。多人数で暮らす事を前提とした広さである。
住居としてのスペースは生活に困らない程度、それこそ最低限のスペースさえあれば良いと考えている朔夜は、研究に必要なスペースを多く設ける事にして荷解きを開始する。とはいえ、荷解きと言っても、その多くは書類や小難しい事がビッシリと書かれている分厚い本など研究に必要なものばかり。
学者という仕事柄外に出るのはあまり無い為か衣服類などの生活必需品は必要最低限であり、大抵引越しする前に余分なものを処分するようにしている。故に生活必需品の量は研究に必要なものより少ない。
「さて、と。荷解きが粗方終わったら
朔夜が荷解きをしつつ、荷物の一つから取り出したのは厳重に密閉されたフラスコの中にある何の変哲もない石のような物質と何かの紋様が描かれ、何かを二つ装填出来る溝と右側に稼働するレバーが付いた機械のようなもの。機械っぽい何かをよく見ればバックルのように見える。
機械のようなものは朔夜自身が開発しているものなのだが、肝心のフラスコの中身……バックルのような機械に装填出来るように改造を施した二つは兎も角、一つだけ異彩を放つそれを見やる。
フラスコは中身が外へ出ないようにそれぞれ厳重に密閉されているが、他の二つと違って一際異彩を放つそれは一見すると赤と黒の二色が織り交ざった色をしている点を除けば、道端に落ちている石と変わりないもの。しかし、それが何故こうも厳重に密閉され、保管されているのかまでは朔夜本人にも分からない。
(こっちの二つも含めて、フラスコの中にある物質は私達の家系というか私達の御先祖様から続いてる血筋に大いに関係のある代物だ、例え命を落とす事になろうとも決して誰にも渡すな……って、私の伯父からは聞かされてはいたけど、ぶっちゃけそんなの眉唾物っぽいから全く信用してない。あんだけ熱弁してくれたのにこれっぽっちも信用してなくてごめんね、伯父さん)
フラスコの中身、正体不明の物質について考えを巡らすのだが、結局は情報不足という事で一旦保留にして頭の片隅に追いやった朔夜。
中身が入った厳重に密閉されているフラスコとバックルのような機械の二つを研究スペースとした場所に置いてある机の上に置き、後の二つはひとまず白衣のポケットに突っ込んでおいて残りの荷解きを終わらすべく早急に取り掛かる。
その際、荷解きに夢中になっている時は気づきもしなかったのだが、フラスコの中身の石のような物質と朔夜が開発中のバックルのような機械に描かれた陣のような紋様がお互いに反応を示すかのように、微かに共鳴をしていた。
「うーん……コイツの完成にはやっぱり何かが足りないように見える…それが分かれば楽なんだけど、そう簡単には行かないか。ま、こういうのは一筋縄で行かないから面白いんだよね」
それからしばらくしてやっと荷解きを終えて整理も終えた朔夜は早速研究スペースに向かい、持参していた大量の書類や本などを手当り次第に広げ、伯父から渡されたフラスコの中身についての研究を続ける傍らでバックルのような機械の開発を続けていた。
機械の方はほぼ完成しているものの、機械そのものを動かす決定的な何かが足りないように見える。その証拠に電気や水力、風力などの自然エネルギーが動力にならないかどうかを試してみるものの、どういう訳かうんともすんとも言わない状態。
試行錯誤を繰り返しても全く反応を示さない為、完成に向けた開発の方は後回しにする事に決めた朔夜。勿論、続いてやる事と言えばフラスコの中身についての研究。研究の傍らで各地から取り寄せたあらゆる文献や本、文字通り血反吐を吐きながら自分で集めてきた資料や書類などを再び手当り次第に読み漁っていく。
そしてそれは、日付けが変わるまで続いた。一学者である朔夜の日常としては、自分の研究に没頭した結果二徹三徹など既に日常茶飯事である。それでも身体の限界が来れば問答無用で寝てしまうが。
───だが、この時の朔夜はまだ知らない。自分が謎の物質の研究及び解析とバックルのような機械の開発を続けているその裏で、後に世界そのものを揺るがしかねないある陰謀が動き始めている事を。
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───場所は変わり、赤機ヵ原のとある裏路地。そこは人で賑わいを見せる表の町並みとは違い、常に薄暗く人が居るのかすらも分からない場所。言うなれば、化学とネットワークの発展によって明るいイメージが強い赤機ヵ原の裏の顔。
赤機ヵ原に住む人々は勿論、普通の人であればまず立ち入る事が無いであろうそんな場所に、人の影があった。暗がりの為顔は見えない。しかし、身にまとっている物だけは何故かハッキリと見えていた。
その人影が身にまとっている物は、顔を隠せるフードが付いた白衣っぽい衣服。だが、それは全体的に薄汚れ、更に所々がボロボロで修繕の跡すら無い。そんな物を好んで着ている辺り、常人ではないのだろう。それが、一人ではなく何人も居る。
その内の一人が何かを感知したのか、話を止めてとある方向を向く。その先にあるのは、朔夜が居るあの寂れた豪邸だった。その人物の眼に朔夜が見えているのかどうかは不明だが、ニヤリと口角を動かしたように思える。
「……風の便りでこの町に来たのは良い。そして、これも運命というものか。やはり
そう言いつつ、謎の人物は自らの懐から何かを取り出す。それは、朔夜が持っているフラスコと似たようなもの。違う点としては、朔夜が持っているものとは違って厳重に密閉はされていないその中には何かの物質が入っていた。
謎の人物は躊躇うこと無くフラスコの中身を外へ出し、その周りを囲むように丸い円を描く。それはまるで遥か昔に存在した術、錬金術に用いられる五行の陣のようなもの。それを描いた謎の人物は何やら呟き、片手を陣の中心……先程フラスコから出した中身へ突き出す。
そうして、何かを呟きながら突き出した手の指を薄く切り、陣の中央にある何かに赤い水滴を数滴垂らす。すると、不思議な事に五行の陣のようなものが輝き、その物質が段々と形を得て人型になっていく。
「
謎の人物がフラスコの中から取り出した何か、それはカッパー……一般的に銅鉱石と呼ばれる鉱石の一つ。それと錬金術に用いられる陣と鉱石の組み合わせによって人為的に生み出された人工生命体の名をアルクルスと名付けた。
鉱石を媒体に生み出されたアルクルスは凡そ人の形を取っていたものの何処か
主に絶対の忠誠を誓う騎士のように片膝をつき、アルクルスを生み出した錬金術師の命令を待つカッパー・アルクルス。それを見下ろしている錬金術師と思われる人物はただ一つの命令を課す。
「我等錬金術師の兼ねてよりの悲願。その達成を邪魔立てする、我等と同じ錬金術師でありながら錬金術師に牙を剥く一族の末裔である※※※※※の命を奪え。手段は問わない、お前の好きにしろ」
自らを生み出した主からの命令を受け取ったカッパー・アルクルスは一つ確かに頷いて立ち上がると、凡そ人間には不可能な不規則すぎる動きをしながら裏路地の奥深くへと消えていく。
それを見送ったカッパー・アルクルスを生み出した主は他の錬金術師と思われる人物達と共に裏路地の闇へと消えていく。その顔に歪な笑みを浮かべて。
「さて……我等錬金術師の手前、奴の命を奪ってこいと命じたが、最終的に貴様を殺すのは我か、我等の誰かだ。我等が生み出した尖兵……アルクルス如きに苦戦し、いとも容易く死なないでくれよ? ※※※※※」
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「寒っ……重ね着、した方が良いかな…? (というより……これって悪寒? 珍しい事もあるものね。職業柄、不特定多数から恨みつらみは買う方だけど、ここまで一方的なのは珍しいかも)」
謎の人物が人工生命体アルクルスを生み出し、命令を与えた頃と同時刻。一心不乱に研究資料などを読み漁り、研究に没頭していた朔夜の背筋にぞわり、と嫌な寒気が走る。
不意に訪れた悪寒のせいで極限まで高まっていた集中力がプツリと途切れた朔夜は、思いっきり身体を伸ばした後にふと時計をみやる。時計は深夜と早朝の中間付近の時刻を指し示していた。集中し始めたのが昼前だと考えると、昼ご飯の事すらも忘れて没頭し続けていたという事になる。
それを見た朔夜はため息を一つつき、もう一度集中力を高める事をせずに一旦休憩を取る事に。休む事を考えれば都合よく空腹を訴えるお腹を落ち着かせるべく台所にある常備食を適当にいくつか掴み取っては片っ端から食べていく。
「……ふぅ。一人だとこういう所見られても別に気にならないから良いわ…昔、助手が居た頃は私のオカンかってくらいに栄養だのなんだのとやかましかったし」
常備食をある程度食べ終え、やっと満足したのか笑みを浮かべる朔夜。彼女は食に対してはかなりズボラな所がある。有り体に言えば手抜きが凄い。どのくらい手抜きかと言えば、レンジに突っ込んでチンするだけで直ぐに食べられる冷凍食品すら面倒くさがる程。
故に彼女の主食は携帯食糧などの安易に開封しない限りは長く日持ちする常備食だ。勿論、こんな食生活をいつまでも続けられる訳も無く、ごくまれに自炊もしている。それすらも面倒くさがってやらない日が圧倒的に多いが。
それは兎も角、腹ごしらえを済ませた朔夜は今日はひとまず寝ようとフカフカの寝床へ入るべく寝室へ向かおうと歩を進めたその直後、来て間もない豪邸の廊下から爆音が響き渡る。その音に足を止めた朔夜は頭の片隅で引越し早々厄日かなと思いつつ、寝室へ行くのを諦めて音が聞こえてきた方へ歩き出す。
「……こんな時間に堂々と来るって事は、招かねざる客って所かしら。ったく、コッチの手間増やしちゃってもう。引越し早々面倒くさいなぁ…」
ブツブツ言いながら音が聞こえてきた方へ向かうと、そこに居たのは廊下の壁をぶち破って侵入して来た何者か。そいつを視界に捉えた朔夜は思わず愚痴る。それが人であれば朔夜でも対処は出来るのだが、侵入者と思われる何者かは明らかに
侵入者の背丈は一般の男性、それも二十歳そこそこの平均身長より少し低いくらいの背丈。しかし、全身は肌色ではない。侵入者の全身の体色はくすんだ銅色をしており、人間っぽい頭部こそあるもののそこにある筈の顔が無かったり片腕が無かったり、胸に見事な風穴が空いてたりと明らかに人ではない事が分かる。
侵入者は朔夜の事を認識すると油が切れた玩具のようにギギギと音を出しながら首を向けて一歩一歩、聞くだけで耳障りな金属音を出しながら朔夜に近づいてくる。
そうして、ある一定の距離まで近づいたその時。侵入者は声にならない唸り声を上げつつ腕を振りかぶり、朔夜目掛けて襲いかかってきた。
『guruuuuAAAAA……!!!』
「───ッ! 出会って早々血の気の多い奴……っ! 恨みつらみは買う方でも、いくらなんでもこんな得体の知れない化物に命を狙われる筋合いは無いっての!」
侵入者は朔夜の命を奪うべく力任せに片腕を振り回し、瓦礫を飛ばし、所狭しと暴れる。それを紙一重で躱す朔夜。このままやられっぱなしなのは癪に障るのか、反撃に出ようとする。が、その手立ては今現在丸腰同然の彼女には無い。
それに、侵入者の体表は見た目から分かる通り非常に硬そうな体表をしている。生身の人間の拳や足では生半可な反撃すら通らず、太刀打ち出来そうにもないのは確かだ。
頭脳をフル回転させながらこの場を切り抜ける打開策を出そうと模索する間に、くすんだ銅色の体表を持つ片腕の侵入者は朔夜の命を奪うべく、矢継ぎ早に攻撃を繰り出しながら刻一刻と迫り来る。
それ等をなんとか躱しながら朔夜が逃げ込んだ先にあるのは、依然として開発途中のバックルのような機械とフラスコの二つ。
未完成の機械と謎の物質が入ったフラスコ、正体不明の侵入者に対抗する術はそれしか無いと本能的に悟った朔夜はそれ等を素早く掴み取り、自宅の外へ転がり出る。引越し早々これ以上自宅を破壊されてはたまったものじゃないからだ。
(外に出た勢いでこれ等を持ってきたのは良いけど、まだ未完成のコイツで彼奴に対抗出来るとは到底思えない。あと一つ、パズルのピースが嵌ればおそらくはいける筈だけど……)
朔夜を追って出てきた何者かを視界に捉えつつ、朔夜がそう思ったその時。今手にしているフラスコの中身……一際異彩を放つ赤黒い石のような物質が僅かに輝きを放つ。それに呼応するかのように、バックルのような機械の中心に描かれた何かの紋様も淡い光を放ち始めた。
それに気づいてもしや、と思った朔夜は淡い光を放つ石のような物質を厳重に密閉されているフラスコの蓋を開け、中から取り出す。すると、不思議な事にフラスコから取り出した途端、バックルのような機械の中へ音も無くするりと入り込んだ。
赤黒い石のような物質の持つ力の恩恵なのかは定かではないが、今まで何の反応も示さなかったバックルのような機械にようやく足りないものがはめ込まれた事により、電子音が鳴り響く。これで今まで完成に至らなかったバックルのような機械がようやく
《Alchemia Driver!》
「……って、あれ? コレ、もしかして完成したの? さっき取り出した石のおかげ? えぇ、と……一体何がどうなってるのか分からない事ばかりなのは確かだし……まぁ、本格的にコレを解析するのは彼奴を倒してからよね」
長い年月をかけても尚、今まで完成に至らなかった代物が急に完成した事を疑問に思う朔夜だったが、解析は後回しという事にして散々追いかけ回された銅色の体表を持つ何者かの前に立つ。先程まで余裕が無いような表情を浮かべていたが、今の朔夜は自信に満ち溢れた表情を浮かべている。
偶然に偶然が重なった結果の末にもたらされた一つの奇跡によって起動に足りないピースがカチリとはまり、たった今完成したばかりの最高傑作……長い歴史の裏側、歴史の影に追いやられた古より伝わる技術を力とし、全身に纏い行使する事が可能となる《アルケミアドライバー》を手にする事が出来た朔夜。
嬉々としてアルケミアドライバーを腰に当てれば、ドライバーの端から自動的に銀色のベルトが伸びて腰に巻き付く。それを確認し、続いて白衣のポケットに突っ込んだままのフラスコ……《アルケミーフラスコ》を取り出す。
「……よし、こうなりゃぶっつけ本番上等! 目の前に丁度良くおあつらえ向きの相手が居るし、コイツの最終調整はリアルタイムで直感的に行えば良いわよね!」
そう意気込んだ朔夜は二つあるフラスコの内一つの蓋を開け、アルケミアドライバーの右側に装填する。ドライバーから装填音が鳴り、何処からともなく何かの実験中と思われる独特な待機音が辺りに鳴り響く。
《
人間や動物のように音が聞こえるのかどうかは定かではないが、朔夜がアルケミアドライバーを巻いた時から何かを警戒するようにくすんだ銅色の体表を持つ何者かはピタリと立ち止まって距離を置いている。それを他所目に、朔夜はアルケミアドライバーの右側に付いているレバーを倒し、叫ぶ。
「準備OK……変身!」
朔夜がアルケミアドライバーのレバーを下へ倒すと、ドライバーの右側に装填されたアルケミーフラスコが中心に向けて倒れてドライバーの中心にある五行の陣に流れ込み、間もなくして変化は訪れる。
アルケミアドライバーのレバーを倒した直後、朔夜の足元にはかつて金を錬金しようと試みた錬金術師達が遺して来たと思われる五行の陣が広がり、朔夜の周囲はフラスコの中身……鉄鉱石と思われる鉱石達が幾つもズラリと並ぶ。
それと同時に朔夜の全身は五行の陣を通る度に白衣姿から銀色のアンダースーツ姿へと変化していき、その上から五行の陣によって加工されていく鉄鉱石が全身を守る装甲……アーマーとなり、アンダースーツ姿の朔夜の身体へ次々と装着されていく。
そして、最後に鉄鉱石をあしらったいぶし銀と橙色に輝く複眼が特徴的な仮面が顔全体を覆い、白衣を模した灰色の腰マントが緩やかに伸びて変身は完了する。
《I am a
主の命を受け、その命を奪うべく追いかけていた存在が全く違う存在へと変身を遂げた事に驚いているのかどうかは定かではないが、全身くすんだ銅色の侵入者──カッパー・アルクルス──は、突如現れた全身に鉄のような装甲を纏った錬金術師に驚きを隠せない様子でいる。
対する朔夜は長い年月をかけてやっと完成した自身の最高傑作をその身に纏う喜びを噛み締めている。今此処に、長い歴史の中で錬金術師達が遺し、そして歴史の裏側に追いやられていった錬金術を行使する者が爆誕した。その名は───
「(うーん……今此処でシステムに名付けるとすると、仮面の錬金術師……じゃあ、なんかしっくりこない。そうねぇ……このシステムの根本にあるのは錬金術、アラビア語で確かアルケミカル。ミカル?) そうだ、今からこのシステムの名はミカル! さぁ、初陣と行こうか……!」
そう高らかに宣言してカッパー・アルクルスを眼前に見据えて戦闘態勢に入る、洞木朔夜改め仮面の錬金術師ミカル。朔夜が変身したミカルに新たな二つ名が付くのは、まだ先の話。
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───朔夜が仮面の錬金術師ことミカルへ変身を遂げた頃と同時刻。カッパー・アルクルスを生み出した錬金術師と思われる人物はフードで隠れている顔から笑みをこぼす。
それはまるで、己が倒すべき因縁の相手を見つけたとも言うべき不敵な笑みだった。
「くくく……そう来なくては面白くないな。さぁ、現代に生きる錬金術師としての貴様の初陣だ、その力とやらを私達に見せてくれよ。※※※※※」
謎の人物は朔夜の本当の名前なのか定かではない名前を言いつつ、ミカルとカッパー・アルクルスの戦いのゴングが鳴らされるのを今か今かと楽しみにしている時。ほぼ同時にミカルの足が地を蹴り、カッパー・アルクルスの剛腕が空を切る。
錬金術の力をその身に纏う仮面の錬金術師と錬金術によって生み出された人工生命体の戦いを傍観する事を決め込んだ、錬金術師と思われる謎の人物はミカルこと朔夜が手にしていたあの謎が多い赤黒い石の気配に薄々勘づいていた。
(我等に牙を剥く一族の当主がアレを所持していない事から何処かおかしいとは思っていたが、やはり奴が持っていたか。自分の身に危険が及ぶ前に奴に託した……大方そういう所だろう。今は良いが、それは貴様が持つべき物ではない。今は良くてもいずれ貴様の身を滅ぼす事になるだろう)
朔夜の伯父こと朔夜の一族の現当主が朔夜に託したものについて何かを察した様子の謎の人物は不敵な笑みを浮かべたまま、傍観する。遥か先の未来を考えながら。
そしてそれは、とある錬金術師の血を引きながら他の錬金術師達を忌み嫌う一族の末裔たる朔夜をも巻き込んだ遥かなる闘争の幕開けとなる。その事に朔夜が気づくのは、まだ先の話。
いずれ己自身を、果てにはお互いの身体に流れる先代の錬金術師達の血や野望、悲願を賭けて戦う事になるであろう朔夜改めミカルの戦いぶりを見ながら、謎の人物は傍観を続ける……
という訳で、錬金術を使う仮面ライダー……その名もミカル。名前の由来はアラビア語の錬金術、アルケミカルから。
ハガレン要素が入ってる、独自解釈もりもりの錬金術の仮面ライダーとなってしまいましたが……()
という事で、次回はミカルの初戦闘から本格的に仮面ライダーミカル、その変身者である朔夜の物語が始まります。不定期投稿ですが、応援してくれたら嬉しいです……!
それでは、お読み下さりありがとうございました。
私の書くオリライ一作目、仮面ライダーロード共々よろしくお願いしますm(_ _)m