仮面ライダーミカル   作:剣舘脇

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( ¯꒳¯ )ドモドモ
前回に引き続き、ミカルの初戦闘から始まります。

それではどうぞ!


2nd Alchemy : 初陣

 仮面の錬金術師、ミカルへ変身を遂げた朔夜。ミカルと相対するのは、現代に生きる錬金術師と思われる謎多き人物が鉱石と錬金術を使って生み出した人工生命体、アルクルス。

 先程まで丸腰同然だった時とは違い、今の姿であれば反撃の手立ては十二分にある。廊下を中心に破壊されたもののまだ見る影は一応ある寂れた豪邸の庭にて、第二ラウンドが始まった。

 

「───ふっ!」

 

『Gaa……!』

 

 ミカルの拳とアルクルスの拳が同時にぶつかる。錬金術によって加工された鉄鉱石のアーマーに覆われた拳と、銅鉱石で出来たカッパー・アルクルスの拳。お互い金属で出来たもの同士の為、周囲には金属音が鳴り響く。

 だが、手数で言えばミカルの方が上。カッパー・アルクルスは片腕しか無い上に剛腕と称して良い太さの腕の為、どうしても攻撃が大振りになりがちだ。

 対するミカルは防御力はそこそこに動きやすさを最重要視した作りのアーマーの為、大振りな攻撃は容易に回避出来る。一撃目は敢えて真正面から拳をぶつけ合い、二撃目からはカウンターの要領で掌打や蹴打を与えていく。

 

(我ながら、結構無茶苦茶な事やってるなぁ……)

 

 戦いの最中、ミカルの仮面の奥で朔夜は苦笑いを浮かべていた。それもその筈、もたらされた一つの奇跡によってようやく完成したシステムことミカルだが、当然の事ながら出力等のシステムの根本に関わる所は無調整。故にそれをリアルタイムで調整している。

 頭と身体を同時に動かす負担は相当なものなのだが、それでもミカル、朔夜は調整を止める事無くカッパー・アルクルスを相手取る。そうして、粗方調整が終わった頃。カウンターで浴びせた回し蹴りがクリーンヒットしたのか、カッパー・アルクルスが大きく吹き飛んでいく。

 そこをチャンスと捉えたミカルは右手を地面に叩きつける。すると、変身時と同じ五行の陣が現れて地面の中にある鉄を引き寄せていく。そしてあっという間に鉄を錬金して出来た短剣を作り上げ、それを逆手に構える。

 

「見様見真似の即興剣だけど奴に通用するかな、っと…!」

 

 再び地を蹴り、カッパー・アルクルスに肉薄するミカル。地を蹴った勢いのまま構えた短剣で斬りつける。錬金術を応用して作成した短剣による斬撃は通るらしく、カッパー・アルクルスは斬撃に怯んで隙を作った。

 それを見たミカルは華麗なステップを踏みつつ、続いて斬撃を繰り出す。小さくとも着実にダメージを与えているようで、少しずつだがカッパー・アルクルスの動きが鈍り始めている。しかし、即興で作成した剣なだけはあり、耐久性には難ありだった。

 カッパー・アルクルスを段々と追い詰めていく最中、役目を終えた短剣の刃部分は甲高い金属音と共に砕け散る。それが大きな隙となり、カッパー・アルクルスの剛腕による一撃を喰らってしまう。

 

「あ、しまっ───きゃあっ!?」

 

『GaAA…!』

 

「いったぁ……やっぱり即興で武器作成なんてやるもんじゃないかぁ…」

 

 先程のカッパー・アルクルス同様に大きく吹き飛ばされて地面をゴロゴロと転がったミカルだが、その全身は鉄鉱石のアーマーによって守られている。それでも不意の一撃によるダメージは調整が間に合っていない箇所も相まって相当なものであり、殴られた箇所がアーマー越しにじんわりと痛む。

 それでもミカルは痛みなぞ感じない、と言いたげに両手を使って器用に立ち上がり、再度五行の陣が描かれた右手を地面に突き立てる。先程と同様に地面に含まれる砂鉄を利用して鉄を錬金し、そこに加工を加えて西洋の騎士が持っているような両刃の片手剣を形作った。

 ミカルの今の姿、Iron Alchemister(鉄の錬金術師)はその名の通り鉄を扱い、錬金する事に長けている。地面には砂鉄という鉄が微量ながら含まれている為、こういった芸当は容易に可能だ。つまり、地面がある限り今の姿のミカルに手数が不足するという事態には陥らない。

 

「……ふむ。この力にも慣れてきた…かな? まぁ、この力もまだまだ調整の余地アリ、だね…」

 

 そう呟きながら、今しがた作成したばかりの両刃の剣を構えるミカルは再び地を蹴り、カッパー・アルクルスに向かって突撃していく。敵の正体こそ不明だが、ミカルの攻撃は通用する事を踏まえると自分が扱っている力……錬金術と同じものだと仮定した。

 目には目を歯には歯を、という言葉がある通り、同じ力を扱う者同士ならそれが有効打に成りうるが、それは同時に諸刃の剣でもあった。現にミカルの攻撃はカッパー・アルクルスに通用している。しかし、その逆も同様である。

 錬金術を応用した防御壁なども使い、敵から受けるダメージをなんとか最小限に抑えてはいるものの、ダメージや疲れというものは否応なしに蓄積していくものである。ミカルこと朔夜自身、戦いが長引く中で自然と疲れが見えて来ていた。そしてそれは、敵であるカッパー・アルクルスも同じである。

 未知の敵との遭遇、遂に完成したシステム、その調整をリアルタイムで行っている為か、ミカルも疲れが見えて来ていた。それと同時にカッパー・アルクルスの方も最初の頃に比べて動きが大分鈍くなってきていたのだ。最初こそ勢いのあった剛腕の振りも、今は余裕をもって躱せる程にスピードが落ちている。

 

「うん。ミカルのシステムも粗方調整し終えたし……そろそろ、終わりにしちゃおうか」

 

 もはや満身創痍であろうカッパー・アルクルスを見たミカルはそう呟き、アルケミアドライバーのレバーを二度動かす。ドライバーに装填されているアルケミーフラスコの中身、鉄鉱石が再度アルケミアドライバーの中心の陣に注がれる。

 

《Iron R'e Charge Complete……Alchemy Finish!!》

 

 その音声と共にミカルの右足へ五行の陣と鉄鉱石が集約していく。それを確認したミカルは思いっきり地を蹴って上空へ飛び上がり、空中で器用に一回転した後にカッパー・アルクルスめがけて必殺の一撃となるキックをお見舞いする。

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ミカルの必殺技が華麗に決まり、音もなく崩れ落ちたカッパー・アルクルスはそのまま爆散する。跡形もなく爆散した影響か、そこには既にカッパー・アルクルスの姿は無い。

 ようやく一段落した、と肩を降ろすミカルこと朔夜はドライバーに装填されているアルケミーフラスコを外す、すると、ミカルに装着されていたアーマーは霧散し、フラスコの中へと戻っていった。それと同時にミカルの姿は元の姿、朔夜へと戻る。

 フラスコの中身が戻り、中身が出ないように再び蓋をして白衣のポケットに仕舞い直した朔夜が向かった先は先程倒したアルクルスの爆散地。そこに遺されていたのは、アルクルスの素材として利用されていたであろう鉱石の破片。

 先程の爆発の影響なのか、細かく砕かれて辺りに散乱し、随分と煤けているが日光に当たれば僅かに銅色に光る鉱石を手にした朔夜はそれが何の鉱石かをすぐに判別する。

 

「これって……もしかして銅? という事は、さっき私を襲ってきたあの人間のなりそこないみたいな化物ってこれを元に造られてた……って事? 一体どうやってこんなものを…」

 

 学者の性か、興味が湧いたものについてはついつい考え込んでしまう悪い癖が出る。しかし、それをなんとか抑え込んだ朔夜はカッパー・アルクルスの残骸とも取れる銅鉱石をいくつか拾い、半壊しかかっている豪邸へと帰る。

 明日は修復作業をしなきゃなとやる気が削がれていく感覚を覚えながら、研究スペースに赤黒い石が入っていた空のフラスコ、鉄鉱石が入っているアルケミーフラスコ、アルケミアドライバーの三つを机に置き、寝室へと入ってすぐに着ている物を脱ぎ捨て、寝間着にしている衣服に着替えた後。

 銅で出来ていたであろう謎だらけの人型の化物と戦いながらシステムのリアルタイム調整という事をやってのけた反動か、思いの外疲れていたのだろう、寝床へ倒れ込むや否やすぐに寝息を立てる。

 

 ───朔夜が次に起きたのは、それから丸一日経過した後だった。

 

 それから、泥のように眠っていた朔夜が目を覚ましてすぐに行った事は、引越し早々敵の襲撃に逢い、その余波で半壊しかかっている豪邸の修復作業。とはいえ、到底一人では出来ない事は確か。

 悩みに悩んだ挙句、朔夜は業者を頼る事にする。幸いにも廊下を中心に壊れていた為か、修復作業は(とどこお)りなく進み、数時間もすればほぼ元通りとなっていた。

 食費以外に殆ど使う暇なく貯まっていたポケットマネーから修繕費を出し終え、来た時とほぼ同じ外観となった寂れた豪邸を眺めて中へ入ろうとした時。

 

「───ふん。やはり、即席で創り出したアルクルス程度では貴様を倒せる訳がないか。まぁ、雑兵如きで貴様を倒せるとは……端から思ってないがな」

 

「───ッ!」

 

 背後から聞こえる、謎の声。それに振り向いた朔夜が目にしたのはボロボロの白衣を着た謎の人物。顔は目元まで被れるフードで隠している為よく分からないが、先程聞こえてきた声はその人物から発していたのは確か。

 音もなく姿を見せた謎の人物に対して警戒心を尖らせる朔夜。フードを被った謎の人物は不用意に近づきでもしたら即ぶっ飛ばされる程に強い朔夜の警戒心を諸共せず、語り出す。

 

「貴女は……一体誰なの?」

 

「流石は、我等と同じく()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()……といった所か。その力も我等を一人残らず根絶やしにする為に得たのだろう? 忌々しい。そんなに我等が、錬金術師という存在自体が憎いか?」

 

「はぁ……? 一体なんの事? 私の記憶が正しければ、私に錬金術師の知り合いは一人も居ないんだけど。というか、さっきの質問に答える気は更々(さらさら)無いのね」

 

「ふん、そうやってしらばっくれても無駄だ。我……否、我等は貴様の()()()()()()()()()()。当然、貴様がその名を心底忌み嫌っている事も、憎き錬金術師殺しの一族の血を引く者だという事もな」

 

「っ! 私の、本当の名……!」

 

 謎の人物が朔夜の本当の名を知っていると告げた時、朔夜の額に青筋が走り、(てのひら)に爪がめり込むくらいに力が入る。目に見えて分かる程に『怒り』というものが自身を、辺りを支配していくのを肌で感じる。

 それでも尚、空気が一瞬で変わったにも関わらず気にもとめないといった様子の謎の人物に対して朔夜はとめどなく溢れて昂り続ける怒りをなんとか抑え込み、一言だけ発する。

 

「そこまで知られてちゃあ、もういいか。一つだけ、忠告してあげるわ。貴女……いや、貴女達も知っている通り私は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なの」

 

「それは既に周知している、と先程言った筈だが?」

 

 此方が話しているのに話しの腰を居るフードの人物にイラッとした朔夜だが、その怒りをなんとか抑えて続きを話していく。

 

「……人の話は最後まで聞けっての。だから私はあの名前を棄てて何処にでも居る一般人として生きる事に決めたの。洞木朔夜(うつろぎさくや)、それが今の私の名前。その命、早々に手放したくないなら貴女は勿論、貴女達の仲間にしっかりと教えておいて」

 

「……ほう? 洞木朔夜、か。本当の名を棄てて別人に、或いは内に秘めた本性をひた隠しにする道化にでもなったつもりだろうが……まぁいい。此方も一言だけ、貴様に伝えよう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()になる。命が惜しければ早々に手放す事だな」

 

「……石? 石ってもしかして、アレの事? それが私の身を滅ぼすって一体どういう───」

 

 朔夜が手にしているという石、既にアルケミアドライバーの中枢に組み込まれているそれが朔夜自身を滅ぼすきっかけになる。それを疑問に思った朔夜が問いかけるが、フードを被った謎の人物の姿は既にそこには無かった。

 謎の人物は朔夜が持っている石の事について何か知っている素振りを見せていた事もあり、それによって朔夜の当分の目標が決まった。先程まで話していた謎の人物を探しだし、あの石に似た物質について問いただす。謎の人物はそれに加えてもう一つ、気になる事を呟いていた。

 

(……アルクルス。奴は確かにそう言っていた。さっきまで戦ってた銅色の化物の名前がそうだとしたら、あの錬金術師……『我等』って言ってたからおそらく複数人居ると思うし、其奴等が私に差し向けてくる刺客と思っていいかもしれない。全くもう、こうなる事か薄々分かってたから、とうの昔にあの名前は棄てたのに……)

 

 朔夜が持っていた謎の石の事について何か知っているであろう、錬金術師と思われる謎の人物。その人物が差し向けてきた化物、アルクルス。

 錬金術師殺しの錬金術師としての自分を殺し、何処にでも居る一般人として生きる事を決め、その為に自身が心底忌み嫌う()()()()()を棄てて洞木朔夜と名乗り、過去とは決別して全くの別人として生きる道を選んだのだが、名前を棄てたからといって錬金術師の血を引く事には変わりない。それが巡り巡って今まさに朔夜を本来の自分が進むべき道へと引き戻してくる。

 錬金術師殺しの一族、朔夜がその末裔だという事を知っているのは同じ錬金術師しか居ない。つまり、この街に朔夜の命を狙う錬金術師達が居るという事に他ならない。そして、彼等が狙っているものが朔夜が手にしているアルケミアドライバーの中枢に組み込まれている石のような物質なのだ。

 

「……あ、またやっちゃった。まぁ、このくらいなら別にいいや。でも、彼奴は一体誰だったの…? 私のあの名前を知ってる奴なんてもう、限られてる筈なのに……」

 

 思わぬ所で目的が分かったものの、昔のように命を狙われる立場になってしまった事に肩を落とす朔夜。こうなってしまったからには仕方ないと割り切り、戦いの最中で粗方調整の終わった、自身の最高傑作であるミカルに更に細かい調整を施し、つい先程掌に出来た傷に貼る絆創膏を探すべく今しがた直ったばかりの寂れた豪邸へと入っていった。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 カッパー・アルクルスを生み出し、朔夜に接触を図った錬金術師と思われる謎の人物は、意味深な忠告を残した後に音もなく姿を消した。

 どんな芸当かは不明だが、あの場から姿を消したその人物が次に姿を現したのは赤機ヵ原の裏路地。フードは外さずに辺りを歩き、少し開けた場所で立ち止まる。フードを被った謎の人物の手元には銅鉱石は既に無く、次に取り出したのは赤く煤けた鉱石。

 

「洞木朔夜、か。そんな名前如きで我等の怨敵たる一族の末裔だという事を最後まで隠せる訳が無い事は分かっているだろう。浅はかだな、※※※※※よ」

 

 片手で鉱石を弄びながらそう呟き、次なる刺客を生み出すべくカッパー・アルクルスを生み出した時と同じように五行の陣らしき丸い陣を描き、その中心に先程まで片手で弄んでいた鉱石……朔夜がミカルへ変身する際に使用したアルケミーフラスコの中身と同じもの、鉄鉱石を置く。そうして、手馴れた様子で指を薄く切ろうとしたその時。

 

「やはり奴も居るのか。あの一族の末裔が、この街に」

 

 不意に後ろから声を掛けられ、振り向く。そこに立っていたのはカッパー・アルクルスを生み出した張本人と同じような出で立ちの人物。

 唯一違う点とすれば、その人物は誰も来ない暗がりだからか顔を隠す必要が無いと言いたげにフードを被ってないという点だろう。その証拠に、暗がりだというのに一筋の赤いメッシュが入った長い黒髪が目立っている。

 赤いメッシュが入った黒い長髪が特徴的な、これまた謎多き人物を前にしても尚、フードを被った錬金術師と思しき謎の人物は微塵もたじろぐ事は無く淡々と話し始める。

 

「嗚呼、そうだ。我等と同じ力を持ち、我等に牙を剥く憎き一族の末裔が新たに力を得てこの街に現れた。その証拠に私が即席で生み出した雑兵(ぞうひょう)は新たな力を得た奴に倒されたからな」

 

「ほう…? 流石は※※※※※、我等の怨敵たる一族の末裔といった所か。そう来なくては面白味が無いというものよ」

 

「それに、面白い事を聞いた。奴は自身の本当の名である※※※※※を棄て、今は洞木朔夜と名乗っているらしい。それについてどう思う? 我が同胞よ」

 

「……何?」

 

 フードを被った謎の人物がそう告げると、赤いメッシュが入った黒髪の人物はほんのわずかに肩を震わせる。自分達にとって最も憎むべき相手である※※※※※は現在、洞木朔夜と名乗り、一般人として生きる事を決めた事をどうにも許せないといった様子だ。それは、フードを被った謎の人物も同様である。

 自分達は錬金術師としての身分を隠した上で細々と暮らし、かねてよりの悲願達成に向けて暗躍している。だが、最も憎むべき相手たる一族の末裔はその名と一族が積み上げてきた過去を全て棄て、一般人として生きる道を選んだという。それは、数多の錬金術達の返り血で汚れきった一族の過去をその一族の末裔である朔夜は全て無かった事にしようとしているという事に他ならない。

 

「それは……本当なのだろうな?」

 

「嗚呼、他でもない奴自身から直接聞いた事だ。間違いはあるまい。まぁ……我等を騙す為の奇策かもしれないがな」

 

「そんな事はどうだって良い。名前が変わろうがどうなろうが、奴は此処で殺すべき怨敵なのは変わらないのだ。我等錬金術師の悲願達成、その邪魔をことごとくしてきた一族の末裔という事実は……変わらない」

 

 フードを被った謎の人物と赤いメッシュの入った黒い長髪の人物の二人が淡々と話す傍ら、手馴れた様子で指を薄く切るフードを被った謎の人物。そうして、今度もまた同じように両手を陣の中心へと突き出すと、カッパー・アルクルスの時と同様に段々と人型が出来上がっていく。

 銅などの鉱石と人間などの遺伝子情報が入った血を混ぜ合わせ、錬金術によって生み出される人口生命体、アルクルス。今回生み出されたアルクルスは赤く煤けた色をした体表を持つ人型のアルクルス。前回生み出されたアルクルスと違う点は、()()()()()()()()()()()()()という点だろう。

 カッパー・アルクルスは片腕しかない分その腕が肥大化しており、頭はあっても顔が無かったり胸に大きな風穴が空いていたりと人型にしては何処か(いびつ)さが残っていたが、今回生み出されたアルクルスは以前と同じく人の顔っぽいものこそ無いものの両腕があり、風穴も前より小さくなっていた。その分、両足が不自然に歪んでいたりしているが。

 忠誠を誓う騎士のように主の命令を待つアルクルスを他所目に、フードを被った謎の人物と赤いメッシュの入った黒髪の謎の人物の二人は淡々と今後の目的などについて語り出す。

 

「……今度はどういった名を付ける?」

 

「アイアン・アルクルス。此奴を生み出す際に鉄鉱石とやらを使ったからな、此奴の名はそれで良いだろう」

 

「安直だが、それで良い。此奴は彼奴と同様に奴の元に向かわせるのか?」

 

 その問いにフードを被った謎の人物は首を振る。他に目的があってアイアン・アルクルスを生み出したとでも言いたげに。

 

「いや、此奴の出番はまだ先だ。奴の始末は他でもない我等の悲願達成と同じ目標であるのだが、その前にこの街に住んでいる呆けた奴等には……辛い目に遭ってもらう」

 

「……そうか。化学とやらの発展の基礎、その根底にあるのは我等錬金術師が生み出した技術、錬金術が元になっているからな」

 

「そういう事だ。錬金術の事も知ろうともせずに化学とやらの温床に肩まで浸かって平和ボケしている奴等には、このくらいしても構わないだろう」

 

 彼等の募りに募った怨みは朔夜だけに向けられるものでは無かった。発展していく化学の恩恵を受けている人々は、一部を除いて化学がどうやって生まれ、そして発展していった過程を知らない。

 錬金術があったからこそ今こうして化学があるという事を知らない者が多いという事実に対しても、彼等は憤りを覚えていたのだ。それ故に、赤機ヵ原の住人達も彼等の怨みの矛先が向く対象でもあった。

 故に朔夜を襲った化物……カッパー・アルクルスは彼等が何としても殺したいと願っている朔夜の命を狙ったものだが、その思いを受けて生み出されたアイアン・アルクルスは無差別に人を襲う化物と化したのだ。

 

「さて、我等の話は聞いていたな。奴の本当の姿を引き摺り出す前に一つ、この街に住んでいる人々を襲え。錬金術の事を知ろうとしない奴等を根絶やしにして構わない」

 

 フードを被った謎の人物がアイアン・アルクルスと名付けた人口生命体にそう告げると、両足が不自然に歪んだアイアン・アルクルスは一つ頷き、歩きにくそうな体勢で歩いていき、直に姿を眩ませ、それを見送った錬金術師と思われる二人もその場をあとにする。

 

 錬金術師殺しの一族、その末裔である朔夜と現代に生きる錬金術師達の戦いは、まだ始まったばかりだ。その先に何があるのかは……未だ不明である。




やっと書ききれた……
ロードの時とは全然違うから結構大変(メメタァ)

それでは、お読み下さりありがとうございました。
又次回(・ω・)ノシ
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