放たれる剣の一撃。
弾かれる剣。
そして穿たれる一撃。
「ちぃ!」
「はあっ!」
激突する2つの影。
それは互いに攻撃を放ちあい、弾けるように距離を開く。
「このクソ親父……!」
剣を振りぬいて叫ぶソーマ。
力を溜めて、振り払う。
その剣の一撃が、もう一方から放たれた攻撃を弾き飛ばす。
「どうしたソーマ。その程度で私を止めるつもりか?」
「くそっ……!」
膝をついて、しかし立ち上がるソーマ。
負けるわけにはいかないのだと、その眼は訴えているかのようだった。
「それに私も応えなければならないだろうな」
猫ではあるが、私も男だ。
その心意気に敬意を表しする。
というわけでその辺のコードをバリバリと。
これで本当に大丈夫なのかと若干不安になるが、やれることといったらこんなことしかない。
何か研究職に就いていれば端末を使って操作でもなんでもできたのかもしれないが、まあ無理だ。
物理的にどうにかするしかない。
「にゃあ……」
しかし疲れる。
何がどこと繋がっていて、何がどうなっているのかが分からない以上、全て破壊するしかない。
故に壁に張り巡らされているコード全てを攻撃して破壊する必要がある。
これか。
違う、止まらない。
これか。
これも違う、止まらない。
それともこれか。
違った、止まらない。
もしかしたら、全てが全て繋がっていて、全てを壊さなければならないだなんてことになっていたら。
それは私だけでは完遂出来ないだろう。
―――――故に。
「はあ!」
「せぇい!」
「こっちも!」
私の他にも、力を貸してくれる人が必要なのだ。
ソーマが戦っている。
しかし、あれはきっと儀式だ。
ソーマとヨハネスの、最後の語らいだろう。
それを邪魔することなんて、私にはできなかった。
恐らくは、他のメンバーもそうだろう。
あれだけソーマが感情を露にしている所なんて見た事がない。
それほどまでに、ヨハネスはソーマの大きな部分を占めるのだ。
ヨハネスはゴッドイーターではない。
その身でアラガミに乗り込んだのだ。
最早人の身に戻ることは叶わないだろう。
それだけの覚悟だ。
それを受け止め、真正面から打倒する。
きっとそんな行為が、ソーマには必要なのだろう。
そしてそんな時間も、決着を迎える。
放たれる砲撃をシールドで受け止めたソーマは、そのまま盾を展開したまま前進する。
仕様外の行為だ。
恐らく相当の負担がかかっているだろう。
それでも、ソーマは突き進む。
削れていくシールド。
シールドから外れていて、焼け焦げていく身体。
それでも、ソーマは突き進む。
そして。
ついにソーマはアルダノーヴァを射程内に収めた。
「これで……!」
「……!」
神機を振り上げる。
既にシールドは崩壊し、跡形もない。
身体もかなりの範囲が焼け焦げている。
それでも、ソーマは剣を振り上げた。
「しまいだ……!」
斬撃一閃。
その一撃は、アルダノーヴァのコアを叩き切った。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
「ソーマ!」
肩で息をするソーマに駆け寄るメンバーたち。
壁の回路もほぼ壊した。
これで終末捕喰が起こったらもうおしまいだ。
「―――――だが、私の方が一枚上手だったようだな」
その声は、断ち切られたはずのアルダノーヴァから発せられた。
「なんだと……!」
「物理的な干渉は行うさ。だが、それだけでは不十分だと判断した」
「つまり……」
「そう、電波、音波、振動で、終末捕喰を始められるように仕組んである」
それは。
最早すべてが間に合わないということなのか。
「……ソーマ。お前は船に乗るのだ」
「……断る」
「世界とともに滅びるというのか?」
「それもごめんだ」
「ならば……!」
「俺の道は……俺が決める……!」
壊れた神機を杖にして、ソーマは立つ。
そして、大声をあげて呼びかける。
「シオ! 終末捕喰を止められないのか! 力なら、俺を喰え! そうすればきっと……!」
悲痛な叫び。
それはきっと本心で。
きっとソーマはシオの為に全てを投げ出す覚悟だったのだろう。
『だめだよ』
しかしそれは。
シオによって止められた。
『だめだよソーマ。ソーマをたべたくない』
泣きそうな声だ。
それでいて、決意の籠った声。
『それにね。シオはね、いいことおもいついたんだ』
ざわりと世界が震える。
終末捕喰の始まりか。
『あそこ。おそらのまあるいおつきさま』
しかし、シオはそんなことを望んでいない。
だから、自分がいなくなって、自分が全てを受け入れて。
全部持って行くつもりなんだ。
『あそこに、ぜんぶもっていくね』
「そんなのは……!」
『もうきめた』
シオは揺るがない。
いや、揺らいではいけないのだ。
揺らいでしまえば、終末捕喰は始まってしまう。
そうなってしまっては、全てが無に帰す。
そんなのは、シオも嫌なのだろう。
「―――――だけど、それが君の本心だとは思えないね」
そして。
ここで。
誰も予想していなかった人物が現れる。
「ペイラー……!」
「やあヨハン。ここは私の出番だと思ってね」
すっと、ソーマの横を通り過ぎ、シオの前に立つ。
そして語り始める。
「シオ。ソーマはね、君と一緒にいたいんだ」
『……』
「ずっと、ずっと一緒にいて、暮らしていきたいんだよ」
『……ぅ』
「だからね、シオ。独りで行ってしまうのは、やめにしないかい?」
『ううう……!』
揺らぐ、揺らぐ、揺らぐ。
シオの心が揺らぐのと一緒に、世界が揺らいでいく。
どうするつもりだペイラー榊。
本当に妙案があるのか。
それともただの狂言か。
しかし。
ここまで来たら信じるしかない。
私は命をベットしたぞ。
「シオ。大丈夫だよ。一緒に美味しい物を食べて、一緒に楽しいことをして暮らそう」
『う、ううううう……!』
聞こえる。
もう世界が歪んで、元に戻らなくなっていく。
だがこれは。
しかしこれは。
何か起こるかもしれない。
そんな予感がしていた。
『シオ……ソーマといっしょがいい! ひとりはもうやだ!』
泣いた。
シオが泣いた。
そんなことは初めてだった。
そして、これはきっと、シオのとっても純粋な我儘だった。
何かできることはないのか。
ペイラー榊の近くへと降り、声をかける。
「にゃ」
「おっと、君はこっちだよ」
「にゃ?」
そうしたところで、何故かシオの上に載せられる私。
あれ、なにこれ。
嫌な予感がするんだけど。
「私はね、ある仮説を立てたんだ」
「仮説……?」
「そう、仮説さ」
「もしそれが正解だったなら、私達は助かる。違ったらお陀仏さ」
それは本当に大丈夫なのか?
そして私はこの状況をどうすればいいのだろうか。
わからない。
何も分からないぞ。
「さて。このペイラー榊、一世一代の大博打!」
待って。
ねえ待って。
私どうなるの?
爆発したりしないよね?
「世界を救うか滅ぼすか、とくとご覧あれ!」
ポチリと、ボタンが押される。
それはいつの間にかペイラー榊が持っていた遠隔スイッチだった。
「ニャ……?」
そしてそのスイッチが推された瞬間、首輪から嫌な音が響いた。
うぃいいいいいいいいいいいん。
なにこれ、なにこれ。
知らないんだけどなにこれ。
そして、首輪が展開し、シオと私を包み込んだ瞬間。
「ぎにゃああああああああ!!!」
私の全身を、謎の白い光が襲ったのだった……!