つまり大失敗である。
私はゴッドイーターがひとり孤立しているという話を聞いて、遠出をしていた。
勿論その人物を助ける為である。
最近のアラガミの活動の活性化は、私達の起こした終末捕喰未遂事件が原因かもしれないからだ。
その罪滅ぼしというかなんというか、まあそんな感じだ。
というわけで、今日は北の方へと散策に出る。
ゴッドイーター達と違い、私は偏食因子による体内のオラクル細胞の抑制は必要ない。
というかアラガミである。
喰われるのではなく喰う側である。
こんな猫のような身体だが。
とはいえこの身体も役に立つ。
何せ飛べるようになったからだ。
……いや、ふわふわ浮かぶのが正しいか。
それでも、風に乗ればかなりの速度で進むことができる。
疲れることはないし、快適だ。
……どういう原理で浮いているのか、皆目見当もつかないが。
それはともかく。
向かう先は北。
そして迷子の捜索である。
パタパタと羽を動かして進む私。
どんどんマスコット化が進む現在。
このままでいいのか、という思いが脳裏に駆け巡る。
……が、強くなれるのであれば何でもいいか。
棚の上に置くことにした。
さて、今日の天気は晴れ。
所によりザイゴート。
あれの生態は不明であるが、そもそもアラガミの生態そのものが分かり切っていない。
しかし、それにしてもザイゴートが多い。
アラガミとして存在している私は感覚でアラガミを探すことができるのだが、そのアラガミレーダーに不思議な存在の反応が見受けられた。
それは、ゴッドイーターのような、アラガミのようなそんな存在。
気になったので、私は即座にそこへと急行することにしたのだった。
「ふぇええええーん……」
するとそこには、ガチ泣きする少女の姿があった。
その恰好は報告書に合った通りのもので、どうやら彼女が迷子の子猫、のようである。
あ、転んだ。
これは可哀そうだ。
さっさと起こそうとするが、この身体だ。
気付けにでもなればと頭の上に乗ることにした。
「むぎゅ」
古典的な反応をどうもありがとう。
そんなことを考えていると、ばっと少女が起き上がる。
「猫さん……」
どうやらこの少女は猫のことを知っているようだ。
まあ、ツバサが知っていたのだから、知っている人間自体はそれほど少なくはないのだろう。
少女は右手を動かそうとしているようだった。
しかし動くことはない。
アラガミとして身体が変化しようとしているためだ。
アラガミになるのは腕輪のついている方だったか。
よく覚えていない。
しかし、この状況で放っておけるほど、私も無感情ではなく。
なんとか人間として助けてあげようと思った。
しかしどうする。
体内のオラクル細胞を抑制する薬品は持ち合わせていない。
アラガミ化を止めるならば、アラガミに変化する前に止めなければならない。
だが、彼女の右腕はほとんどアラガミだ。
この状況下で、どうやって。
そして、ふと思い出す。
私は今特異点としての力を持っていて、その特異点たるシオはリンドウのアラガミ化を抑制することができていた。
つまるところ、私にもなんとかできる可能性がある。
「にゃーん……がぶ」
「いっっっっっっっっったああああああああい!!!!」
一か八か。
まさか他人の身体で実験することになるとは思わなかったが、今はこれしかない。
何せ時間がないのだ。
これ以上放置すれば、少女はアラガミになりこの辺りを徘徊することになるだろう。
しかし。
噛みついたはいいものの、ここから先はノープランだ。
シオはアラガミとしてのコアに干渉していた様子だったが、私にはそのような技術はない。
ならば、今持っている知識でどうにかするしかない。
幸いにも、実験体として色々いじくられたらしいこの身体、何かの役に立つだろう
まずはこの少女の身体の状態を調査する。
うむ、浸食率30%といったところか。
大体だが。
アラガミ化した身体を無理矢理はぎ取ったりすれば、確実に後遺症が残るだろう。
それは助けたとは言えない。
一か八かコアに干渉してみるか。
しかし、どの位置にコアがあるか分からない。
そして干渉に成功したとして、どのような命令を下せばいいのか蛾分からない。
ならば体内のオラクル細胞を抑制してみるか。
どうやって抑制すればいいのか。
……ああいや、わかった。
特定の偏食因子をぶちこめばいいのだ。
それが抑制剤として機能するはずだ。
しかし、問題が一つ。
私はその偏食因子を知らない。
いや、知ってはいるのだが、どういう構造なのか、といった辺りのことを知らないのだ。
つまりは知識不足。
詰みか。
……いや、やってみなくては分からない。
ぐるぐる考え、一番命中率の高そうな偏食因子による制御を試すことにした。
体内のオラクル細胞に、人体を喰わないように命令を与えるのだ。
ちゅー……。
「あ、あが、ぐああああああ!!!」
偏食因子を注ぎ込んでいると、少女がもだえ苦しむ。
それはそうか。
今の痛みは神機適合時の痛みに等しい。
しかし耐えて欲しい。
これに耐えてもらわなければ、私としても何のために来たのか分からない。
偏食因子のパターンは、私の身体を巡っているものと同じものである。
私自身が持つ偏食因子が、人間を喰べることを拒否しているからだ。
これが上手くいけば、この少女を救うことができる。
本来であれば実験を繰り返した後で実行したかったが、時間がない。
まさかペイラー榊と同じことをするとは思わなかった。
暫くすると、彼女が大事に握っていた神機が光る。
何と二丁拳銃だ。
珍しい、というか初めて見た。
その神機が、左右で違う光を放っている。
右手の古臭い方は優しい色だ。
水色というか、そんな感じ。
温かく包もうとしている感じがする。
左手の新しい方は苛烈な色。
赤に黄色ととにかく強い光を放っている。
叱咤激励をしているといったところか。
伝わってくるのは、少女に生きていて欲しいという願い。
なるほど、この少女は神機に愛されている。
そして、そんな少女を、私は救わなければならない。
光が収まると、少女はこてりと倒れた。
寝息がする。
それも静かなものだ。
どうやら成功したようである。
右腕は少々歪になっているが、この辺は流石にサポートし切れない。
諦めてもらうしかない。
もしかしたらペイラー榊の実験に付き合うことにもなるかもしれない。
それも諦めてもらうしかない。
あとこれ以上何かを拾うのも勘弁してほしい。
猫だぞこっちは。
生き物を拾って育てることなどできないのである。
さて、色々とやらなければいけないことはあるが、まずはこれが問題だ。
……この子をどうやって運ぼうか。