その日から、私と堕天使ちゃんことラーフちゃんの共同生活が始まった。
まあ基本的に近くをうろうろしているだけの生活なのだが。
堕天使ちゃんは私から離れることを必要以上に怖がるため、抱き抱えられた状態での生活を余儀なくされた。
おかげで身体が凝って仕方がない。
というわけで抗議の意を込めて、堕天使ちゃんの頭の上に乗ることにした。
こうすることで抱き抱えられることもない。
完璧な作戦である。
「重いよぉ……」
「にゃあ」
少しは我慢して欲しい。
こちらも羽を伸ばしたいのを我慢しているのだ。
背中の羽はしまってあるしな。
とりあえず、この堕天使ちゃんは善良なそれであった。
ほどほどにいい子であり、悪いことは忌避する。
それに褒めると喜ぶ。
ごろごろするとよく笑う。
必要以上に怖がっているのは、ついこの間死にかけたからだろう。
私が近くにいなくても浸食がなくなるのならば、きっといつもの彼女に戻るはずだ。
そうでなければ救われない。
……救われる人間が少ない世界であることは知っているが。
それでも、救われる人間が少なくていいわけではないのだ。
……そういえば、後々救われるはずの人間がいた。
そう、雨宮リンドウである。
彼はアラガミ化したものの、シオに出会ってその進行を抑制してもらい、更に彼自身の神機の協力で、アラガミ化を終息させたのだった。
その状況に至る為にはかなりの綱渡りをする必要があるのだが……。
「ふぇぇぇ……どうしてこんなことにぃ……!?」
既にそのフラグは折れた。
というかこの子が折った。
原作でのフラグ、主人公がリンドウの神機を使うタイミングをぶち壊したのだった。
それは数日前の事だった。
アナグラに直接襲撃を受けた時、偶然居合わせたのが私たちだ。
ついでに神薙ユウ。
神薙ユウは神機のメンテ中で戦えず、現場に急行したのは堕天使ちゃんと私だった。
そして、リッカがアラガミに襲われる直前に、アラガミを撃退したのだった。
つまるところ。
雨宮リンドウを救うためには私たちが動くしかなくなったのである。
「ふぇぇぇぇまってよクロちゃああああああん!」
というわけで、雨宮リンドウがまだ生存していることを示す証拠を探さなくてはならない。
そして、私が動くとなると堕天使ちゃんは突いてくる必要があったりするわけで。
「神機なしで外歩くの怖いよぉおおおおお!」
追いつくことを優先した結果、神機なしで外を出歩く羽目になる堕天使ちゃんであった。
とことこと歩く私であったが、何も無計画というわけではない。
何せ手に入れるべきは黒い羽やらマントやら。
リンドウから抜け落ちた髪みたいなものである。
さくっと集めてペイラー榊に渡せばいいのだ。
というわけで、やってきたのは鎮魂の廃寺。
原作で言う寺があるフィールドである。
雨宮リンドウはここでシオの手当てを受けていた記憶がある。
なのでこの辺りに痕跡が残っているのではないかと予想をしたのであった。
とはいえアラガミに見つからないように歩くのは大変。
私単独であれば逃げるのも簡単なのだが、今は堕天使ちゃんが一緒だ。
逃げ切るにはある程度の距離が必要となるだろう。
「ふえぇぇぇぇ……どうしてこんなことにぃぃぃぃぃ……」
仕方ない。
運命だと諦めて欲しい。
主にこんな時期に極東支部に流れ着いたこと。
「にゃ」
「はぇ?」
そうして見つけたのは真っ黒い羽だ。
黒いオーラっぽいものを漂わせるそれは、何だか危険な雰囲気を醸し出していた。
まあそんなことは今はどうでもよく。
口にくわえて脱出だ。
急がないとアラガミが来る。
「え、もしかしてそれ見つけるだめだけに来たの!?」
「にゃ」
「ふぇぇぇ……だったら言ってくれれば取りに来たのにぃぃぃぃぃ!」
喋りたくないのだから仕方がない。
みんなのプライベートを守るために。
「結論から言おう。リンドウ君は生きている」
3日後、重大発表として報じられたのはそれである。
どうやらペイラー榊は謎の羽を解析しただけで、雨宮リンドウが生きていることが分かってしまうほどの天才だったらしい。
適当に渡しただけの私とはえらい違いだ。
「この辺りはクロ君の功績だね。リンドウ君の痕跡である羽を見つけてくれたことと、そこにいるラーフ君が鍵だったよ」
「はえ?」
そう言いながらモニターを開いて説明を始めるペイラー榊。
簡単に言うと、雨宮リンドウが死んでいる、もしくはアラガミ化しているとされていたが、それを覆したのが私の持ってきた羽と、アラガミ化しかけている堕天使ちゃんの解析結果であったらしい。
堕天使ちゃんを救ったらしい私の行動が、どうやら雨宮リンドウが生きていることにつながったというので、正直ありがたいところ。
もしそうでなかったら、雨宮リンドウがこのままフェードアウトしてしまうところだった。
「とにもかくにも、みんなにはリンドウ君を探してもらうことになる。心情的にも、戦力的にも、彼は必要だからね」
という感じで、みんなは仲間が生きていることでやる気が急上昇である。
そんな中、よくわかってない堕天使ちゃんは置いてけぼり。
みんなの元気そうな顔を見てきょろきょろしている。
「私が役に立ったんなら、まあいっか……」
そう言って笑う堕天使ちゃん。
天使か……。
これからは堕天使ちゃんも前線に出るわけだが、そこに私も同行することになった。
ゴッドイーターは複数人での行動がほぼ義務付けられているが、それは行方不明者を出さないための手段である。
それと同時に人数制限があるのは、その上でオペレーターが管理できる限界がその数であるからだ。
まあこの辺はベテランオペレーターならなんとかなりそうなので、きっと別の問題もあるのだろう。
聞いた話なので勘弁をしてほしい。
さて、何故そんな話をしたかというとだ。
私は今、堕天使ちゃんと離れることができない。
というか堕天使ちゃんが離そうとしないので無理。
なので私と堕天使ちゃんを一緒に編成しなければならないのだが……。
よくよく考えると、私はゴッドイーターとして登録されてないのでは?
ということで。
ゴッドイーター4人と猫の5人編成で任務に赴くわけである。
メンバーは私、堕天使ちゃん、神薙ユウ、アリサ、そして橘サクヤである。
凄いぞ神薙ユウ、ハーレムだぞ。
だから何故か私を取り合ってる女子メンバーを宥めておくれ。