悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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あぁ退屈だ。つまらない。

 

私は、目の前の火を扱う魔法少女と戦いながら、そう思う。

いくら私が圧倒的な力を見せつけようとも、折れない。その目には希望を宿していて、私が攻撃しても、何度も何度も立ち上がり、こちらに向かってくる。

 

雑魚の癖に、ただひたすら私に牙を剥いてくるその姿勢が、気に食わない。

私に対して『魔銃』を構え、威嚇していただけの2人の少女の方がまだ反応が面白かった。

彼女達の目には、希望なんて宿っていなかった。むしろ絶望さえしていた。

 

だから面白かった。戦意などほぼ喪失していて、もはや諦めの境地にまで達していた2人を見るのが、愉快で仕方がなかった。やっぱり人の絶望した顔というものは、何度見ても飽きない。よく他人を喜ばせるために奉仕する人間を見かけるが、はっきり言ってあれがして何が楽しいのだろうかと私はよく思う。強いていうなら、そうやって他人を喜ばせ、最大の幸福の状態に持って行ってから絶望を与えてその光景を楽しむ、くらいだろうか。それくらいしか、私には奉仕(それ)をやるメリットが思い浮かばない。

 

だってそうだろう? 人間の尊厳を破壊し、グチャグチャにする。それ以上の幸福が、この世にあるだろうか。いや、ない。

 

だからこそ、不愉快だ。

なんでこいつは、絶望しない? どうしてこいつは、希望を持っている?

 

私に歯向かうなクズが。はやく諦めろ。お前に勝ち目などない。さっさとくたばれ。カスが。

あぁ、ムカつく。ムカついてしょうがない。こいつがやる気を出しているせいで、後ろの2人も積極的に私に向かって『魔銃』を撃って、援護をするようになってしまった。別にそのダメージ自体大したことはないけど、はっきり言ってさっきまで絶望していたやつが前向きになって私に反抗的な態度を取っているのは、納得がいかない。

 

「あのさ、勝てると思ってんの? ばか?」

 

「私が勝てなくても、来夏達なら勝てるわ」

 

そういう考え方か。結局それ、他人任せでしかないじゃん。

自分ができないことを、他人にやらせようとするなよゴミが。

 

でも、そうか、そういう考え方か。

なら、こいつの心の折り方は、こうやって痛めつけることじゃない。

 

「増援、本当に来てくれるかな?」

 

「…」

 

「今私に対抗できそうなのって、櫻に、朝霧姉妹でしょ? それに精々クロくらい。でも、朝霧姉妹はルサールカが相手してるし、櫻やクロもアストリッドが相手してる。そんな状態で、今この場にやって来れると思う? ドラゴとかその辺も潰しといたし」

 

「何が言いたいの?」

 

「ゲームオーバーってことだよ。一応私、魔法省に潜り込んだこともあるんだけどさ。登録名簿見てみると、大した魔法少女いないみたいだね。全員総じて雑魚って感じのステータスしてたよ。君達のお仲間の真野尾美鈴って子もカスだし、閃魅光だっけ? そいつも反射は厄介だけど、それ以外大した力持ってないし私に言わせれば雑魚。はっきり言って、私ら(組織)の勝利はもう決定してるって言ってもいいと思うんだけど」

 

「……」

 

ほら、黙った。状況を理解したのか、下向いて俯いちゃってさ。やっとわかったんだ。自分がやってることが無駄だって。

結局、他人を頼りにしてる奴の精神なんて脆い。

自分で踏ん張る努力なんて一切しないんだから、当然だ。

 

自分がやらなくても、他の人がやってくれるだろう。そんな他責思考を持った奴のメンタルが、強いわけがない。

 

結局、こいつも雑魚だったってわけ。私の前では、こういう雑魚はみーんな無力。

さて、怒りも収まったことだし、そろそろ終わりに…。

 

「……としても……」

 

「はぁ? 何? 聞こえないんですけどぉ? 腹から声出せよバーカ」

 

私はそうやって煽る。どうせ絶望した奴の戯言だ。

そう、思っていたんだけど。

 

どうしても、こいつから、絶望したような空気を感じられない。

絶望したにしては、さっきと対して雰囲気が変化していないように見える。

いや、だが、折れるはずだ。こんな奴、脆いに決まってる。折れてるのを、必死に隠してるだけだ。そうに違いない……。

 

「仮に、そうだったとしても……!」

 

何を言おうとしてる? お前はもう負けたんだ。これ以上吠えるな。負け犬が。

無駄なことをするな。お前は負けた。敗者は大人しく舞台から降りるべきだ。

 

そうだ。だから、そんなはずはない。こいつに、希望なんてものは、もう……。

 

「私は、皆を信じてる!! たとえ、櫻達がやられてしまっていたとしても………。それでも! 私は、絶対に諦めない!! 私が今ここで頑張らないのは、皆への裏切りになるから」

 

顔を上げた彼女の目に宿っているのは、私が求めていた絶望ではなかった。

そうか、こいつは、他責思考の持ち主なんかじゃない。

 

他人を信頼しているからこそ、頼っている。他人に恥じない自分であろうと、そうやって自分を律している。

だから、折れない。最後まで、胸を張れるような生き様だったと、そう言い張りたいから。

 

くだらない。

そんなのは、無駄だ。

 

自己満足の自慰行為でしかない。

でもこいつは、そんな自慰行為で満足するようなバカ猿なんだろう。猿に何を言おうが、その精神を折ることはできやしない。だって、言葉が通じないんだから。

 

「もういいよ、お前」

 

「はぁ? 何よ」

 

「飽きた。お前には私の玩具(おもちゃ)になる資格すらない」

 

こいつの心を折るのは、無理だ。だったら、私がこいつと戦って得られるものは、何もない。本当につまらない。無駄で、無価値で、ゴミも同然。

まあでも、ゴミでもリサイクルくらいはできる。

次の玩具(おもちゃ)を壊すための、道具くらいには。

 

魂様変化(ソウルスワップ)

 

私は目の前の少女に、魂様変化(ソウルスワップ)を使用する。

もうこれで、マジカレイドレッドという魔法少女は終わる。いや、より正確に言えば、津井羽 茜(ついばね あかね)という少女の終わりか。マジカレイドレッドは、厳密には彼女のことを指すわけではないらしいからね。

 

茜の目から、生気が抜けていく。彼女の体が、空っぽになっていく。

さっきまで私に立ち向かおうと勇ましく立っていたその足は、地面に吸い付けられ。

 

そのまま茜という少女は、終わりを迎えた。

 

先程まで津井羽茜として私と対峙していた存在の抜け殻は、地面に女の子座りをして一切動かない、ただの置き物と化していた。

 

「おい、お前、何を……」

 

茜の後ろにいた、虹色の髪の少女が私に尋ねる。

 

「知りたい? あぁそうだ。君も同じようにしてあげようか? だいじょーぶ。痛みはまっったく感じないから」

 

私が笑みを向けると、虹色の髪の少女、照虎は、青ざめた顔で、後退りし、私から距離を取ろうとする。

そうそう、その表情。そういう絶望した顔が見たかったんだよ、私は。

 

「にげてもいーよー? でも、ここに残ってる人達、見捨てることになっちゃうね? あぁでもそっかぁ。照虎ちゃんはぁ、一回お友達のこと殺してるもんねぇ?? いや、一回どころじゃないんだっけ? だったら、お仲間のこと見捨てるくらい、なんてことないよねぇ!! あははっ!!」

 

「ちがっ……私は………私はぁ………!!」

 

あーあー。わかりやすいくらいに狼狽えちゃって。いいね、クるよ、その表情。

頭を抱えて、もがいて苦しんでるのもグッド。いやぁ、いじりがいのある過去をもってくれていて嬉しいよ。

 

「ふざけるのもいい加減に……!」

 

「八重ちゃんさぁー、妹のことが大切だなんて言う割にはさ、自分だけ安全圏から見守って、危険なことしようとしないよね?」

 

「それは……私は2年前に……力を失ったから……」

 

「ふーん? なら仕方ないかもねぇ…。シロちゃんがアストリッドに洗脳されて、“アストリッド様”のことがだーいすきな眷属にされちゃったのも、どうしようもなかったよねぇ!」

 

「どういう……こと……?」

 

「茜ちゃんが逃げ帰ってきたのも、そういうことだよねぇ。多分クロちゃんもさぁ、今頃終わってるよ? きっと、ロキが用意した怪人強化剤(ファントムグレーダー)で、怪人化しちゃってるんじゃないかなぁ??」

 

「ねぇ! どういうこと!? 説明して!!!!」

 

「どういうことも何も、そのまんまの意味だよ〜」

 

あぁ。見るからに動揺しちゃって。はは、愉快愉快。いいねぇ。私は普段他人に興味がないけど、そういう表情をするときだけは、私は他人に対して素直に好きだって言える。やっぱり、自分の世界に閉じこもるだけじゃダメだからね♪

少しは他人に興味を持たないとさ。

 

「シロはアストリッドの眷属に。クロは怪人に。大切な妹、2人とも守れなくて残念だったねぇ〜? あぁそうそう。そういえばもう1人いたね。ユカリだっけ? まぁ、安心しなよ。ここにいるユカリちゃんのことも、ちゃ〜んと私が処理しておくからさぁ」

 

八重はそのまま絶望して、『魔銃』をその手から取りこぼし、そのまま放心してしまう。

はぁこれだよこれ。私が見たかったのは。

八重って一見メンタル強いように見えるんだけど、実際は滅茶苦茶脆いんだよねぇ。だから簡単に絶望してくれて、私としてはおもちゃにしやすくて助かります♪

 

さて、残りは櫻達、だけど、櫻とクロがアストリッドの相手をしてるわけでしょ? なら……。

 

「もしもしルサールカ。今戦ってる?」

 

『戦闘中に、テレパシーなんて。ん、中々大胆なことするのね』

 

「あーそうなんだ。来夏と去夏でしょ? 片方だけでもいいからさぁ、私に譲ってくんない?」

 

『理由を聞いてもいいかしら?』

 

理由? そんなの、決まっている。

 

「おもちゃは多い方が楽しいでしょ?」

 

『納得したわ。それじゃ、去夏の方をよこそうかしら? お仲間さんが大変みたいよって、そう言って誘導してみるわ』

 

「サンキュー」

 

いやぁ、アストリッドの方は譲ってくれそうにないからさ。なんか変にクロに執着してるし。でもまぁ、もうすぐアストリッドの方も絶望させれるかもね。自分の欲しがってた魔法少女が怪人化しちゃったら、ショックだもんねぇ!! ふひっ……興奮してきたぁ……。はぁ、やっぱり、他人のこと手のひらで泳がしてるこの感覚っ! やめられないぃいいぃぃぃいいいいいっ!!

 

 

ふぅ。

 

 

興奮しすぎた。

まだまだディナーはこれからなんだから、今腹を満たしてしまっては勿体無い。

 

ふふっ。

皆どんな絶望(かお)を、私に見せてくれるのかなぁ?

今から楽しみで仕方がない。

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