悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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〜2年後〜 魔法省
Memory109


俺が正気を取り戻して暫くした後、櫻の様子を見ていた美鈴らと合流し、双山魔衣達の安否確認兼今後の作戦会議を行うことになった。今はその作戦会議の真っ最中である。

ちなみに、アストリッドは魔力が扱えない状態にして拘束。一応起きてはいて、作戦会議に混ざるつもりらしい。シロも同じように拘束しているが、まだ眠っていて、起きる気配はない。

 

「茜は空っぽのまんまだ。いくら私らが問いかけても、ピクリとも反応しやしない」

 

部屋の奥から、機転をきかせルサールカとの戦闘を途中で切り上げこちらに合流した来夏がやってきて、言う。八重はやっぱりね、と呟きながら、茜の現状を告げる。

 

「おそらくだけど、魂だけ抜き取られている、という推測が正しいと思うわ。そして多分、茜の魂は、今はミリューが持ってる」

 

つまり、今の茜は、厳密には完全に死んだ状態というわけではないのだろうか? 魂を抜かれていることによって、一時的に抜け殻になっているだけで、魂さえ戻すことができれば、茜はまだ助かる。

 

「じゃあ、ミリューを倒せば、茜を助けることが……」

 

「君じゃミリューに勝てないよ、クロ。いや、君達でも勝てない。単純な戦力差でもそうだし、精神面で考えても、勝てはしない」

 

アストリッドは、拘束されながらも、俺達を馬鹿にするかのようにそう告げる。

 

「それに、君達がすべきことは、茜を助けることじゃない。もちろん、茜のことは私も気に入ってるし、失うのは痛い。けどね、問題はないんだ。君だって、茜の命とこの翔上市全市民の命を天秤にかければ、茜の命の方を切り捨てるだろう?」

 

「あまり舐めた口をきくなよ」

 

アストリッドの発言に不快に思った去夏が、彼女の首を掴み、威圧する。が、アストリッドはそんな去夏に怯むことなく、話をやめない。

 

「君達は知らないだろう? もうすぐ、この翔上市に、組織による大規模破壊が行われるなんてこと」

 

「何?」

 

「一応私は一時期組織と手を組んでいたからね。ちょっとした内部情報くらい持ってるさ」

 

「大規模破壊って、一体……」

 

アストリッドは信用ならない。だが、奴が持つ情報は、できるかぎり引き出した方がいい。

 

「簡単だよ。今まで備蓄した大量の怪人を、翔上市に放つ。そして、征服した翔上市を起点に、日本、次第には全世界を支配しようという計画、その一環で行われるものさ」

 

つまり、ルサールカやミリューの相手をしながら、翔上市を守らなければならないわけだ。そうなると、確かに茜の魂に構っている暇はないように思える、が……。

 

「数にもよるだろ。何匹くらいだ?」

 

来夏が問いかける。彼女は普段他人を気にかける様子を見せようとはしないが、実際には人情深い人格をしているのだ。実はこの中で街のことを1番案じているのも、彼女かもしれない。

 

「ま、ざっと1000匹ってところかな? まあ翔上市の魔法少女じゃ数が足りないね。だから君達の力が必要なのさ」

 

「魔法少女は全国にいるわ。翔上市が協力要請さえ出せば、全国の魔法少女が来てくれるはずよ」

 

八重の言った通り、日本の危機ともなれば、全国の魔法少女が翔上市に加勢してくれることだろう。もし全国の魔法少女が来るのであれば、怪人1000匹の対処だって可能だろう。

 

「君達は馬鹿か? そんなに上手くいくわけがないだろう」

 

が、アストリッドはそれを否定する。心底呆れたとでも言いたげに、ため息すら漏らしながら。

 

「日本の魔法省は、はっきり言って腐ってる。いや、魔法少女に関してを扱ってる機関全てが狂っていると言ってもいい。それは、私達魔族の手によってそうなったものもあれば、元々それ自体の気質に問題があってそうなってしまった場合と、種類に違いはあれど、結局は同じ、魔法少女を食い物にするゴミの集まりだ。自分の利益のことしか考えてないんだから、地方にいる人間は、自分の地域の魔法少女をわざわざ翔上市に派遣したいだなんて考えない。怪人被害はいつどこで起こったっておかしくないし、それに、魔法少女不在の状況は、市民の不安も煽ることになる。簡単に派遣できるもんじゃないんだよ」

 

まあ確かに、実際問題魔法少女を全て翔上市に集結、というのは難しい話だろう。アストリッドの話では、やはり組織による大規模破壊を防ぐために、普通の魔法少女の何倍も強い俺や来夏のような存在が力を貸した方がいいらしい。茜の魂がいつまで保つかはわからない。そもそも、ミリューが本当に保持したままなのかすら不明。アストリッドの言う通り大規模破壊に対抗するべきなのかもしれない……。けど、そんな単純に割り切れるわけじゃなくて。

 

「どうでもいいわ。もしそうなのだとしたら、勝手に滅びればいいのよ」

 

八重に至っては、そんなことまで言ってしまう始末だ。

 

「我儘だね。いいのかな? 君のせいで世界が滅んでしまっても」

 

「私は、私と、私の身の回りにいる身近な人が無事でいてくれればそれでいいわ。世界なんて、どうでもいい。昔からそうよ」

 

部屋の中が、物凄く暗い…。

照明はついてるんだけど、物凄く、雰囲気が重いのだ。

 

めっちゃ覚悟決めて理性を取り戻したのが恥ずかしくなってくるくらいに、今の空気は理性を取り戻した時の俺のテンションと真逆すぎる。

 

と、そんな時、先程来夏がやってきた奥の部屋から、1人の少女がこちらへとやってくる。束だ。

 

「大規模破壊は……私に任せてください。私には、リリスといた時の死体人形があります。だから……」

 

束は、包帯だらけのボロボロの体でありながら、世界のために………いや、俺達の………茜や来夏のために、戦おうとしている。

 

だが、どう考えても無理だ。いくら死体人形に任せ、自分は動かないからと言って、死体人形の制御には、多大な魔力を要する。もし仮に完全に制御して大規模破壊を乗り切ったとしても、その時、束は間違いなく、その大地を踏み締めることはできない。

 

「束、やめとけ。その体じゃ無理だ」

 

「それでも、私は……!」

 

「ま、どちらにせよ、大規模破壊の時にルサールカとミリューも相手にすることになるだろうし、問題は茜を助けれるかどうかなんてことより、如何にしてルサールカ、ミリュー、そして数多の怪人を相手取るかって部分なんだけどね」

 

ルサールカ、先程までの会話を振り出しに戻すかのように、そう発言する。どうやらこいつは、ハナから俺らに協力する気なんてないらしい。ただ、これから起こることを告げて、反応を楽しんでいるだけのように見える。かと言って、こいつを殺すわけにはいかないんだが……。

 

 

「それなら、私達で何とかするしかない」

 

と、結論が出ないでいると、束の後ろから、もう1人、少女がやってくる。

美鈴に支えてもらいながら、こちらに歩いてきたその少女は、人間と魔族との調和を望む、百山 櫻だ。

 

「魔法省と交渉する。何でもいい、何か、彼らを納得するものを提供できればいい。どちらにせよ、魔法省とはいつか話をつけないとって思ってた。人間と魔族が分かり合う以前に、人間同士で分かり合えないんじゃ、理想の世界なんて、いつまでも作れないだろうから」

 

「できるのかい? そんなこと」

 

「できるできないじゃない。やってみなくちゃ。皆を巻き込む形になるけど………。それでも、お願い。私に、力を貸して」

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「本当に、良いので?」

 

「構いませんよ。私も貴方達とは、仲良くしたいと思っていますので。ねぇ? 魔法大臣、正井 羽留利(まさい わるとし)様」

 

「ほう? それでは、これからもご贔屓にお願いしますね、()()()()()()

 

 

 

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