悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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〜2年後〜 死神
Memory121


目を覚ます。俺は冷たい地べたで寝そべっていたせいか、体が冷えていた。

周りを見渡す。カナの姿は見当たらない。その代わりに、魔王の姿が見受けられた。

 

「目が覚めたか」

 

「カナは……」

 

「知らん。ただ、俺が来る前に、ここで大きな魔力の反応があった。それによって死んでいたとしてもおかしくはない」

 

改めて、俺は辺りを見渡す。

目が覚めた時には気づかなかったが、そこには人の死体が二つあり……。

 

「あ………」

 

その遺体には、見覚えがあった。

俺が助けようとしていた、人工の魔法少女達。その死体であったのだから。

 

「な……んで……ここで何が………」

 

「殺し合い以外ないだろう。俺が来た時には、ミライだかミリンだか知らんが、そんな風な名前を名乗った女がいた。おそらくそいつが殺したのだろうな」

 

多分、魔王が言いたいのは、ミリューのことだろう。何故ミリューがカナ達に目をつけたのか……。

俺の動向を追われていたのか、それ以外の理由なのか……。分からない……分からないが……。

 

「結局俺は、守れなかったんだな……」

 

約束したのに。俺は、何一つ、彼女達の夢を叶えてやることができなかった。

指切りまでしたのに、カナの願いを、俺は……。

 

「…どこへ行く?」

 

「櫻達のところ、戻る。魔衣さんにも報告しないと」

 

「そうか」

 

魔王は一言、それだけ言う。俺についてくるつもりはないらしい。こいつの行動もよく分からないところが多いが、正直、今はそんなことを気にかけている余裕なんてない。

 

「ごめん……カナ………」

 

無理矢理にでも、あそこから連れ出しておくべきだった。櫻達の近くにいれば、こんなことにならずに済んだかもしれないのだから。

 

俺はどうしてこうも、選択を間違い続けてしまうんだろうか。

 

そもそも、ミリューさえいなければ、こんなことにはならなかったんじゃないだろうか。

こんなことになる前に。俺が、ミリューのことを殺せていれば……。

 

「ダメだ……」

 

今のミリューは、別人の魂を入れられて乗っ取られているだけなのだ。殺してしまえば、元々のミリューの人格まで殺してしまうことになる。元のミリューには俺が組織を抜け出すための手回しまでしてもらった。恩を仇で返すわけにはいかない。

 

それに、やっぱり俺は、殺すなんて……。

 

思考の渦に呑まれていると、気づいた時には既に櫻達のいる場所へ戻ってきていた。本当に、あっという間だった。

 

どうやら櫻達は、今もまた何か話し合っているらしい。

 

櫻達の話している内容はこうだ。

魔法省でこき使われていた、人工の魔法少女達を助け出すことに成功した。

魔法省との協力は困難だが、人工の魔法少女達は大規模破壊に協力してくれる。

とのこと。通りで知らない魔法少女がいると思ったわけだ。

 

何よりも驚いたのは、櫻が、アルファという人造の魔法少女の信用を勝ち取るために、“誓約魔法”を使ったということ。“誓約魔法”なんて、そんなにポンポンと使っていいようなものじゃない。

 

でも、そうか。

それができるから、櫻は、アルファ達を助けることができたんだろう。

 

カナ達を助けることができなかった、俺とは違って。

 

そうか。やっぱり俺は、根本的に、櫻達とは違うんだろう。

櫻はきっと、希望を捨てない。常に理想を追い求め、一番良い未来を掴もうとしている。

 

でも、俺には、そんな覚悟なんてない。

俺は、最良の未来を掴めるだけの力を持ち合わせていない。

 

俺と櫻じゃ、性質が違うんだ。

 

櫻は今も、微笑ましいという顔をしながら、皆の輪の中に混じろうとするアルファ達を見守っている。

 

俺は、その光景を、見ていられなかった。

どうしても、俺が助けることのできなかったカナ達のことを思い出してしまうから。

 

俺は適当に「外の空気でも吸いたい」と言って、その場から逃げるようにして立ち去る。結局、魔衣さんにカナ達のことは報告できていない。櫻がアルファを救い出しているのを見て、後ろめたくなってしまったのもあるだろう。

 

「気分転換がてら、散歩でもするか」

 

正直、こうでもして気を紛らわさないと、やっていけそうになかった。

街をぶらぶらと歩く。

怪人の出現しない街は、比較的平和だ。多分、組織も大規模破壊に向けて、怪人を貯蓄している最中だから、街に怪人が出没しないのだろう。

 

静かな街で、少し気持ちを落ち着けよう。

カナ達のことを忘れようというわけじゃない。けど、今は冷静にならないと。

 

そんな風に思いながら、歩いていた時だった。

 

「オイオイオイ!! もう終わりかよ!! 口ほどにもねぇな!!」

 

目の前には、どう見ても重症なメイド服の魔族、クロコと鷹型の魔族、ホーク。

それを引き起こしたのは、おそらく目の前で高笑いしながら叫んでいる元組織の幹部、ゴブリンだろう。

 

ゴブリンは一度、茜に助けられたことによって一命を取り止めた。だから、少しは落ち着いたんじゃないかって、そう思ってた。けど……。

 

「何してる?」

 

俺は少しの希望を持って、ゴブリンに話しかける。俺の勘違いの可能性だって、まだあるんだから。

 

「あ? オイオイ。クソ生意気なガキじゃねーか。何してるって決まってんだろ? 人間と共存だとかいうクソキメーこと言ってる奴らを嬲ってるんだよ。魔法少女とかいうガキなんて気色わりーだけなのに、何でこいつらはそれの味方をするんだろうなぁ!」

 

「茜に助けられた恩を忘れたのか?」

 

「別に俺は頼んでねーよ。あのガキが勝手にやっただけだ。あいつも馬鹿だよなぁ。俺を生かしときゃこうなるってわかりきってるだろ。ああ、安心しろよ。皆仲良く地獄送りにしてやるからなぁ」

 

茜への感謝を一切せずに、それどころか茜を侮辱するゴブリン。そんなものを見て、気分が良くなるはずもない。

せっかく、気持ちを落ち着けようとしていたのに。こんなもの見せられたら、俺は……。

 

「何で、お前みたいな奴が生き残ってるんだよ……!」

 

感情(怒り)を、殺しきれないじゃないか!

 

俺はその手に大鎌を持ち、ゴブリンに振るうために、その足を動かす。

当然、俺の持っている鎌は殺傷能力のない『還元の大鎌』なんかではない。こいつに、そんなもの必要ない。

 

「お前のことを助けた茜は、今も意識が戻ってない! なのに……! お前は!!」

 

「しらねぇよ。ガキが口ごたえすんな」

 

俺の攻撃を、ゴブリンは軽々と交わす。

そうか、今の俺は魔衣さんに力を制限されてるんだった。なら……。

 

俺は懐から、怪人強化剤(ファントムグレーダー)を取り出す。これを使って、自身の力を増強することによって、俺にかけられている制限を無理矢理解除する。

 

使用してすぐに、俺はゴブリンの胴体を切り裂く。

 

「お前みたいな奴が生きてるのに、カナは生き残れないなんて、不平等だよな」

 

俺の力じゃ、結局、何も犠牲にせずに、何かを助けることなんてできないのだろう。

ようやく分かった。自分がどうすれば良いか。

 

櫻達は、きっとこれをしない。いや、できないだろう。

でも、きっと必要なことなんだ。

 

今ここで、俺はこいつを()()。そうすれば、将来こいつによって奪われる命が、なくなるのだから。

 

最初から、こうしておけばよかった。

思えば俺は、何度もそんな機会があった。

 

でも、俺は、殺せなかった。その結果、自分の手でユカリを殺すことになったり、シロが洗脳されてしまったりしたのだ。

 

生かしておいて、良かったことなんて、一度もない。

 

「オイ! まて……」

 

「じゃあな。死ね。クソ野郎」

 

俺はそのまま、ゴブリンに向かって大鎌を振り落とす。

 

初めて命を奪った感覚は、気持ちが悪くて、頭に焼きついて離れてくれそうになかった。

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