悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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Memory128

見つけた。

ユカリ達の遺体があった周辺から探ってみたが、案外あいつはそこまで遠くまで移動していなかったらしい。

手間が省けて良かった。それに、ユカリ達を殺した奴が、1分1秒でも長く生きているなんて許せない。

 

はやく殺さないと。

 

幸い、向こうは俺の存在に気づいてないみたいだ。ささっと大鎌を構え、後ろから不意打ちを狙いにいく。

 

「させないよ」

 

だが、俺の大鎌が奴の首元に届くことはなかった。

横から触手のようなものに腕を掴まれ、攻撃を妨害されたのだ。おそらく、奴の仲間。

 

「面倒な…」

 

「ほーら飛んでけー」

 

触手に掴まれたまま、俺は空中へと投げ飛ばされる。あの触手、たった一本で俺の体を持ち上げたのだから、おそらくかなり力があるのだろう。少々厄介だ。しかも、今の一連の流れで奴に俺の存在が勘付かれた。

 

2対1。片方は未知。もう片方は問答無用で四肢を切断することができる魔法を扱える。

触手を使う方は一旦置いておくとして、ユカリ達を殺した奴は遠距離でも四肢を切断してくるのが厄介だ。

うかうかしてると、足も手も持っていかれる。

 

「馬鹿な奴」

 

奴の腕が、指先が、俺の方へ向いてくる。

四肢切断への対抗策は、一応考えてある。“ブラックホール”だ。“ブラックホール”内に移動して、俺を四肢切断の対象に設定できなくすればいい。ついでに奴の真後ろに“ホワイトホール”を用意しておけば、回避ついでに不意打ちもこなすことができる。

 

後方に“ブラックホール”を出現させる。よし、後はこの中に入って…。

 

「無能の考えることはわかりやすいね。逃がさないよ」

 

「触手かっ!」

 

クソ……触手に腕を掴まれた……。早く触手(こいつ)を切って、“ブラックホール”内に逃げ込まないと………。

 

「無駄だよ。もう“設定”はし終わった。後は切断するだけ」

 

嘘はついていなさそうだ。間に合わなかった……か。

 

魔王から聞いた話によると、四肢切断は必中らしく、一度設定されてしまえば、両手両足どこでも、任意のタイミングで切断することができるそうだ。そして、部位ごとに設定し直す必要もない。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。仮に“ブラックホール”内に逃げ込んだとしても、必中の効果が消えることはない。

 

一つでも四肢を切断されたなら、出血多量で死ぬだろう。そして、仮に“ブラックホール”内を経由し、奴を不意打ちして仕留めたとしても、最低でも両手両足のうちどれか一つは持っていかれることになる。

 

つまり、“設定”された時点で、今の俺に残された選択肢は、相打ちのみ。

 

なら、もういい。死んでも、奴だけは殺す。思考を切り替えろ。ただあいつを殺すことだけを狙え。正面からでも“ブラックホール”を経由してからでもいい。とにかく、俺の四肢が全部もぎ取られる前に決着をつける。

 

不思議と絶望感はない。復讐を果たした後に死ねるなら、本望だと思っているのかもしれない。

 

「じゃあね、死ね」

 

ああこいよ。腕の一本や二本はくれてやる。

その代わり、俺はお前の首を取ってやる。

 

奴の腕が振るわれる。魔力を行使したのだろう。それにより、両手両足、そのいずれかの部位が、欠損する。

 

 

 

 

はずだった。

 

 

 

 

「『反射』」

 

奴と俺の間に、割り込むようにして入ってきたのは、真っ白な髪をツインテールにした少女。

『反射』の魔法の使い手。

 

「るなの『反射』が効いてない? あんた何者?」

 

奴の四肢切断に対抗できる、()()の魔法少女。

 

「ま、いいわ。『反射』できなくても、防げてはいるっぽいし」

 

閃魅光。

 

「さて、これで貸し借りなしよ、クロ」

 

強力な助っ人が、加わった。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

「あまり顔を出すつもりはなかったんだけどね………」

 

朝霧去夏は、7つの大罪の1人である魔族の女の攻撃により、生命の危機に陥っていたが、ある1人の少女により、その危機は去る。

 

「君は……?」

 

「私は古鐘。古い鐘とかいてこがねと読む。まあ、他の子達より長く魔法少女やってることが取り柄なだけの、凡人だよ」

 

「誰あなた? 私の邪魔をしに来たの?」

 

「自己紹介なら今さっきしたんだけどね……。それに、悪いけど私は君と戦うつもりはないんだ。基本逃げ腰なものでね。ただ、彼女(去夏)に関しては助けさせてもらおう」

 

古鐘は、一つの本を取り出し、ページをパラパラとめくり出す。

 

「『Magic Book』145ページ第Ⅲ章 属性・無 ”街渡り“」

 

古鐘と去夏の体が、光に包まれる。

 

(なんだこれ……滅茶苦茶高度な………転移魔法? こりゃ凄い。私の体を包んでいる光は、この転移魔法に付属する高位の防御魔法ってところか……。おまけで防御魔法なんて、特典モリモリだな)

 

去夏はぼんやりと、そんな風に頭を働かせる。実際、古鐘の使った転移魔法は強力で、波の魔法では突破することのできない防御魔法までおまけでついている。まさに最強の撤退魔法と言えるだろう。

 

去夏と古鐘の体が、消えていく。おそらく、転移を開始したのだろう。瞬間、魔族の女は高速で移動し、来夏と古鐘の転移魔法を防ごうとする。

 

だが、古鐘の転移魔法には、強力な防御魔法が付随しているわけで、転移魔法を解除するには、まず防御魔法を破壊してから解除する必要がある。

 

当然、2人が転移する前に。

 

「逃がさないわよ!」

 

そう、普通ならば、古鐘の転移魔法を防ぐことは不可能だっただろう。

 

()()()()()

 

パリンっと、ガラスが割れるような音が響いた後、古鐘の防御魔法が破壊される。

 

「は?」

 

去夏と古鐘は魔族の女に掴まれ、そのまま魔族の女は2人を後方へ大きく投げ飛ばす。

 

「冗談はよしてくれよ……。まさか私の転移魔法を破るなんて……。せっかくカッコつけたのに、台無しじゃないか」

 

古鐘は軽口を叩く。だが、先程のような余裕はどこにも感じられない。本人は隠しているつもりかもしれないが、その顔にはモロに焦っていると書いてあるように見える。

 

「面白い魔法ね。でもからくりさえわかれば簡単だわ。要は防御魔法を壊した後に、転移できないようにしてやればいいだけだもの。簡単ね」

 

魔族の女は、そんな風に言ってのける。だが、そんな簡単なものではない。

ただでさえ高位の防御魔法がかかっているのだ。並の魔法では太刀打ちすることなどできない。

高火力の魔法であれば、確かに防御魔法を破壊することも可能だろう。だがしかし、その後に転移を防ぐという工程が発生する。古鐘の転移魔法は、その二つの工程を、ほぼほぼ同時に行わなければ解除できないほどハイレベルなものだった。

 

大技を放てば、必ず次の行動にはワンテンポ遅れが生じる。つまり、ほぼほぼ同時に上記二つのアクションを起こすことなど、ほぼ不可能と言っていい。

 

だが、魔族の女はやり遂げた。

 

大技を放てば、次の行動には遅れが生じる。その条件は、魔族の女も同様だ。

では、どうすればいいか。

 

答えはシンプル。

 

魔族の女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

通常の攻撃であれば、次の行動に遅れが生じることは、ないわけではないが、大技を放った時よりはスパンは短い。

 

しかし、それをやり遂げるには、通常攻撃が他の者にとっての大技レベルの火力を持つ必要がある。

つまり、それが意味するのは。

 

魔族の女の通常攻撃は、他の者の大技に匹敵するということ。

一つ一つの何気ない攻撃が、必殺技級であるということを意味する。

 

「さて、これで貴方達は逃げられないわ。戦うしかないわね。ああそうだわ。戦うのだし、自己紹介が必要よね」

 

魔族の女の攻撃は、アストリッドや魔王の攻撃をも凌ぐ火力を持つ。

 

「私はミリュー様によって作られた人造の魔族。二つ名は『色欲』。名はアスモデウスよ」

 

今までに対峙した中で、最強の魔族。それが今、2人を襲おうとしていた。

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