悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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ノーメドと『色欲』の戦闘が始まる。周囲には、『色欲』に敗れて倒れ込んでいる、椿達や美鈴達の姿があった。

 

「彼を囮にして逃げよう」

 

その様子を見て、古鐘はある提案をする。

 

「確かに、この状況じゃ私達に勝ち目はない。逃げるのはあまり好きじゃないが……」

 

「私は少女2人を運ぶ。君は椿君達を頼む」

 

去夏と古鐘は、手分けして椿達の回収を行い、撤退の準備を進める。

 

「『Magic Book』3ページ 属性・無 “無重力”」

 

古鐘は『Magic Book』を使い、美鈴とメナの体重を無にし、回収を行う。

 

「よし! このまま撤退して…」

 

「逃すと思う?」

 

しかし、撤退しようとした古鐘達の目の前に、既に『色欲』は立っていた。見ると、どうやらノーメドは『色欲』に敗れてしまったらしい。実際、椿やドラゴ達も一瞬で倒されてしまっているのだ。やはり、男では『色欲』の“魔壊”に対抗する術がないらしく、戦闘能力以前に“魔壊”を突破できずに終わってしまうらしい。

 

「櫻が来るまでまだ少しかかりそうだね。さて、どうするか……」

 

古鐘は考える。どうすればこの場を切り抜けられるのか。『Magic Book』は戦闘でそのほとんどを消費し、撤退に使えそうなものはほとんど残っていない。去夏も、先程の戦闘で消耗しており、足止めするにもスタミナ的に限界だ。

 

「詰み、か………」

 

古鐘達が諦めかけていた、その時。

 

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「は?」

 

『色欲』は空中で舞いながらも、華麗に地面へと着地し、ダメージを食らわないようにする。彼女が自身に攻撃を加えようとしたものの面を拝もうと、周囲を見渡すと。

 

「あら? そういえば、脱走したんだったわね」

 

「“魔壊”だったか? 残念だが、それは俺には効かない」

 

組織の幹部、アスモデウスの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

“怪物”が、暴れ回る。

 

「刻!」

 

「がっ、クソ……こいつっ……!」

 

“怪物”は、まず意識が覚醒してから目に入った鮫島刻の首元を掴み、そのまま押し倒して締め上げることにした。止めに入った吸血鬼の男を膨大な魔力の圧力で跳ね返し、ただ目の前の男を殺すために、自身の手に目一杯力を込める。

 

「お……い、たすけ……ろ!……」

 

鮫島は触手使いの少女に助けを求めるが、触手使いの少女はそれに応じる気がないらしく。

 

「だから殺したらよかったって言ったのに。ほんとに無能。知ってる? 能ある敵よりも、無能な味方の方がよっぽど厄介って話。だから、無能な貴方にはここで死んでもらうことにしたわ。悪く思わないでね」

 

そう言って、鮫島達を放置し、この場から立ち去ってしまう。

 

吸血鬼の男は、鮫島を助けようと、何度も“怪物”に攻撃を加え続ける。

しばらくして、流石に吸血鬼の男の存在を無視できなくなったのか、“怪物”は鮫島の首を絞めていた手をはなし、吸血鬼の男の方へと標的を変える。

 

「かっ………はぁ……はぁ……クソが………調子に乗りやがって」

 

“怪物”はただただ無機質に、吸血鬼の男を攻め始める。恐ろしいのは、無詠唱で武器を召喚し、それを用いて戦闘を行っている部分だろう。言うなれば、”怪物“は、”最低限知性を持った怪人“と化しているのだ。だからこそ、頭を使って戦闘を仕掛けてくる。しかも、痛みに鈍感なのか、攻撃を加えても全く怯む様子を見せていない。

 

いくら傷つこうとも、それを気にすることもなく、ただひたすらに突撃してくる。

 

「刻! 加勢を!」

 

「うるせぇ! テメェはそこで足止めしてろ!!」

 

鮫島は吸血鬼の男を囮にして、その場から逃げ出そうとする。

 

吸血鬼の男は鮫島の加勢を諦め、“怪物”との戦闘に打ち勝つことに賭ける、が。

“怪物”にとって致命的になるであろう攻撃を加える瞬間に、“怪物”はその肉体の一部を液状化し、男の攻撃を完全無効化しながら逆に攻撃を加えてくるのだ。

 

持久戦でも、短期決戦でも、男よりも“怪物”の方が優勢であることは明白だった。

 

「シ……」

 

吸血鬼の男の体に、切り傷が刻まれていく。

 

「あ、がっ………刻、たすけ……」

 

「シ…………」

 

念入りに、“怪物”は吸血鬼の男の体を切り刻んでいく。生き返らないように、念入りに殺し切らないと、と、吸血鬼の男には、“怪物”がそう言っているように思えた。

 

やがて、吸血鬼の男はピタリとも動かなくなる。

 

次の標的は、刻だ。

 

刻と“怪物”の間には、かなりの距離がある。走っても“怪物”には刻の元に辿り着くことはないだろう。

だからこそ、刻は吸血鬼の男を囮にして逃げるのは英断であったと、そう安堵していた。だが。

 

刻の目の前に、“ホワイトホール”が現れる。

 

「あ……」

 

“ホワイトホール”から、大鎌を持った“怪物”が現れる。

刻はすぐに、“怪物”に背を向け、逃げようとするが……。

 

「あぐっ……!」

 

足を切られ、その場に倒れ込んでしまう。“怪物”は、狙って足を攻撃したのだ。

逃がさないように。確実に仕留めるために。

 

「ま、待ってくれ!! お、俺が悪かった! 出来心だったんだ!! ちょっとしたおふざけだろ! な? 約束は守ってるじゃないか!! だから……!」

 

刻は必死に訴えかける。しかし、人間の言葉は、“怪物“には通じない。

言葉で騙そうとしても、それを”怪物“は理解することがない。尤も、仮に”怪物“が”怪物“でなかったとしても、刻の言葉を聞いて攻撃の手を緩めるかと問はれれば、それはNOだろう。

 

“怪物”は、まず刻の両足を胴体から切り離す。先程も言ったように、逃亡できないようにするためだろう。

 

「あああぁあぁああァァァァァァ!!!」

 

刻は絶叫するが、“怪物”はそれを気にすることなく、次は刻の腕を胴体から切り離す。

かつて、アンプタがそうしていたように、“怪物”は、四肢を切断してから、刻のことを切り殺すことにしたらしい。

 

“怪物”には、ただただ己の力を振り翳し、暴れ回ることしか能がない。そのはずだが、“怪物”は何故か、やけに念入りに、刻のことを殺し切ろうとしている。

 

「誰か、助け……」

 

何度も、何度も、念入りに刻の体は、“怪物”の大鎌によって切り刻まれる。

刻の失敗は、吸血鬼の男を置いて逃げてしまったことだろう。元々刻は、吸血鬼の男と契約することで、力を手に入れていたのだ。

 

吸血鬼の男が死んだ時点で、刻は何の力も持たないただの一般人だ。そんな一般人を、ミリューは手元に置いておくつもりなどない。だからこそ、吸血鬼の男を見捨てた時点で、刻の死は確定していた。

刻の生存ルートは、吸血鬼の男と共に戦い抜き、“怪物”を倒すか、吸血鬼の男と共に“怪物”から逃げるか、その二択だったのだ。

 

そもそも、刻が愛に手を出さなければ、ただただ邪魔な妨害をする者を1人戦闘から除外するだけに済んだのに、余計なことをしたせいで、こんなことになってしまっているのだから、自業自得だろう。

 

「ごめん………なさい………」

 

刻は涙を流しながら、謝罪の言葉を述べる。しかし、“怪物”はニタニタと不気味に笑みを浮かべながら、刻を切り刻むだけだ。

 

刻も同じように、気色の悪い笑みを浮かべながら、同級生を刺し殺していたことを思い出す。刻も、同じことをしていたのだ。つまり、因果応報。刻は、自分のやっていたことを、今やり返されているだけなのだ。

 

(ああ、そうか……)

 

自分が殺してきた同級生も、こんな気持ちだったのかと、刻は感じる。

 

(でも、そうだな……)

 

「おま………えも…………俺……とおん……なじだ………くく………はは………」

 

そう言い残して、刻はその命を落とした。

 

 

 

 

“怪物”は、刻を殺して満足…………とはいかない。

“怪物”は、死ぬまで、自身の力を振り翳すことをやめはしない。

 

次に“怪物”が標的にしたのは………。

 

「ク……ロ………お前……」

 

櫻から連絡を受け、この場へとやってきた、朝霧来夏だった。

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