悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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Memory15

 

「違う違う、ここはこの数字を代入してーーー」

 

最近、クロの様子が変わった。悪い方か良い方かで言えば、後者だ。

今まではクラスメイトとはそこまで必要以上に絡んでいったりすることはなかった。

それに

 

「真白、辰樹に教えてあげてくれない? 私の説明じゃ理解できないみたいだから」

 

「あ、うん」

 

真白とも距離を置かなくなった。以前のように家族関係というわけにはいかないが、それでもクラスメイトとしてはある程度の距離感をもって接してくれるようになっていた。

 

「あー! わけわかんねぇ! なんだよこの問題クソゲーじゃん!」

 

彼は広島辰樹。

真白の前の席に座っている男子生徒だ。

 

真白も少し話したことがあるが、大体普通の男子中学生と言った感じだった。

成績は芳しくないが、裏表がなく誰にでも優しいので、どちらかというとクラスメイトには好かれている。

 

「辰樹、はっきり言うが、影山さんの教え方は結構上手だったぞ。確かにこの問題は難しいから分からなくても仕方ないかもしれないが…‥」

 

そう言って辰樹を呆れた目で見ている彼は伊井朝太。

辰樹と仲が良く、学級委員でもある。

ちなみに彼の席はクロの前の席だ。

 

 

現在、クロ、真白、辰樹、朝太の4人は机をくっつけてグループ毎で授業を受けていた。

今はグループ内で一緒に問題を解く時間だ。

 

ただ、他のグループと違い真白達のグループは実は問題を解くのがかなり早い。

クロと朝太の2人の頭がとても良いのだ。

 

朝太はともかく、クロに関しては何故ここまで頭がいいのだろうと疑問に思う。

学校生活を見ていてお世辞にもクロの記憶力は良いとは言えないし、組織にいたときは教育を受けていないからその分のブランクを埋める必要があるはずだ。

真白ははっきり言って周りとの差を埋めるのに必死になって勉強しまくった。

保護者になっている双山魔衣に教えてもらいながら、なんとか今平均点を超えるくらいの点数を維持しているのだ。

 

(やっぱり脳を弄られたことが関係している…?)

 

真白はそう考えたようだが、実は違う。

クロには前世の記憶がある。

 

より正確に言えば、“前世で学んだ知識の記憶がある”のだ。

確かにクロは組織に脳を弄られた影響で記憶力が悪くなってしまっているが、それは日常生活などに関しての記憶だ。

 

学校で学んだ知識など、日頃日常生活で使わないような知識については実は割と記憶しているのである。

 

ただ、そんなことは真白には分からない。

それに、真白にはもっと不思議なことがある。

 

「えっと、辰樹。ここはねーーー」

 

そう言って辰樹に説明する。

すると……

 

「あー! なるほど。そういうことか! 理解した!」

 

そう。何故か分からないが理解してくれるのだ。

真白よりも頭が良く、そして説明の仕方も真白よりも上手いはずのクロが説明しても一切理解しなかったにも関わらず、何故か真白が教えると理解するのだ。

 

「私の教え方は自分でもかなり上手だと思ったんだけど……何でいつも私の教え方じゃ納得できないの?」

 

「ご、ごめん! お、俺、なんか影山さんの説明だと理解できなくて……」

 

「はぁ………お前な……」

 

そんな辰樹の様子を見て、朝太はまたもや呆れ返っていた。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

「辰樹、あんな調子じゃいつまで経っても進展しないぞ」

 

「そんなこと言ったってしょうがないだろ! 影山さんに近づかれると……その……あーもう!…………ドキドキするんだよ!」

 

(そういうことだったんだ………)

 

放課後、忘れ物をした真白は教室に戻ってきていたのだが、扉に入る前に辰樹と朝太の話し声が聞こえた。

別にそのまま教室に入ってもよかったのだが、なんとなく扉を開けずに2人の会話を聞いていたのだ。

 

そしてしばらく聞いていると、辰樹がクロのことが好きだと発言した。

 

クロが問題を教えても理解できていなかったのは、おそらく好きな女子に近寄られて緊張したせいで、説明が何も頭に入らなかったのだろう。

真白の説明で理解できたのは、真白のことを異性としてあまり意識していなかったからだ。

 

(恋愛……今まで考えたことなかったけど………そっか。中学生にもなれば好きな人ができてもおかしくないよね………)

 

組織を裏切り、日常の世界に足を踏み入れた真白だったが、どうやらまだ完全には日常生活を送れてはいなかったらしい。

今までは大切な存在は家族だけだと思っていた。けれど、人によっては誰かに恋をして、愛して、赤の他人だった人物が、自分にとってかけがえのない存在になることもあるのだ。

 

(今までは……クロにとって大切なのは私だけだと思ってたけど……)

 

世界は広い。

人生のほとんどを組織の中で過ごしてきた真白ですら、櫻や八重といった仲間がいる。

クロほどではないが、真白にとって彼女達も大切な人だ。

 

(もし……クロにとって私以外にも大切な人ができたら………)

 

もし、真白だけでは組織を裏切る理由にならなかったのなら、恋人がいれば、どうだろうか?

 

真白も1人の女の子だ。

少女漫画を嗜んだことはある。

その中には家族と決別してまで恋人との恋愛を優先しようとする男女の姿もあった。

 

(クロに恋人ができれば……クロは組織を裏切ってくれるかもしれない……?)

 

そう考えた真白は勢いよく教室の扉を開け、こう高らかに宣言した。

 

「その恋愛、私にも協力させて!」

 

真白の暴走は止まらない。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

真白が辰樹達の恋バナに乱入したと同じ時、櫻は放課後1人で掃除をしている八重の教室までやってきていた。

 

「八重ちゃん、何か隠してるんでしょ?」

 

「櫻。何のことを言っているのかさっぱり「クロちゃんのことだよ」…………」

 

「……………………」

 

「どうして私達に隠し事をするの? 八重ちゃんは昔からそうだった。八重ちゃんはいつもどこか私達に対して壁を作ってる。今は前よりも打ち解けてきたように見えるけど、でもまだ心のどこかで壁を作ってるよね?」

 

思うところがあるのか、八重は櫻に何か言い返すことはない。

そんな八重の様子にはお構いなしに、櫻は次々と言葉を紡いでいく。

 

「八重ちゃんが話さないほうがいいって思ってるなら、私は何も言わないよ。でも、1人で全部抱え込まないで。少しは周りを頼ってもいいと思うな」

 

「来夏や双山さんには……話してあるわ………別に、周りを頼ってないわけじゃない」

 

「やっぱり何か隠してたんだね。でもそのことはもういいんだ」

 

「じゃあ話は終わり? お母さんが待ってるからそろそろ……」

 

「来夏ちゃんや双山先生を頼ったって言ってるけど、それは頼らざるを得ない状況にあったからでしょ? 八重ちゃんは本当の意味で私達を頼ってない。ううん、ギリギリになるまで私達に頼らないようにしてる」

 

「そんなこと………」

 

「ねぇ八重ちゃん。私はね、皆が手を取り合って、皆で助け合う世界を作りたいんだ。昔ね、お兄ちゃんが言ってたの、

 

『俺が世の中を平和にしようとしたら、どうしても暴力に頼ってしまう。でも櫻は、人と繋がる力がある。暴力なんかじゃない、人との絆の力で。だから困っている友達がいたら必ず助けてやれ、櫻にはそれができるから』

 

って」

 

「そんな長いセリフ、よく覚えていたわね……」

 

「うん。私、お兄ちゃんっ子だったから。だからね、自分がしっかりしなきゃ、自分が皆の分まで頑張らなきゃなんて思わなくていいんだよ。八重ちゃんの分も、私が背負うから」

 

「じゃあ、櫻はどうするの……?」

 

「私は………皆を頼る」

 

「結局それって私が皆に頼るのと同じじゃない?」

 

「そうかも。でもこれだけは覚えておいて。八重ちゃんは1人じゃない。だから、1人で抱え込まないで」

 

八重はなるべく会話の雰囲気を重くならないように明るい口調で話すが、それと対称的に櫻の口調は真剣そのものだ。

 

「はぁ。わかったわ。なるべく櫻達を頼れるように努力する」

 

そして櫻の真剣さに負けるかのように八重は折れた。

その言葉を受けた櫻はというと………

 

「は、はぁぁぁ………よ、よかったー。私、ずっと八重ちゃんのこと心配してたから……そう言ってくれて嬉しい! すぐには無理かもしれないけど、これからは全力で私達を頼っていいからね!」

 

先程の真剣な雰囲気はどこへやら。普段ののんびりした雰囲気へと戻っている。

先程は八重のために真剣さを演出していたのだろう。彼女は元々シリアスな雰囲気が得意ではない。だが、八重のためを思って真剣に話をしてくれていたのだ。

 

(こういう真っ直ぐで純粋なところが、皆を惹きつけるのよね……)

 

そんな櫻の様子を見て、ついそう思う八重であった。

 

 




一応補足ですが、シロとクロの間には家族愛はありますが、恋愛的なものはないんですよね。

後、急いで仕上げたので誤字脱字等あるかもしれません。見つけたら報告よろしくお願いします。

【魔法少女】

クロ

組織に属する魔法少女。主人公。

使う属性は光→闇→闇×光

・黒い弾

普通の攻撃では分裂してしまい、また自動追尾の機能も搭載されている魔力の塊。

・ブラックホール

相手が大規模な魔法を形成してきた際に、その全てを吸収して自身の魔力に変換することができる魔法。
ただし、容量を超えると身体に多大な負担がかかり、場合によっては死に至る可能性も持ち合わせている為、慎重に使用しなければならない。

・還元の大鎌

真っ黒色の大きな鎌。イメージでいうと死神の鎌的なもの。攻撃力が高いわけではないが、攻撃した相手の魔力を奪うことができる。

・『ルミナス』

闇属性の魔法と光属性の魔法の複合魔法。相手の魔法によって拘束された場合に、それを解除する効果を持つ。ただし、友情魔法(マジカルパラノイア)などの特殊な魔法には効果がない。

・『魔眼・無効魔法』

闇属性の魔法と光属性の魔法の複合魔法。相手の目と自身の目を合わせることで発動できる。相手の魔法を全て無効化することができる。



シロ/ 双山 真白(フタヤマ マシロ)

クロの双子の妹。たった1人の大切な家族であるクロを組織から助け出したいと考えている。

使う属性は光。




百山 櫻(モモヤマ サクラ)

ある日突然魔法少女の力に目覚めた普通の女の子。皆が手を取って仲良くなれる平和な世界を目指している。

使う属性は無属性。

・『桜銘斬(おうめいざん)』 

桜の模様が入った日本刀。魔力で強化されているため、普通の日本刀よりも強い。櫻がメインで使っている武器。

・『大剣桜木(たいけんさくらぎ)』 

桜の模様が入った黒い大剣。体の大きい敵や、敵に対して大ダメージを与えたい際に用いる。

友情魔法(マジカルパラノイア)

櫻と他の魔法少女のうち誰か一人が揃った時に使える必殺魔法。

『春雨』 櫻×八重
敵に対して局所的な魔力の雨を降らせる魔法。食らった敵は無属性魔法の特性によって体を無に返される。さらに水属性の特性の闇属性の魔法を浄化する効果も備えている。

『春風』 櫻×束
風の弓で無数の矢を放って攻撃する。全ての矢は風に乗って相手を追尾し、迎撃されない限り必ず命中する。さらに、一つでも命中すれば相手の動きを封じることができる。




津井羽 茜(ツイバネ アカネ)

最初に魔法少女として活動し始めた赤髪ツインテの少女。
面倒見のいい性格をしており、束や八重からはよくいじられている。

使う属性は火。




蒼井 八重(アオイ ヤエ)

茜の次に魔法少女になった少女。常に冷静で、仲間に的確な指示を出す。
学校では委員長をしており、成績は優秀である。

使う属性は水。

・『結界・アクアリウム』

特定の形を地面に描くなど、何かしらで表現した際に魔法陣を発動させ、簡易的な結界を施す魔法。結界内には水魔法で生成された雨が降っており、その結界内の闇魔法を浄化する作用を持っている。自身の魔法力ではなく、地脈の魔力を利用するため、魔力が少ない時でも条件さえ満たせば発動可能である。




深緑 束(ミロク タバネ)

一番最後に魔法少女になった少女で6人の中で最年少である。
怪人を前にして放心状態になっていたところを櫻達に助けられ、以降共に戦うようになった。

使う属性は風。

・ウインドバインド

風魔法の力で相手を拘束する技。拘束している間、他の魔法を行使することができないので注意が必要。

・風薙ぎ

風魔法の力で相手を斬りつける技。視認できず、音もないため、敵に気づかれずに攻撃することができるところが強み。威力もかなり高く、くらえばただでは済まない。




朝霧 来夏(アサギリ ライカ)

金髪の髪をローテールにした活発な少女。

使う属性は雷。

・『雷槌ミョルニル』

体中に電気を纏わせ増幅させた後、手のひらにいっぺんに電気を集中させて一つの槌を作り、そこから高圧の電撃を浴びせる技。




ユカリ

クロのデータを基にして造られた魔法少女。

使う属性は闇。




朝霧 千夏(アサギリ チカ)

Dr.白川の研究に協力している魔法少女。

使う属性は地。




???

使う属性は◻︎




???

使う属性は◻︎




???

使う属性は◻︎




???

使う属性は◻︎






【その他】

風元 康(カザモト ヤスシ)

シロとクロの担任の先生。目の下にクマができていて、いつも怠そうに授業をしている。




双山 魔衣(フタヤマ マイ)

保健の先生で、魔法について詳しい謎の人物。




幹部の男/アスモデウス

クロを見張っている組織の幹部。
使う属性は闇×雷



ルサールカ

幹部の女。
使う属性は闇×水


ゴブリン

5人いるうちの幹部の1人。
使う属性は闇×地



イフリート

幹部の1人。
使う属性は闇×火



パリカー

幹部の1人。
使う属性は闇×無



Dr.白川

組織に属している科学者。自分の娘ですら実験体にする根っからの科学者。




散麗(チヂレ)

束と一緒に魔法少女として活動していた少女。怪人との戦闘で死亡した。





黒沢 雪(クロサワ ユキ)

クロの住んでいるアパートの隣の住人。明るく元気な20代。




蒼井 冬子(アオイ トウコ)

八重の母親。クロの住んでいるアパートと同じアパートに住んでいる。




広島 辰樹(ヒロシマ タツキ)

クロ、真白のクラスメイト。
裏表がなく明るい性格。
クロのことが好き。




伊井 朝太(イイ チョウタ)

クロ、真白のクラスメイトで辰樹の友人。
学級委員をやっている。




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