悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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「どうして……たたかおうとするの?」

 

カナは、ミルキーに対して問いかける。その問いに、意味などない。ただ純粋に、どうして争おうとするのか、気にんなっただけだ。

 

「楽しいから、じゃだめかな?」

 

「……へぇ。魔族って、そういう自分勝手な理由でしか動けないやつばっかなわけ?」

 

ミルキーの回答に、光は馬鹿にしたように言う。

別に光も意識してそうしているわけではない。単にそういう気質だというだけだ。

 

「誤解があるなぁ。別に、人間も魔族も、本質的には変わらないと思うよ。人間も魔族も、ヤバい奴はヤバいって。カナちゃんだっけ? キミを造って弄んだのだって、結局は人間だったでしょ? 魔族は関与してない。魔族がやばく見えちゃうのは、単純に、人間界にやってくる魔族は人間界に侵略しよーぜって考えの魔族が多いからそう感じるだけだよ。穏健で争いを好まない魔族は、魔界から出ることはないからね」

 

「どうでも良いわ。やるならはやくして」

 

光は興味なさそうにミルキーの言葉を流す。彼女からすれば、シロ以外の人間は正直どうでも良い。魔族がどうなろうが、人間がどうなろうが、知ったことじゃない。シロが幸せであれば、それで自分も満足。そんな人間だ。だからこそ、敵に絆されることはない。

 

「なるほど。キミは相手にしていて面白くなさそうだなぁ」

 

ミルキーは光への興味を失う。今この場で光に揺さぶりをかけることはできず、ミルキーが楽しめる要素はないと踏んだからだ。

ミルキーは全ての防御魔法を無効化する、魔封じの槍を構える。

 

「閃魅光。反射の魔法。でも、この槍の前では無意味だよ!」

 

ミルキーは全速力で光に槍を突き刺す。

が……。

 

「はぇ……?」

 

「ふーん。無意味ねぇ……。なら、どうしてるなに槍が届いてないの?」

 

ミルキーの攻撃は、閃魅光には通らなかった。

 

「な……んで……」

 

「その程度で、るなの“反射”を無効化できると思わないでほしいわ」

 

閃魅光の“反射”は、防御魔法ではない。

 

「それじゃあ、次はるなの番だから」

 

どんな攻撃も跳ね返す。カウンター型の、攻撃魔法なのだ。

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

おそらく、このアジトへと来ているだろう櫻と合流する。

話はそれから…‥と考えていたのだが……。

 

「あら意外。怪人化せずに、まだ理性を保ったままだなんて」

 

「ルサールカ……」

 

せっかく脱走したっていうのに、ルサールカに見つかってしまった。けど、櫻はもうすぐそこまで来ているはずだし、この場所に来るのも時間の問題だ。今すぐ戦闘に入らず、会話でなんとか引き延ばして、櫻が来るまでの時間を稼ぐしかない。

 

「残念だったな。こっちはとっくに怪人化なんて克服してる」

 

「もし本当にそう思ってるのだったら、哀れだと思うわ」

 

ルサールカは心底馬鹿にしたような目で俺のことを見てくる。

信じていないのか、いや、こいつは俺のことを、実験動物としてしか見ていない。いや、実験動物どころの話じゃない。

 

ルサールカにとって、俺はいつでも捨てることのできるおもちゃ。価値なんてないんだろう。

 

「そう思うなら勝手に思っておけばいい。不本意だけど、櫻の魂を一部奪った。だから、怪人化することなんてない」

 

「それは魂の話でしょ? 確かに、おかしいとは思ってたわ。怪人強化剤(ファントムグレーダー)を数回に及んで使用したのにも関わらず、魂には何のダメージもないなんて。でもね、魂は関係ないの。怪人には、必要のないものだから。どちらにしろ、貴方の体はもう怪人化一歩手前。放っておいても、もう手遅れだわ」

 

俺の体が、手遅れ…?

……いや、いい。考えるな。ルサールカの言うことに、耳を貸す必要はない。

 

俺は生きて帰る。シロに言わなきゃいけないことがある。それまでは、死ねない。

 

「おしゃべりに夢中になってるところ悪いけど、後ろには気をつけた方がいいよ」

 

それに、時間は稼げた。後は……。

 

「奥義!! 桜!」

『嵐!』

「斬!!!」

 

下方から、床を突き破るようにして、ルサールカを攻撃する、櫻の姿が現れる。

 

「っ!」

 

ルサールカは櫻の攻撃に、咄嗟に後方へ回避する。が、その額には汗が浮かんでいる。完全に予想外だったんだろう。俺との話に夢中だったのか、櫻が完全に気配を消していたのか。おそらく前者だろう。一度融合したからかもしれないが、少なくとも俺には櫻の気配を感じとることができたのだから。

 

「お待たせ」

 

「待ちくたびれた」

 

俺は櫻と並び立つ。ここからは、2対1だ。

 

「真白ちゃんに内部を探ってもらってる。だから、私達はとりあえず足止めに徹する」

 

「わかった」

 

シロも来てるのか。

なら、安心だ。

 

もしも、もしも俺が手遅れなんだとして。

 

アジトで怪人化しそうになっても、怪人化する寸前に、シロに今までのことを話すことはできるだろうから。

 

「行くよ、クロちゃん」

 

「任せて」

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

「よりによって、私のところに来ちゃうんだ……」

 

ボロボロになりながらも、そう言葉をこぼすのは、紫色の髪をツインテールにした、小柄な少女、ミリューだ。彼女の体には抵抗した後が残っているが、しかし当の彼女にはもはや抵抗する能力は残っていなかった。

 

「ごめんなさいね。貴女の存在を無視するわけにはいかなかったの」

 

ミリューをここまで追いつけた女の名は。

 

「ルサールカ……」

 

「安心して。命までは取らないでいてあげるわ。その代わり………」

 

ルサールカは、ミリューの胸元に触れる。ミリューの中から、ルサールカは、何かを探るようにして、魔力を這わせる。

 

やがて、何かを見つけたのか、ルサールカは満足したかのようにミリューから手を放す。

 

「そ……れは……」

 

「知ってるでしょ? 貴女の体を乗っ取っていた、俗に言う、貴女の偽物の魂。せっかくだし、最後まで使い潰しておこうと思ったの」

 

ルサールカは、いつの間にかこの場にやってきていた、いや、持ってきていたであろう、少女のような容姿の、人の形をした魂の入っていない抜け殻に、ミリューから抜き取った魂を、入れ込む。

 

「元々は、クロがダメになった時用の保険としてとってあった体だったの。けど、もう必要ないと思ったから、使わせてもらったわ」

 

続けて、ルサールカは怪人強化剤(ファントムグレーダー)を取り出し、その人形に差し込む。

 

「面白いものがみれると思うわ。魔法少女の……人間の怪人化の瞬間を、ね」

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

特別召喚(オーダーメイド)龍方鳳凰砲(ドラゴンバズーカ)

 

マドシュターは、敵を一網打尽にするべく、召喚魔法を用いる。少女の頭上から、射出口に龍の頭がついたバズーカが出現する。

 

「あら、物騒ね」

 

ルサールカはマドシュターのバズーカを見て、余裕そうにそうこぼす。彼女は逃げることもせず、まっすぐにマドシュターを見つめている。

 

「余裕ぶっこいていられるのも今のうちだ! 今に見てろ! 貴様の脳天をこのバズーカが撃ち抜いてやる! 撃つぞ! 撃つ撃つ!」

 

ドラゴンバズーカが、放たれる。

 

「バズーカバズーカ!!」

 

が……。

 

「何かしたかしら?」

 

ドラゴンバズーカは弾き飛ばされてしまった。少なくともマドシュター視点では、ルサールカが何かしたようには見えなかった。彼女は、直立不動で、その場から一歩も動かず、それでいて、手足どころか、その髪の毛一本に至るまで、一切微動だにしなかったのだから。

 

「なんだなんだぁ?」

 

これには流石のマドシュターも訝しむ。しかし、マドシュターは以前にも同じような経験をした覚えがあった。

それは…。

 

「お前、“反射”の魔法を使ったな?? 私にはわかる! 何たって私は、最強だからな! 最強最強!」

 

「正解よ。話がはやい子は、嫌いじゃないわ」

 

「“反射”の対処法は知ってるんだぞ! 知ってる知ってる!」

 

マドシュターは、今度は『王冥斬』という大剣を召喚し、ルサールカに急接近する。

 

「鬼龍術・捌きの王(サバ・キング)!!」

 

ルサールカは咄嗟に“反射”の力を使うが、マドシュターの捌きの王(サバ・キング)の前では、“反射”であろうと無意味。“反射”の魔法ごと切り刻み、強制的に“反射”を無効化する。

 

「あら?」

 

ルサールカが驚いたような顔をする。想定外だったのだろう。“反射”はやぶられないだろうと、そう踏んでいたのかもしれない。しかし、“反射”が破られてもなお、ルサールカの余裕な笑みは消えることはなかった。

 

「そう、理解したわ。貴女は、適当にあしらえるような子じゃないのね」

 

瞬間、マドシュターの背後から、何者かが忍び寄る気配がする。

 

「!? ドラゴンジャンプ!!」

 

マドシュターは咄嗟に上方へと高く飛ぶ。背後からの攻撃に無理に対処するより、上方へ逃げつつ、背後から忍び寄った影の正体を把握することを優先したのだ。

しかし、背後の影の正体を見たマドシュターは、驚愕した。

 

「お、同じ奴が……アバババ! こ、これはなんだ! ば、バグってる! バグだバグだ!!」

 

「あら、気づかれたのね。残念。もう少し上手くやりたかったわ」

 

「遅かれはやかれ気づかれていたと思うわ。それに、気づかれても支障はない、でしょう?」

 

そこには、同じ容姿をした、全く同じ声の、2つの影。

 

「知っているかしら? 組織の幹部の数は、合計で5、なのよ?」

 

2体のルサールカがいた。

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