悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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悪の組織の魔法少女、クロ
Memory1


「作戦会議よ!」

 

赤髪の少女、津井羽 茜が言う

茜は赤色の髪をツインテールにしたちょっとツンツンした少女だ。

 

「作戦会議って言ったって、真白が来るまではあの例の魔法少女については話せないし…」

 

「真白さんが来るまではのんびり待ちませんか?」

 

「そうだね、まだ来夏ちゃんもきてないみたいだし……」

 

上から順にマジカレイドブルーこと蒼井 八重、

 

マジカレイドグリーンこと深緑 束、

 

マジカレイドピンクこと百山 櫻である。

 

八重は青色の髪をポニーテールにして纏めたいかにも真面目そうな委員長タイプ。

 

束は身長が低く、緑色の髪でクセ毛の少女だ。魔法少女の中で一番年齢が低いのもあってか、他の魔法少女のことはさん付けで読んでいる。

 

櫻は桃色の髪を肩にかかるぐらいまで伸ばしたごく普通の女の子だ。

髪色の時点で普通ではないと思うかもしれないが、この世界では髪の色が多種多様で生まれた時から色々な髪を持つものが多いので別段おかしくはない。

 

そんな彼女達は今、茜の家に集合して作戦会議を開こうとしている。

大体全員中学生くらいの年齢だからか、1人の部屋に集まるのもはたから見たら友達同士で女子会でも行っているようにしか見えないだろう。

魔法少女の姿を見られていたらバレるのではないかと思うかもしれないが、それもない。

魔法少女になった途端、魔法によって認識阻害が行われるのだ。同じ魔法少女や、元は魔力の塊である怪人などには認識阻害は効かないが、魔力を持たない一般人には効果は抜群だ。

 

「それはそうなんだけど…皆があの例の魔法少女についてどう思っているのか聞きたいの」

 

「私には怪人と同じように好き勝手に街を破壊しているようにしか見えなかったけど」

 

八重が言う。

 

ちなみに先日の怪人を倒したのは八重だったりする。彼女は常に冷静に立ち回り、確実な手段で敵を葬るのだ。

櫻は同じ魔法少女であるはずなのに街を破壊するクロに困惑していたし、

真白はクロとの再会に頭が混乱していた。

束と茜はクロに対して警戒して注意を払っていたし、来夏に関しては頭に血が上りやすく短気だ。

そうなると自然と怪人の対処は八重に流れてくるだろう。

 

「それはまだ分からないよ!真白ちゃんと同じで、何か理由があるのかもしれないし…」

 

「そうなると結局、真白さんが来るまでは何も分からないままですね」

 

「来夏は何してるのよ。全然来ないじゃない」

 

「そういえば、何をしてるんでしょうか。家からの距離はそこまで遠くないはずなんですけど…」

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

クロは今路地裏で1人の少女と対峙していた。

金髪の髪をローテールにした活発そうな少女だ。

 

「よぉ、クロだったっけ? よくも私たちの街をメチャクチャにしてくれたなぁ」

 

彼女の名前は朝霧来夏。櫻達の仲間の魔法少女だ。

 

「マジカレイドイエローか。1人で私とやり合おうなんて、ちょっと無謀なんじゃないかな? 仲間は連れてこなくて良いの?」

 

「うるせーな。たまたまお前の姿を見かけたから追っかけて来たんだ。仲間つれてくる暇なんてねーよ」

 

「わかった。こちらとしても6人同時に相手にするより、1人ずつ確実に潰していく方が楽だしね」

 

「ほざけっ!」

 

バチンッという音と共に来夏がクロに急接近する。

 

「なるほど…属性は雷…見た感じかなりの腕前っぽいね…」

 

魔法には属性がある。

魔法によってしか作り出すことができない物質を相手にぶつけて攻撃する無属性。

魔法から炎を生み出し自在に操る火属性。

魔法から水を生み出し自在に操る水属性。

他にも風属性、地属性、雷属性、心属性、そして、光属性と闇属性。

後、一応水属性から派生した氷属性なんてものもある。

 

魔法少女には生まれつき使える魔法の属性が決まっており、来夏の場合はそれが雷属性なのだ。

 

「おらっ!」

 

来夏が電撃を飛ばす。

クロは咄嗟に闇の魔法で壁を作って攻撃を防いだ。

来夏の攻撃は空気中に霧散した。

 

「闇…‥属性……?おまえ、人間じゃないのか?」

 

闇属性は本来どんな魔法少女でも使うことができない属性だ。

そもそも闇属性自体、組織が怪人を作った時に偶然誕生した属性であり、怪人以外は扱うことができないはずの属性だ。だからこそ来夏はクロ自身が怪人の一種なのではないかと踏んだ。

 

「人間だよ。ただちょっと弄られてるけどね」

 

しかし、クロは怪人ではない。

本来のクロは光属性の使い手だったが、魔法の練習を途中から疎かにしていたクロを見かねた組織が無理やり闇属性の魔法を扱えるように後付けしたのだ。

光属性の魔法は使えなくなったが、結果的に魔法少女としての強さは上がったので組織としては成功だったのだろう。

 

「弄られた……か。つくづく嫌になる組織だな」

 

「仮にも戦闘中だよ。余計な詮索をしていたら、足元掬われるよ?」

 

クロはそう言いながら闇の弾を飛ばす。

来夏も電撃で魔法をうち落とそうとするが、電撃が当たった途端に闇の弾が分裂して再び襲いかかってくる。

 

「クソっ、めんどくせぇ」

 

来夏は足元に電気を流し、壁に張り付きながら闇の弾を避けることにした。

しばらく経てば闇の弾は消える。

闇の弾が消えたら反撃だ。そう思っていたが

 

「いつまで撃ってくるんだよ…魔力量どうなってんだあいつ…」

 

クロが無尽蔵に闇の弾を打ち続けるのだ。

これではいくら待っていても仕方がない。

古い闇の弾が消えた途端に新しい闇の弾が生成されるのだ。

クロはまだまだ疲れる様子がない。

このままでは埒が明かない。そう考えた来夏は短期決戦に持ち込むことにした。

 

「はぁっ!」

 

体中に電撃を纏わせ、その電撃を手の平一点に集める。

(闇の弾が増えていってる…早くしねぇと)

全ての魔力を手の平に集中させているせいで闇の弾の対処がしづらい状況だ。

早くしないとやられる。

そう思い一気に魔力を集中させる。

 

『雷槌』

 

集めた電撃が1つの槌の形になる。

 

(雷槌……? まさか…)

 

「させない!」

 

クロは放っていた闇の弾を全て廃棄し、新しく来夏の周辺にだけ闇の弾を配置する。

 

(必殺技の準備の最中に攻撃するなんて…ちょっと御法度かもしれないけど…!)

 

「くらえ!」

 

クロが配置させた全弾を来夏に集中砲火する。

 

 

しかし、一足遅かった。

 

「完成した…‼︎ いくぞっ! 」

 

「しまっ…」

 

 

『ミョルニル』

 

 

 

来夏が叫んだ途端辺り一面が光に包まれる。

 

「くっ!“ブラックホール”!」

 

ブラックホールはその名の通り魔力を吸収する技だ。

というよりそもそも闇属性の特性に他の魔力の吸収というものがある。

来夏との戦闘中いつまでも闇の弾を打ち続けることができたのは、来夏の放った電撃を吸収して自身の魔力に変換したりしていたことと、放っている闇の弾を“回収”して新たな魔力源としていたからだ。

来夏は古い弾から順に消えていくと考察していたようだが、厳密には古い弾から順に魔力を回収していたのだ。

結果的に消えているように見えただけであり、そう考えるとますます来夏が短期決戦に持っていこうとしたのは英断だと言えるだろう。

 

 

だが、来夏は生まれた時から魔力に触れ続けたわけではない。

クロは生まれた時から魔法を学び続けていた。

もちろんシロの為を思って手を抜いていた時期はあったが、それでも来夏よりも魔法について熟知しているし、技術も身に付いている。

 

 

故に、来夏の放った最大の一撃はクロの“ブラックホール”によって吸収されてしまった。

 

「はぁ…はぁ……くそ……魔力の吸収……か……」

 

来夏は全ての魔力を使い尽くしていた。

絶対にこの一撃で決めると、そう考えていたからだ。

対するクロの魔力は万全どころか来夏の魔力を吸収したことで余力に溢れている。

どちらが不利なのかは火を見るより明らかであった。

 

「あぶな……かった……ふっ……あはは!」

 

「なにがおかしい…」

 

来夏は目の前の女が不気味に思えて仕方がなかった。

最初に街を破壊していた時から思っていたことだが、本当にただの被害者なのだろうか……いや、被害者ではある……がしかしどこか現実を見ていないような感じがするのだ。

まるで無邪気にゲームで遊ぶ子供のように。

 

「全力が出せて良かったよ。また戦おうね」

 

彼女は また と言った。つまり殺すつもりはない。

しかし来夏はこれはまずいと思った。

魔法少女は一般人には認識されない。

だが怪人や、同じ魔法少女、敵の組織の幹部には認識されてしまう。

顔の造形、体格、口調、声質全てだ。

そして来夏は既に戦闘済み。

既に姿を知られている。

もし来夏の交友関係をもとに魔法少女の正体を暴かれて仕舞えば、一気に魔法少女側が不利になるだろう。

少なくとも学校にはまともに通えなくなる。

しかし、クロが口にしたのは意外な言葉だった。

 

「安心して。報告はしないでおく」

 

「何言ってるんだ? この戦いのことを内密にしても、どっちにしろ最初の戦いの時に顔合わせしてんだ。上に報告しないのは不自然じゃないのか?」

 

もうほとんど体力は残っていない。もし相手の機嫌を損ねたら一瞬で来夏は殺されてしまうだろう。しかし来夏は臆さなかった。いや、臆せなかった。

それは仲間のためであり、守りたい日常のためでもある。

 

「あー大丈夫。言ったでしょ。弄られてるって。あれ脳のことなんだよね。つまり、私の記憶力が低かったところで幹部の人らは何も疑問に思わない。実際脳みそ弄られてから多少物覚え悪くなったのは事実なんでね」

 

ギリッと奥歯を噛み締める。

彼女もまた組織の被害者なのだ。脳をいじられて平気でいられるわけがない。

しかし、だからといって彼女が組織に加担していい理由にはならない。

 

「なぁ、この前の街の襲撃、本当におまえの意思なのか…? 本当はやりたくなかったんじゃないのか?」

 

それでも、彼女も、シロと同じように仲間になれたならーーーそう思って来夏は尋ねるが、返事は帰ってこなかった。

 

 

 

バタンッと組織に帰ってきたクロは質素な自室に入った途端にベッドに突っ込んだ。

一度に大量に魔力を吸いすぎたのだ。体に相当な負担がかかっている。

来夏にとどめを刺さなかったのは、殺したくなかったからという気持ちが大きいが、魔力を一度に吸いすぎたせいで体が疲労していて、とどめを刺す力が出せなかったというのも理由の一つにあるのかもしれない。

仮に彼女の状態が万全だったとしても来夏にとどめは刺さなかっただろうが。

 

「はぁ……あれを6人も相手しなきゃいけないとか……おかしい……」

 

先程戦闘が終わった際には無邪気な子供のように笑っていたが、今はそうではない。

クロからすれば魔法少女なんてものは空想上の存在だ。

故に戦闘中はどこかゲームでもしている気分になっていた。

街を破壊しているときも、自分が魔法を使って街を破壊する。なんてものはクロにとってはこれまたファンタジーの世界の話だ。その感覚だからこそ、クロの中にある罪悪感は緩和された。

しかし、緩和されたからといって全く罪悪感を感じていないわけではない。

実際今もクロは罪悪感を感じながら部屋で休んでいる。

 

(死んでしまえばいいのに…)

 

クロの罪悪感はやがて自分自身へと向かっていくが、

 

(でも……死にたくない……)

 

どこまでいってもクロは自分が大切だ。

自分が生きるために他人を傷つけることを良しとする。

あさましい考えに思わずため息が出る。

 

(なんで生きてるんだろ……)

 

クロの思考はどんどんと深いところへ進んでいく。

 

ーーー死んでしまいたい

 

ーーー死にたくない

 

二つの思いが交差する。

悶々と考えているうちに、いつのまにかクロは眠りについていた。

 

 

 

 

 

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