悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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真保市立翔上中学校は今日も平和に生徒達が授業を受けている。

 

今現在4時間目の授業だ。

後5分で授業が終わり、それぞれが昼食をとり始めるのだろうと。

誰もがそう信じていた。

 

しかし、日常は突如として崩れ去る。

 

前兆は、校舎を囲むようにして現れた、黒い人形達。

 

そして、襲撃が始まったのは、赤江美麗と名乗る、妖艶な女がやってきたのと同時だった。

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

 

本校舎2階

 

「櫻! 状況は!?」

 

「茜ちゃん! 今、一階で真白ちゃんが戦ってる! 私は旧校舎の方に行くつもり!」

 

「分かった! 私は………」

 

茜の話は途中で切られてしまう。

茜自身が言葉を発するのをやめたわけではない。

ただ、音が通じなくなったのだ。

 

茜は、この現象を知っている。

 

(束………)

 

一瞬にして静寂な空間を作り出したのは、

 

かつての仲間にして、今の敵、同じ魔法少女である深緑束であった。

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

旧校舎1階

 

「「こんにちはー!!」」

 

「誰だお前ら」

 

「「あー! なんか見た事ある顔ー!」」

 

「あーそりゃ多分私の姉か妹だと思うぞ……この感じからして、千夏の方か」

 

「へー! あの雑魚のお姉ちゃんかー!」

 

「あの時みたいにボコっちゃおう!」

 

「やっぱり千夏の奴負けたのか。はぁ…まったく。不本意だが、妹の敵討ちと行こうじゃねえか」

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

本校舎4階

 

「下は危険だわ! 皆屋上へ!」

 

「八重、下の確認してきた。逃げ遅れた奴は誰もおらんわ」

 

「そう。ありがとう照虎。貴方がいてくれて助かった。本当に、いいタイミングで帰ってきたわね」

 

「下でツンデレちゃんと束が戦ってるってことだけ一応報告しておくわ」

 

「束………裏切ったのね………」

 

「らしいな。なあ八重。こんな時やけど、ちょっといいか?」

 

そう言って、照虎は八重を旧校舎側へと誘導する。

不審に思う八重だったが、照虎のことはある程度信用しているため、多少の猜疑心は振り払い、彼女についていく。

 

そうしてたどり着いたのは、旧校舎4階。

 

そこで照虎は歩みを止めて、振り返って八重と向き合う。

 

「なあ、八重。皆の避難は済んだ。だから、今、ここで、私と戦え!」

 

虹色に輝く髪を持つきらびやかな少女は落ち着いた青い髪色を持つ少女へ、

 

決闘を申し込んだ。

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

本校舎1階

 

「はぁ……はぁ……これだけ数が多いと……相手するのも……大変……」

 

本校舎1階では、大量の黒い人形が跋扈していた。

当然といえば当然だ。

校舎に侵入するには本校舎1階から入るしかない。

旧校舎は閉まっているからだ。

 

別にこじ開けることができないわけではないが、黒い人形には知性がない。

そのため、自然と開いている道へ進むのだ。

 

(一気に削るか……)

 

真白は魔力を集中させ、敵を一網打尽にしようとするが、

 

「うわっ!」

 

突如、男子トイレから飛び出してきた1人の少年によって、集中力が途切れてしまう。

逃げ遅れてしまった男子生徒だろう。

全員屋上へ逃げたと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。

しかし、それだけのことでは真白の集中力が切れることはない。

 

ただ、男子生徒が知り合いだったため、驚いてしまったのだ。

 

「たつ………君! 何で避難しなかったの?」

 

一応今の真白は魔法少女である。認識阻害がかかっているため、男子生徒からは誰だかわからないが、名前を呼べば近しい関係にあると分かってしまうだろう。だから他人として振る舞っているのだ。

 

「何で避難しなかったのって……運動場にまだ1人残ってるだろ!? 放って置けないだろ!」

 

「運動場に1人残ってるって………」

 

真白は運動場の方を見る。

確かに1人いる。

真白の唯一の家族、クロだ。

 

しかし彼女は魔法少女。

すでに変身しているし、それは彼から見てもわかるはずだ。

真白は彼を嗜め、屋上へ避難するように注意するが、

 

「知り合いなんだ! 助けないと………きっと後悔する……頼む! 行かせてくれ!」

 

「ダメ!」

 

「俺………あの子のことが好きなんだ! 頼む! 恋人ってわけじゃない。俺が一方的に好きなだけだ。でも助けたいんだ! 頼む!」

 

真白は驚く。

だってそうだろう。

クロは既に魔法少女へと変身している。

魔法少女へ変身すれば、一般人には認識阻害がかかって誰が変身しているのかわからないはずなのだ。

 

にもかかわらず、彼にはクロのことが認識できている。

 

(何で……?)

 

「ごめんっ!」

 

真白が困惑しているうちに、彼は駆け出す。

咄嗟に手を出して止めようとするも、彼は既に運動場へと走り去っていっていた。

 

「辰樹……」

 

駆け出したのは、クロのことが好きな少年、広島辰樹だった。

 

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

運動場

 

「ふふっ! こんな幸運なことはないわ。目的のものが、一番近い場所にあるなんて♪」

 

「美麗様! よかったですね!」

 

「……誰?」

 

クロの目の前に現れたのは、全体的に紫色のファッションをした、スレンダー体型の妖艶な美女と、ツギハギだらけの体を持った、くすんだ深緑色髪の魔法少女の2人だ。

 

「自己紹介がまだだったわね。私は赤江美麗。貴方の“ご主人様”になる女よ」

 

「私は身獲散麗。美麗様の………ご主人様の下僕」

 

「へー。まあ生憎、人の下につくのは嫌いなんだよね。他を当たってもらおうか!」

 

人の下につくのが嫌いとは言っているが、組織には属しているじゃないかというツッコミはよしてもらおう。本当にクロは人の下につくのがあまり好きではないのだ。

組織に従っているのは仕方なくだ。

 

クロは“還元の大鎌”を持って2人と対峙する。

しかし、赤江美麗---リリスは動こうとはしない。

 

「まずは貴方がどういう動きをするのか、見させてもらうわ。やりなさい、散麗」

 

「はい。ご主人様」

 

リリスに命令された通りに、散麗がクロに向かって突進してくる。

クロはあえてギリギリまで何もしない。

 

ただ相手をじっくり観察するだけにとどめる。

すると、散麗が密かに手を動かしたのが見えた。

おそらく魔法の発動のための予備動作だろう。

 

「メンターーー」

 

「『魔眼・無効魔法』!!」

 

クロは散麗が魔法を発動しようとした瞬間に『魔眼・無効魔法』を発動し、彼女の魔法を封じる。

と同時に、無防備になった彼女に向けて“還元の大鎌”を振るう。

 

「きゃあ!」

 

クロが振るった“還元の大鎌”は、見事彼女の体を貫いた。

そして、今の一撃はかなりいいところに入ったらしく、彼女の魔力のほとんどを奪い取ることに成功した。

 

魔力を奪っただけなのだが、散麗が動く様子はない。

おそらく、死体をリリスの魔法によって操っていたのだろう。

体の中にあった魔力をほとんど全て持って行ったため、散麗が活動不可能の状態になったのだ。

 

「チェックメイト、ってところかな。次はそっちのお姉さんを相手取ろうか」

 

「アッハハ!」

 

「? 何がおかしい?」

 

気でも触れたか、とクロはそう思うが、そうではない。

リリスにとってはこの盤面、負けるはずがないのだ。

 

一番の障害であるアスモデウスは封じた。

イフリートやルサールカも手を出してくることはない。

パリカーだってそうだろう。

 

他の魔法少女では彼女に敵わない。

それほどリリスの力は強大なのだ。

 

だからこそ笑う。

自分の手駒がやられたのに。

否、自分の手駒がやられたからこそ嬉しいのだ。

 

リリスにとって、クロが自分の手駒となることはもはや確定している。

だからこそ、今自分が持っている手駒を超えたこと、それ自体が、リリスが今持っている手駒よりも優秀な手駒を手に入れたことと同義となるのだ。

 

「さぁ、クロ。大人しく私のものになりなさい『傀儡呪術・マジカルロブ』!」

 

リリスがそう唱えると、巨大な紫色の塊がクロに向かって突撃してくる。

 

「ブラックホール!」

 

クロもブラックホールで対抗しようとするが、紫色の塊、マジカルロブはクロのブラックホールすらも飲み込んでしまう。

 

「あっ! うぐっ、」

 

結果的にクロはマジカルロブを食らってしまう。

しかし、身体に傷はない。

だが

 

「魔力………全部持ってかれた…‥!」

 

クロの魔力が全て持っていかれたのだ。

まさしく先程クロが使ったブラックホールの上位互換なのだろう。

魔力の無くなったクロに、抵抗する術はない。

 

「ふふっ! 消し炭にすることもできたけど、遺体が残らなかったら手駒にできないもの。まずは無抵抗にして、それからじっくりと痛ぶるのがいいのよね」

 

クロに向かってゆっくりと、リリスが歩みを進める。

 

ザクッ

 

 

 

ザクッ

 

 

ザクッ

 

ザクッ

 

段々と足音が近くなってくる。

もうおしまいかと、そうクロが思った時、遠くから声が聞こえてきた。

 

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

この声を、クロは知っている。

 

「辰樹!? ダメ! 戻って!! 殺される!」

 

クロは止めようとするが、辰樹は止まらない。

臆することなく、一直線に、リリスへと向かって行く。

 

「ふんっ。小僧が。お前なんかに興味はないわ」

 

言ってリリスが魔法を発動しようとする。

 

(まずい、このままじゃ!)

 

「まがん……むこうまほう!」

 

咄嗟に『魔眼・無効魔法』を唱えようとするが、先程リリスに全ての魔力を取られたせいで、発動することができない。

 

もう間に合わない。

 

辰樹の命もここまでか。

 

クロは目を瞑る。

 

 

 

ドゴンッ!

 

 

 

広い運動場で、人1人が空高く舞い上がる。

打ち上げられたのだ。

誰が……?

決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リリスだ。

 

「は?」

 

リリスは困惑する。

何故、自分が投げ飛ばされたのか、

何故、あの少年は死んでいないのか、

何故、自分は未だにあそこの魔法少女を手駒にできていないのか。

 

考えて、考えて。

そして、怒りを覚えた。

 

「このっ!! クソガキがぁぁあああああああああ!!!!!!」

 

「かかってきやがれ! クソババア!! 影山さんには……クロには指一本触れさせないからな!」

 

「調子に……………! 乗るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁああああ!!」

 

リリスが辰樹へと向かって行く。

本気で殺す気だ。

 

確かに辰樹は先程リリスを吹き飛ばした。

何故辰樹にそんなことができたのかだが、クロには分からない。

 

だが、日常生活を送る上で、辰樹に何か特別な力があるようには見えなかったし、もし仮に特別な力があったとしても、辰樹の性格的に隠すことなどできないだろう。

 

そして、勘がこう告げている。

次はない、と。

辰樹がもう一度リリスを吹き飛ばすことはできないと。

 

クロの勘がそう告げているのだ。

 

「辰樹! 今度はさっきのようには行かない! 逃げて!」

 

しかし、辰樹は逃げようとしない。

今度もリリスを投げ飛ばすつもりのようだ。

 

(ダメだ…………)

 

 

 

 

(俺のせいで………誰かが犠牲になるなんて)

 

 

 

 

(誰か………誰でもいい……)

 

 

 

 

(誰か…………)

 

 

「死ねクソガキィィィィィィ!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

両者が激突しようとする、まさにその瞬間。

 

「『特別召喚(オーダーメイド)・ワイバーン』!」

 

その声と同時に、召喚された“ワイバーン”がリリスを薙ぎ払う。

 

「こいつは……まさか!」

 

「久しぶりだね、リリス。そして、はじめまして、クロ」

 

「誰?」

 

「僕はパリカー。悪の組織の幹部が1人、扱う属性は闇と無属性だ。よろしくね」

 

戦況が、大きく変わる。

 

 

 

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

 

旧校舎2階

 

「よかった。旧校舎の方には……あの黒い人形さん達はきてないみたいだね……。下で戦ってるのは……多分来夏ちゃんだよね………加勢しに行かなきゃ!」

 

「待てよ」

 

来夏の元へ向かおうとする櫻を呼び止める声。

少女の声だ。

 

見ると、先程櫻が加勢に行こうとしていた少女と瓜二つの少女がいた。

 

「あの変な男にここへ連れてこられたときは何するんだって思ってたが、こういうことかぁ」

 

「何の…‥話?」

 

「見るからにお前弱そうだし。お前を倒して、下の階で戦ってるクソ姉貴とメスガキ姉妹を漁夫る。最高のプランじゃん。今までの敗北を無かったことにして、リベンジも果たせる………だからお前は、そのための礎になれ!」

 

 

平和だった学校で、戦闘が始まる。

 

数分前まで沢山の生徒が笑い合っていた校舎内は、

 

少数の魔法少女達の殺し合いの会場へと変貌を遂げていた。

 

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