悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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嵐の後、嵐の前の静けさ
Memory27


 

真保市立翔上中学校にリリスが襲撃してから3日後。

 

櫻、茜、来夏、真白の4人は、末田ミツルという男に呼ばれて、とある施設へとやって来ていた。

 

最初はミツルのことを警戒していた4人だったが、茜と櫻が以前助けた時に、リリスとの関係性はなく、また、魔法少女に対抗できる力も持っていないだろうから、おそらく大丈夫だろうという結論を出したため、彼の申し出に応じたのだ。

 

八重に関しては、リリスの襲撃以降櫻達とは壁を作ってしまっていることもあって、呼ぶことができなかった。

 

「ここのビル……? かなりの高層ビルだけど、入っちゃっていいのか戸惑っちゃうわね…」

 

「良いのかな……こんなところに私達が来ちゃって……」

 

「今私達に必要なのは情報収集だ。こんなところで立ち止まってちゃいつまでも前に進めないからな」

 

「うん。私もそう思う」

 

茜と櫻は目の前の高層ビルにただの中学生である自分達が入っても良いのかと気後れしている。

一方で、来夏と真白は図太いのか、高層ビルの中に入っていく事に躊躇いもしなかった。

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「よく来てくれました、皆さん。僕は末田ミツル。元は政府の暗部、『対魔戦闘組織』に所属していたものです」

 

「あっ! 今日はよろしくお願いします!!」

 

「で、お前は何のようで私達を呼び出したんだ?」

 

櫻が挨拶を返すが、来夏はミツルに噛み付くかのように言葉を発する。

来夏はミツルと初対面であるため、あまり信用していないのだ。

 

そもそも、櫻と茜の警戒心がなさすぎるのも影響しているだろう。

櫻や茜がそういう性格だったからこそ、真白も魔法少女側に加わった部分もあるため、一概に警戒心がないのが悪いとは言えないのかもしれない。

 

ただ、警戒を怠るわけにはいかない。

だからこそ、櫻や茜の代わりに、来夏が相手が信用できるかどうか、よく観察して、注意する必要があるのだ。

 

「貴方達を呼び出したのは、そうですね、まずは、段階を追って話をしていきましょうか。まず、この国においての魔法少女がどういう立場かは、理解していますよね?」

 

「理解しているわ。本来なら、怪人との戦闘を行う必要はない。どうしても、何か理由があって怪人との戦闘が必要な場合は、政府に申請して、許可が降りたら戦って良い、そんな感じだったわよね」

 

茜が言った通り、魔法少女は本来なら戦う必要がない。

怪人の鎮圧は国の仕事のはずだからだ。

どうしても戦いたいのなら、国に申請して戦うべきなのだ。

 

と言いつつも、10年前は国の鎮圧がメインであったはずが、7年前からは国の鎮圧部隊よりも魔法少女の方が活躍の場は多くなっているのだが、とりあえずそれはいいだろう。

 

もし、仮に国に申請せずに魔法少女として戦った場合、その魔法少女には重い罰が課されると言う。

実際にその事例があったなどと言う報道はされてはいないが、もしかしたらそんな魔法少女達もいるかもしれない。

 

そして、問題なのはその罰についてだ。

 

実は、櫻や茜達は、国に対して魔法少女として戦闘を行うことの申請を行なっていない。束は申請していたようだが、他は一切の申請を行わず、サポートは全て双山魔衣に頼っていたのだ。

 

「もしかして、私達にも……何かしらの罰があるのかしら?」

 

茜は内心怯えながらも問う。

そこまで恐怖しているなら、申請をすれば良いじゃないかと思うかもしれないが、よっぽど深い事情がない限り、魔法少女申請は通るものではない。

 

普通は政府非公認の魔法少女は、人気の少ない場所に現れた怪人などと戦うのを主な戦闘相手としているのだが、茜達は人気が多いところでも構わず活動していた。自然に政府の目にも入るわけだが、茜達は今まで、政府公認になっている別の五人の魔法少女と口裏を合わせて、その魔法少女達が活動しているということにしていたのだ。

 

束は政府公認であったため、残りの五人分の名義を借りたのだ。

 

元々は三人組で活動していた少女のうち一人が怪人と戦うことに少しの恐れを持っていたため、茜、来夏、八重が肩代わりしたのがきっかけだ。

 

真白と櫻の分は、それぞれまた別の魔法少女の名義を借りていた。

 

別の公認魔法少女の名義を借りていることがバレたのだろうか、と茜達は内心ヒヤヒヤしながらミツルの言葉を待つ。

 

「いえいえ。何もないですよ。そもそも、言ったでしょう。僕は元政府の人間だと。今更貴方達に国として何か言える立場ではないですよ。申請を行わずに活動している魔法少女は割といますしね。成果を出していれば、ある程度は政府も黙認していますよ。本題はそこではないんです」

 

しかし、どうやらミツルは茜達を裁くつもりはないらしい。

 

「ただ、僕の話を聞いてしまったら、これ以上は後戻りできないかもしれません。それでも、聞きますか?」

 

ミツルは4人に問いかける。

 

櫻、茜、来夏、真白。

4人とも、今更引き返すつもりはない。

 

元々、怪人達と死闘を繰り広げていたのだ。

束が抜けて、八重との壁ができて、多少戦力は落ちたかもしれないが、それでもやることは変わらない。

 

「…………覚悟は決まったようですね。ええ、そんなに身構えないでください。僕は頼りないかもしれないですが、僕の仲間はとても心強い人達ばかりなので。まあ、その仲間達はあまり表立って貴方達に手を貸すことはできないかもしれませんが」

 

「いいからさっさと本題を話せよ」

 

来夏が急かす。

ミツルも無駄話をしすぎたと思ったのか、話を切り替える。

 

「さて、まずは10年前の話からするとしましょう」

 

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

 

(あれ………? ここは…………)

 

「お兄ちゃん! もう! いつまで寝てるの!? だから言ったのに……夜更かししてまで無理に課題やろうとするから……」

 

(誰……だ……? 顔が………見えない…………)

 

「ほら起きて」

 

「俺は………誰だ……?」

 

「……? 寝ぼけてるの? お兄ちゃんの名前は◻︎⚪︎×! ◻︎上×校に通う、シスコン気味なごくごく普通の高校生!」

 

あぁ、そうだ。

 

そうだった。俺の名前はーーー。

こいつは妹のーーーー。

 

一昨日体調崩したせいで出来なかった課題を、昨日夜更かししてやったんだっけ?

 

あぁ。俺朝弱いからなぁ……夜更かしするべきじゃなかったかもしれない。

 

すぐに支度して、家を出る。

遅刻はしたくないからな。

 

ゴンっ

 

「あいた!」

 

あぁ。寝ぼけすぎてた。

まさか電柱に頭をぶつけるなんて。

 

「もうお兄ちゃん! まだ寝ぼけてるの? 仕方ないなぁ。ほら、途中まで一緒に行ってあげるから」

 

本当におせっかいな妹だ。

 

そうだ。これが俺の日常………いや、今日はちょっと寝ぼけてるが、まあ概ねこんな感じだ。

 

両親はいないけど、このまま、妹と一緒に平和な日常を送っていくんだろう。

 

妹に彼氏ができたら、ショックを受けるかもしれない。

まあ、多分、妹に相応しいかどうか、品定めとかするんだろうな。

 

デートとかは心配で、こっそりついて行っているかもしれない。

 

それくらい、俺は妹の事が大事だ。

 

だから、これからも、俺が妹を守っていくんだ。

 

きっと、ずっとーーー。

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「ぅ………んぅ……」

 

「おっ! やっと目覚めたんっすね。いやぁ! 3日も寝込んでるもんで、死んじゃったのかと思っちゃいましたよ〜。ま、死んだら死んだでそこまでって感じっすけどね〜」

 

クロが目を覚ますと、目の前にいたのはワニの皮膚を持つ、メイド服のツインテ少女だった。

 

「………これから……どうするつもりだ?」

 

「そう睨みつけないでくれっす。別にとって食おうってわけじゃないっすから、そんなに怯えなくてもいいっすよ」

 

とりあえず、彼女はクロに危害を加えるつもりはないらしい。

情報を得るなら、彼女に聞くのがいいだろう。

 

(まあ、どのみち腹は括ってる。どうせ残された時間も長くないだろうしな)

 

もう既に余命宣告を受けたおかげもあってか、クロは、今から殺されるかもしれないこの状況下でも、冷静でいられた。

 

「3日も寝込んだってほんと?」

 

「はい。3日っす。いや〜何でなんすかね? 私は何っにもしてないんっすけど」

 

おそらく、急激な魔力切れによる体力の消耗だろう。

基本的に、魔力切れに陥る事自体は、魔法が使えなくなる事以外に特に大きな問題はない。

 

しかし、ほぼ満タンの魔力量から、一気に魔力切れの状態に陥った時は、急激な魔力量の変化に体が耐えられないのだ。

 

来夏の必殺をブラックホールで吸収した際も、魔力の急激な増加により体調不良に陥った。それと同じような状態になったのだろう。

 

「他の……魔法少女達は?」

 

「さぁ? あ、手は出してないっすよ。一応他の奴らとの抗争もありますし、魔法少女の使役に魔力を使っちゃうのは勿体無いって、リリスっちが言ってたっす。あ、後せっかくクロっちが身を挺して守ったんだから、しばらくはクロっちの顔を立てて魔法少女は殺さないってことも言ってたっす」

 

彼女の言っていることに、嘘はなさそうだ。

勝手にあだ名を付けられているのには驚いたが、他に気になる事があったため、クロはあだ名については無視することにした。

 

「他の奴らっていうのは? 組織のこと?」

 

「ん……あー。そうっすね。クロっちには一応これから協力者になってもらおうと思ってるんで、まあ説明は必要っすよね。でもどっから説明すればいいんですかね〜」

 

彼女はしばらく悩んだ後、よしっ! と突然声を張り上げて、こう伝える。

 

「まずは10年前の事。この世界で初めて魔法が使われた時のことを振り返っていくっす!」

 

 

 

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