悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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パリカーは、クロが攫われた後、リリス……正確には束に囚われていたアスモデウスを解放した。

 

厳密に言うと、鎖が勝手に解けたのだ。

おそらく、拘束は一時的なものだったのだろう。 

 

それこそ、リリスがクロを手に入れるまでの間の、その場凌ぎの。

 

「悪いね、アスモデウス。君との約束を、ボクは守ることができなかったよ」

 

「………俺は、しばらく組織から離れる」

 

「そんなこと言われても、君がいないとこの組織は成り立たないし………我慢してくれよ。はぁ………本当、君らしくないな」

 

今現在組織の運営は7割ほどアスモデウスに頼り切っている。

そんな状態の組織で、アスモデウスが働けないとなれば、もはや組織解体の道しか残されていない。

 

傷心中の友人を慰めてやりたい気持ちはあるものの、それ以上に組織の運営ができないのはまずいと思ったパリカーは、アスモデウスの気力を取り戻そうと躍起になっていた。

 

ただ、一応クロを守りきれなかったという負い目もあるため、あまりアスモデウスに強く言えないのが現状だ。

 

「しばらく、ここには来ない。その間、組織の運営はお前に任せる」

 

「はぁ!? ちょっと待ってよ!? ボク一人でやれっていうの!? 大体、どこにいくつもりなの?」

 

「リリスのところだ。クロは、生きている。だから、助けに行く」

 

「いやいや! リリスが生者嫌いなのは知ってるだろう!? クロは今頃、リリスの人形に………って……もう行っちゃったのか……」

 

パリカーがアスモデウスを追いかけようとするが、アスモデウスは一瞬でパリカーの目の前から消え、リリスの元へ殴り込みに行ってしまった。

 

「はぁ……本当………ゴブリンはリリスと手を組むし………ルサールカは何してるのか分かんないし………イフリートは好き勝手に暴れるし。おまけにアスモデウスは居場所すら分かってないリリスのところに殴り込みに行くし…………………はぁ、もうダメだ。しんど。寝よ」

 

結局、パリカーはふて寝した。

 

 

 

☆★ ☆★ ☆★ ☆★ ☆★

 

 

 

「10年前までは世界にはまだ魔法と呼ばれるものも、魔法少女と呼ばれるものも、まだ存在しませんでした」

 

「私達からしたらもう魔法が使えるのが当たり前になってるから実感はないわね。よくよく考えれば、ちょっと前までは魔法なんて存在しなかったのよね……」

 

茜が言う。

彼女達からすれば、魔法がない世界というのは4歳までの世界だ。

5歳になって以降は魔法の存在が認知され始めていたため、少し前まで魔法が存在しなかったというのは、あまり実感がわかないのも無理ないだろう。

 

「ええ、そうですね。しかし、ある日突然、魔法がこの世界で使えるようになりました。世間一般では、このことは未だに謎に包まれていると言われてはいますが、僕達は、何故、この世界で魔法が使えるようになったのかを、知っています」

 

 

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「ここでクイズっす。何故この世界で突然、魔法が使えるようになったんでしょう?」

 

「…………組織が魔法を作ったから?」

 

「ざんねーん。違うっす。そもそも、魔法は元からこの世界に存在自体はしていましたよ。まあ、ヒントなしで当てろってのが酷っすね。正解は、この世界に魔族が現れたから、でしたー!!」

 

「ちょっと待って、魔族……? いきなりそんなもの出されても、意味がわからないんだけど…?」

 

クロがそう言うと、メイド服の少女はうーんと唸りながら、説明を加える。

 

「まず、この世界とは別の次元に、魔界って場所があるんすよね」

 

そんなこと、一度も聞いたことがない、とクロは思う。

魔族? 魔界? 

突然出てきたファンタジーな単語に、クロは動揺を隠せない。

 

「魔界って言うのは…‥何?」

 

「さっき言った魔族が住んでる世界っす。ちなみに今クロっちの目の前にいる私も、その魔族っす」

 

彼女の言うことはなかなかに信じ難いものであったが、彼女のワニのような肌を見ると、そんなこともあり得るんじゃないか、そんな気がしてくる。

 

元々クロ自身、魔法を使えると言う時点でこの世界がファンタジーな世界であることは把握している。

だからだろうか、魔界や魔族。そんな単語が出て、最初こそ動揺はしたが、すぐに受け入れられたのは。

 

「それで、それとこの世界で魔法が使えるようになったことと何が関係あるの?」

 

「それを理解するにはまず、魔界の大気中には魔素というものが存在するってことを知っておく必要があるっす」

 

「魔素?」

 

「はいっす。その名の通り、魔力の素っすね。魔法を使うために不可欠なものっす。仮に魔法を扱える体を持っていても、この魔素がなければ魔法を扱うことはできないっす」

 

「………大体わかったかも。多分、その魔素っていうのが、こっちの世界にも流れ込んできたから、魔法が使えるようになったってことだよね。いや、でもさっきは魔族が現れたから魔法が扱えるって言ってた。てことは違う…?」

 

「いえ、合ってるっす。実は……この世界……わかりやすくするためにこれからは人間界と呼ぶことにするっす。元々、私達魔族は人間界の存在を知ってたんっすよ。で、ある日、私達の国の王、魔王様が宣言しました。『人間界を取ろう』と。そして、当時の最新の技術を駆使して人間界へ繋がる『門』を作り上げ、侵略を始めたってわけっす」

 

つまり、魔界に住む魔族達が、人間界を支配するために、『門』を作り、そこを通って人間界へとやってきたのだろう。その結果、魔界にあった魔素がこちらの世界に流れ込み、今まで扱うことのできなかった魔法が扱えるようになったのだろう。

 

先程メイド服の少女が、魔族が現れたから魔法が扱えるようになった、というのは、魔族がこの世界に侵略してきたことで、魔素が人間界に流れ込んできたことで魔法が扱えるようになったため、そのように言ったというだけだろう。

 

「じゃあ、私のいた組織の作った怪人っていうのは一体……」

 

「それはまた別物っす。まあ、人間は多分魔族のことも怪人と同じだと思ってる、ていうか、魔族のことを最初から怪人って呼んでましたからね。後、魔法少女が相手していたのは大体怪人っす。魔族は最初こそ暴れる奴もいたりしましたが、三大勢力の抗争もあって、徐々に人間社会に溶け込みながら水面下での戦いがメインになっていったんで」

 

 

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「「「魔族………」」」

 

櫻達は、明らかとなった敵の正体を、互いに声に出し、深く認識する。

 

そこで、唯一言葉を発さなかった来夏がミツルに尋ねる。

 

「それが本当だとして、じゃあ何で今人類は魔族に支配されてないんだ? 私はあの学校襲撃の日、組織の幹部と戦ったが、お前の話を聞く限り、そいつも多分魔族なんだろ? あいつははっきり言って魔法少女がどうこうできる敵じゃないように見えたんだが……」

 

「そうですね。はっきり言って、魔法少女で魔族に匹敵するほどの実力を持つものは、今のところ僕達は存在しないと認識しています。魔法少女や魔族の強さを表す指標として、force levelと呼んでいるものがあります。元は魔族間でのみ使われていた言葉ですが、このforce levelで表すと、一般的な魔法少女のforce levelは1。魔族の中でも一番弱い部類でもforce level3はあるので、魔法少女では手も足も出ませんね」

 

来夏は先日の学校襲撃で、ゴブリンが話していたことを思い出す。

 

『実際にお前らより数倍も強いんだ。force level1のお前らじゃ、force level5の俺には勝てないに決まってるからな』

 

「force levelっていうのはそういうことか」

 

「はい。そして、何故、人類が今、魔族に支配されていないのかについてですが、これについては理由が二つあります」

 

「二つ?」

 

「はい。一つ目は、魔族間での争いです」

 

 

 

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「当時の魔族は、所謂三大勢力ってやつに別れてたんすよ」

 

「………政党みたいなものか?」

 

「いえ。それとはちょっと違うかもしれないっす。そもそもこの三大勢力は、人間界に攻めるかどうかについての話をしている時にできたものですから」

 

まあそんなことは置いておいて、と言いながらメイド服の少女は話を続ける。

 

「この三大勢力の内訳についてですが、一つは『過激派』。人間界攻めて俺たちのもんにしてやるぜって感じのやつっす。二つ目が『穏健派』。人間と魔族との共存を望んでいる魔族達っす。そして最後が『中立派』。まあ、どっちでもない奴らのことっすね。必要があれば戦いも行いますし、必要がなければ戦場に出てくることはない奴らっす」

 

「魔王っていうのは『過激派』か」

 

「そうですけど、魔王様は人間界に来た時に死んでるので、あんまり関係ないっすね」

 

死んだ?

誰かに殺されたのだろうか。しかし、10年前に魔王を殺せるものが、人類の中にいたのだろうか?

 

魔法少女すらいるかどうか怪しいのに。

 

「まあ、魔王様が何故死んだのかっていうのについては、私達もよく事情を知らないんで、なんとも言えないっすね。あぁ、確か1人だけ人間を殺して亡くなったんだとか。どうでもいいっすけどね」

 

しかし、そんな疑問は、今のところ一番有力な説は、魔王が『門』を通った時はまだ『門』の完成度が完全ではなかったのではないかという説っすね〜、と軽く流された。

 

まあ、おそらく『門』関係で何かあったんだろうと、適当な結論をつけながら、クロは話を続けていく。

 

「お前は何派だったんだ?」

 

「お前って………クロっちって思ったより言葉遣い荒いんすね。私にはクロコって名前があるんで、できればそっちで読んで欲しいっす。クロにクロコ、もしかしてクロっちと私って結構相性いいかも…?」

 

言葉遣いが荒いのは、おそらく素が出ているのだろう。

別に気を許しているわけではないが、多分、普段は女の子らしく振る舞うことを意識しているのが、敵の前であるため、そんなことを気にしなくなっているせいだろう。

 

「どうでもいいからはやく話を続けてほしい」

 

「薄情な! こっちはクロっちと仲良くしてあげようと思ってたのに! まあいいっす。ちなみに私は『過激派』っすよ」

 

仲良くしてあげようと思った。

随分と上からな発言だと、少なくともクロはそう感じた。

学校襲撃の件もあって、印象は最悪だ。

 

(やっぱり、こいつらとは相容れない気がする…)

 

 

 

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「僕達は、『穏健派』と協力し、『過激派』の魔族と戦い続けました。時折『中立派』が『過激派』に協力することもありましたが、それでも僕達は何とか水面下で抵抗を続けていたんです。そして7年前。ついに、『過激派』のリーダーを討伐し、人類を魔族の手から守ることに成功しました。その後、『過激派』は各地方に散らばり、それぞれ独自の組織を作ってひっそりと人類殲滅を目論んでいます。その『過激派』の残党を狩っていたのが、僕が元々所属していた『対魔戦闘組織』です。まあ僕は戦闘要員ではなかったのですが」

 

「ちょっと待て、魔族っていうのは人間じゃ敵わないくらい強いんだろ? いくら残党とはいえ、そいつらは魔族だ。戦うなんて無理なんじゃないか?」

 

来夏は実際にゴブリンと戦闘して、魔族の強さをその身で体感している。

ゴブリンはforce level5と言っていたので、魔族の中では強い部類だったのだろう。だが仮にforce level3だったとしても、来夏が魔族達を倒せるわけではないらしい。

 

つまり、人間が魔族を倒す手段などないのではないかと、そう思ったのだ。

 

「確かにそうね。私達魔法少女でも敵わないっていうんなら、いくら訓練を積んだ国の暗部組織でも、魔族に対抗できるとは思わないわ」

 

茜も来夏に同意する。

 

「もしかして、『穏健派』の魔族達が、協力してくれたのかも?」

 

櫻がそう口に出すと、ミツルはそれに答える。

 

「確かに、それもあります。ただ、一番大きかったのは…‥これは人類が何故魔族に対抗できたのか、ということについての二つ目の理由でもあるのですが、単純に人類の中に、force level5の実力を持つ者がいたからですね」

 

 

 

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「魔法少女は基本force level1って聞いてたんだけど、force level5の魔法少女でもいたの?」

 

「いえいえ。force level5はおろか、force level2の魔法少女すらいなかったっすよ。ただ、force level5の『人類』はいましたね。2人くらい」

 

 

 

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「あの2人は本当に規格外です。僕は直接話をしたことがありませんが、話を聞く限りとんでもない強さを誇っているみたいです。後、この2人は実は、1人は来夏さんの、もう1人は櫻さんの関係者でもあります」

 

「わ、私の……?」

 

「…………………………」

 

櫻は突然の名指しに驚き、来夏はミツルの発言で何か勘づいたのか、察したかのような表情をしながら口を閉じている。

 

「1人目は、朝霧去夏(アサギリサルカ)。来夏さんのお姉さんですね」

 

「やっぱり猿姉か………」

 

「えぇえぇえぇぇえぇえええ!?」

 

「そういえば姉がいるみたいなこと言ってたわね……」

 

櫻は声を上げて驚き、茜は驚いてはいるものの、そこまで取り乱す様子はない。

 

来夏に関しては驚いた様子はないどころか、もはや呆れ返っている。

おそらく、姉のことを考えているのだろう。

 

長女は政府の暗部組織に、三女は悪の組織に、そして、次女である来夏は魔法少女。

一体朝霧家はどういう教育をしてきたのだろうか。

 

「それで、もう1人っていうのは?」

 

来夏が聞く。

茜と櫻は来夏の姉のことで頭がいっぱいなので、これ以上脳のリソースを割かせないでほしいと思っていることだろう。

 

「2人目は……………百山椿(モモヤマツバキ)。櫻さんの、お兄さんです」

 

「あふんっ!」

 

櫻の脳が、パンクした。




qpちょうちょ
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