悪の組織所属のTS魔法少女、はじめました   作:布団から出られない

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「落ち着きましたか?」 

 

「はい………まだちょっと信じられないんですけど………そっか。お兄ちゃん……生きてたんだ……」

 

そう言う櫻の顔には、喜びが表れていた。

行方不明になっていた兄の所在がわかったのだ。

嬉しくて仕方がないのだろう。

 

「あの…! 私の両親にも、このことを話してもいいですか?」

 

「その必要はありません。櫻さん。あなたの両親は既に貴方の兄が生きていることを知っています」

 

「えぇぇ!?」

 

何でお母さんとお父さんは言ってくれなかったのー!?

と叫ぶ櫻を横目に、茜と来夏がミツルとの話を続けていく。

 

「私達と接触したのは、櫻や来夏の血縁者がいたからってことね」

 

「そうなりますね」

 

「んで、猿姉の方はいいが、何で櫻の兄貴がforce level5なんだ?」

 

何故か姉がforce level5であることに疑問を持たない来夏だったが、何かしら知っていたのだろうか。

しかし、先程の反応を見るに、姉が政府の人間として動いていることは知らないように思える。

 

櫻、茜、真白の3人はそう思うが、それについては後で聞けばいい話だろう。

 

「何で……と言われても、難しいですね。強さの理由というのは、僕はあまりよく分かりません。ただ、何故か、椿さんは、魔法少女でもないのに魔法が扱えるんですよ。属性は無属性。櫻さんと同じですね」

 

 

 

 

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「女の方は、ほんっっっとうに意味がわからないっすね。そもそも、使っているものが魔法なのかどうかすら怪しいっす。人間達は適性属性なしって感じで表現してるみたいっすけど、あれはそんなもんじゃないっす。魔王様が何故死んだのかっていうのと同じくらい謎が深いっす」

 

もしかしたら人間固有の能力かもしんないっす、と言いながら、メイド服の少女ーーークロコは話を続ける。

 

「んで、ここからが本題っす。さっき、10年前に三大勢力の話をしましたよね?」

 

「『過激派』、『穏健派』、『中立派』、だったっけ?」

 

「そうっす! ちゃんと覚えてて偉いっすね!!」

 

「子供扱い…………」

 

自分自身で精神は成熟していると思っているクロだが、見た目は子供だ。

子供扱いされるのは仕方ないだろう。だが、精神的には大人なため、子供扱いされるというのは少し違和感がある。

 

「で、さっき話した、他の奴ら、今、リリスっちと争っている相手っていうのは、『過激派』の連中っす」

 

「お前は『過激派』なのに何でリリスに協力してるんだ?」

 

「いやいや。別に『過激派』だからって全員が全員協力してるわけじゃないっす。考え方もそれぞれですから。それに、私はどちらかっていうと『中立派』に考え方が近いっすからね」

 

まあ、10年前は『過激派』として人間を殺しまくりましたけどね〜と、何でもないことのように物騒な話をしながら、クロコは話の軌道を戻す。

 

「で、今争ってる『過激派』の連中は『ノースミソロジー連合』という名で活動しているっす」

 

「北欧神話?」

 

「そうっす。まあ、北欧神話の神々の名前をとって名乗ってますから、多分そういうことっすよね〜」

 

クロとしては、名前などどうでも良かったのだが、ふと、その名前を聞いて気になったことがあった。

 

「そういえば私が元々いた組織の名前って何だったの?」

 

クロは生まれて、今まで育ってきた組織の名前を知らない。

別に知らなくても問題があったわけではないため、そのことに疑問を持ったことすらなかったのだが、組織から離れてみると、やはり気になってくるものだ。

 

「知らないっす。ていうか、明確な名前は存在してなかったと思うっす。多分、リリスっちと同じように勝手に魔族同士で固まって、好き勝手に動いてるだけなんじゃないですかね」

 

クロコはそう言うが、多分そんな感じではないだろう。

魔族だけで組織されているならまだしも、あの中にはDr.白川など、明らかな人間がいた。

 

明確な名前が存在しないなんてことはないだろう。

ただ、今それを知ることはできないし、別に絶対に知らなければならない情報というわけでもない。

 

(まぁ。いいか)

 

とりあえずクロはスルーすることにした。

 

 

 

 

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「それで、結局私達は何に協力すればいいわけ?」

 

「魔法少女が戦闘してはいけないっていうルールは10年前に作られたものだ。ってことは、元々魔族と下手に戦わせて命を散らす魔法少女が出るのを危惧してたってことなんだろ? だったら、戦闘面で私達にできることなんて、怪人の相手くらいだと思うんだが」

 

茜と来夏がそれぞれ話す。

 

「そうですね。確かに今は、貴方達の戦力はあてにはならないでしょう。ですが、櫻さんと来夏さんは、あの2人の血縁関係者です。専門の訓練を積めば、force level5を目指せる実力はあると思います」

 

「それって政府の支援がある前提だろ。お前はもう政府の人間じゃないんだろ? 私達が専門の訓練を受けることができるとは思えないんだが……」

 

「それに関してですが、政府の人間という身分だと、貴方達に接触することが出来ないんです。だから、僕は政府の人間ではなくなりました。ですが、それは僕の意志でやったわけではありません。上からそのように動くよう指示されたんです」

 

「上から?」

 

「はい。元々、上は櫻さんや来夏さんに、椿さんや去夏さんがやっているような特殊な訓練を受けさせて、国公認の魔法少女として活動してもらおうと画策していました」

 

「だったら何で今更……」

 

「反対していたんですよ。椿さんと去夏さんが。『妹達を巻き込むな』ってね。彼らはforce level5の貴重な戦力です。いくら国のお偉いさんでも、彼らの言うことは聞かざるを得なかったんでしょう。そしてもし、政府が櫻さんや来夏さんを国公認の魔法少女として動かそうとしたら、椿さんや去夏さんは怒るでしょうね。だからこそ、元政府で、今は政府に関係のない人間が、独断で、勝手に、二人に事実を全て話し、協力を取り付けた、というシナリオが必要だったんですよ」

 

「そんな話を私達にしてよかったの?」

 

今まで口を閉ざしていた真白が口を開けて問う。

 

「中学生の子供だから、と言って、完全に騙せるとは思っていません。ただの中学生ならまだしも、貴方達は魔法少女としての戦闘で、精神的に成長しています。貴方達の勘なら、嘘をつけばきっと気づかれるでしょう。なので、今度こそ本当に、僕の独断で貴方達にこの話をしました」

 

ミツルのこの事実を聞いて、櫻達も思うところはある。

自分の家族が、自分を巻き込まないために政府に釘を刺したのにも関わらず、政府はその二人の家族を思う気持ちを無視し、裏をかいて櫻と来夏の二人を戦力として使おうとしているのだ。

 

「…わかったわ。協力する」

 

「私の力で、たくさんの人が救えるなら、いいことだよね」

 

「私も、二度と負けたくねーからな。訓練してくれるって言うなら、構わない」

 

「…………まあ、いいんじゃない?」

 

政府に対するイメージは悪い。

ただ、彼女らの中にある正義感と、正直に事実を話してくれたミツルの誠実さから、彼女達は、彼に協力することを決意したのだった。

 

 

 

 

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「ありゃ? 外が騒がしいみたいっすね。ちょっと様子を見てくるんで、大人しくしててくださいね〜」

 

そう言って、クロコは外へ出て行く。

 

話はまだ終わっていないのだが、どうやら外で何かが起こったらしい。

 

魔族に三大勢力のこと、そして、魔王の死の謎と、後ちょっぴり組織の名前が何なのか、それが気になって、クロは今夜は眠れそうにないなと、そう思った。

 

 

 

 

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